実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校   作:Reaflet

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第二話 4月3週~4週 “新入部員”

 俺たち野球部は先週から部員を集めていた。

 っていっても張り紙を張ってるだけなんだけどね。

 相変わらず桜は咲いていて、今年の桜は長く咲きそうだ。

 4月も3週目に入ってきて、部活動を決めている人は多く、中には帰宅部だったりと。

 部活に集中したりする人や勉強に青春をかける人。

 それぞれ決めている人は少なくない。

 野球部は相変わらずの三人で活動していた。

 聖、矢部君、そして俺。

 まあ、まず一応紹介しておこうと思う。

 聖。本名は六道 聖。

 俺の幼馴染であり、イトコでパワフル中学出身の女の子。

 俺をこの学校に誘った張本人。

 ポジションは捕手。

 女子とは思えない野球センスを持ち、特にキャッチングセンスとバットコントロールはずば抜けてる。

 センスは恐らく俺以上かもしれない。負けるつもりはねーが。

 うん。努力してここまで来た俺でも驚くほどだからな。やっぱり俺以上だと思う。

 昔から甘い物は好きらしい。

 今でもきんつばは好きなのかね?……まあ好きだろう。

 パワフル中学と言えば鈴本大輔が有名なんだが、今は伏せておこう。

 ああ、もちろん俺も知ってるぞ。何せ俺も中学出身だからな。

 

 そして次は矢部君。

 矢部 明雄。

 良く分からないね。まあ、ボーイズ出身のメガネがチャームポイントの男。

 ポジションは外野らしい。

 野球能力のほうは、打撃はわからん。

 まあ、聖と俺が居ればわからないわな。しゃーない。

 でも、足の速さは俺以上だし、守備範囲も広い。守備も良いし、肩は悪くない。

 センターにぴったりの能力だ。センターになるかはわかんないが。

 ガンダーロボが好きみたいだ。

 俺も小さいころ見てたんだけどな。今のはあんまりわからん。

 この前そのこと伝えると、「何で見ないでやんすか!?」って言われた。

 理不尽だろ……。

「なにぶつぶついってるでやんすか?」

「ん?ああ、一応見てる人には紹介しないとな」

「?」

「修也はたまにわからないこと言いだすな。その癖直したほうが良いぞ」

「癖じゃねーよ」

 まあ、今日もこんな感じ。

 しかし、部員はほしいな。そろそろ集まんないとまずくなってくるぞ。

 公式戦出場には九人以上必要だ。各ポジションに一人ずつほしい。

 俺が投手だとしても、内野一人ずつ、外野二人が必要だ。

 ただ集めるだけじゃあ駄目だ。

 勝つためには経験者はほしい。

 そんな感じで思いながら二人と会話する。

 俺らが部室でいつもみたく話していると部室のドアがノックされた。

 コンコン。

「へーい」

 ガチャ。

 出てきたのは、頭に鉢巻きを巻いた赤い髪の毛の男だった。

 いかにも熱血系な感じがする。

 威嚇するような眼。簡単に言えば狼か?飢えた狼見たいな感じだ。

 右手にはバットケースを持ち、スポーツバッグをぶら下げてる。

「ここは野球部だな?」

「ああ、そうだ」

「何の用でやんす?」

「何ってここに来るのは、入部するために決まってんだろ」

「ん、そりゃあありがたいな。んじゃあこれに名前書いてくれよ」

「わかった」

 俺が紙を差し出すとそいつは自分の名前を書き始めた。

 すると矢部君が俺の耳元で呟いた。

 

(あんな簡単に良いでやんすか?)

(ああ、少しだけ手を見たがあれはかなりバットを振ってる証拠だ。間違いなく努力家で、経験者だ)

(良く分かるでやんすね……)

 

 そりゃあな。

 手やグローブ、スポーツバッグとか見れば経験者なんて簡単にわかる。

 まあ、どのくらいの選手なのかはもっと見る必要があるのだが、こいつは明らかに経験者だ。

 俺が見たことないということはたぶん、シニア出身だろうけどな。

 その男は見た眼とは裏腹に綺麗な文字で紙に猛田 慶次という名前を書く。

 ん?猛田?聞いたことあるぞ。

「なあ、お前もしかしてパワフルシニアの猛田か?」

「ああ、そうだけど」

「修也。知ってるのか」

「まあな。有名だ。帝王シニアとパワフルシニアは毎年強かったからな。東條、猛田、樋宮が所属していたパワフルシニアと、友沢、久遠、蛇島が所属していた帝王シニアが地区を争ってたけど。昨年の最後の大会だけ両チームが決勝に出てこなかったんだよ、確か」

