魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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入学式の日の朝~の話になります。

二話目になって宣言するのもあれですが「魔法科高校のエレメンツ」は雫とオリ主人公をひたすらいちゃいちゃさせる話となる予定です。
特定のカップリングが好きな方。繰り返しの展開があまり好きでない方にはつらい部分もあるかと思います。
またオリ主人公は作者の設定では雫と同程度の魔法力。美月と同じ程度の目。達也に少し劣るくらいの魔法知識と魔工技術。精霊魔法に関しては覚醒した幹比古くらい。体術は鋼くらいのだいぶチートキャラです。
いろいろと都合のいい主人公ではありますが、生暖かい目で見守って頂けると嬉しいです。


入学式Ⅰ

 窓から薄くさし込む光を感じ十夜は目を覚ます。

「朝か・・・ん~っ」

 十夜はくるまっていた毛布を取り大きく伸びをする。ベットの上では雫がまだ穏やかな寝息をたてていた。

もちろん十夜は一緒にベットで寝ていたわけではなくソファーの上である。

「まったく、気持ちよさそうに寝ちゃってさ」

軽く呟きながら雫の顔を覗き込む十夜の顔は嬉しそうに緩んでいる。雫が自分に見せてくれる信頼は十夜にとって何にも変えがたい物なのだ。

 時刻はまだ5時を少し過ぎたところ、普通の高校生が起きるには少し早い時間だ。雫が寝ているのを確認し十夜は手早く身支度を整えた。

「さて、ちゃちゃっと準備しますかね」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「おはようございます、黒沢さん」

 食堂の奥の調理場には既に朝食の準備をしている女性が立っていた。

「おはよう、十夜君。昨夜はお楽しみでしたね?」

「なっ!?」

 いきなりの問題発言を繰り出したのは北山家でハウスキーパーをしている黒沢女史だ。顔を真っ赤にして言葉が出ない十夜を前にさらに発言を続ける。

「まったく、入学式前夜と言うのにお嬢様を部屋に連れ込んで朝までとは・・・」

 ショックから覚めた十夜があわてて否定する。

「黒沢さん!誤解です!貴女も本当はわかっているのでしょう!」

 十夜の否定などお構い無しに黒沢さんは悲しそうに

「あぁ・・旦那様になんと説明すれば・・・よよよよよ」

 ここまで来ると十夜も落ち着いてきた。

「あの、黒沢さん?」

「なんでしょう?十夜君」

 途端にいつも通りの冷静さに戻り返事をする黒沢さん。

「はぁ・・もういいですよ。朝食の準備を手伝います。」

 疲れたように言う十夜に

「十夜君は優秀ですけどまだまだ甘いですね。こっちも鍛えないとお嬢様は任せられませんよ?」

「善処します・・・」

 北山家に来た幼い時から自分を知っているこの人は、いまだに十夜の顔が上がらない人の一人なのだ。

 

 

 ホーム・オートメーション・ロボット(HAR/ハル)が普及している現在でも北山家の食卓はほぼ黒沢さんの手による物だ。

さまざまな資格を持ち何事もそつなくこなす黒沢さんを十夜はこっそりと目標の一人としている。もっとも本人には絶対に言うつもりはないけれど。

「十夜君って本当にオムレツ上手ですよね」

 いつもの様に食べる人の嗜好に合わせて十夜が作ったオムレツを見ながら黒沢さんが話す。

「これだけですけどね」

 素っ気なく返す十夜だが顔色には少し喜色が混じっている。しかし続く言葉に

「お嬢様が朝のオムレツだけは十夜君が作った物を希望するのも分かるわね。これが愛ってやつなのかしら?」

「お嬢様を起こしてきます!」

 黒沢さんの目に嗜虐心を感じ慌てて十夜はその場を離れるのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 コン コン

自分の部屋にノックをするのも変な話だが部屋に戻った十夜は扉をノックする。もちろん返事は無い、相変わらず自分のお姫様は朝に弱いようだ。

「おはようございます、お嬢様」

 部屋に入りベットの隣まで行き耳元で声をかける。

「・・・・」

「お嬢様、今日から新学期でございます。ほのか様とお約束があったと思いますが?」

「・・・・・」

「お嬢様、誠に失礼ながら狸寝入りはよろしくないと存じます」

「・・・・・・・雫」

「・・・・・・・・」

「雫」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「わかったよ・・」

 結局先に根負けするのは常に十夜である

「ほら、起きてよ雫。オムレツ覚めちゃうよ」

 ガバッ!

