魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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入学式当日はこれで終わりになります。



入学式Ⅲ

 視線に気づいたのか、男子がこちらに意識を向けて来たのを感じ十夜は目を逸らす。

 

『気づかれたな。好奇の視線には慣れてそうだし気にしないでくれると良いのだけれど・・・あの子、眼鏡をかけているという事は、完全に眼をコントロールしている訳ではないみたいだな。どこまで視えているかは気になるが・・』

 

 十夜が考え事をしている間もほのかの呟きは続いていた。

「あの人の魔法は美しかった、他の誰よりも」

「二科生になっている以上、実技試験で劣っていたって事」

 雫が淡々と一般的な回答をする。

「でも!」

 感情的になっているほのかに雫は続けた。

「実技試験における魔法力の評価は、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度で決まる。あの人の魔法は基準を満たしていたの?」

「たしかに速度も規模も威力も良かったとは言えない。けどあれだけ魔法を巧く使える人が二科生だなんて!」

「同じクラスになれなかったのは残念だけどさ、一科生、二科生ってほのかちゃんにとってそんなに重要?」

 納得できていないほのかに十夜は言う。

「え?」

「別に一科生と二科生が仲良くしちゃいけない訳じゃないんだし、そんなに気にすることなのかなって」

「あ・・・」

「そっか・・・そうだよね」

 少し落ち着いたのか、自分に言い聞かせているほのかを見て、一安心した十夜だったが、

「ほのかはクラスメートになって、キャッキャッウフフしたかった?」

「雫!」

 雫の言葉ですぐに逆戻りしてしまった。

「ほのかちゃん落ちついて」

「だって!」

「凄い言い辛いんだけどさ」

「?」

「注目浴びてるよ・・・・」

「!?」

 慌てて周囲を見回すほのか、目が合った人は気まずそうに目を逸らし、上手く視線を逸らした者は何事も無いかのように、それなりに客の入っていた店内の興味は明らかにこのテーブルに向けられている。

「うう・・恥ずかしいよう」

「ほのかが自爆しただけ」

 まだ続けている2人、司波さんのグループからも意識が向けられているのが分かり、十夜にはかなり居心地が悪い。

「そろそろいい時間だし出ようか?」

「そ、そうだね!」

 十夜が言うと、まだ顔を真っ赤にしていたほのかは慌てたように頷いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 駅でほのかと別れ二人乗りのキャビネットに乗り込んだ十夜と雫

「教室で何を考えていたの?」

 キャビネットが動き始めてすぐに雫が聞いてくる。

「ん、司波さんの事なんだけどね」

「浮気?」

「あのね・・・いまさら言わなくてもいい事なんだけどさ」

「うん」

「僕は雫の物だよ。たとえ何が起きても、雫が僕の事を嫌いになったとしても、僕の全ては雫の物だ」

 それは十夜の誓い。十夜の在り方。

「バカ」

 雫はそう呟くと十夜の肩に頭を預けて目を閉じた

「司波さんの家はたぶん特殊な家系だ」

 肩に心地よい重さを感じながら十夜は続ける。

「数字付きでそれを秘匿しているのかもしれないけど」

「第一校の新入生総代が一般人なわけが無い」

 雫の冷静なツッコミに苦笑しながら

「それはそうだけど・・もしかしたら僕やほのかちゃんと同じエレメンツの家系かもしれない」

「司波・・・水?」

「僕の知っている水のエレメンツの家系は、水無月(みなづき)水郷(すいごう)水波(みずなみ)、他の水のエレメンツの家系はもう残っていないはずだ。可能性としては水波家の傍流かな」

「気になるならお父さんに調べてもらおうか?」

「いや、いいよ。数字付きにしろエレメンツにしろ秘匿している情報を覗くのはリスクを伴う。北山家に僕の事情でリスクを負わせる訳にはいかない」

「そう」

「それに雫とほのかちゃんが仲良くなればそのうち本人に聞けるしね」

「私は彼女の実力が気になる」

「彼女は現時点で学年トップなのは確実だけど」

「新入生総代、でも負けたままではいない」

「うん、がんばれ」

「がんばる」

 

『雫が同年代にこんなに対抗心を抱くのはほのかちゃん以来だな。良いライバルになればいいのだけど』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「失礼します」

