魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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出会い

「なんかいつも私だけ仲間はずれみたい」

 少し浮ついた空気の朝の教室、雫と十夜の席の傍で3人は談笑していた。

「仕方ないよ、席順が五十音順なんだから」

 ぼやくほのかに十夜はいつもの様に答える。

「隣じゃなかった、残念」

 北山と木闇、同じ「か行」な所為か入学したての席は基本近い。今回、十夜の席は雫の一つ斜め後ろだった。

「どうせ実習とかは別なんだから気にしてもしょうがないだろ?それより選択科目どうしよう」

 十夜の問いに

「んと必修が基礎魔法学と魔法工学で、魔法幾何学、魔法薬学、魔法構造学から二科目、魔法史学、魔法系統学から一科目」

 携帯端末を操作しながらほのかが言うと、

「私は魔法幾何学と魔法構造学、あと魔法系統学にする予定」

 雫はもうすでに決めていたようで、すぐに自分の選択する予定の教科を答えた。

「僕も同じだ、魔法史学も少し興味があるけど、魔法系統学との選択なら魔法系統学だね」

 十夜が続ける。

「魔法幾何学と魔法薬学で悩んでたけど、2人が魔法幾何学なら私も魔法幾何学にしよ」

 少し悩んでいたほのかだったが、やはり同じ科目が良かったようだ。

「じゃあ登録済ませちゃおうか?」

 十夜が言うのと同時に教室に入って来た1人の生徒によって教室の空気が変わった

 

「おはようございます」

 たった一言の挨拶、それだけで教室中の視線、意識が全て入口に集まる。

本人はその視線を気にする事もなく、軽く携帯端末を確認すると真っ直ぐに十夜達の方へ進んできた。

 

『五十音順で席が近いとは予想はしてたけど・・・』

 

「ど、どうしよう」

 昨日の事を思い出したのか、ほのかが慌てたように2人に話しかける。

「どうしようって言われてもね・・・普通に挨拶すればいいんじゃないの?」

「ほのかは気にしすぎ」

 雫が答えた時には、司波さんはもうすぐ横まで来ていた。席はどうやら十夜の隣らしい。

「はじめまして、私は司波深雪と申します。お隣ですのでこれからよろしくお願いしますね」

 自分の席を確認すると隣にいた十夜達に声を掛けてきた。

「はじめまして、僕は小闇十夜、こちらこそよろしくね」

「み 光井ほのかです!よろしくおねひゃい!?」

 慌てたのだろう、舌を噛んだようで涙目になっているほのか

「北山雫です、よろしくお願いします」

 雫は何もなかったかのように挨拶を返す。ほのかを少し心配そうに見ていた深雪だったが、

「小闇君に光井さん、北山さんですね」

「僕の事は十夜でいいよ」

「私も雫でいい」

 まだ痛みが治まらないのか、ほのかは涙目のままだがうんうんと頷いている。

「わかりました、では私の事も深雪でかまいません。十夜君、ほのか、雫、改めてよろしくお願いしますね。」

「「「よろしく」ね」お願いします」

 挨拶を交わした後、深雪は3人の顔を見ながら何か言おうとしていたが、4人が挨拶を終えるのを待っていたかのようにクラスメートが集まってきた。

そして自分の席の近くだというのにどんどん押しのけられる3人。クラスメートの目的は司波さんとお近づきになる事らしい。

集団に囲まれながら、表情を崩さずに対応を続ける新入生総代。

「なんか追い出された事に文句を言う気も起きないね・・・」

 十夜が呆れたように呟く。

「人気がありすぎるっていうのも大変だよね」

「私だったら耐えれない」

 2人も同じ気分のようだ、集団を外から眺めている3人。深雪がたまにこちらに申し訳なさそうな視線を送って来ていたが、結局予鈴が鳴るまで司波さんが解放される事は無かった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「どうしてこうなった・・・・」

 放課後の校門内、十夜は頭を抱えたい気分になっていた。

目の前では二科生と言い合いをしている森崎ら一科生のクラスメート数名

「いい加減に諦めたらどうなんですか? 深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」

 

『まさか森崎達がここまで絡んでくるとは思わなかったな』

 

 始まりは昼食時の食堂だった。

朝の挨拶と席が近い事もあり、司波さんと名前で呼び合うようになった3人。4人は連れ立って食堂に来ていた。その後ろにはクラスメートが列を作っている。教室を出ようとした十夜に昨日、自己紹介を交わした森崎が声を掛けて来たのだ。

「十夜、僕らもご一緒していいかな?」

 後ろには数名、昨日顔をみたメンバーが揃っている。

 

『僕というよりは深雪さん目当てなんだろうな』

 

 朝、新入生総代を囲む集団に混ざっていたクラスメートを見ながら、十夜は一緒に食堂に行こうとしていた3人に確認の視線を送る。3人とも表面上は拒否はしていないが、十夜の眼にはありありと迷惑そうなオーラが映っていた。

 

『はぁ・・・やっぱりめんどくさい事になりそうだ』

 

