実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校   作:Reaflet

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第六話 6月2週~ “vs極亜久高校 夏の始まり”

――――――――――――場所は総合体育館にて。

 

ざわざわ。

この総合体育館で抽選会が行われ、対戦表が決まるのは例年と同様で夏の大会と秋の大会は同じことだ。

違うのは全チームの部員全員が参加するか、しないかの違いで夏の大会では部員全員が参加することになっている。

要するに有名選手や注目選手の顔がわかるようになってる。

中には全員がユニフォームのチームがあったり、制服のチームがあったりとそこのところはばらばらだ。

つか、邪魔なんだよ!誰だ俺の後ろに立っているのは!

振りかえるとそこにはかつてチームメイトだったやつの姿があった。

中性的な顔立ちで俺よりも若干背の小さいそいつは笑顔で手を振りながら俺に話しかけてきた。

 

「久しぶりだね、朱鷺」

「南じゃないか!久しぶりだな。その制服は恋々か?」

「うんそうだよ。聖タチバナも野球部休部してたらしいけど、人数揃ったんだ。六道さんや友沢さん、猛田さんまで揃えて」

「まあな、あいつらに感謝してるよ。そっちも俺たちと同じ九人か」

「うん。最初からいっぱい来てくれて、4月の2週目からはもうみんなで練習してたんだ」

「すげえな、俺らは4月いっぱいまでかかったわ。そっちは凄い選手とか居るのか?」

「あはは、あんまり。でも、すごい投手はいたよ。他にも三塁手も良いし、秋には間に合うっていう捕手もいるからね」

「結構いるじゃねえか。こっちは……ってみんな顔はわかるメンバーだけどな」

「あ……そうだね。……やっぱり投手やるの?」

「ん、まあな」

「……そうなんだ。でも僕個人として朱鷺の球を打ってみたかったからね」

「もしかしたらその機会があるかもな。この夏は……な」

「うん、当たったらよろしくね。じゃあ僕たちは行くよ」

「おう」

「南君!おそーい!」

「ごめんね、あおいちゃん!」

 

恋々の女の子に呼ばれたらしく、南は早歩きで戻っていく。

先ほど南を呼んだ制服を着た可愛らしい女の子の隣に、赤髪のツインテールとポニーテールを合わせた女の子が座っていた。あれどっかの変身する女の子の髪型に似てるぞ。

しかし、凄い投手か……打ってみたいし、投げ合いたいぜ!

 

「今のは誰でやんすか?」

「ああ、あいつは南紘人。あかつき中の三番打者でショートを守っていた。恋々高校の恐らくキャプテンだろうよ」

「特徴とかあるでやんすかね?」

「友沢とは違うオールランドプレイヤーだな。打撃では恐らく友沢より下だけど、足と守備に関しては恐らく上だな。さらには内野安打が多く、得点圏にも強い。四番か三番打つと思う。注意するのは打撃よりも―――――――守備範囲」

「守備範囲だと?」

「ああ。あいつが居るだけで三遊間と二遊間のヒットはかなり減る。あかつきではサードとセカンドもそこそこ動けてたほうだからマシだったけど、セカンドもサードも守備がうまかったら外野に抜ける打球なんでほとんどなくなると思っていい」

「ちっ、そいつは厄介なやつだな」

「これくらいだな。まあ、いざと戦うとなればもっと情報は言っとく」

「そろそろ行くぞ。席取らなければいけないからな」

 

友沢と俺が先頭になって席をつくために歩く。

聖名子先生も合わせて十人の席を取って座る。

みんな緊張してないなと思ったら、友沢以外は大抵緊張しているみたいだ。

矢部君はさっき女の子がいたからテンション上がってたけど、緊張しているのかトイレに行ってくるって言ってたし。

 

「ちっ」

「む……」

 

舌打ちをしたのは猛田で聖の表情も若干変わった。

あの二人が見ているのは・・・パワフル高校。今年のあかつきの対抗馬として帝王と同じく挙がっていて、打線は帝王にも匹敵するという評価だ。

なにも、一年生があかつきに比べたら劣るやつもいるが良い選手が多いらしい。

俺が調べた限りでは

リードオフマンの円谷、生木、パンチ力のある猿山、尾崎。

そして一年生ながら四番を張る、猛田と因縁深い相手でもあるらしい東條とうじょう 小次郎こじろう。

さらに聖が中学時代に組んでいた本格派右腕の鈴本 大輔。

クリーンアップが尾崎、東條、鈴本という強力な打線だ。

爆発力だけならはっきり言えば帝王を上回る。

レギュラーには六人も一年生が入っているパワフル高校。

 

「……」

「……」

 

東條と猛田がにらみ合う。

二人の間に何があるのか、俺らにはわからないが少なくとも仲が悪いということだけはわかる。

二人とは別に、目を合わせているやつが一人。鈴本だ。

こっちをみているというか、聖を見ているという解釈がいいか?聖は興味なさそうに違うところ見ているし。

一方的に見ている鈴本に眼を逸らす聖。この二人もなんかあるのか?

