実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校   作:Reaflet

24 / 35
第二十三話 10月2週 “秋大会開幕。微かに見える影”

 夏の甲子園。

 俺達の地区からの代表であるあかつき大付属は難なく勝ち進んでいく。

 準々決勝のアンドロメダ学園との試合。

 大西、神高のダブルエースと言われる二人の投手力に加えて、四番に入る神高やハイレベルなメンバーを揃えて三期連続で出場しているチームとの対戦だった。

 一度は同点に追い付かれたものの、最後は進君の二点タイムリーが決勝点。

 あかつきは自分たちの野球を貫き通し、三対一で猪狩が完投勝利で準決勝へ進む。

 準決勝は名門校である四神黄龍高校に対して二対〇で勝ち進み、決勝戦では西強高校を四対一で下してあかつき大付属高校が全国四〇〇〇校の頂点に立った。

 準決勝は八嶋の機動力を生かして六本木のツーランスクイズで二点を上げ、西強高校には七井のスリーランホームランと九十九のタイムリーで四点を入れた。

 機動力を持つ選手が居て小技も使えるところも見せたり、ホームランの打てる主砲や打てる下位打線の選手もいるというのを見せた。

 攻撃に関しては隙の無いチームというのを昨年と同様、全国の高校に焼き付けた。

 守備ではやはり、エースの猪狩守が目立った。

 一回戦からわずか三失点。全試合を完投したということで、五十四回を投げて三振数は二回戦で三十四だったのが八十四。ずっと抜かれなかった甲子園記録を抜いたのだ。

 圧巻だったのが三回戦。彼は二十奪三振を記録。惜しくも甲子園記録には届かなかったものの、それでも甲子園優勝投手にふさわしいものだっただろう。

 夏大会二年連続の甲子園制覇ということもあって、あかつきはさらに評価を上げた。

 真紅の旗を見事勝ちとったのだ。

 

――――――そして季節は巡っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――10月2週。

 

 季節も秋の真っただ中ともいえる紅葉が舞い踊る。

 朝方は少し肌寒さを感じながらも、昼にはスポーツするには最適な気温、湿気となって、夜には冬を感じさせるような寒さへと変わる。

 高校野球では夏の暑さから解放されるように、信頼を寄せていた三年生が引退して、新人大会とも言われてる秋大会が来る。

 出場するのはもちろん一、二年生。すぐに予選を敗退したチームはこの大会に向けてチーム作りをし、甲子園に出場したチームはその経験を生かして予選を迎える。

 多いチームでは四ヶ月、少ないチームは約二々月弱という期間。

 不安要素のあるチームで挑むところは多い。

 だが、そんなことは関係ないチームはこの地区には多かった。

 レギュラーの八人が二年生だったあかつき大付属高校を筆頭に、ほぼ同じ状況の感じであるパワフル高校、あかつきと同様に一、二年だけで構成された恋恋高校。

 他にも帝王実業高校も新チームになったものの、チーム力は落ちたとは言えない。

 蛇島、広上といった選手が主軸が引っ張っていくだろう。

 

 無論、俺達のチームはずっと一、二年のチームだ。

 秋大会だろうが関係ない。夏大会とほとんど同じようなものだった。

 

「朱鷺君、勝ちたいですよね。秋大会」

「はい、勝ちたいですよ。聖名子先生」

「ふふっ。やっぱり、あなたはそうでなくちゃね」

「?」

 

 どういうことだ?まあ、いいか。

 キャプテンである俺は聖名子先生とともに秋大会のトーナメント表を決めるくじ引きに来ていた。

 今年は俺達の地区に特別枠が付与された。

 この枠は甲子園出場への道が許される。

 特別枠とは部員不足などの困難を克服した学校や、他校の模範となる学校が選出される。さらには甲子園出場を一度も果たしていないという条件もある。

 私立は選出されにくい傾向だが、うちや恋恋は選考基準に入っていることだろう。

 恐らく準々決勝まで行けば枠は手に入れられる。

 でも、そんなものは関係ないんだ。

 しっかり勝って甲子園へ行く。それが俺達の目標だ。

 

『それでは秋大会のくじ引きによるトーナメントの選考に移ります。ではまずはじめに、シード枠であるあかつき大付属高校。お願いします』

 