「良く知ってるな、あんた。名前は?」

「朱鷺修也だ。以後お見知りおきを」

「朱鷺、か。知ってるぜ。あかつき大付属中の四番だろ」

「ま、そういうとこだな」

「有名でやんすね……朱鷺君」

「それほどでも。猛田。こんな野球部で良いのか?俺としては歓迎だが、お前の実力なら他の強豪校に行けたはずだが?特にパワフル高校とかな」

「……コジローがパワフル高校に行ってる。俺はあいつを超さないといけない。樋宮のためにも俺のためにも」

「ん……そうか。それだったら、理由は聞かないさ。これからよろしくな」

「ああ、よろしく」

「私は六道聖だ。よろしく」

「女か……。でも、あんたの名前も聞いたことあるな。確か鈴本大輔とバッテリー組んでた……まあいい。よろしく」

「なんか二人とも有名でずるいでやんす!おいらは矢部明雄って言うでやんす」

「誰だ?聞いたことねえぞ?」

「う、うるさいでやんす!ちなみにポジションはセンターでやんす!」

「い、いやまだ決めてないんだけど……」

 実際パワフルシニアは東條がすごくて、帝王シニアは友沢がすごかったからな。

 実質、あの二人がずば抜けてたらしい。

 友沢は投手としての能力がかなり高くて、確か中学生の時点で高校トップクラスのスライダーを投げていたはずだ。

 球も130後半近くは出てたらしいし、制球は及第点だったがスタミナもあったらしいな。

 それに打撃もかなりのものだったはずだ。四番を打ってたし、シニアのくせに中学野球でプレーしている奴らにも知られてたはずだ。足も速いらしい。

 猪狩も知ってたはずだ。なんせどっちのスライダーが上か?っていうのがあったらしいからな。

 こういう風に思い出してみると友沢すげーってなるけど、東條もすごかったらしい。

 友沢のスライダーを唯一打ち返したっていう噂が聞いたことがある。

 ポジションはサードだっけ。巧打力もかなりの上に長打力もある。

 つか、そんな体は大きくないはずなのに技術もあって、眼が良いって噂だ。バットスイングのスピードが中学生じゃないレベルだとか。

 守備も良いし、左打者だ。なんか猛田と関係あるみたいだが・・・。パワフル高校に進学したらしい。

 そいつらには敵わないが、久遠も良い投手だったし蛇島も打撃、守備とともにかなりのものだったらしい。樋宮も三番打ちながらも、なかなかの良投手だったらしいからな。

 経験者の猛田が野球部に入ってくれた。

 確かこいつはレフトだっけな。

 パワフルシニアの五番打者らしいし、そのまま五番に入れてもいいかもな。

 まあ、これで強打者が入ってくれたし打線の軸となって働いてもらおうか。

 とにかくこいつは三番から六番の間だな。

 見る限り気合いはあるし、チームのムードメーカーとしていてもらいたいところだ。

 これであとは野手五人か……。なんとかしねーとな。

 

 

 

                     

 

 

 

 

――――――――あかつき大付属高校。ロッカールームにて。

「まさか南と朱鷺が来なかったとはな」

「あいつらが居ればあかつきは安心だったんだがな」

 

 四条と三本松が話している。

 それに僕は耳を傾けながら、着替えていた。

 別に僕が気になってるのは南じゃない。まあ、あいつもいい選手だったが。

 僕が気になってるのはこいつら達から見ての修也の評価だ。

「朱鷺が居れば二年の秋から四番センター確定だったしナ。もしかしたらオレや九十九はレギュラーになれないという危ない状況にかもしれないガ」

「南だって良い選手だ。六本木も危なかっただろうよ」

「まったくだよ。ただでさえ僕はバッティング良くないのに、彼が入ってたらレギュラーが危なかったよ」

「フン。関係ねえよ。力がある者が上に行けるんだ」

「猪狩はどう思う?」

 

  四条が僕に問う。

 なるほどな……。

「特に。では帰ります」

 ガタン!