というか、鈴本側に何かありそうだけどな。

 

「なんかみんながこっちを見ているでやんす……」

「強いかは置いといて、一年生だけのチームってのに注目が集まってんだろ。恋々もそうだし、さらにはこっちに友沢とかのシニアで有名な選手がいたりするからそのせいもあるはずだ」

「冷静に判断できるよな、朱鷺。お、俺は今最高潮に緊張しているぜ」

「最高潮に緊張って何だよ、霧丘」

 

確かに緊張するのはわかるぜ。

なんせ一年生だけのチームだし、こんだけ他のチームに見られたりしていたら普通の人は緊張するだろう。俺はこういう場は結構慣れてるし、友沢も慣れてるだろう。

その時、ゆっくりとドアが開かれた。

遅れて登場してきた高校。

 

「あかつき……」

 

誰かがそう呟くとほとんどのチームの部員があかつきメンバーに目を向けた。

もちろん俺らも目を向ける。

先頭に今大会No.1投手の呼び声も高い一ノ瀬さん、その次に二宮さん。

それから部員がつづく。

そして最後尾に猪狩の姿が現れた。

 

「待ってろ、あかつき」

 

お前らを絶対倒しに行ってやる。

俺のつぶやきは誰も聞こえないように消えていった。

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

どうやらくじ引きの準備ができたらしく、ホールには対戦校の札が貼られるトーナメント表が置いてある。光が薄暗くなり、場内には高校野球では定番の『栄冠は君に輝く』が流れる。

静かな場内がブラスバンドらの音楽によって埋め尽くされる。

俺たち野球部だけじゃない。ましてや、あかつきでもパワフルでもない。

この地区の全部の高校球児がこれから始まるであろう夏に期待と不安を抱きながら勝ち進むんだ。

もう戦いは始まっている。

聖、矢部君、友沢、猛田だって、高校生活ではただの五分の一に過ぎない。

でもみんな、聖タチバナのメンバーは思っているだろう。

『楽しみ』というのと『出場できてよかった』という感情が。

 

「すごいな……」

「確かにな……」

 

そう俺と聖はつぶやいた。

いつの間にかその感動の瞬間が終わり、マイクでくじ引きが開始の合図をされる。

 

「俺らは九十八番目だから結構遅めだな」

「ああ、まあゆっくりしてようぜ」

「一回戦は弱いところが良いでやんすね。バス停前とか、そよ風高校とかが狙い目でやんす」

「何言ってんだよ。どっちにしろクジなんだから引けるわけないよ」

「理想を言っただけでやんす」

 

そう話していると、シード校が決まったみたいだ。

左端はパワフル、右端はあかつき、真ん中左が帝王、真ん中右が球八高校だ。

今年の球八はあんまり強くないって噂だが、右はあかつきがいる。

左はパワフル、帝王というあかつきの対抗馬がいる。

どっちにしても厳しいっていうわけだ。

 

『恋々高校……二十九番!』

「恋々高校って今大会初出場でやんすね。パンフレットには部員が九人って書いてあるでやんす。キャプテンは南紘人、エースナンバーが早川あおい・・・女でやんすか!?」

「早川っていうのか。南が凄いって言ってた投手か」

「さらには三塁手も女でやんす。小井田こいだ 真奈花まなかってかいてあるでやんす」

「マナカ……か」

「どうした猛田、知ってるのか?」

「まあ、な」

「中学出身か?」

「ああ……」

 

猛田が若干歯切れを悪そうにしている。東條や小井田とかに何かあるのか?

 

『極悪久高校……三十二番!』

「極悪は強いんでやんすかね……」

「えっと、番堂と半田、外藤が居て強力なクリーンアップだが他のメンバーはそうでもない。投手も鷹野以外は良くないからな。しっかりとランナー貯めなければ抑えられるし、鷹野にはプレッシャーを掛けていけば点取れるはずだ」

「なるほどでやんす」

 

鷹野もそこまでピンチに強いわけじゃあない奴だからな。

おっと、俺らの番くるか。

 

「じゃあ行ってくる」

「あいつクジ運悪そうだよな」

「わかるぜ。なんかこう、悪い感じかする」

「うるせえ!今から行こうとするやつに縁起でもないことを言うな!」

「はは、真田、猛田やめとけよ」

「軽いよ!もっと止めにこいよ!」

 

ったくこいつらは・・・人が今から運命を左右するクジを引きに行くんだぜ?

少しはな、頑張れとか言ってくれよ。

 

「朱鷺」

「友沢どうした?」

「……まあ、頑張れ」

「お前、悪いクジ引きそうだなって思ってるだろ?」

「何言ってんだ?お前」

 

友沢……お前だけだ。

お前の期待にもこたえなきゃいけないな――――――――

 

「当たり前だろ。思ってる」

「ちょっと聖と喜多村と先生以外表出ろ」

「な、何でオイラもなんでやんすかー!?」

 

矢部君が叫んでいるが、気にしない。

くそー!絶対良いクジ引いてやる!見てろよ、お前ら!