「それを早く言って」

 そのまま食堂に行きそうな勢いの雫を慌てて十夜は止める

「雫!服!部屋に戻って着替えて!」

 もちろん着ているのは昨夜のままの寝間着だった。軽く首をかしげ雫が言う。

「私の魅力にくらくら?」

 目を逸らしながら十夜は疲れたように呟いた。

「いや、それもういいから・・・」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 もぐもぐ

もぐもぐ もぐもぐ

北山家では特別な用事が無い限り全員が同じ食卓を囲む。仕事の関係で潮夫妻は既に居ないが雫、弟の航、黒沢、十夜の四人がテーブルに着いている。

「おいしい」

 雫が満足そうに呟き

「十夜にーちゃんのオムレツ美味しいよね!」

 航が無邪気に言う。

「お粗末さまです」

 既に食べ終えていた十夜はHARの入れたコーヒーを飲みながら答えた。

「お嬢様の希望なら毎日お弁当も作りますよって十夜君が言ってましたよ」

 黒沢さんの発言に

「本当?」

 雫が問い返し

「ええ、もちろん」

 しれっと黒沢さんが返す。

「黒沢さん!」

 たまらず十夜が声を出すが

「お嬢様のお弁当を作りたくないのですか?」

 逆に聞き返され

「いえ、そういうわけでは・・」

「作りたくないのですか?」

 チラッ 意味ありげな視線を雫に送る黒沢さんに応え?

「作ってくれないの?」

 少し悲しそうな表情で問いかける雫

「作りたいです・・」

 二人に見つめられた十夜にできる返事は一つしかなかった。

 

 雫も食べ終わりしばらくは新しい第一高校の制服の話で盛り上がっていたのだが(ここでも十夜は黒沢さんに遊ばれていた)

「お嬢様、十夜君、そろそろお時間では?」

「ん」

 黒沢さんの言葉に雫は軽くうなずき

「そうですね」

 壁際の時計の時間と待ち合わせの時間を比べ十夜は席を立つ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 二人とも部屋に戻り準備した後ロビーに出る。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「「いってきます」」

 黒沢さんに見送られ駅に向かう二人、駅までは5分ほどの道のり。中学校の頃から通い慣れた道を並んで歩く。

「だん・・小父さんが残念がってたよ、入学式に出れないなんてって」

 十夜がその時の顔を思い出したかの様に笑いながら言うと

「親ばか」

 そっけなく返す雫。表情をあまり変化させない雫だが十夜には照れている事がバレバレだ。

「うちの親父なんて最初から期待出来ないからなぁ」

「忙しくて全国飛び回ってるのだから仕方ない。それに週1で会える」

「会ってるのは雫でしょ。仕事で顔だしてるだけじゃないか」

 ぼやく十夜に

「いつも十夜の事気にしてるよ?それに毎回課題を置いていく」

「それはそうだけど・・」

 十夜の父親は『木闇樹』(こぐれたつき)現在この国で五指に入ると言われている有名魔工師だ。木闇家の一人娘と熱愛の末に婿養子としてきた樹。8年前に妻を亡くしてからは仕事と研究にのめり込む様になり今の名声を得るようになった。

「まぁ親父のおかげで僕もCADを弄れる様になったし、いろんな高等魔法の起動式を教えて貰えるんだから放任ってわけじゃないんだろうけど」

「もう少ししたら十夜に私のCADのメンテナンスを任せるって言ってた」

「あの親父・・自分が楽したいだけじゃないのか?」

「そんなことない。それに・・」

「ん?」

「私も十夜がCADをメンテナンスしてくれたら嬉しい」

「っ!」

 十夜を見つめながら話す雫に十夜は何も言えなくなるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「あ、いたいた、おはよ、雫、十夜君」

