吾輩は利根である。カタパルトはまだ(整備して)ない   作:上新粉

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6000字越えか……
最近一話が長くなってきてます。
ポジティブに捉えれば文章力が上がっているのかもしれないですが……
収集がつかなくなってぐだっている可能性も…………

それといつも誤字脱字報告ありがとうございます!
見直してはいるのですが徹夜明けに確認しても気付けないですね(汗)
今度からは徹夜明けはゆっくり寝た後に確認したいと思います。


ほう。これはなかなかのものじゃな。

 夕飯を食べ終わった俺はヴェールヌイと別れカレーライスを持って廊下で会った夕張と共に明石の工廠へ来ていた。

工廠の中に入って辺りを見回してみたが明石の姿が見当たらなかった。

 

「うん?明石がおらんの。」

 

「おそらく事務室にいるんじゃないかしら?ほら、奥に扉があるでしょ?」

 

夕張が指さす扉の前まで行きノックすると中から返事が返ってきたので扉を開けて中へと入って行った。

 

「明石よ、飯をもってきたぞ!」

 

「ありがとうございます!すみませんがそちらのちゃぶ台に置いといてもらえますか?」

 

そう言いながら明石は椅子に座ったまま机の上のモニターを真剣に見つめていた。

部屋の中を見渡してみると正面にはモニターが六台もありその周りには何に使うのか解らない機械が所狭しと置かれていた。俺はその隅にある四角いちゃぶ台を見つけ、その上にカレーを置いた。

 

「なんだかごちゃごちゃしとるのう……ところで何を真剣に見とるのじゃ?」

 

「ん?ああ、これですか?これは今日の利根さんとヴェールヌイの演習の様子ですよ。」

 

画面を覗くと二つの映像が同時に流れていた。

 

「なんじゃ?海しか映っておらんぞ?」

 

「今は移動中ですからね。これは二人の視点を艤装と同期させて音声と映像を保存してあるんですよ。」

 

「ほう、そんなことができるのか!?」

 

「はい、更に動き等もデータとして残っているのでこうやって三人称視点への切り替えも可能なんですよ!」

 

「おお!吾輩とヴェールヌイの背中が映っておる!」

 

「こうやって映像として確認することで艤装や艦娘に何か問題が起きていないかを確認して、問題があれば通常とは別に精密検査をおこなっているんですよ。」

 

「毎日確認しておるのか?」

 

「いえ、偶に皆さんと一緒に出撃して自分の目で確認して装備の改善点などを見つけたり、小破以下の艦娘の修理をしていたりすることもあるので毎日ではないですね。」

 

それって普段は毎日やってるってことじゃないか?

 

「大丈夫か?休みはちゃんととっておるのか?」

 

「はい、月1回は休みになってますし完徹もあまりないのでだいじょうぶですよ?」

 

「いやいや!月1は少なくないか!?それに完徹することもあるのか!?」

 

だって秘書艦のヴェールヌイでもたしか普段は月2回は休暇をとってるって言っていたし、他の娘も普段は週1は休みになってるはず。流石に特別作戦中の主力艦隊に休みは殆ど無いらしいが、たとえ大規模作戦でも三週間以内には片がつくっていっていたしな。

いや、確かにレべリングに躍起になってちょっとブラ鎮になりかけてたこともあったけどまさか明石にそこまで無理させてたなんて思わなかった……

 

「すまぬ……そんなに無理させてしまって。よし!せめて月2にできるように言ってくる!」

 

「へ?いえいえ!?お気持ちは嬉しいですが他の鎮守府に配属されてる明石と比べればこれでも休んでる方ですから!」

 

「そうなのか?いやしかし、流石に月1はな……」

 

「本当に大丈夫ですから!横須賀や呉の明石は年1,2回なんてざらですからね!?」

 

なんだと!?明石のことを何だと思っているんだ!今すぐ大本営に訴えなければ!!

普段あまり怒りを顔に出すことはないのだがどうやら顔に出てしまってるのか俺が怒っているのを見て明石が少し困った様子で説明を始めた。

 

「利根さん、私達は確かに他の艦娘より休みが少ないですがこれは提督の命令ではなく私達の意志でやっていることなんです。」

 

提督の指示ではない?どういうことだ?