そういいながら俺はクジを引くホールにのぼる。

 

『恐怖高校……百七番!』

 

目の前の箱を見つめる。この中には沢山のボールが入っていて、それに番号が書かれている。

自分の右手が震えているのがわかる。これでほとんど自分達の夏の大会の未来が決まるから。

今年の出場校は恋々とタチバナが加わったのもあるし、区間分けも変わって多くなっている。

 

(俺の右手に懸ける……!)

 

心で呟きながら引いたボールを係員の人に見せる。

 

『聖タチバナ学園高校……三十一番!』

「……っ!」

 

引いた後はホールから降りて、みんなのところへ戻る。

階段を上っているとパワフル高校の近くから声がした。

 

『……楽しみにしてるよ。聖の選んだキミの力を』

 

――――――――誰だ。

その言葉の方向を見る。

一人だけ、目線が俺のほうを向いている奴が言ったんだ。

―――――――――――鈴本大輔。

見せてやるよ。俺の力を、聖が俺を選んだことを後悔させないためにも、な。

待ってろ、絶対勝ちあがって見せるぜ。極亜久に勝てば、次は恋々かその相手が勝ったほう。

そして、その次も勝って帝王が来る、準決勝がお前らだ。

決勝で――――――あかつき。

おもしれえ。

待ってろ……。この夏、聖タチバナ旋風を起こしてやる。

 

「相当気合い入ってるな」

「ああ」

 

友沢が若干笑う。こいつも楽しみみたいだな。

戦いに行くぞ。

 

俺たちにやるべきことをやる時が来たのだから。

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

地方球場で行われる第一試合目。

ちょうどいい風と日光が当たるこの場所で試合が始まる。

俺たちの初公式戦だ。

 

「みんな集合してくれ。今からオーダーを発表する」

 

みんなの顔を覗きながらオーダー発表する。

基本的には選手兼監督である俺がここまでするのはつらいが、今はそんなことを言ってられない。

今日が初戦だからな、泣きごと何で言ってらんないぜ。

 

一番センター   矢部。

二番ライト    真田。

三番キャッチャー 聖。

四番ショート   友沢。

五番ピッチャー  朱鷺。

六番レフト    猛田。

七番サード    喜多村。

八番ファースト  霧丘。

九番セカンド   峰田。

 

このオーダーだ。

相手は技巧派投手の鷹野さんだ。球腫はカットボール、サークルチェンジ、高速シュートと内外にしっかりと投げ込める制球を持っているし、変化球中心に組みたててくるからな。

しっかり見極めて叩いて行きたい。鷹野さんは比較的被本塁打が多く、球が軽いらしい。

友沢や俺辺りなら長打もありうるし、早めに点を取って行きたい。

 

「相手のオーダーも発表しておくからな。しっかり聞いといてくれよ」

 

一番セカンド   岩田。

二番ショート   大村。

三番ファースト  番堂。

四番レフト    半田。

五番キャッチャー 外藤。

六番ライト    持原。

七番センター   吉川。

八番サード    江本。

九番ピッチャー  鷹野。

 

何と言っても相手で注意するのはクリーンアップ。

特に番堂さん、半田さんだな。

番堂さんはチャンスメイクできるどころか、ただのヒットじゃなくて長打が多い。さらには得点圏打率も高くチャンスで回したら厄介な打者だ。キャプテンでもあるし、ムードメーカーでもあるからこの人が打つとチームに勢いがつく。足もあるから、自ら盗塁も狙うしな。

半田さんは打撃技術は番堂さんよりも低いが、力は圧倒的に上だ。パワーヒッターの中でもかなりの力を持っているから安易な高めの球は禁物だ。

番堂さんが打つと、半田さんも打ってくるようになるし鷹野さんのピッチングにも勢いが出る。

勢いに乗ったからこそ、昨年夏のベスト8という結果があったのだろう。

最悪番堂さんは敬遠も視野に入れていく。

はっきり言えば相手のほうが打線の強さは上だし、勝負どころははっきりしておいたほうが良い。

まずランナーを貯めちゃいけないというのを意識して行けば何とかなるはずだ。

よし、この辺でいいかな。

 

「よし先にノックだからな、行くぞ!」

「「「「「「おー!」」」」」

 

みんなに声を掛けて、俺たちのノックが始まる。

ノックをしていてもみんなの状態を確かめる。

うん、大丈夫だ。緊張はしすぎてるやつはいないっぽいな。

ノック終了が合図されて、ノックを終了してグラウンドに挨拶をする。

すぐに相手がノックを始める。

それを見ながらも、聖と会話する。

 

