魔法科高校のエレメンツ   作:大川瞬

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少し遅くなりました


次回も遅くなります


指名

「じゃあ呼び出しの理由を十夜君は聞いていないのですか?」

 

 隣を歩く深雪が不思議そうに聞いてくる、放課後の廊下、十夜と司波兄妹は並んで歩いていた。

 

「うん、今日の放課後に生徒会室に来いとだけしか聞いていないよ」

 

 三人は生徒会室に向かっていた、

 

「そういえば十夜、渡辺風紀委員長とは知り合いだったようだが?」

 

 思い出したように達也が言う、

 

「ちょっと師匠絡みでね、あの人も千葉門下だ」

 

「なるほど・・・なら呼ばれた理由も予想できているのだろう?」

 

「迷惑この上ないけどね」

 

 疲れた顔を浮かべる十夜と、ご愁傷様といった表情の達也

 

「お兄様?」

 

 深雪にはまだ思い当たらないようだ。不思議そうに達也と十夜を交互に見ている。

 

「ああ、どうやら渡辺風紀委員長は十夜を風紀委員にしようとしてるのだろう」

 

「十夜君もですか?」

 

「も?」

 

 深雪の発言の一部に疑問を感じ、深雪と達也を交互に見る十夜、

 

「俺も渡辺風紀委員長から風紀委員に推薦されてね・・・なぜか生徒会長も反対しなかった」

 

 先ほどの十夜と同じように疲れた表情を浮かべてみせる達也、

 

「お兄様!そんな覇気の無い事でどうしますか!

          本来であれば私ではなくお兄様が生徒会にだ「深雪」っ」

 

 短く名前を呼んだだけだが、深雪はシュンとした表情で口を閉じる。

 

(達也のオーラが一気に激しくなったな・・・それに深雪さんの口ぶりじゃあ達也のほうが実力は上なのか?わざと二科生になるメリットなんて無いはずだけど・・・)

 

「実技試験の結果は結果だ、深雪の気持ちは嬉しいが俺が二科生なのは変わらない」

 

「お兄様・・・」

 

 思考から戻った十夜の前では、達也の胸に顔を預け恍惚とした表情をする深雪とやさしく髪を撫でる達也の姿。

 

「あーうん・・・先に行ってようか?」

 

「いや、もう平気だ」

 

「!?」

 

 何も問題ないという態度の達也、後ろでは顔を真っ赤にした深雪が俯いている。

 

「りょーかい、僕はもうお腹いっぱいだからこれ以上は勘弁してくれよ?」

 

 十夜は苦笑しながら答える。

 

「ところでさ、深雪さんは新入生総代だし生徒会に選ばれると思っていたけど、達也が風紀委員に推薦されるとはね、それに七草生徒会長から名前で呼ばれていなかったか?」

 

「推薦理由は俺の解析力らしい、会長の方は・・正直なんで名前で呼ばれたかはわからない、会ったのも入学式の日が初めてだ」

 

(昨日の騒動の所為か、たしかにあの分析能力はおかしい。発動中の起動式を見て読み取れるなんてありえない、だが実際に読み取れるなら風紀委員にうってつけだな・・・)

 

「達也・・・こんな場所で聞くことではないが一つだけ質問をさせてくれ」

 

「答えられる事なら答えるよ」

 

 やや警戒色の強いオーラを見ながら

 

「君たちの家系は・・」

 

 達也と深雪の警戒色が一気に跳ね上がり、二人とも厳しい表情で十夜を見つめてくる

 

「十夜、血筋を詮索するのは「エレメンツか?」やめ・・・?」

 

 急激にしぼんでいく警戒色と変わりに浮かぶ安堵と疑問

 

「日本で最初に開発された魔法師の家系、僕は闇のエレメンツの家系だ、魔法力、在り方、達也、君たちは規格外だ、エレメンツの家系ではないのかい?」

 

 また警戒色が跳ね上がる

 

「残念ながら俺たちはエレメンツの家系ではない」

 

 警戒と覚悟、達也の纏うオーラは完全に魔法師のそれだ

 

「そっか、ごめんね、マナー違反の質問をして」

 

 否定の答えを聞き、すぐに二人に謝る十夜

 

「俺が言うのはなんだが嘘をついてるとか思わないのか?」

 

 あっさりと退いた十夜に達也が疑問を浮かべる

 

「嘘なのかい?」

 

