実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校   作:Reaflet

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ここまでが今まで執筆してきたものです。
次話からが本当の最新話になります。


第十六話 “お互いに残った物、パワフル中学のバッテリーの絆”

 ある夏の日。

 蝉が鳴き、まさに夏の真っただ中を表しているような季節。

 ある少年が籠に入った大量のボールをマウンド近くに置き、ネットに向かって投げていた。

 右腕から放たれた球は放物線を描いてネットに吸い込まれる。

「はあっ、はあっ……!」

『やっぱり新人大会のエースはだれなんだろうな?やっぱり鈴本か?』

『そりゃあそうだろ。あいつは他の投手陣と比べても頭一つ抜けているからな』

『野手陣も気合い入ってるし、新人戦はベスト8よりも上に行けるんじゃね?』

「僕はエースになれるはずがない!こんな僕がエースにはなってはいけない……!もっと強くならなければいけない!」

 そう叫びながら練習終わりなのにも関らず投げ込む。

 なぜ周りから期待されている?

 彼は確かに実力のある選手だ。速球も中学野球でも一年生にしてはなかなかだ。もちろん制球も良い。

だが、彼には武器が無かった。

 スライダーとシュートの二つの変化球しか無く、しかもどっちも実践レベルでは無い。

「先輩が負けてしまったのも僕のせいだ。僕があのとき打たれてなければ……」

 中総体の準々決勝で相手が強豪とも言われている栄光学院中学との試合。

 五回一失点でマウンドを下りたエースに代わって鈴本がマウンドに上がった。

 三対一という場面で、一死二三塁という場面になって打たれてしまったのだ。三対三の同点になり、結局試合は延長戦へ。

 最後は代打で起用された一年生にタイムリーを浴びてサヨナラ負けという試合になったのだ。

 それまでの試合はリリーフとして彼は活躍していたので、先輩たちは鈴本を責めることは無かったが、鈴本にとってその優しさはかなり心に響いてしまった。

 自分が先輩達の最後の大会を終わらせてしまった。それが心に刻まれる。

「スライダーもシュートも使えないのなら、何か覚えるしかない……」

 そう思いながら色々と変化球を試しながら彼は投げ続ける。

 それから毎日、鈴本は練習後に変化球開発を始めていった。

 それから何週間か経った。

 鈴本は今日も変化球開発をしていた。なんとか投げれるようになった曲がるようになったスライダーなど少しずつ成長していた。

「じゃあな、鈴本」

「……ああ」

 最近ずっと彼は放課後に練習したり、悩んでいたりしているせいか態度が荒々しくなっていたのだ。

 グラウンドには鈴本と少女の二人しかいなくなったところで彼は気にせずにボールを投げ始める。

 そんな彼を見ながら、ベンチに座っている少女はつぶやいたのだ。

「そんな球では新人戦も負けたようなものだ。打倒あかつきどころか一回戦も怪しいな」

「……さすがだなレギュラーは言うことは違うな、六道さん」

「誰が見ても同じことを思うだろう。鈴本、今のお前の球はすべて棒球だ。今のお前ではあかつきに五回コールドに加えて二十失点のおまけつきだな。……例え私がリードしたとしても」

「いつもレギュラーで活躍しているキミとは違う。実力のあるキミにとって僕はただのお荷物かい?ふざけるな。僕はそんなやつになるつもりはない!」

「私が発言したのはただの予想じゃない。現実になる上での発言だ」

「じゃあ、現実ならないということを教えてあげようじゃないか。僕と……三打席勝負しろ」

「……言っておこう、今のお前の球では私はすべてヒットに出来る」

「言ってろ」

 そう言って六道は打席に立った。

 その姿を鈴本は睨みながら、マウンドのプレートを踏む。

「……いつでも来い」

 そう言いながら、息をふぅー、と吐いて、バットを構える。

 鈴本は振りかぶって、自らの腕を振る。

 ビュ!と腕の振りと裏腹に、球は勢いがない。

(やはり……お前は何がしたい?鈴本……!)