「最初から抑えに行くぞ。全開でな」

「うむ。了解した」

 

最初から飛ばして、チームに勢いを出す。

それが俺の仕事でもあるからな。

相手のノックも終わって、全員でホームベース前に整列する。

 

「今日はよろしくや」

はい。お願いします」

 

相手の主将の番堂さんから手を出されて、握手する。

まさに番長って雰囲気が出ている。この人がずっとチームをひっぱてきたに違いない。

主将同士の握手が終わり、再び列に戻ると審判が声を掛ける。

 

「それでは礼!」

「「「「「「「お願いします!」」」」」」」

 

俺たちは全員で挨拶をして、帽子を取って挨拶をする。

それぞれに後攻である俺たちが守備位置に着く。

 

「行こう」

「ん」

 

少し聖に声を掛けて俺は歩いてマウンドへ向かう。

マウンドのプレートに脚を掛ける。いつぶりだろうか、この感覚。試合前の投球練習。

公式戦での登板がとても懐かしく思えてきて、いつも以上に緊張してきて、でも安心している自分か居る。

 

「ふぅ……」

 

大きく息を吐き、審判から受け取ったボールを握って振りかぶる。

スパァン!とキャッチャーミットが良い音を鳴らす。

よし、調子は良いぜ!。

そしてボールバックされて、セットポジションから投げる。

俺が投げた球を聖が捕ってすぐにセカンドへ送球する。うん、ナイス送球。

そのままボールを受け取る。

 

『一番セカンド 岩田君』

 

ウグイス嬢が声を出すと、打席に岩田が立つ。

それに反応して相手応援団から応援の鳴り物が始まる。

 

『プレイボール!』

 

審判が声をあげる。俺は打者に視線を戻し、情報を確かめる。

確か岩田は二年生だが、そこまで足も速くない。ミートもそこまでじゃない。

粘り強いがそこまで注意する打者ではないが、

 

(チームに勢いを与えるためには……)

 

サインに頷いて大きく振りかぶる、視線をキャッチャーから離さずに腕を振る。

上手投げから放たれた球は全力のストレート。しっかりと指が掛かって、良い回転のストレートがキャッチャーミットに収まる。

 

「……っ」

「ストライク!」

 

初球から振ってきたが明らかにボールのノビについていけてない。

続けてもう一球ストレートを外角低めに選択し、腕を振って投げる。

その球は岩田は見逃すが、ストライクとなって2-0となる。

ボールを受け取って、すぐにテンポよくプレートに脚を入れる。

 

(低め 高速シンカー)

 

聖のサインにうなづいて、要求通りに低めにへ高速シンカーを投げ込む。

岩田はそのシンカーを空振りして、三振となった。

 

「ナイスボールだ」

 

聖から声を掛けられる。

気を抜かずに次の打者に眼を移す。

 

『二番ショート 大村君』

 

ウグイス嬢に呼ばれて大村は打席に入る。

あまり特徴がない打者で、バントがうまいから二番で起用されている打者。

しかし、今はランナーはいないからな。関係ない。

スライダーとストレートで簡単に2-0にした後、高めの釣り球につられて大村は三振となった。

二者連続三振だが、最も注意すべきバッターが打席に立つ。

 

『三番ファースト 番堂君』

「よろしくや」

 

そう審判に声を掛けて、バットを構える。

細かい仕草から見ても凄い打者だとわかるぜ、この人。

足場を均したり、軸足である右足をしっかりと自分の決めている場所において構える。

バットを極端に横へ寝かせる、神主打法が特徴だ。

 

(一度ボール球で カーブ 外角ギリギリから)

 

聖のサインにうなづいて、その場所に振りかぶって投げ込む。

ゆっくりとした軌道変化したカーブに番堂さんはフルスイングをする。

 

「な……!」

「ふっ!」

 

打った打球はファーストランナーコーチャーの横に鋭く飛びファールとなる。

これで1-0だが、なかなかあの打球を飛ばされるときついもんがある。

ボール球をあの打球にされるとな。

 

「ボール球やったなぁ~」

 

完全に見透かされていた。

そしてすぐに番堂さんはバットを構える。

まさにプロ顔負けの打撃の持ち主だ。プロが注目してるのも頷けるぜ。

 

「外野バックしておけ!行くぞ!」

「おう!」

「任せるでやんす!」

「オッケー!」

 

みんなに声を掛けて、打者に集中する。

どうする?もうカーブ投げたりしたら下手するとスタンドまで飛ばしてくるし、かといって他の球にも反応してきそうだからな。ここで打たれて勢いを与えるのも最悪だ。

 

(内角低め スライダー)

 

そのサインに頷いて投げる。

途中で軌道変化した球はミットの構えているところに入る。

それを番堂さんは見逃す。

 

「ボーッ!」

 

