魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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9巻買いました。雫が留学したとき十夜をどうするか悩んでます。
ついて行かせるのも難しいよなぁ・・・そこまでいってから考えるか。

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出会いⅡ

「・・・十夜、さっきは済まなかった・・・」

 2人の上級生が立ち去った後、森崎が声をかけてきた。

「僕はいいけど深雪さん達には謝っておけよ?」

「魔法を使った事は悪かったが、僕の気持ちは変わらない!」

 そう言うと森崎は深雪たちのグループに近づいていった。

 

「・・・借りだなんて思わないからな」

 

『いきなりそれかよ・・・・』

 

「僕はお前を認めないぞ、司馬達也。司波さんは、僕達と一緒にいるべきなんだ」

 結局、森崎は言いたい事を言うと、仲間を連れて立ち去った。

「なにあれ、感じ悪っ」

 明るい髪の色をした女子生徒が後ろ姿を見ながら言う。

「重ね重ねクラスメートが申し訳ない・・・」

 十夜が頭を下げると

「あ、ごめん・・・君に言っても仕方ないよね」

 少し申し訳なさそうにする女子生徒、少し気まずい空気が流れたのだが、

「私は千葉エリカ、君は深雪のクラスメートだよね?」

 気持ちを切り替えたように、明るい口調で十夜に話しかけてきた。

「うん、僕は木闇十夜。深雪さんとは席が隣なんだ」

 その言葉にエリカは意地悪い笑みを浮かべ振り返る

「聞きましたか?お兄様、入学2日目にして大事な妹を名前で呼ぶ男がでてきてますよ?」

「ちょっと!?」

「エリカ!」

 十夜と深雪が同時に声をあげる。

「ほう、兄としては看過できない問題だな」

 達也がそうなのか?といった表情で深雪を見る。

「違いますお兄様!十夜君は本当に席が隣りなだけで・・・」

 達也の胸に飛び込むような勢いで深雪が弁明するが、

「あらあら、既に名前を呼び合う関係だなんて・・・」

 エリカの口は止まらない。

「えっと千葉さん?」

 名前を呼ばれ振り返りながら言うエリカ

「あ、私の事はエリカでいいよ、私も十夜君って呼ばせてもらうから」

 

『これだけ呼び方で人をからかっておいて自分も名前で呼ばせるんだ・・・』

 

「わかったよエリカ、ただ弄るのもそれくらいにしておいてくれると嬉しい・・・主に僕が」

 十夜が本心からといった感じで言う、その腕を雫が抱きかかえている。

「ん?」

 頭の上に疑問符を浮かべるエリカ、十夜の腕を抱えエリカをじっと見つめてくる雫

「えーと?」

「北山雫です」

「あ、千葉エリカです」

「千葉さん、深雪のお兄さんも、十夜と深雪が深い関係になる事はありません」

 いきなりの発言、

「あの、北山さん?」

 さすがにこの展開にはエリカもついていけてないようだ。

「十夜は私のものだから」

 短い言葉だがその威力は強烈だった。

「な なんていうか凄いわね」

「そんな・・自分のものなんて・・・」

「・・・」

          (わ 私もお兄様のものです)

「深雪?」

「な なんでもありません!」

 何も言えないといった感じのエリカ、顔を真っ赤にしている眼鏡の女子生徒、お腹いっぱいといった表情のほのかと男子生徒、

何かを口走っている深雪、十夜は少し顔を赤くしながらも

「まぁそういう訳なんで深雪さんのお兄さんも安心してください」

 雫の言葉を否定しない

「なんていうか深雪と達也君も凄いと思ったけど、十夜君と北山さんも負けてないね」

 二組のカップル?にあてられたのかエリカは疲れたように呟いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「・・・ねぇ、十夜君に聞きたいことがあるんだけど」