 僕はロッカーの扉を強く締めて、部室のドアを開けて部室を出た。

 

 

 

 やっぱりあいつら達は野手としての評価しかしていない。

 僕の心の中にもやもやが残る。

 あいつはそう僕と変わらなかったはずだ。

 でも、僕はすぐにエースになった。何もせずに。

 どれだけ見たことか。

 練習終わりに走り込みしている姿を。

 自分の変化球を磨くためにボールを投げていたことか。

 だけど、僕だってあいつに負けないくらいの努力はしたはずだ。

 専属コーチにフォームの指導を受けて、そのフォームを完成させるのに筋肉を鍛え直したり、進に受けてもらったり。

 スライダーやカーブといった変化球だって、何度も練習した。

 やっぱり現実はそううまくいかない。

「・・・何で僕はこんなに弱気なんだ」

 

 しっかりしろ。猪狩守。

 秋にはエースなんだぞ。一ノ瀬先輩が居なくなったらエースなんだ。

 次期エースがこんな弱気じゃあ、負けるぞ。

 力がある者が上に行ける・・・。

 二宮先輩の言葉を思い出す。もし僕が力がなかったら?あいつがエースだったのか?

 僕は考えることをやめる。

 やめろ。考えるな。

 僕はあいつと争いたかった。でも、それはできない。

 だったら?どちらが上だったかを証明するには?

――――――あいつと投げ合えば良い。

 だったら、僕はあいつのチームに勝てばいい。

 そうすればエースは僕だったって証明することができる。

「僕は負けないぞ。だから・・・」

 僕と勝負だ。修也。

 三年後、どっちが上なのか。

 

 

『僕はお前のライバルだ』

 

 

 

                     

 

 

 

 

「頼む!真田、喜多村、霧丘。経験者が野球部に必要なんだ!お前らが野球部に入ってくれれば、チーム力が上がるし、お前らにもプラスになるはずだ!頼む!野球部に入ってくれないか!?」

 俺は頭を下げる。

 放課後の教室の教室の中。

 俺と違うクラスで、いきなり入ってきたらびっくりするだろうと思ってたが、あいにく他のクラスメートは帰ったみたいで、今ここには三人しかいない。

 この三人と顔を合わせた途端、

 

「朱鷺?」

「ああー、朱鷺だー」

「見たことのあるやつだと思ったら、朱鷺だったか」

 

 という反応をされて、さっきの状況に変わった。

 

 昨日の夜……猛田が野球部に入った次の日の夜。暇だったから他のクラスの名前を見たら、思わずこいつらの名前を発見した。

 俺が調べた野球経験者のリストに載っている奴らだった。

 俺がこいつらを誘ったのは中学野球で面識があるからだ。

 何度も戦ったことはあるし、この学校に進んできたのも何かの縁だと思ったからってのもある。

 こいつらはそれぞれ違う中学だ。

 それでもつるんでいたってことは互いに知っていた仲だったんだろうと思う。

 この三人は中学でもレギュラー張ってたし、足りないポジション対応してくれるはずだ。

 今足りないのは内野手と外野手一人。

 すぐに甲子園予選が始まってしまう。初心者を入れて簡単に勝てる地区じゃない。

 だから、経験者の中で知ってるやつに声を掛けた。

「顔を上げろよ、朱鷺。別に俺は野球やめたわけじゃないし。勉強やりつつ、進学を狙ってただけだからさ。さすがにお前みたいなすげえ奴に誘われたら断れねーよ」

「まー、いいよー。特に部活決まってなかったし、うまい奴らとやると野球って面白いからなー」

「真田、喜多村……本当にありがとうな」

「……せっかくこの三人で高校生活満喫しようと思ってたけど」

「霧丘……」

「まあ野球して満喫するのも悪くはねえ。俺もやるぜ」

「マジでありがとよ。霧丘」

 よっしぁ!これはうれしい。

 とりあえず7人だ。後二人。さてとどうするか。

「とりあえず、部室行こうぜ」

「ん、わかった。案内する」

 部室に着くと聖がベンチに座っていた。

 矢部君も座って、ガンダーロボのプラモデルの制作をしてる。

 