若干外れてボール球になる。

聖から返された球を受け取って、投げ始める。

サインはストレート。

思いっきり腕を振って投げたボールは、若干高めに浮いた。

番堂さんはその球を思いっきり引っ張って打つ。

ッカッキィン!と音が響いて、その打球はぐんぐん伸びていくが、幸いにもレフトの猛田が結構後ろめて守っていたのか打球に追いついてキャッチする。

スリーアウト、チェンジ。

ふぅ、なんとか抑えたぜ。これで相手もノっては来ないだろうから少し安心するがまだまだこれからだ。

 

「ナイスピー!」

「任せろ!点取っていくぞ、矢部君頼んだ!」

「おっけーでやんすよ!」

 

そう言って矢部君がヘルメットをかぶって打席に向かう。

『一番センター 矢部君』

 

バッターサークルに入る前に、投球練習が行われる。

相手投手の鷹野さんのMAXは130前半程度の球だが、変化球が豊富な上コントロールが抜群。

四球は昨年の夏から一つも無いし、2ボールになる投球もほとんどないと考えても良い。

だったら、作戦は『初球から打っていけ』だ。

矢部君がバッターボックスに入る。

矢部君は積極的に打っていこうとするはず。

鷹野さんが腕を振って投げるその球を矢部君がバットをフルスイングする。

ッカァン!と音を鳴らして打球はセンター前に転がっていく。

おっけー、さすが矢部君積極的にいった結果だ。

 

「せーのー、ナイバッチー」

「いや、喜多村それはやめとけ……色々とまずい」

「はは。真田!続けよ!」

「任せな!」

 

さて、次は真田だけど、ここは先制点が重要だな。

初回ってのは一番相手にプレッシャーを与えられる回だから、打っていきたいのは山々だがここはバントしてもらおう。真田はバントのサインに頷いて、打席に立つ。

鷹野さんが投げようとしたその初球、矢部君が動いた。

左投手だから盗塁は自重すべきだとか言っといて自分は行くのかよ!サインはしていないし、勝手な盗塁だ。

盗塁に気付いた鷹野さんはクイックモーションで投球する。

 

「ちょ、矢部!」

 

猛田が叫ぶが、矢部君は二塁へと加速していく。さすがというべきかトップスピードは速い。

投げた球はサークルチェンジで低めに外れボールになり、捕手の外藤がすぐにセカンドへ送球する。

鋭い送球がホームから出る!タイミングは微妙だが――――――――――――いける!

 

「セーフ!」

 

審判がコールをして、盗塁成功となる。

んまあ、ナイス盗塁と言うべきかなんというか……でもこれはこれで良い。

さて真田、送ってくれよ。

次の球を真田はファースト側へ送り、矢部君が三塁へと進塁する。

一死三塁、バッターは―――――――――

 

『三番キャッチャー 六道さん』

「……」

 

無言でバッターボックスに入り、バットを構える。

無言で無表情で打席に立つ。最初の大会のお前の打席だ、自由に打ってこい。

聖が相手投手の鷹野さんの出る球をじっと見る。

初球は外角低めに外れた。あの球はカットボールっぽいな。速度もキレも良い感じだし、ストレートと思って振ったら打ち取られるぜ。

次の球も聖は見逃す。内角へのシュートだが、コースぎりぎりに入ったみたいだ。

これで1-1。未だ聖はバットを振らない。

そして三球目のサークルチェンジ。低めに決まる鷹野さんが良く決め球に使う球を聖は打ちに行く。

力強さを感じられる綺麗な打撃フォームから出されたバットがゆっくりと落ちてくる変化球を捉える。

カァッキン!と音を響かせ、鋭い打球はショートの頭を超えて左中間へと転がっていく。

矢部君はしっかりと抜けたのを見て、ゆっくりとホームインして聖は打球の間に二塁を陥れた。

ナイバッチだ。一対〇。なおかつ一死二塁。

 

『四番ショート 友沢君』

 

さてと、ここで四番の登場か。友沢は左打席に入る。わざとか?まあいいけど。

友沢の野手での初公式戦の打席は何だと思う?みんなは。

もちろん俺はこいつが打ってくれると思うぜ。あれをな。

鷹野さんがセットポジションから投げた初球。

外角低めギリギリに決まる直球を友沢はフルスイングする。まさに風を切るようなスイングはボールを捉えた。

 

カァキィィン!!!

