魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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初小説?です。雫がヒロインでほそぼそと書けたらいいなと思っています。


入学前夜

入学式の前夜、主人の部屋に呼ばれた木闇(こぐれ)十夜(とうや)はいつものように挨拶をした。

「失礼します、お呼びでしょうか、旦那様」

「お前も相変わらずだな、私はお前も自分の子供のように思っているといつも言ってるだろうに」

 すこし残念そうに少年に声を返したのは北山潮。この屋敷の主人であり敏腕の実業家である。

「ありがたいお言葉ですが、使用人と雇用主との関係ははっきりさせる必要がありますので」

 答える真夜は身長175cmほど、顔はまだ少し幼さを残しているが凛々しく整っており、屋敷の制服を身につけ、背筋を伸ばして立つ姿は一人前の執事に見える。

「そんな事を言ってもお前は居候させているだけで別に雇用関係があるわけではないんだが・・・それに本当は君が忠誠を誓い依存しているのは雫にだろう?」

「そ それは・・・・その・・・」

 先ほどまでの態度とうって変わって年相応の顔を見せる少年を見て笑いながら潮は続ける。

「これも前から何回も言っているが、十夜、お前になら娘を任せても良いと私は思っているよ。もっとも課題は山積みにするがの」

「わ 私の事は置いておいて本来のご用件は何でしょう!?」

 このままではまずいと少し強引に話を変えようとする十夜。

「むう、まぁ時間も時間じゃし本題に入ろうかのう」

まだいじり足りないのか物足りなそうな顔をしながら潮は言った。

「話と言うのは明日からの雫の高校生活の事だ。お前には言うまでもない事だが雫は可愛い!そして私の娘だ。高校ともなれば悪い虫も寄って来よう、誘拐を試みる輩も増えることだろう。私は心配で心配で・・・」

 そんな輩は今までも吐いて捨てるほど居たが自分と貴方がありとあらゆる手段で排除してきたじゃないかと言いたい十夜だったがここでは口に出さないことにした。

「つまり雫様お嬢様の警護のLvをあげるという事でしょうか?」

 うなずきながら潮は告げる

「うむ。十夜、お前にかけていた制限を解除する」

「よろしいのですか?自分のプロテクトは一度解いてしまえばもう封じる事はできませんが」

「かまわんよ、それにお前が雫を裏切るなんてありえないだろう?」

「もちろんです」

 十夜は即答する。それは聞かれるまでも無いこと。木闇十夜は、木闇一族はそうできていると言っていい。

 

 

「ああ それとな」

 退室しようと扉から出た十夜に潮が声をかける。

「外では今まで通りに雫と幼馴染のように接しなさい。ボディーガードを付けてるなど周囲に思われないようにな。まかせたぞ」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 自室に戻った十夜は部屋の電気もつけずに鍵をかけ内ポケットから携帯端末形態の汎用型CADを出しよどみなく操作する。すぐに魔法は発動した。

 十夜が通常時に得意としているのは収束系魔法、今起動しているのは領域内に向かう光を反射させ暗闇の空間を作る魔法漆黒空間(ブラックアウトカーテン)

 十夜の周りが一瞬で暗闇に飲み込まれる。光のまったく届かない完全な漆黒、その闇の中で十夜は呪符を取り出し精霊の喚起を始めた。

自分にもっとも親しい者たち、闇の精霊、影の精霊。領域内に親しい精霊たちが満ちていくのを感じながら暗闇の中で眼を凝らす。十夜にとって闇の中で精霊を見ることなどできて当たり前のことなのだ。程なくして目当ての精霊は現れた。

 

「話すのは久しぶりだね、北山家に来て以来だから8年ぶりぐらいかな」

 精霊はしゃべらない。しかし十夜は精霊の思念を感じ会話を続ける。

「うん。お願いがあって来てもらったんだ」

「もう君に命じた人は居ないけど・・・・」

「そう。もういいんだ、僕も昔と違って強くなったから」

 精霊は嬉しそうに十夜の周りを飛び回る

「いままでありがとう。すぐ自分で君を呼び出せるようになって見せるよ。」

 

『またね』

 

 十夜が喚起魔法を止め、漆黒空間(ブラックアウトカーテン)の発動を解除すると同時に部屋の扉が控えめにノックされた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 扉を開けるとそこに立っていたのは雫だった。

「雫お嬢様!このような時間にどうなされましたか?」

「雫」

「しかし・・・「雫」・・・はぁ、それで雫どうしたのさ?」

「ん、魔法の発動を感じた」

 相変わらず感覚が鋭い!と思いながら

「少し練習していただけだよ」

 魔法を使っていたことは誤魔化せないにしても、本当にしていた事を教えるわけにもいかない。十夜は曖昧に答えた。

「うそ」

雫の答えは即答だった

「うそじゃないよ、精霊の喚起をしていたんだ」

 これは嘘じゃない。肝心な部分はぼかしているけれど。

「十夜が部屋の鍵を掛けるときは必ずなにか隠している」

「うっ」

 さらに雫は続けた。

「それにさっきから私の方を見ていない。なにか後ろめたい証拠」

 たしかにさっきから見てないけどさ・・・・

「あの、雫?今の君の格好は夜中に男の部屋に来たらまずい格好だって理解しているかい?」

「ん?」

 そうなのだ、雫の今の格好は寝間着姿。お嬢様らしく高級素材のファッション性重視のネグリジェ。夜中に男の部屋に来たら誘っていると取られてもおかしくない。

「私の魅力にくらくら?」

「せめてガウンくらい羽織って!」

「もってきてない」

「あーもう!」

 十夜はCADを取り出し一瞬で魔法を発動する。

 影が集まりガウンの様に雫を覆った。収束系魔法に振動系魔法を併用した漆黒衣装(ブラックコート)お手軽に保温までできる優れものである。

「4月といってもまだ夜は冷えるんだ。入学式を風邪で欠席なんて嫌だろ?」

「ありがと」

 雫は照れくさそうにお礼を言い続けた。

「ちょっと眠れなかったから十夜とお話したかったんだ」

「もう遅いから少しだけだよ?」

 雫の頼みを断ることなどできない十夜が雫を部屋に入れるのが日常なら、結局そのまま十夜のベットで雫が寝てしまうのもいつもの日常であった。


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