「いや嘘ではないが」

 

「僕の眼はちょっと特殊でね、視ればわかる」

 

 2人に動揺が走るのを見ながら

 

「驚かすつもりは無かったんだけど・・エレメンツでは無いと分かったからもう詮索はしないよ、信じてもらうしかないけど・・んーマナー違反をしたのは僕だしお詫びって訳じゃないけど、答えられる質問なら今度は僕が答えるよ」

 

「その目、霊子放射光過敏症か?」

 

「世間一般で言う霊子放射光過敏症と僕の目は違う。流派によって違うけど僕らは神霊眼と呼んでいる」

 

「はじめて聞く名前だな」

 

「現代魔法ではなく古式魔法、それも精霊魔法の分野だからね」

 

「先ほど言っていた在り方とはどういう意味だ、なにが視えている」

 

 達也の視線が一層厳しいものに変わる

 

(警戒に引っかかっているのは血筋とこの部分か、やはり特殊な家系なのは間違いない。それに・・・近くで視るまで気づかなかったがこの2人はパスが繋がっている、そんな魔法なんて聞いたことが無いが・・・)

 

「在り方?ああ、あれは達也にたいする深雪さんの依存度合いさ」

 

 十夜はわざと表情を作りからかうように深雪を見る

 

「っ!」

 

「エレメンツに詳しくなければ知らないだろうけど、エレメンツの家系には依存癖が強く出てね、誰か特定の人、多くの場合は異性なんだけど、その人に徹底的に依存する傾向があるんだ」

 

 説明を聞くにつれどんどん顔を赤くしていく深雪、

 

「僕は単純に同世代のエレメンツの家系が身近に居るなら、話をしたかっただけさ、本当に深い意味なんて無いよ」

 

十夜の言葉にまだ納得できていなそうな2人だったが、

 

「っと、時間切れみたいだね」

 

 四階廊下の突き当たり。三人の目には生徒会室のプレートが見えていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 司波兄妹は既にIDカードを認証システムに登録が済んでいたので、3人はそのまま中に入った。

 

「「「失礼します」」」

 

 挨拶をし軽く室内を見回す十夜、室内には女子生徒四人、男子生徒一人。みな入学式の際に紹介のあった生徒会役員だ。生徒会役員というだけあり優秀な魔法師なのだろう、纏っているサイオンは一般生徒と比べはるかに強く、オーラの表情も穏やかだ。

 

(この人だけオーラが尖ってるな・・・)

 

 一人近づいてくる男子生徒、深雪の前まで来ると、 

 

「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、生徒会へようこそ、それから君は?」

 

 深雪に歓迎の挨拶をした後、横にいる達也は無視し十夜に話しかけてきた。

 

「一年A組、木闇十夜です。昨日、渡辺風紀委員長に生徒会室に来るようにと」

 

「なるほど君が木闇君か、話は聞いている、期待しているよ」

 

「?」 

 

 そのまま達也には声をかける事無く席に戻る服部、

 

(精神的によくない)

 

 一瞬で収まったが深雪から吹き出たオーラに十夜はため息をついた。

 

「よ、来たな」

 

「いらっしゃい、深雪さん。達也君と十夜君もご苦労様」

 

 気安い挨拶、なぜか十夜まで名前で呼ばれている。

 

「さっそくだけど、あーちゃん、お願いね」

 

「あーちゃん?」

 

「・・・・・ハイ」

 

 思わず口にしてしまった十夜、あーちゃんと呼ばれた女子生徒は一瞬こちらを見た後、ぎこちない笑顔で深雪を端末に誘導する。

 

(初対面の後輩の前であーちゃんなんて呼ばれればな・・・)

 

 感情を物語っている少女のオーラを見ながら十夜は心の中で手を合わせた 

 

「じゃあ、あたしらも移動しようか」

 

 摩利が二人に声をかける

 

「どちらへ?」

 

「その前に説明を」

 

 前者は達也で後者は十夜である。

 

「風紀委員会本部だよ、それで十夜、なんの説明だい?」

 

「いまの言葉で確証が持てましたけど、僕が今日呼ばれた理由です」

 

「言ってなかったか?お前は部活連の推薦枠で風紀委員入りが内定している」

 

「初耳ですね、なんで僕なんです?」

 