 

打った本人だけがわかるわけじゃなく、誰もがみんなその打球を目で追いかける。

打球はライトスタンドへ突き刺さるツーランホームラン。

ゆっくりとベースを回って友沢がホームを踏む。

 

「おいおい俺の打点減らしやがって、ナイスバッティンだ友沢。もちろん聖も」

「外角の球だったからな。流そうかと思ったら球が来なかった」

「ナイスバッティングだ。甘いボールではなかったぞ」

「まあ、お前は俺たちに続けよ」

「わってるよ」

 

あんなバッティング一年じゃねーよ。

んまあ、そんなこんなで俺も続いてやりますか。

 

『五番ピッチャー 朱鷺君』

「オナシャス」

 

審判に軽く挨拶して打席に入る。

鷹野さんの様子を確かめながらボックスの土を均す。

相当プレッシャー与えられたが、もっと与えてやらねーとな。何があるかわからないのが高校野球って言うしな。

バットを構えて、体を揺らしながら構える。

俺の打法は振り子打法っていうタイミングをどの球にも合わせやすい打法だ。その分難しいらしいけど、昔からこの構えがフィットするし難しいのかはわかんねえや。

鷹野さんがゆっくりと振りかぶって投げる。

コースは少々甘いが―――――打ちに行こうとしたときに球は変化した。

 

「……っ」

「ボーッ!」

 

カットボールか。

あぶないぜ、打ちに行くところだった。

しかし、良い変化球持ってるぜ。俺が言うのもなんだけどな。

 

(相手が俺のことをわかっているのならまだしも、友沢と並ぶくらいの打者ではないと判断したのなら厳しいコースの球は来ないだろう。かと言って甘い球は来るわけじゃない。変化球のシュート辺りが狙い目だ)

 

鷹野さんが振りかぶって投げる。

球は途中で軌道を変えて内角のボールコースからストライクへと変化する。

 

(残念だが、その球は貰った!)

 

ガァキィィン!!!と轟音を立てて、飛んでいった打球は友沢の打球とは対照的に鋭いライナーで飛んでいく。

 

「レフト!バック!」

 

外藤がレフトに呼び掛ける。

しかし、その打球は低いライナーのまま伸びていってレフトスタンドへと突き刺さった。

 

「よし!」

「ナイスバッティンでやんす!」

「いいじゃねえか!」

「さすがというべきだな。続くってのはそういうバッティングだとは思わなかったが」

「良いバッティングだぞ」

 

俺がガッツポーズしながら、右腕を空に掲げてベース間を回る。

ホームインしたときにキャッチャーの外藤がつぶやいた。

 

「お、お前まさかあかつき中の朱鷺、か?」

「そうじゃなきゃあ、あんなバッティングはしねーよ。その俺が知らない朱鷺ってやつのバッティングが知りたいわ」

「すげえ……」

「さてと、これで四対〇だぜ。投手に声かけてやんねーとこのまま崩れちまうぜ?」

「っ!?」

 

俺がベンチに戻っているときに、マウンドに駆け寄っている外藤と鷹野さんが話しているところに番堂さんが声を掛けていた。

 

「鷹野、肩の力を抜け!深呼吸や!お前の投球をすればいいんや!」

「ば、番堂さん」

「お前ならここから立て直せるやろ!?もっと思いっきり行け!」

「は、はい!」

 

さすが、というべきか。一瞬でプレッシャーを取り除いたな。

鷹野さんもさっきほどに緊張してないし、これは点取りに行きにくくなったぞ。

だが猛田。ここで流れは止めんなよ?

 

『六番レフト 猛田君』

 

猛田が打席に入って、大きく背中を反って構える。

某外国人を思い出させるようなフォームで相手を威圧する。

鷹野さんが放った初球。

内角ギリギリいっぱいの直球を猛田は見逃す。

 

「ストーライ!」

「良い球だ。あのコースは右バッターにとってはもっとも打ちにくいコースだからな」

「しっかりとコントロールされてるしな」

 

つづく二球目のサークルチェンジもストライク。

三球目のシュートを猛田はカットして、続く四球目のカットボールを打ちにいく。

内角ギリギリの球だが思い切って猛田はフルスイングする。

ガキッ!と鈍い音を響かせる。

その打球はサードの頭をふらふらと越して、ヒットとなる。

猛田が悔しそうな顔してるぜ、完全にやられたって顔だ。

 

「ヒットにはなった。しかし、良い球だ」

「次はもっと厳しいコースに放ってくるぜ」

 

続く喜多村は2-2からのシュートをセカンドライナーに倒れる。

 

『八番ファースト 霧丘君』

 

その初球。

カァン!とバットに当たる。

ファースト線上に抜けると思われた打球を番堂さんがダイビングキャッチで捕る。

 

「アウト!」

「ナイスです!番堂さん」

「いい。それよりも攻撃や、点取ってくで!」

 

審判がコールして、ファインプレーした番堂さんに相手選手が集まる。

これは流れを持ってかれたな。そこまで守備はうまくない情報なんだが、やっぱりこれがチームのキャプテンってのがあるな。

自分が流れを引き寄せる能力を持っているってのがわかっててプレーしたのか、それとも無意識に全力プレーしているのか。

恐らくどっちもだな。後者よりの考えを持っていながらもチームを支えているのがわかる。

 

「流れを持ってかれたな。友沢のホームランで完全に流れはこっちになったと思ったが」

「もっと注意して攻めてけ。ホームランで流れを完全に与えたりするなよ」

「なんかお前結構俺に対して厳しくね?」

「馬鹿が。そんなことはない……と思う」

「いや、そこは完全に自信もって言ってくれよ」

 

そういいながらショートのポジションに走っていく友沢。

よし、気合い入れていくぞ。

 

『四番レフト 半田君』

 

っと。ここで要注意人物のもう一人が来るか。

圧倒的パワーで昨年は三試合で三本のホームラン打ったんだっけ?