 あかつきのキャプテンである四条が台に上がってくじを引く。

 恋恋のキャプテンの南、パワフルのキャプテンの尾崎、帝王のキャプテンの蛇島。あかつきを含めこいつらの眼には一つの迷いがない。

 それほどこの大会に向けて調整、特訓をこなしてきたのがわかる。

 全員、体つきも良くなってきてるし身体的、技術的にも成長してきているのだろう。

 

(ったく……もっと負けられねえじゃねーか)

 

 面白いじゃねーか。やってやろう。

 

『あかつき大付属、百四十二番』

 

 っと、あいつらは右端か。

 ってことは俺達はどうだろうな。出来れば、決勝で当たりたいから逆ブロックを引きたいところだけど――――。

 くじ引きによって変わることもあるからな……。

 うっし、行くか!

 右腕を箱に入れて、ボールを取って係員に渡す。

 

『聖タチバナ学園高校、百三十三番』

 

 他の学校のやつらがざわざわし始める。

 ある学校のやつらは喜んで、ホッとしている学校も見える。

 あかつきと同じブロックか。って……すぐにあかつきと当たるのか!?

 二回戦から出場だろ……って二つ勝てばってことかよ!

 

「あはは……。まあ、ドンマイっていうしかないわね」

「クジですからね……とはいえ運の無さには絶望しましたよ……。早めに当たれるんだったら関係はないですけどね」

「次は勝てるかもしれないしね。いえ、言い方を変えれば『次は勝つ』ってかしら?」

「そうですよ」

 

 負けねえよ。絶対お前らには負けない。

 四条に視線を向けるもすぐに四条は俺の方を向いた後、少し笑って席に座る。

 いかにもこのクジ引きは満足しているっぽいな。甲子園合わせて一番好ゲームをしたのは俺らだから、夏よりもボコボコにしてやろうとか思ってるのは分からないが、楽しみにしていることは表情から読み取れた。

 俺もその後のクジの行方を見つめる。

 

『パワフル高校、一番』

 

 パワフル高校が俺らと違うブロックで正反対の位置になる。

 帝王が比較的早めにくじを引いて、逆ブロックに位置して順当に行けば俺らと同じで準々決勝でパワフルと当たる。

 なんか強豪同士の潰し合いが結構目立つな。

 俺達にとっては嫌なんだけど、他の公立高校や中堅校辺りは嬉しいんだろうな。

 

『灰凶高校、百四十一番』

 

 強豪校の一角の灰凶があかつきに当たるっぽいな。

 あかつきとしても結構嫌な相手には変わりない高校。あかつき相手にも大崩れはしないだろう。

 バス停前高校の主将が舞台に上がってくじを引く。

 ちょっと待て……田中山はどうした?

 主将が変わった……?あんな奴みたことないぞ?ましてや、体つきが良い割に細身の体型をしている。しかも、格好いい。ありゃあ、モテる顔だな。

 

『バス停前高校、百四十番』

 

 ありゃ、残念。バス停前高校は負けだな。

 ほらみろ、灰凶のゴウが笑ってる。一回戦は余裕だなって顔がしてるぜ。

 灰凶と一回戦で戦うのはバス停前高校。その後はあかつき大付属か。

 バス停前の主将はマネージャーの座っている席に戻って、その後のクジの様子を見ている。

 顔に余裕があるな。田中山見たいな何を考えているのかわからないのと違う。

 しかし、バス停前高校で田中山だけは異常にうまいけどその他のやつらが中学生レベルに近いからな。打てなければ負けるし、ゴウの球は打つのに一苦労だぞ。

 

『恋恋高校、百三十四番』

 

 俺達のとなりの札に、恋恋高校の札が並ぶ。

 俺達が一回戦に戦うのは恋恋高校対かぶ高校の勝者と、か。

 まあ、順当に行けば恋恋高校が勝ちあがってくるな。

 負けないぜ、南。

 南と視線が合う。少し俺が南を睨みつけると、それに感化されたのか若干表情が引き締まる。

 勝ち進んで、あかつきを倒してやる。

 そして――――――甲子園へ行くんだ。

 

「―――終わったわね」

「はい。聖名子先生」

「行きましょう。みんなに結果を伝えなきゃいけないわ」

「どんな反応しますかね。案外、特にないような気もしますけど」

「どうかしらね」

 

 笑顔で俺と話す聖名子先生と一緒に会場を後にする。

 さてと、対策とかも考えなきゃいけねーな。

 