 お互いに自己紹介を終え、折角なのでと駅まで一緒に帰る事になった8人、エリカが十夜に話しかけてきた。

「ん?」

「十夜君のさっきの動きが気になってね、なにか武術やってるよね?」

 面白そうな玩具を見つけたように瞳を向けてくるエリカ。

「個人的に少し教わっているだけだけどね」

「少し・・ね、さっきの動きはそんなLvじゃなかったと思うけど」

「そういうエリカだって、僕が止めなくても森崎を止めてただろう?さすがは千葉家だね」

「その千葉家より先に動いてる時点でって、私あの千葉家だなんて言ってなかった気がするんだけど?」

 エリカがそう思うのも当然だった、

「昨日ちょっと修次師匠と電話で話をしてね、妹さんが第一高校(ここ)に通う事になったのは知っていたんだ。こんなに早く知り合いになるとは思わなかったけど」

「修次兄貴に!?」

「ちょっと縁があってね、数年前から時間がある時に稽古してもらってるんだ」

「あの兄貴が個人的に稽古・・・?」

 なにか考え出すエリカ、隣では達也を中心に質問が集まっているようだ。

「・・・じゃあ、深雪さんのCADの調整は達也さんがしているんですか?」

 ほのかはちゃっかり気になっている達也の横をキープしたようだ、達也の反対側は当然のように深雪である。

「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」

 驚いたようなほのかの質問に、深雪が当然と言ったように答える。

「少しアレンジしているだけなんだけどね。深雪は処理能力が高いから、CADのメンテナンスに手が掛からない」

「それだって、デバイスのOSを理解できるだけの知識が無いと出来ませんよね」

「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな。大したもんだ」

 周りの美月とレオもその事に称賛を贈る。

「それだけスキルがあるって事は、達也は魔工師になるのかい?」

 十夜は気になり質問をした、

 

『優秀な深雪さんが任せるという事は相当な腕前なんだろう。機会があったら見てみたいな』

 

「ああ、実技の方はこの通りだからね。魔工師を目指している」

 胸元を指さし少し自嘲気味に答える達也。隣では深雪が不満げな表情をしているが、

「僕も魔工師志望だ、よろしくお願いするよ」

 十夜が言うと、雫とほのかを除く全員が驚いたような顔をして十夜を見てきた。

「十夜君、魔工師志望だったんですか?」

 深雪が意外そうに聞き返す。

千葉家(うち)の兄貴の稽古を受けて魔工師?」

 エリカは少し不満そうな表情、

「父親が魔工師でね、僕が魔工師ってそんなに意外かな?」

「いえ、十夜君がと言うより、実技が優秀な方は実践魔法師になる事が多いので」

 深雪が言うと、同じ気持ちだったのかレオや美月もうなずいている。

「木闇・・・・十夜、もしかしてお父上の名前は小闇樹さんか?」

 達也の問いに十夜がうなずくと、

「うわ、超有名魔工師じゃん」

「もう顧客数が限界で新規では契約できないとか」

「「千葉家(うち)でも開発の方で協力して貰ってる」

 さすがに魔法師の卵、みな有名魔工師の名前を聞いた事があるようだった。

「父親がそうだってだけで、僕が凄いわけじゃないんだけどね」

 十夜にしてみれば本心だったが

「腕前は樹小父さんのお墨付き」

 先ほどの深雪に影響されたのか、それまで黙っていた雫が、我が事の様に得意げに言う。

「日本で5本の指に入ると言われる人のお墨付きとはね」

 達也も驚いている様だ。

「僕より実際に深雪さんのCADの調整をしている達也のほうが凄いさ」

 十夜は苦笑しながら答えた。

「達也さんも十夜さんも凄いんですね、うちの生徒ってみんなそうなのかな?」

 美月が2人に尊敬の眼差しを向けながら言う。

「魔法科高校の生徒が、普通の高校生と同じわけが無い」

「そりゃそうだ」

 雫にレオが続けると、話題の中心は先ほど見た会長や風紀委員長に移っていった。

 

『美月さんの眼も凄いんだけどね』

 

 会話を聞きながら、控えめの美月の態度を見て十夜は心の中で呟いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「で、なんで僕は正座させられているのかな・・・?」