足は遅いけど、その分をパワーで補っているバッターだ。

 

(内角高めギリギリストライク 直球)

 

サインに頷き、振りかぶって投げる。

ストライクゾーンギリギリに決まる直球は半田さんのバットを空に切った。

ッバシンッ!と良い音がミットに響く。

 

「ストーライ!」

「ナイスボールだ」

 

相変わらず調子は良く、ミットに良い音が響いている。

聖からボールを受け取りサインに頷いて投げる。

球種はスライダー。外角のボールコースから軌道を替えて、ストライクコースへと入ってくる。

半田さんはそれを見逃し、2-0となる。

そして次に聖と俺が選択した球は―――――高速シンカー。

外角のストライクゾーンから変化するその球に半田さんはバットを出すが、空振り三振になる。

よっし!要注意打者は抑えたぜ。これで流れは完璧にこっちだ。

 

「ワンアウト!」

 

キャッチャーの聖が声を出して、みんなに指示を出す。

少ない球数で済んでいるから、サクサクと行こうぜ。

その後の外藤、持原をキャッチャーフライとセカンドゴロに打ち取る。

 

「ふぅ、よしもっと点取っていくぞ!」

「おう!」

 

みんなに声を出しながらベンチに戻っていく。

さて、二回裏はもっと相手にプレッシャーを掛けていきたいところだが。

峰田が三振、矢部君がセカンドゴロ、真田がファーストライナーに打ち取られる。

だが、こっちも下位打線をきっちり打ち取って終わる。

三回裏の打順は聖からのクリーンナップだ。

もう追加点がほしいところだからな。塁に出てほしい。

 

『三番キャッチャー 六道さん』

 

聖が打席に入って構える。

それにしても相変わらず落ち着いているし、肩の力も入って無くて綺麗なフォームで構えている。

次の友沢もバッターボックスに入っていてしっかりと準備しているし、これは行けるな。

1-1からの三球目の低めの直球をセンター前に運ぶ。

無死一塁。バッターは友沢。

 

「友沢、初球から行ってやれ!」

「任せろ」

 

次は右打席に入る友沢は鷹野さんの投じた初球のシュートを捉えた。

カァキィィン!!!と音が響くその打球はファーストへの鋭いライナーだった。

それを番堂さんはダイビングキャッチをしてそのままベースを踏む。

敵ながらあっぱれというべきか、流れを持っていくようなファインプレーだ。

 

「番堂さん、ナイスです!」

「おう、この回も抑えて反撃や!」

 

番堂さんが鷹野さんに声を掛ける。

その言葉で気合いが入ったのか、ロージンバックを手にとって打席に入る俺を見つめる。

 

『五番ピッチャー 朱鷺君』

 

(だが、この回は点取りに行きたいからな。タダでは終わらないぜ。さっき、打ったのはシュートだから次は違う変化球かもしくは直球のはずだ)

 

鷹野さんが振りかぶって投げる。

内角低めに決まるサークルチェンジだ。それを見逃して1-0となる。

さすがだなこの制球力は点を取られても健在と言ったところか。やっぱりチームの中心がしっかりしているチームは崩しにくいってのがわかるぜ。

番堂さんがいなけりゃあ、すでにコールドに近い点数を取れてると思うんだけど。

 

(次の球は恐らく内角には投げてこない。今までの他の打者の配球からして恐らく外角にサークルチェンジか?)

 

それを予想して俺は踏み込んで打ちにいく。

しかし、その予想は外れて内角のシュートが来てそれを空振りする。

 

(さっき打たれた同じ球を同じコースに投げてきやがったっ。恐らく、次変化球は無いと読む!直球を狙っていく!)

 

2-0からの三球目の内角に決まる直球を俺はフルスイングする。

快音を響かせた打球は三遊間へのライナー。サードが飛び込んでグラブで弾いた打球をショートが飛び込んでキャッチする。またもやファインプレーだ。一つのプレーで流れが変わるのが野球だ。

やっぱりおもしろいぜ。そして俺はこいつとバッテリーが組めたことに感謝する。

 

「修也、しっかり守っていくぞ」

「おっけー、しっかりリード頼むぞ」

 

俺と聖の互いのグローブをポンッ、と合わせてマウンドとホームベースへとそれぞれ向かう。

高校野球ってのは何があるかは分からないしな。

まあ、だけど俺らは一人じゃない。苦しみを分かち合える仲間がいる。

一歩ずつでもいい、上を目指していく。

マウンドに立って振りかぶって投げる。

まだ試合は始まったばっかりだけど、この試合は絶対に勝てる。

そう確信した一球を俺は投げた。

球場にはッズバンッ!とミットに入る球の音が響いた。

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

 