 第一高校最寄の駅で待ち合わせをしたほのかを待っていた雫と十夜

「おはよう、ほのか」

「おはよう、ほのかちゃん」

 駅の人混みの中で挨拶を交わす。家の中では「ほのか様」と口にしていたが屋敷をでれば小中学校時代の同級生である。それにほのかと十夜はある意味では特別な存在とお互いが思っている。

今現在、自分たちが知る限りで唯一の同じ世代の「エレメンツ」話す言葉も自然と親しくなる。

「制服、似合ってるよほのかちゃん」

「ありがと、十夜君もかっこいいよ」

 じー 

二人で会話している横から視線を感じ

「雫も似合ってるよ」

 十夜はもう何回も繰り返した台詞を口に出す。

「そう」

 相変わらずの口調だが付き合いの長い二人には嬉しそうな感情が伝わってくる。

「相変わらず雫と十夜君は仲がいいよね」

 少し羨ましそうにほのかが言うと

「ほのかでも十夜はあげない」

 雫が真剣な表情でほのかに告げる

「そんなつもりじゃないって、二人の関係が少し羨ましかっただけ」

 ほのかは実際に少し寂しそうに答える。

その悩みは普通の女子高生と同じ物、ただ十夜にはもっと奥深い物に聞えていた。

 

「そんな事言ってほのかだって入学試験の時に気になる人居たんでしょ?」

「そうなの?ほのかちゃん」

 沈みそうな空気を変えようとしたしずくの問いかけに十夜ものる

「そんな!その人が好きとかじゃなくて・・」

「その人の魔法が美しかった?」

「うん。とても綺麗だった、規模とか速度とかじゃなくて巧みに組み上げられた一切の無駄の無い起動式。計算されつくした精緻な魔法。私もあんな魔法が使いたいと思ったの」

「ほのかがそこまで言うのだからその人はきっと合格してるよ」

「一科生だろうし同じクラスになるかもね」

 雫の台詞に十夜が続ける。

「うん。知り合いになれたらいいなぁ」

 明るい声に戻った友人に安堵し

「ほら、そろそろ行かないと入学式が始まっちゃうよ」

 十夜の言葉を合図に三人は第一高校へ続く一本道を歩き始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「なんとか三人並んで座れたね」

「うん、間に合ってよかったね」

「ぎりぎり」

 駅で少し話し込んでいた三人が会場に着いたのは、もう入学式が始まる直前だった。会場の後ろの方はならすぐ座れたのだが、新入生の分布には規則性があった。前半分は一科生、後ろ半分は二科生。十夜にしてみれば正直どうでも良かったのだが雫とほのかも居る。わざわざ目立つ必要も無いかと、三人は急ぎ足で会場内を移動したのだった。

 ほどなくして式は始まった。学園関係者の挨拶を聞き流しながら十夜は登壇者、そして会場に視線を巡らしていた。十夜の目は普通ではない。一般的には「霊子放射光過敏症」と呼ばれているが、十夜のそれは次元が違う。木闇家では『神霊眼』(しんれいがん)と呼んでいる、神霊すら見ることのできる目。昨夜まではまだプロテクトがかかっていたので、普通の(それでも重度の)霊子放射光過敏症と言えたが、今はその目は神霊眼としての力を全て発揮している。通常であれば精神の均衡を崩してもおかしくない。しかし十夜は物心ついた時から霊子感受性のコントロールをする訓練をずっと続けてきた。それに8年前の未熟な子供の頃と違い、今は十夜の中には常に雫の存在がある。今の十夜は普通の魔法師が見ている何十倍もの想子光と、通常では見分けることなどできないさまざまな色の霊子光の中でも心を乱されず、オーラの表情から会場に危険な人物が居ないかを確認していたのだ。

「綺麗な人」

「才色兼備ってこういう人の事をいうのかな」

 会場に視線を向けていた十夜は二人の声に壇上に目を向ける。

「っ!?」

 危なく声を上げそうになった十夜

「十夜君、そんな驚かなくたって」

「十夜?」

 二人の言葉にも反応できずに壇上を見つめる十夜。壇上では新入生総代が答辞を述べていた。




なるべく早いうちに続きを投稿できたらと思います。

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