「六道だー」

 

 喜多村が聖を見た途端に言いだした。

「ん?誰だ?」

「栄光学院付属中の喜多村だよー。準々決勝で当たったー」

「すまないが覚えてない」

「知ってるのか。三人とも」

「ああ。あかつき、帝王、パワフルとか辺りは勝ち進むと当たってるしな。特に俺的にはパワフルはもういやだね。鈴本、六道のバッテリーにかなりやられたからな」

「お前もか霧丘。海東中だっけ?まあ、結構やられたな。つか、三年間パワフルとあかつきが当たらなかったのがおかしかったよな」

「うむ。修也とも対戦したかったぞ」

「はいはい。過去話は後で。んじゃあ、自己紹介してくれ」

「んじゃあ俺から」

 そう言って真田がみんなの真ん中に行った。

「俺は真田だ。近代学院付属中出身。一応ポジションは外野とファーストだ。打順は一番と六番辺りをうろちょろしてたかな」

「僕は喜多村ー。栄光学院付属中出身ー。ポジションはサードとセカンドー。打順は三、四番打ってたー」

「名前は霧丘。海東学院付属中出身。ポジションはピッチャーとファースト。打順は六、七番。左投げだからな。よろしく」

 三人の自己紹介を聞いて、ポジション整理をする。

 喜多村にはサード、セカンドをやってもらうとして、霧丘はファーストだな。

 左投げにだからライトってのもあるが、外野は経験者のほうが楽だし、ましてや真田は足が結構なものだったからな。

 打順はどうするか。

 三、四、五は聖、俺、猛田で決めてたし、それを崩しはしない。

 でも、喜多村の打撃は良いんだよな……六番でもいいかな。

 それにしても話し方が独特で、気が抜けちまう……。まあ、かなりうまいんだよなあいつ。

 一、二番を矢部君か真田に任せるとして、霧丘は七番かな?

 そんな感じだろう。

 思ったんだが、みんな付属中出身か……。そこそこの中学出身だし、うれしいぜ。

「まだ二人居ないから集めないといけないけどよろしくな」

「よろしく頼むぞ」

「よろしくでやんす!」

「よろしく」

「よろー」

「おう」

「そういえば猛田は?」

「ああ、あいつは素振りしに行くとか言って、出ていったぞ」

「ん、そうか」

 

 努力家なのは良いが、部室に今は居てほしかった。

 毎日素振りするのは良いことだが、あいつは休むことを知らないのか?

 もしかして何か一人で背負っている部分や何かあるのかもしれないな。

 口出しすることはないけれど……。

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 部員が七人になって五日後。

 今現在、4月も4週目に入り他の部員のうまさなどがわかってきた最近。

 バッテリーとして経験不足な俺と聖。

 二遊間のいない内野手。

 連携が良く取れている外野陣。

 外野陣はともかく、結構まずいなということで焦りが出てきている。

 でも、打撃陣ははっきり言えばこの地区でもそこそこに入ると思う。

 パワフル高校、帝王実業高校、あかつき付属高校などの強豪、名門高校には及ばないもののクリーンナップを組む予定の聖、俺、猛田の三人は少なくともレベルは高いと思う。

 とは言っても聖の非力さや猛田のいつでも強振多用はあまり褒められるものではない。

 俺も四番を打つ予定ではあるが、エースで四番は負担がかかったりするし打順は変わるかもしれない。

 そのためにも素振りは毎日重ねているし、自分の役割を把握するように努力はしている。

 休み時間に俺にとってうれしい事件が起きた。

「は!?友沢がこの高校にいるって!?」

「おう。そうらしい。なんかよくわかんねえが」

「マジでか!?」

 休み時間に入った途端、猛田からの突然の言葉。

 おいおい。これは願ってもないチャンスだぞ。

 戦力アップに兼ねて、俺もあいつから技術盗めるじゃねーか。

 でも、名門校で即レギュラーとれるレベルのやつがこの高校に?

 マジかよ。俺や聖、喜多村は別だが、あいつほどのレベルじゃあ、こんなとこ来ないだろ?

 

「いや、俺も疑ったんだけど。でも、クラス確認したらしっかりと載ってんだよ。『友沢ともざわ 亮りょう』って」

 ほらと猛田に言われて紙をみる。

 確かに書いてあるぞ。おいおい、現実なのか?