「ゲームセット!七対一で聖タチバナ学園高校の勝利!」

 

それぞれのチームが挨拶する。

相手チームの選手はほとんどが涙を流し、ベンチへ戻っていく。

結局あの後は六回表に番堂さんにタイムリーを浴びたが、その裏に猛田のタイムリーツーベースに喜多村のタイムリーで追加点をあげて終わってみれば七対一となった。

俺たちは来てくれた人達へ挨拶をしてベンチを後にする。

 

ベンチを後にしてトイレに行っているときに相手のチームのキャプテンである番堂さんに会った。

 

「よう、ええ球投げるやないか」

「ありがとうございます」

「これでワシの高校野球が終わってもうたわ。だけど、ええ試合だったわ。お前らのチームはみんなが自分のすべきことをしておったわ。こっちはそれができんかった」

「でも俺は番堂さんに打たれてしまったのでまだまだですよ。みんなもまだまだです」

「ええ選手がおるやないか。お前にキャッチャーのおなご、ショートの金髪野郎にレフトの小僧。こいつらみんないつか野球界を脅かす選手になりそうや」

「はは、そうですか」

 

番堂さんはトイレの出口付近に行って、最後に呟いた。

 

「頑張れよ。応援しとるからな」

「うっす」

 

なんて人だよ。

普通は勝ったチームの選手とあんなに会話するか?知り合いでもあるまいし。

けど、凄かった。手の堅さがわかるようなごつごつしていたように見えた。

 

「俺も恥をかかないで頑張んねーとな」

 

引っ張り方は違うし、性格も違うけど。それでもみんなをまとめ上げていければと思う。

次も勝ちたい。勝ち進んでやる。

 

 

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

「朱鷺君トイレ終わったでやんすか」

「うん、ごめん待たせて」

「それよりも対戦表見るでやんす」

 

本部に書いてある対戦表を見る。えっと俺らと違う場所で試合が行われているんだっけ?

そうか次は恋々かその試合に勝ったほうだっけ。

トーナメント表を見る。恋々高校が相手を六対二で下して勝った。

スコア表は初回に二点取られて、五回に三点取って、七回に三点か。

南……お前の実力はさすがといってもいいぐらいだぜ。

 

「次は恋々か」

「そうだ。あの南っていうやつがいるらしいじゃないか」

「要注意な選手の一人だ。よし、対策でも立てておくか」

 

そう言って友沢が若干笑う。楽しみなんだな、その笑いは。

俺もだ。かつての戦友と戦えるのが結構楽しみなんだ。

お前が言っていた良い投手の早川あおいはどのくらいいいのか。

お前がまとめあげた恋々高校と俺がまとめあげた聖タチバナ学園高校。

どっちが上なのか、現時点はどっちが強いのか……勝負だ。

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

私たちは解散してそれぞれ帰路に向かう。私と修也は一緒に帰るために歩く。

時刻は三時半を回り、ちょうど夕暮れにならない時間帯だった。

 

「修也、ナイスピッチングだった」

「でも、結局打たれたりしたからまだまだだ。もっと制球力や球のキレ、スピードもいっぱいやらなきゃいけないことある」

「初めてのバッテリーとしての試合で私は楽しかったぞ」

「そうだな。俺もお前と組めて良かった」

 

その言葉は私の中である人物と重なった。

今でも忘れない、中学三年間の間共に切磋琢磨して成長してきたパートナーとの姿と。

鈴本大輔と言えば六道聖という名前が挙がり、六道聖と言えば鈴本大輔という名前が挙がる。

いつも練習して、いつもその姿を見ていた彼の姿と今目の前にいる朱鷺修也という人物の姿が

 

『俺もお前と組めて良かった、聖』

 

重なった。私の中で何かを感じた。

何かはわからない。ただわかるのは鈴本と修也はどこかしら似ているというところなのかもしれない。

それでも信じられない、小さいころ一緒に居た修也と中学三年間一緒にいた鈴本の姿が重なったなんて。

 

「……っ」

「おーい、聖どうした?もしかしてトイレ?」

「な、何を言っている!な、なんでもないぞ」

 

私は顔をあげなかった。なぜなら顔を見られたくなかったからだ。

ありえないはずなんだ。鈴本は鈴本、修也は修也なはずなのに。

どうして私は似ているなんて感じてしまったのだろうか。

 

「次の試合も勝とうな、聖」

『次の試合も勝とうな、聖』

「っ……」

 

修也に抱いていた感情はなんだったのだろうか。

好きなのかと疑っていた感情は、もしかしたら鈴本への感情だったのか。

 

 

―――――私は修也と別れた後も、そのことをずっと考えていた。

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