 カァン!と六道が振ったバットはボールを捉え、レフトへのライナーへと飛んで行った。

 鈴本はその打球を眼で追っていくが、何も言えなかった。

 完璧な打球。それを打たれたのだから。

「今のはヒットで良いだろう?早く来い」

 再び鈴本は振りかぶって投げた。

 球は途中で軌道を替えて、六道から遠ざかっていく。

(スライダーか。だが、この球も…)

 カァン!!と打球はライト前に飛んでいく。

 強烈なゴロだ。試合でもヒットになるコースに打球が飛ぶ。

「……っ!」

「さあ、最後。来い鈴本」

「うああああああああああああっ!!!」

 鈴本が叫びながら投げた球はど真ん中へのストレート。

 いつもの球威もキレもノビもそして……。

―――――――何より気持ちが乗っていない。

 ッカァァンッ!!

 大きな音と共にボールはフェンスを越して消えていった。

 完璧なホームラン。今までの打席を抑えていてもすべてを帳消しにするような打撃。

 しかも、非力な六道に打たれたことで鈴本は膝から崩れ去った。

「どうして……どうしてだ?なぜ、六道さんにホームランなど打たれたんだ?」

 さすがの彼も自分に疑問を感じてしまった。

 非力な六道に打たれたのだ。確かに六道はミート力に関してはチーム一だろう。

 ただ力に関してはチームでも下から数えたほうが早いだろう。しかも、六道は女だ。

 そんな彼女にホームランという最高な結果を打たれた暁には…すべてが絶望に思えてしまうだろう。

 なおさら彼みたいなそこそこ実力のある投手にとっては。

「もう……僕は……駄目だ。終わりだ……エースになんてなれるわけがない。僕の代わりなんてたくさんいる」

「……」

「キミみたいな才能のある選手は僕みたいな落ちこぼれの選手をどう思う?」

「ああ……。すごく滑稽だな」

「そうだ。滑稽だろ?結局僕みたいな才能の無い選手は努力したってこんなもんさっ!!エースになってはいけない!僕よりも他の人がやった方がまだましだ!」

「――――――才能ですべてを片づけてしまうのが滑稽だな」

「っ!!!?」

「少し話をしてやろう。実力があってもエースになれなかった選手のお話だ」

「……」

「とある少年野球チームにある選手がいた。彼は走攻守そろったスーパープレイヤー且つ投手としても完璧な能力を持っていた。球も速く、スタミナもある。そんな彼は小学生ながらも120キロ台の球の速さを誇りながらもエースにはなれなかった」

「小学生ながらも120……だと!?」

「ああ。制球力も平均よりもありながらもエースにはなれなかったのだ。エースになった投手とは良い関係でお互いエースになるため争っていた……しかし、彼がエースになることは無かった。中学に上がると、エースと彼もお互いに投手として頑張ろうとしていたが、すでにエースの方は有名になっていて中学上がると同時にエースになっていた。そして彼は元々センターを守っていたのでそのままセンターのポジションを奪った。二番手として投げているようだがな」

「……その彼は他の分野で優れていたからレギュラーになれていたじゃないか。結局、なにも野球は投手にこだわる必要もなんて無い」

「そうだ。投手にこだわる必要なんてない。だが、彼が目指していたエースというポジションはとれなかったのは事実だ」

「……はは。だったらいいじゃないか」

「まあ、お前にとっては良いかもしれないな。すでにみんなから エース候補・・・・・と言われているからな。私からも見てお前以上に実力がある投手なんてこの野球部にはいない。だがお前はなってはいけないと言っている。……バカだな」

「そうさ。僕はバカだ。……才能が無いからな」

「……ふざけるな。”才能が無いからエースになってはいけない”だと!?いい加減にしろ!!」

「っ!?」

「なぜそこまで甘えられる?お前はエースかもしれない。でも、そのポジションは誰かと争って与えられたポジションではないか!!それを勝手に投げ捨てるなんて誰も許しはしないぞ!!」