「あぁ、相席できるかは混み具合次第だけど一緒に食堂へ行こうか」

 こんなところで波風は立てたくない十夜。森崎にそう答えると

「私たちもいいですか」

「じゃあ僕たちも」

 次々と声がかかる。結局、十夜達を先頭に、A組ほぼ全員が同時に食堂に来る事になったのである。

 

『こんな大人数で座れないしなぁ・・・』

 

 食堂を見回した十夜、あるグループで視線を止める

 

『あれは・・・』

 

 十夜が視線を止める前にすでに気づいていたようだ。

「お兄様」

 嬉しそうな表情でその机に向かう深雪。

「お兄様?」

 ほのかがその言葉を疑問形で呟く。

 

『やっぱり兄妹か・・』

 

 自分の予想通りの関係に今更十夜は驚きはしない。雫に視線を送ると雫も同じように十夜を見ていた。頷き合うと、3人は深雪の後を追いそのグループに近づいて行った。

そのテーブルは4人掛け、詰めれば女子ならば3人は掛けれる程度の長机だった。

着いているのは男子が2人と女子が2人、みな二科生で男子生徒の1人と嬉しそうな深雪が話をしている。興味はあったがどうせ座れないし、邪魔するのも悪いと深雪に声を掛けた。

「深雪さん、じゃあ僕らは別の席を探すよ。雫、ほのかちゃん行こう」

 男子生徒にちらちらと視線を向け、何か言いたそうにしていたほのかだったが

「邪魔しちゃ悪いもんね」

 さすがに今の深雪をみたら何も言えないようだ。

「あっちの席が空いてる」

 雫はすでに席を探していたようで、ちょうど食べ終わったグループが居たのか綺麗に空いたテーブルを指さす。

「3人ともすみません。また後ほど」

 少しの申し訳なさとそれに勝る喜色、

 

『深雪さんも感情がわかりやすいな』

 

 などと考えながらその場を離れた十夜だったが、後ろに付いてきたクラスメートは違ったようだ。十夜達と違いどうしても彼女と相席をしたかったらしい。

最初は狭いとか邪魔しちゃ悪いとかそれなりに柔らかい表現だったが、深雪の執着が意外と強い事が分かると、相応しくないだのけじめだの、果ては食べ終わっていた男子に席を空けろと言い出す者まで出る始末。

 

『まずいな・・・』

 

 テーブルに着いていた生徒の内2人のオーラが激しく動いているのが十夜には視えている。

 

『深雪さんには悪いけどこっちの席に来てもらうか』

 

 2人と目配せし声を掛けに行こうとした十夜だったが、席を立つより早く深雪の兄がもう1人の男子に声を掛け席を立つ。そのまま食堂を出ていく2人、深雪は席に残った女子生徒に目で謝罪すると軽く席を見回す。

3人と目が合うと少し安心したように近づいてきた。

「ごめんなさい、やっぱり相席させて頂けますか?」

「いらっしゃい」

「大変ですね」

「人気者は辛い」

 3人はそれぞれの言葉で深雪を迎える。後ろからまだ付いて来ていたA組の集団だったが、

さすがに近くの席で我慢する事にしたようだ。それぞれ空いている席に散らばっていった。

 

 

 

 次は午後の専門課程見学中の出来事。

深雪を含めた十夜達4人は、遠隔魔法用実習室で3年A組の実技を見学していた。

3年A組は生徒会長、七草真由美の所属するクラスだ。七草真由美、十師族の一角である七草の長女。彼女は、遠隔精密魔法の分野で十年に一人の英才と呼ばれる有名人だった。また昨日は入学式で本人を新入生全員が実際に見ている。その容姿ですでに新入生のファンを獲得しているらしい。実習室の前は新入生でごった返していた。

「痛い!」

「見えねーぞ!ちょっとずれろよ!」

「なんで最前列に二科生が居るんだよ!」

「おい、押すな」

 十夜は別に前に出なくても視えているし、わざわざ集団に入ろうとも思っていない。

今は3人の連れが押されたりしないようにガードしていた。

「最前列にいるの深雪のお兄さんじゃない?」

 雫が3人に声を掛ける。

「あはは、目立ってるね」

「4人以外周りが全部一科生だしね・・・」

「お兄様・・・」

 十夜にしてみれば早い者勝ちだと思うのだが、周りの一科生にしてみれば思うところがあるようだった。

 

 

 そして放課後、今現在進行中である。

教室から一緒に歩いて校門まできた十夜、雫、ほのか、深雪の4人。さらに付いてきていたA組のクラスメート達。ここまでは良かったのだが深雪が校門で待ち合わせしていた相手が二科生だった所からおかしな事になった。あきらかに一科生が難癖をつけた、主に森崎のグループが・・・

 

「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんかしてないじゃないですか!一緒に帰りたいなら、ついてくればいいんです。何の権利があって2人の仲を引き裂こうとするんですか!」

 

『なんか凄いこと言っているな・・・あっちはあっちであんなだし』

 

 司波兄妹の方を見れば深雪がなぜか慌てて兄に何かを話している

 

『森崎は頭に血が上りすぎだな・・・あれではボディーガードが勤まらないと思うんだが・・」

 