 昨夜に続き、夕食の後に潮の部屋に呼ばれた十夜。

「それでどうだった?」

「今日視た限りでは問題はありません、道中も不審な気配はありませんでした」

 十夜はなにがとは聞き返さない

「クラスメートはどうだ?」

「数名と自己紹介を交わしました。今日は全員が揃ったわけではないので、確実にとは言えませんがクラスメートにも危険人物は居ないと思われます」

「そうか、私からは以上だ。明日からも任せたぞ」

「かしこまりました」

 退室する十夜、部屋に戻るとなぜか雫が待っていた

 

 

「で、なんで僕の部屋に雫が居るの?」

「十夜は私の物、十夜の物も私の物、十夜の部屋も私の部屋」

 

 この時一世紀前のアニメのキャラが十夜の脳裏を過ぎったかは定かではない。

 

「この部屋は北山家の部屋だし間違ってはいない気もするけどさ」

「ほのかも居るよ」

 テレビ電話が繋がっているようだ。

 

『僕も混ぜる為にこの部屋から掛けたのか』

 

「こんばんは十夜君」

「こんばんは、なにの話をしていたの?」

「えと・・」

「?」

 黙ってしまったほのか。

「今日の事」

 雫が短く答える。

「カフェの話かな」

「うん、ほのかが明日どんな顔で司波さんに会えばいいのかって」

「別に司波さんと何かあった訳じゃないし普通に会えばいいんじゃ?」

「あんなに注目浴びてたんだよ!?絶対変な子って思われたよ!」

「あはは、気にしすぎだって。それにクラス同じかだって分からないんだ」

「むー」

 まだ何か言いたそうなほのかを見て十夜は話題を変える事にした。

「それよりさ、あの4人どんな関係なんだろうね?」

「一科生と二科生3人、普通に考えたら以前からの関係者」

 雫が一番可能性の高い答えを言う。

「それが一番確立高いね。1人くらいは知り合ったばかりの友人かもしれないけど」

「司波さんがほのかのライバル」

「え?」

 雫の言葉に良くわかってないほのか

「男子1人に女子3人。あの人はもてもて」

 大変だねといった表情で言う雫

「だからそんなんじゃないって!」

「そうは見えない」

 雫が冷静に突っ込みと、ほのかの慌てた否定。2人いつもののやり取りを聞きながら

 

『あの2人は血縁として、残りの2人。神霊眼の子は実際に確認しておきたいな。もう1人は・・聞いたほうが早いか』

 

「2人ともちょっと席を外すよ」

 じゃれ合いを続けている雫とほのかに声を掛け、十夜は部屋の外に出た

 

 

 プルルルル  ガチャ

「もしもし」

「ご無沙汰してます、修次師匠」

 十夜の通信相手は数年前から指導を受けている剣術の師匠。千葉修次だった

「君からの通話なんて珍しいな十夜君」

「少し修次師匠に確認させて頂きたい事がありまして」

「本当に珍しいね、いってごらん?」

「はい、千葉家に高校一年になる親戚はいらっしゃいますか?今日、第一高校で師範代と近しいオーラを視たのですが」

「相変わらず君の眼は面白いね」

 修次は感心したように続けた

「たしかに第一高校に僕の妹が入学した、そういえば君は妹と会った事が無かったね」

「僕は千葉の道場に通ってるわけではないですから、妹さんが居たことも初耳です」

千葉家(うち)もいろいろあってね。だが身内贔屓ではないが、あの子は剣術と言う意味では君より強いよ」

「僕と千葉家の者を比べるのが間違いですよ・・・僕は平和主義なんです」

「そうかい?実戦なら良い勝負になると思うが」

「評価してもらえるのは嬉しいですけどね」

「なかなか難しい妹だが仲良くしてやってくれると嬉しい」

「機会があれば」

 その後、少し世間話をして通話を切った十夜。

 

『妹さん、なんで二科生なんだろうな?』

 

 

 部屋に戻るとほのかとの通話は切れていた。雫の意識も切れていた。

「雫?」

「・・・・」

「2日連続か・・・」

 諦めた様に慣れた手つきで雫をベットに運ぶ

「おやすみ」

 起こさないように布団を掛け、十夜はソファーの上で毛布に潜り込んだ




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