??「見ていろ……あかつき大付属高校」

 

 一瞬、俺は振り返った。しかし、後ろには誰も居なかった。

 誰かの声が後ろから聞こえたが、空耳だと思って聞き流した。

 早川攻略か……一苦労しそうだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだでやんすかねぇ……」

「あと三十分弱ってところだと思うけどさ」

 

 その頃。

 朱鷺以外の野球部員はタチバナのグラウンドで自主練習を行っていた。

 みずきと聖、黒豹はブルペンでの投球練習を行っており、その隣で友沢がみずきにスライダーの指導を行っていた。

 矢部と准がキャッチボールを行っていて、そのほかの面子は素振りだったりトスバッティングだったりと体を動かして、朱鷺が来るのを待っていた。

 本来ならば午前で終わる予定だったのだが、さすがにトーナメント表が気になるみたいでずっと待っていたのだ。

 

「シード校を除いて、帝王や恋恋と初戦で当たる可能性があるってのも嫌だね」

「でもうちの地区に特別枠が来たんだろ?だったらチャンスじゃねーか」

「何も、特別枠なんていらないのよ。優勝すれば甲子園に行けるんだもの」

「橘の言うとおりだな。優勝すれば問題はない」

 

 自信満々の友沢とみずきの後に聖が「そうだ」と付け加える。

 夏で敗北を喫し、甲子園で強さを見せつけたあかつきは間違いなく成長している。

 しかし、タチバナは?

 未だ、はっきりとはわからないのだ。

 甲子園を経験していないチームだからこそ、甲子園制覇したチームの成長度が測りきれない。

 

「ん、電話だ」

 

 そう言って聖が携帯を取り出して受ける。

 その様子をチームのみんなが注目した。

 

「……わかったぞ。伝えておく」

 

 約三十秒に及ぶ電話は終わり、すぐさまにみずきが用件を聞く。

 無表情で聖はそれに答えた。

 

「私達とあかつき大付属は同じブロック。さらに順当に行けば準々決勝で当たるらしい」

「……早いな」

「嫌な位置でやんすね。お互い勢いがある形で戦う感じでやんすか」

 

 聖はその言葉にうなづいた後、再び話し始めた。

 

「私たちはシード校により一回戦の勝者と戦う。恋恋高校対かぶ高校の勝者と言っていた」

「……っ、恋恋高校でやんすか」

「俺達と同じスコアであかつきに負けた相手かー。厄介だー」

「早川攻略の上に、上位打線をどれだけ抑えられるか」

「さらにはタクミのやつも入ってるし、守備と打線共に強化もされている奴らだぜ」

 

 決して油断はしない。

 そう、油断こそが命取りになるのがわかっているからだ。

 

「……バッティングマシーンで早川の球再現して打ちこむでやんすか?」

「高速シンカーはなかなか打てないから、ストレートだけでも打ちこめるようにした方が良いよな」

 

 せっせとピッチングマシーンをセットして各自、打撃練習をする。

 他人に頼らない姿勢が自らを成長させるとわかっている。

 

 

 

 

 秋大会。

 頂点に立つのはどこだろうか。

 

 

 

 

――――今夏の王者であり”怪物投手”猪狩守を擁するタレント揃いのあかつき大付属高校か、

 

――――絶対的四番の東條小次郎と完成されたエースの鈴本大輔を擁するパワフル高校か、

 

――――アンダースロー投手早川あおいを筆頭に堅守を誇り、粘り強い野球をする恋恋高校か、

 

――――山口、蛇島といった一流の選手を筆頭にハイレベルな選手達を揃えた帝王実業高校か、

 

――――朱鷺と六道のバッテリーに加え、強力打線と言っても過言ではない聖タチバナ学園高校か、

 

――――それとも、優勝候補に挙がっていないダークホースが現れるのか。

 

 

 

 今、春の甲子園を懸けた熱き戦いが始まる。




特別枠というものがありましたが、要するに21世紀枠です。

本編で述べているのとほぼ同じく21世紀枠は基本的に部員不足などの困難を克服した学校や、他校の模範となる学校を選出されます。
現実では推薦が必要ですが、本編では勝手に出場が決定します。

甲子園出場したことのあるかないかの条件などは良く分かりませんが、本編では甲子園出場経験のない高校というのを条件としています。
もしその辺のところがわかる方はぜひとも教えていただけるとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。