 鈴本はかなり驚いていた。

 六道はいつもは冷静でこんなに大声を出す人ではないからと思っていたからだ。

「”私みたいな才能がある選手”?私がどれだけ苦労してここまで実力を伸ばしていると思っているのだ!!!?毎日家に帰ってからバットを振って、スローイング練習して……それを私は何年間以上続けている!!!その点、お前は何かしら努力しているのか!!?お前みたいなここ何週間から努力し始めたやつに私のことをどうこう言われる筋合いなどは無い!!ましてや あいつ・・・のことをバカにするのだったら許さないぞ!!」

「じゃあ、……僕は、僕はどうすればいい!?どうしたらいいんだ!!教えてくれ!六道!」

「努力し続けろ!!足掻いて、足掻いて、足掻き続けろ!それでも駄目だったら才能が無かったで諦めても良いかもしれない。でも、お前は足掻いたか?努力したか?してないではないか!そう簡単に才能で終わらせてしまうやつはエースになる資格なんてないぞ!!!お前が私に勝とうとするんだったら、もっと気持ちの乗った球を投げられたはずだろう!!それなのにお前は目の前の勝負から逃げて、勝手に自ら超えられない壁として扱っている!!!」

 鈴本が涙を流しながら、六道のほうに顔をあげる。

 六道の顔は真剣で、さらに力強い眼に鈴本はしっかりと向き合う。

「……足掻く。……僕にそれが足りなかったのか?」

「そうかもしれない。お前はお前なりの何かがあるはずだ。お前は何を目指しているか。それを見つけなければいけないんだ。だが、見つけた時が本当のスタートラインになるんだ。スタートラインに立ってからだ。才能どうこう言うのは努力してからにしないと成長しないぞ」

「……スタートラインに立っていないのか……?僕は」

「それを見つけるんだ。まだ、お前は才能どうこう言う立場では無い」

「……そうだよな。ありがとう六道さん。自分が未熟だということが痛いほどわかった」

「そうか。わかってくれればありがたい。私は才能で片づけられるのが一番嫌いなんだ」

「……はは」

「鈴本。練習後の変化球練習に私も付き合ってやろう。これからバッテリーを組むであろうからな私たちは。エースを育てるのも私の仕事だ。ほらやるぞ。今日も時間ないからな」

「ありがとう。六道さん」

「それと、苗字で呼ばれるのはあまり好きではないし、呼び捨てで良い。同学年にさん付けされるといやだからな」

「……聖」

「それでいい。さて、やるぞ。早くマウンドへ行け。時間が無いぞ。一つだけ言っておくが、自ら諦めるようなことはこれからはするな。それが私とバッテリー組む時の約束だ」

「ああ、わかった」

 こうして二人が練習終わりに変化球練習をするようになった。

 夏も終わって、彼らは秋の新人大会では惜しくもベスト4で敗れたものの、前を向きひたすら頑張っていた。新人大会の優勝チームはあかつき中。当然のごとく八対〇の完封勝ち。

 秋も過ぎて……冬になりそうな十一月下旬のある日。

「鈴本。そろそろ他の変化球も覚えてみたらどうだ?」

「僕に新しい変化球を?今はスライダーのキレも変化もある。シュートも芯を外すことのできる球だ。まだこの二つを磨いていけば問題は無いと思うよ?」

「いや、お前の変化球はどっちも横の変化だ。空振りを奪うには直球だけではこの先勝ち上がることができない。帝王戦でも感じただろう?」

「そうだね。縦方向への変化球か……」

「お前の吸収力の良ささえあれば、良い変化球を投げれると思う。それに今の鈴本は努力を欠かさず続けている。その努力が開花する手助けになるはずだ。別にお前がやらなくても良いと思うのならやらないが」