 もしかしたら同姓同名の別人かもしれないが……。

 

「な?どうする?……って決まってるよな」

 

 俺と猛田の眼が合う。

 確認取らなくたっていいだろ。

「「行くしかねえな」」

 

 猛田と声を揃えて言う。

 バカ野郎。行くしかねえよ。

 俺らはそのクラスへと向かった。

 

(いるぜ!)

(最初聞いた時はウソだと思ったけどな。俺としても野球部としてもほしいところだ)

 

 友沢は休み時間にも関わらず、机に座って雑誌を読んでいた。

 俺も読んでいる月刊パワスポだ。

 色んな特集をやってるが、多分今の時期は中学生の注目選手だろう。

 ってまあ、そんなことはどうでもいいんだ。

 

「いくぞ」

「良いのか?いきなり」

 

 若干戸惑う猛田に俺は話す。

 

「たりめーだ。こういうのは押していくしかない。あいつが居れば俺らのチームは格段にレベルが上がる。投手できるんだったら、俺と友沢でダブルエースでいけるし、それよりも俺はあいつの打撃に期待してる」

「確かにな。勝つためには主砲や安打製造機、仕事人は必要だしな」

「それに守備陣も固めておきたいしな。あともう一人柱がほしかったところだ」

「良い選手は居れば居るほどプラスだな。よし行くか」

 

 俺と猛田は友沢の元へと歩く。それに友沢は気付いたのか視線を向けてきた。

「何の用だ?・・・猛田じゃないか。どうした?」

「いや、こいつがお前に用があるってな。とりあえず場所ずらさねーとな」

 

 友沢は少しこっちを見たが、すぐに目線を変えて場所を移動するために席を立った。

 

「屋上で良いか」

 

 そう友沢は言って、俺たちは屋上へと場所を移動した。

 屋上は陽が当たり、いつもは人が多いのだが今日は何故か人がいなかった。

 これは好都合だ。

 

「で、何の用だ?」

 

 俺のほうに向かって質問してくる。

 確かに。雑誌でしか見たことがないが、本当に見ると雰囲気が違うな。

 こう、普通の人とは違うオーラが出てる。

「単刀直入に言う。野球部に入らないか?」

「何?」

「お前のことはわかってる。シニアで有名な選手だからな。俺はお前を野球部にほしい。問題があるなら別だが・・・」

「俺は野球ができない」

「何故?」

「シニアの予選前に肘を壊した。変化球を投げすぎて、肘に爆弾を抱えながらも投げていたからな。今はもう完治して普通には投げることはできるが、変化球は投げれない。……俺は野球をやらないつもりだ」

「なるほど……。猛田、友沢の野球センスと守備はどうだ?」

「……はっきり言えば天才って感じだな。樋宮の初めて投げた変化球をフェンスダイレクトに持ってったことがあるし、守備に関して言えばバント処理もかなり素早かったし、肩も強かった」

「わかった。じゃあ友沢。ショートやってみないか?」

「……?」

「足も速くて、肩も強い。ショートは難しいが、お前なら難なくやってくれるはずだ。それに野球センスが抜群のお前ならすぐに慣れる。それ以上に俺が期待してるのはシニアで投手やってながら四番に座ってたお前の打撃だ。かなりのもんだと俺は思ってるし、実際名門校でも即レギュラーに取れるほどの打撃力の持ち主が投手としているのはもったいないはずだ。チームにとしてはお前をクリーンアップに置きたい。投手がやりたいやつは投手をやればいい。だが、やりたくてもできないなら、他の道で生きてみるのもいい経験になる、そういうもんだと俺は思ってる。・・・どうだ?」

「――――ふ。なかなか面白い奴だ。……迷惑でなければショートやってみる。これから世話になる、朱鷺」

「ん、俺の名前知ってるのか?」

「朱鷺修也。あかつき大付属中出身、ポジションは投手とセンター。打順は四番を張っていた。この辺でいいか?」

「はは。それはどうも。じゃあ、よろしくな友沢」

「ああ」

「おう、よろしく友沢!」

「猛田」

 友沢が入ってくれたぜ!