 十夜の中で森崎の評価が落ちていく

「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しをするな!」

 

『おいおい・・この公衆の面前で禁止用語を言うのはどうなんだ?』

 

「同じ新入生じゃないですか!あなた達ブルームが、今の時点で一体どれだけ優れていると言うんですかっ?」

 

『正論だがまずいな・・・今あんな事を言ったら・・・』

 

 十夜の嫌な予想は的中する。

「・・・・どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ!」

「ハッ、おもしれえ!是非とも教えてもらおうじゃねえか!」

 森崎の威嚇的な声に、二科生の男子が挑戦的な声を返す。

「だったら教えてやる!」

「特化型!?」

 森崎家といえばクイックドロウ、CADを抜き出す手際、照準を定めるスピード、口先だけでなくその腕前は明らかに魔法師同士の戦闘に慣れている者の動きだった。

「やろう!」

 照準を合わせられた男子が動き出す。

「十夜!」

 雫の声を聞いた瞬間には十夜は動いていた。

 

『あんまり目立ちたくないんだけど雫のお願いだしな』

 

「なっ」

 森崎が驚愕し

「っと」

 男子生徒は踏みとどまり

「わぉ」

 女子生徒が珍しい物を見たような表情で十夜を見る。

そこには森崎の腕を右手で押さえ、二科生の二人の前に左手を伸ばしている十夜が居た。

「すまない、クラスメートが悪いことをした」

 左手を下ろし十夜が頭を下げる

「いや・・」

「そんな・・・ねぇ?」

 いきなり出てきた男子に謝られ2人もどうしていいかわからないようだ、なんとも言えない空気が流れる。

「一科生の癖に・・・・ふざけるな!」

 十夜が森崎を止めた事が気に食わなかったのだろう、森崎のグループの男子が魔法の起動式を展開し始めた。起動式の展開は十夜に視えていた、そして少し先で既に魔法が発動している事も、展開中の起動式はサイオンの弾丸に打ち抜かれ砕けて散っていった。なにが起きているか気づいていない森崎が自分を止めた十夜に食って掛かる。

「十夜!?なんのつもりだ!」

「なんのつもりだって?森崎、本気で言っているのか?」

 十夜はあきれたように告げる

「お前は入学2日目だというのに魔法の不正使用で退学になりたいのか?自衛以外の魔法による対人攻撃は校則以前に犯罪行為だぞ」

「うっ・・それは・・」

 十夜の言葉に青い顔をする森崎、

「全員動かないように」

 男子生徒の起動式をサイオン弾で打ち抜き、近づいてきたのは生徒会長、七草真由美。そしてもう1人、入学式の生徒会紹介によれば、風紀委員長、渡辺摩利。

「君達は1-Aと1-Eの生徒だな、事情を聞かせてもらう。ついてきなさ・・・ん?」

 

『こうなる・・・よなぁ・・』

 

「お久しぶりです、先輩」

「十夜か、お前なんで入学早々に問題を起こしているんだ?」

「色々と事情がありまして・・・」

 十夜は助けを求めて騒動の始まりである新入生総代に視線を送る。視線が合うと横に居た兄と一緒に深雪はこちらに近づいてきた。

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 司波兄が摩利に話しかけた

「悪ふざけ?」

 その言葉に、摩利が軽く眉を顰める

「はい、森崎家のクイックドロウと言えば有名ですから、後学のために見せてもらおうと思ったのですが、あまりに真に迫っていたので、クラスメートの方に勘違いさせてしまいました」

「では後ろの男子生徒は?攻撃性の魔法を発動させようとしていたのではないか?」

「あれはただの閃光魔法です、威力も低いものです。クラスメートを止めようとしたのでしょう」

「ほう、どうやら君は起動式を読み取れるようだな、正直信じがたい話だ」

 摩利の疑問はもっともな話、十夜も同じ気持ちだ

「実技は苦手ですが、分析は得意です」

 その言葉に、面白い物を見たような表情で摩利は返す

「・・・誤魔化すのも得意なようだ」

 会話が止まったところで深雪が前に出る

「本当に、ちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした。」

 深々と頭を下げる深雪。

「摩利、もういいんじゃない。達也君、本当にただの見学だったのよね?」

 いたずらっぽい視線で司波兄に問いかける生徒会長を見ながら

 

『達也君・・・ね、司波兄もいろいろと大変そうだな』

 

 矢面から抜け出し雫たちと合流した十夜はもう後は人事のように考えていた。

「・・・今回は不問としますが、以後このようなことの無いように」

 どうやらなんとか無事に済んだようだ、摩利も司波兄の名前を聞き、生徒会長と歩き出す。

 

『なんとかなったかな・・・』

 

 ほっとした十夜だったが、

「あぁ、十夜、明日の放課後に生徒会室に来い」

 後ろ向きのままの摩利に声をかけられそれが間違いだった事を思い知らされた。




原作とは少し変わっています。
既に深雪と3人が友人関係になっている事と十夜君の事情により、
魔法使用は名前も知らない男子に丸投げさせて頂きました。
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