 夜、日課のトレーニングを終え自室に戻ってきた十夜は、なぜか自分の部屋に居た雫に言われるまま部屋の真ん中で正座をしていた。

「明日の放課後」

 雫が短く口にする。

「あー ごめん・・・でもあれは先輩がいきなり・・・」

「約束」

 十夜と雫は明日の放課後、2人で部活見学の予定だった。部活勧誘の期間は明後日からだが、雫は既に部活を決めていた為、実際にその部の活動内容を観に行く事にしていたのだ。

「う・・・」

 

ジー

 

「埋め合わせは必ずするから・・・」

「なんでも?」

「できることなら」

「じゃあ私のCADのメンテナンスはこれから十夜にお願いする」

「え?」

 驚いている十夜をよそに、雫は部屋に備え付けのテレビ電話を手早く操作する。

「雫?そういう事はそんな簡単に決めていいものじゃ・・」

 

プルルルル ガチャ

 

「こんばんは、樹小父さん」

「おぉ、雫お嬢ちゃん・・・・・それに馬鹿息子か、こんな夜中にどうしたんだい?」

 電話に出たのは十夜をそのまま渋くしたような40代の男性、十夜の父親、木闇樹だった。

「次から十夜にCADを見てもらいたい」

「雫!本気なの!?」

「おい、馬鹿息子、久しぶりに見た父親は無視か」

「うるさい馬鹿親父」

「父親に向かってそんな口を利くように育てた覚えは無いぞ?」

「僕も親父に育てられた記憶はないよ」

「2人は仲良し」

「「どこが!!」」

「ほら、息がぴったり」

 顔を背けるところまでそっくりな2人だった。

 

「ふむ」

 雫と十夜を見ながらなにやら考えていた樹だったが、真剣な顔になると、

「雫お嬢ちゃん、十夜は親の贔屓目を抜きにして優秀だと思っている。君の望みならば潮さんも止めはしないだろう、だが私は潮さんに依頼され自身の全ての技術をかけて君のCADを調整しているんだ。間違いなく最高の調整をしていると誓える。それでも十夜の方がいいのかい?」

「うん、私は十夜がいい」

 雫の返事には迷いが無い。

「了解、潮さんには私から言っておこう」

「ありがとう」

「そんな顔で頼まれたらおじさんには断れない。ただし暫くは私も調整には立ち会わせてもらうよ?」

「うん」

 雫を実の娘を見るように優しい目でみる樹、黙っていた十夜のほうを向くと、

「十夜」

「・・・」

「私もできる限りの協力はしよう、だが雫お嬢ちゃんに応えなきゃいけないのはお前だ、精進しなさい」

「わかった」

 十夜は短く答える。

「さて、私は潮さんに雫お嬢ちゃんと息子の関係の進展を報告しなきゃいけないから切らせてもらうよ」

「なっ」

「十夜、同じ部屋で寝るのはかまわないがちゃんと責任取れよ?」

「!?」

 最後に笑いながら問題発言を残していく父親。

「あんのくそ親父・・・・」

 顔を真っ赤にして呟く十夜、雫が言うのは良くても他者にからかわれるのは耐えれないらしい、後ろを向くと既にベッドに潜り込もうとしている雫。

「雫?なに当たり前のように僕のベッドに入ってるの」

「親公認」

「・・・・・」

「もういいけどね・・・雫、CAD、深雪さんと達也に対抗してるのかい?」

「・・意識してないと言えば嘘になる」

「そっか」

「深雪はライバル」

 ここまでほのか以外に抱かなかった思いを口にする雫、

「そうだね、達也に負けないよう僕も頑張るよ」

「うん」

 雫は頷くと目を閉じた、ベッドに入ったからか既に眠気が来ているようだ。

もう一緒のベッドで寝てやろうかと一瞬考えた十夜だったが、自分が眠れないだろうと考え直すとソファーで寝る準備を始めるのだった。

「おやすみ」

 十夜が準備を終えるとベッドの上では雫の規則正しい寝息が聞えていた。




9巻の裏表紙の雫が可愛すぎて辛い今日この頃

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