「なんでと言ってもな・・・自分の成績に聞いてみるんだな。お前は入学試験、七教科平均、百点満点中九十一点、学年二位だ。さらには実技でも僅差の学年三位、総合で堂々の新入生次席なんだぞ?」

 

 深雪と達也からの驚愕の視線を感じながら

 

「試験結果は知りませんでした、ちなみに断れるんですか?」

 

 十夜の一言に今度は部屋中の視線が集まる。

 

「お前に拒否権は無い、っと言いたいところだが、どうしてもと言うなら辞退はできる、だがな」

 

「?」

 

 顔を近づけてくる摩利、十夜にだけに聞えるように耳元で

 

「お前が断ったら次の候補は北山だ」

 

 どうするんだ?といった表情の摩利

 

「十夜、何を言われたか知らんがあきらめろ」

 

 達也が悟ったような表情で十夜に告げる

 

「・・・引き受けさせて頂きます」

 

「よし、じゃあ移動しよう」

 

 仕切りなおし、風紀委員会本部へ移動しようとする摩利、

 

「渡辺先輩、待ってください」

 

 呼び止めたのは服部副会長だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 結局、服部と達也は生徒会承認の元に模擬戦をする事になった。

二科生の達也を見下す服部に深雪が爆発し、達也がそんな深雪を悪者にするわけなど無かったのだ。

流れで模擬戦を観戦する事になった十夜、演習室に入ってきた達也と深雪に声をかける

 

「達也、君は意外と好戦的だったんだな、それに深雪さんも重度のブラっ「ピキッ」・・・・」

 

 深雪の周りに十夜じゃなくても見えるLvでサイオンとブシオンが吹き荒れ、急激に温度が下がり始める。

 

「深雪、落ち着け」

 

 達也の一声で暴走は一瞬で収まった、

 

(近距離で視たら目がやられそうだ、干渉力もありえない、もう下手な事を言うのは止めておこう・・・)

 

「だ 大事なお兄さんだもんね」

 

 冷や汗を流しながらやっとの事で十夜は口に出す。

 

「それで、自信はあるのか?」

 

 摩利が近づきながら声をかけてきた。

 

「服部は当校でも五指に入る遣い手だ。どちらかと言えば集団戦向きだが、個人戦でもそうそうに勝てるやつは居ないぞ」

 

「深雪の目が曇っていない事は、服部副会長に証明できると思いますよ」

 

 達也が深雪に軽く視線をおくり答えると、一瞬呆気にとられた表情をした後、笑い出す摩利。

 

「あはは、本当に似たもの兄妹だな」

 

 笑ってる摩利を疲れたような目で見た後、達也は持ってきたCADを開ける。

ケースの中には拳銃形態のCADが二丁と数個のカートリッジが収められていた。

中から一丁を取り出しカートリッジを交換する達也。その様子を、深雪を除く全員が、興味深げに見ている。

 

(あれはフォア・リーブス・テクノロジーの『シルバー・ホーン』しかも限定モデルか)

 

 達也が取り出したCADを見ながら十夜は考える。

 

(あの限定モデルは販売数がかなり少なく、一般の高校生が手に入れれる物じゃないはずだ。それこそ北山家クラスの資産家かよほどのコネでもない限り・・・)

 

「・・・このルールに従わない場合は、その時点で負けとする。あたしが力づくで止めるから覚悟しておけ。以上だ」

 

 十夜が考え事をしている間に、ルールの説明は終わっていたようだ。五メートルほど離れ向かい合う服部と達也。十夜は二人に視線をあわせる。

 

(服部副会長は最初で勝負を決めるつもりだな、既にかなりのサイオンが活性化している。それに比べて達也はまったく変化無しか・・・)

 

 十夜の眼には闘志を燃やす服部のオーラと、いつも通りの達也のオーラ。対照的な二人が映っていた。

 

「始め!」

 

 摩利の開始の合図と同時に服部がCADを操作する。一瞬で起動式が展開し発動体制に入る。

 

(さすがに学校五指と言うだけあるっ!?)