「何事も挑戦してみるのが一番だ。やってみるよ。……それにしても聖はすごいね」

「何故だ?」

「ちょっと言いたくないけど、才能もあるし、色々と僕にアドバイスをくれる。それに僕が暴投したときだって、ワイルドピッチになりそうな球を捕ってくれる。本当にすごいよ」

「ありがとう。でも、私はここで立ち止まってはいけないんだ」

「?」

「私はな。ちょっと話をしても良いか?」

「うん、いいよ」

「……どうしても追いつきたい人がいるんだ。そいつはいつも私の前を歩いていた。私が小さい頃からの友人。いつも家にいた私を外へ連れ出してくれた。野球が大好きで、私からしたら最初は迷惑に感じていたけれど、いつの間にか一緒に遊んでるのが楽しかった。私のヒーローとも言っていい。そいつに追いつきたくて、私は野球を始めたんだ。あいつと同じ舞台に立ってみたい、どのようなものを見ているのか知りたかった」

「その彼の影響で野球を始めたんだね?」

「そうだ。最初は私は下手だった。女だから足も遅く、非力で、肩も弱かった。だからチームも違かったし、当然実力なんて天地の差だった。あっちは全国に出場するようなチームで、私たちは県大会出れるか出れないか。前に戦ったことがあって、その時は三回だけだったのに十点差以上つけられたりもした。でも、いつものように私の練習に付き合ってくれて、そいつが練習後で疲れていても私と一緒に練習してくれた。私には優しく、そして自分に厳しい人だ。だからこそ、あいつに居るチームと戦いたいんだ。あかつき中の四番の朱鷺修也」

「朱鷺修也。チャンスを確実に物にし、打率も高く、パワーとミート両方重ねたあかつき史上最強の四番。外野では強肩、俊足、堅守とオールラウンドプレイヤー。朱鷺が聖の?」

「そう、だ。あいつは……私の憧れなんだ。そしていつか一緒にプレーしたい」

 そう微笑みながら六道は構える。

 まるで一緒にいたような日々を思い出しながら、いつか一緒にプレーできる姿を映しながら。

「鈴本、お前にはフォークは多分難しい。何度も練習して投げられないのなら時間の無駄だ。変化球開発していない球で、お前に合いそうな球は……ナックルなんてどうだ?」

「ナックルって相当難しい球じゃないか。握力使うし、投げられるようになったとしても捕れるなんて……」

「私だ。この私が後ろに逸らすなんて考えられるか?」

「……はは。思えないよ」

「じゃあ、やってみるぞ」

 毎日のようにその練習は続いた。

 正真正銘のパワフル中学最強バッテリー。

 この二人で生み出したのが鈴本の決め球”ナックル”だったのだ。

 普通は考えられない。だが、六道という独特な発想の持ち主と鈴本という最高の吸収力を持つ選手。

 二人の力が合わされば、相性の合う二人ならば。

 この県大会はさらに盛り上がるだろうと確信していたのは間違いなかったのだ。

 ナックルは不規則に変化する上、簡単に取れる球では無い。

 六道の超集中によってそれは簡単に克服された。

 努力家と努力家。

 パワフル高校のエースは天才ではない。努力家。

――――――――――――――鈴本大輔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が立ちはだかるのは準決勝。

 彼だけでは無い。

 ”怪物”東條小次郎も彼らに立ちはだかる。

 この二人のコンビを倒すことができるのか。

「勝つぞ。私は修也とプレーしたいから、鈴本が敵になっても良いと思ったんだ」

 敵になっても変わらない。

 彼と共に過ごした日々はお互いに残っているのだから。

 ナックルと超集中。

「聖、負けるわけにはいかないぞ。勝つ、そしてあかつきが待ってる決勝に行くぞ」

「わかっている。鈴本、勝負だ……!」

 決戦は明日。猪狩ドームで行われる。

 準決勝。勝ったほうが決勝へとコマを進めることができるのだ。

 どちらが勝つか。それは神のみぞ知ることだ……。

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