 これで打線に厚みが出るし、あいつの野球センスに刺激されて他のやつにも影響を与えたりもしたりしてチームに良い傾向が生まれる。

 野球ってもんは投手だけじゃない。こいつには投手一筋で来て、いきなり投手ができなくなってしまったという突然なことに思考がついてこなかったのかもしれない。その気持ちは俺には分からないだろう。

 大けがなんて一度もしたことはないから普通は何も言えないけど、少しの助言だけなら誰でもできる。

「じゃあ放課後よろしくな」

「ああ、わかった」

 ショートに友沢か・・・。自分で提案しながらも少し不安になってしまう。

 そう思いながら俺は教室へ戻った。

 

 

 

 

 

                    

 

 

 前言撤回。

 こいつはすげえや。

 全く気になんねえよ。ピッチャーしてる身にとってこんな動きの良いショートは助かるわ。

「さすがだな、友沢」

「ま、こんなもんだろ」

 

 そう言いながら自分のグローブを叩く。

 こいつ、いつの間にか自分のグローブまで持ってやがって。もしかしてやるつもりだったのか?

 しかし、こいつの野球センスには脱帽してしまう。雑誌で取り上げられるのも頷ける。凄すぎだろ。

 さっき打撃練習してるのを見たが、飛距離もありながら、空振りがなかったのが印象的だ。

 もしかしたら東條より(東條の打撃は見たことないが)も凄い打撃かもしれないな。

「合格だな。十分だよ」

「ショートか。思ったよりも楽しいな」

 

 そう言っていると聖が俺に話があると言って呼んできたので、聖の所へ向かった。

 

「新入部員だ」

「え?まじで?」

「ああ。私と同じ中学でセカンドを守ってたやつだ」

 

 そう言って聖はそいつを紹介する。

 見た目は細いが、結構を素早そうだ。

「朱鷺だよな。おれは峰田。六道が言ってたようにセカンドだ。打撃は期待しないでもらいたいが、守備には自信があると思う」

「はいってくれてサンキューな。これで九人揃ったからよ」

「はっは。俺が最後か」

 よっしゃあ!これで九人揃ったぜ!!!

 大会参加ができる!!!

 

 

「みんな聞いてくれ!」

 

 先ほど集合を掛け、みんなが部室に集まる。

 なんだなんだと少し声が挙がる。

 

「なんだなんだでやんすー!」

 

 若干矢部君がウザい。

 というよりうるさい。

 

「先ほど峰田が入ってくれて、部員が九人になった。ということは・・・」

 

 みんなが緊張しながら次の言葉が来るのを待っている。

 みんなわかってるだろうよ。

 行くぞ。俺たち野球部が・・・始動するときが来たんだ。

『公式戦に出場できるようになったぜ!!!』

 

 おおおおおおおおおおおお!!とそれぞれ声が挙がる。

 入学してから結構かかったが、うれしいぜ。これは。

 最低でも三人でずっと野球部で過ごすことも覚悟していたが・・・。

 これも俺以外のやつらのおかげだ。

「だが、これからだな」

「?」

 

 なんだ?どうした友沢。

 

「甲子園。行くんだろ?」

「ああ。忘れてたぜ」

 こいつはやっぱり頼りになるな。

 眼が違う。こいつに助けられることはこれからもあるだろう。

 すっかり忘れていたが、これで甲子園への第一歩だ。

 五月が終われば、すぐに夏の予選が始まる。

「まだ俺たちは一年だ。だが、一年だからといって甲子園に行っちゃいけないということは無い。行こう!甲子園!」

「「「「「おー!!!!」」」」」

 みんなの声が響く。

 たぶん、みんなもやるからには勝ちたいだろう。

 友沢、聖、猛田はもちろんのこと、他のやつらの眼の色も変わってきている。

 矢部君だってさっきまでの眼が変わってるし、気合い入ってるな。

「矢部君、霧丘、峰田、喜多村、真田、猛田、友沢、聖・・・ありがとな」

 

それぞれの名前を言って感謝をする。

 

「照れるでやんす」

「なんか照れるな」

「はっは、どうした」

「照れるなー」

「おう」

「なんだよ、改まって」

「ふん」

「なー!」

 

 それぞれの反応があるものの、みんなは感じてるだろう。

 これから始まるんだ。

 

 

 

『俺たちにとって、勝負の三年間が』

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