 

 目標をロストし散ってゆく想子情報体、側面から三連続のサイオンの波に襲われ服部は崩れ落ちる。

 

「・・・勝者、司波達也」

 

(自己加速しないであの動きか・・・古流、それもかなりの修練を積んでいる。そして短時間での三連続の振動数を変えてのサイオン波、まさか『波の合成』をするとはね、しかしループキャストだけでは、必要な振動数の違う複数の波動を作り出すことはできないはずだが)

 

「今の動きは・・・自己加速術式を予め展開していたのか?」

 

 審判をしていた摩利が達也に問いかける。

 

「そんな事が無いのは、先輩が一番良くお分かりだと思いますが?」

 

 一番と言ったところで、達也は十夜に視線を送る。摩利からも視線を向けられ、十夜は苦笑しながら左右に首を振った。

 

「あれは体術です。兄は『九重八雲』先生の指導を受けているのです」

 

(またまた大物の名前が出てきたな、本当に君たちは何者なんだよ)

 

 十夜の中で司波兄妹は絶対に敵にしたくない対象に仲間入りが決定した

 

「忍術使い、九重八雲か!」

 

 摩利が息を呑む、摩利が納得した事で、それぞれに驚きの表情は隠せないものの、先ほどの動きが身体的技能だと言うことに納得したようだ。質問が服部を倒した魔法に移る。

 

「では、はんぞー君を倒した魔法も忍術ですか?私には、サイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったのですが」

 

 魔法師としてマナー違反と分かりながらも、興味を押さえきれず質問をする真由美。

 

「忍術ではありませんが、サイオンの波動そのものという部分は正解です。振動の基礎単一系統魔法で作ったサイオン波をぶつけて酔わせたんですよ」

 

「えーと?」

 

「魔法師はサイオンを知覚できます。その副作用で、予期せぬサイオンの波動に曝された魔法師は、実際に自分の身体が揺さぶられたように錯覚するんですよ。今回は『揺さぶられた』という錯覚によって、激しい船酔いのようなものになったのです」

 

「魔法師が立っていられないほどのサイオン波なんて、そんな強い波動を一体どうやって・・・?」

 

 信じられないといった顔で達也を見ている真由美

 

「波の合成ですね、異なる振動数のサイオン波を三連続で作り出し合成して、三角波のような強い波動を作り出したのでしょう。よくそんな、精密な演算ができますね」

 

 鈴音の半分あきれたような声。十夜も同感だったが、それを初見で見抜いた鈴音と十夜も凄いと言える。

 

「あの短時間での振動魔法の三連続使用、あれだけの処理速度があるならば、実技の成績が低いとは思えないのですが」

 

 鈴音の疑問ももっともだ、達也は苦笑しながらCADを見る

 

「あの、司波くんのCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

 

「シルバー・ホーン?シルバーってあの『トーラス・シルバー』のシルバー?」

 

 真由美の問いに、嬉々として語りだすあずさ、

 

「そうです!フォア・リーブス・テクノロジー専属・・・・奇跡の・・・・天才・・・・ループ・キャスト・システム・・・・特化した・・・」

 

(デ・・デバイスオタク)

 

 止まらないあずさを見ながら、おそらくみなの心情は一致した。

 

「そのCADが、ループ・キャストに特化した高性能CADだということは分かったけど、それでもさっきの魔法は説明できないわ」

 

 真由美が言うと

 

「そうですね、ループ・キャストでは、先ほどの振動数の異なる波動を連続で発動する事はできないはずです。振動数の定義を変更すれば・・・まさか座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化し、それを実行しているというのですか?」

 

 鈴音は自分の推測に、顔を驚愕に染める。

 

「多数変化は実技試験のどの項目でも評価外ですからね」

 

 もう話は終わったとCADを片付け始める達也。

あずさが残念そうにその様子を見つめている。本当はもっと見ていたいのだろう。

 

「・・・なるほど、実技の評価方法が適合していないというのはそう言う事か」

 

 ふらふらと立ち上がる服部、真由美が近寄りなにやら話していたが、落ち着いたのか、CADを片付けている達也と寄り添う深雪に近づいてきた。

 

「司波さん、さっきは、身贔屓などと失礼な事を言いました。目が曇っていたのは私のほうでした、許して欲しい」

 

 頭を下げながら言う服部、

 

「私のほうこそ、生意気を申しました。お許しください」

 

 深々と頭を下げる深雪、CADをケースに仕舞い立ち上がり振り返る達也。

服部は達也と目が合うと、一瞬何かを言いかけ、しかし思い直したのかそのまま踵を返した。

 

(服部副会長は達也にも一言くらい言ってくれればいいのに)

 

 深雪の不穏なオーラを見ながら十夜は心の中でぼやくのだった。

 




雫がまったく出てない・・・・・だと?
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