 

「つまり私や大淀はその能力と数の少なさから自分たちの判断で着任する鎮守府を選択する事ができるんです。」

 

「ん?しかし最初から着任しておるではないか。」

 

「それはですね、母港やドックの増設は私達工作艦によって作られているからなんです。ですからいつでも増設できるように大本営からエリアごとに、つまりここだとタウイタウイ泊地にある11の鎮守府全てを巡回する指示を受けているんですよ。」

 

ついでに資材の仲介もしてるんですけどね。と明石ははにかみながら答えた。

 

「ふむ、つまり明石は鎮守府をまわってその中で自分の着任する所を決めるというわけなのだな?」

 

「そのとおりです!なので私達は強いられている訳ではなく出撃する皆さんが無事帰って来れる様に日々尽力しているだけなんです!

確かに大変かも知れませんが、それでも皆さんが誰一人として欠ける事無く帰って来たと報告を受ける事が私達工作艦としての喜びであり誇りなんですよ!」

 

「そうか……どうやら勝手に決め付けてしまっていたようじゃ、すまない。」

 

「いえ、謝らないでください。私達艦娘を大切に想って頂けている事が再確認できて嬉しかったですよ?」

 

「まぁ、きつい時は言ってくれ!夕張辺りに手伝わせるし、店の番なら吾輩も頑張るぞ!」

 

「あ、やっぱり気付いてませんでしたか?そのエリアの明石が鎮守府に着任した後は他の鎮守府に巡回するのが困難になるので大本営から新しく明石が配属されるんですよ。なのでいま資材等を売りに来てるのは私じゃないんです。」

 

「そうなのか!!?…………すまん、全く気付かなかった。」

 

「まあまあ、仕方ないですよ。安全の為に着任するまでは徹底したマニュアルがありますから。」

 

「安全?なにかあったのか?」

 

俺の質問に明石は気まずそうに目を泳がせながら渋々答え始めた。

 

「あ~しまったぁ………………まぁ、ここまで話しちゃいましたし……利根さんにならいっかぁ……ここでの話は全部秘密にしておいてくださいね?一応機密事項なので。」

 

「そ、そうだったのか……別に無理に話す必要はないぞ?」

 

「いえ、利根さんになら言ってもそこまで問題にはなりませんから。あ、夕張ちゃんも内緒にしといてね。」

 

そういえばいたんだった。って映像に釘付けで聞いてないなこれ。

 

「あー……まぁ何があったかていうとですね、実は一年半前に拉致事件が数件起きたらしいんですよ。」

 

「なんと!?いったい誰がそんなことを。」

 

「私が建造される前なので詳しくは知らないですが工作艦の専用装備に艦艇修理施設というのがあるのはしってます?」

 

「うむ、そうじゃな。」

 

艦艇修理施設。確か装備してなくても艦娘一人なら修理できるがこれを明石に装備する事で一つにつき一度に修理できる人数が一人増やせるようになる装備だったはず。

最初から一つ持ってて、改装するともう一つ持ってくるから三人まで同時に修理できるようになるんだよな。

 

「私達は改装すると艦艇修理施設を四つ装備できるようになりますが今の所艦艇修理施設の開発成功例は報告されていないんですよ。」

 

「開発できないとなると艦艇修理施設は二つしか手に入らないということか。」

 

「一昨年の春に行われた特別作戦時に初めて艦艇修理施設が発見されそれに伴い全鎮守府へ工作艦明石の艤装使用許可が下りたので最大で三つになりますね。」

 

「なんでそれまで明石の艤装は使ってはいけなかったのじゃ?」

 

「それはですね、私達特務艦を建造するには大本営にだけ造られている特殊な建造ドックを使って建造しなければならないのですが、ドックは一つしかなく更に建造に一週間掛かる上に艤装が繊細で高速建造材も使えないので鎮守府に着任させてしまうと新しい鎮守府の建設が困難になってしまうということで過半数は建設の方に行っていたみたいですね。」

 

そうか、年間52隻しか建造されないのか。艦艇としては早いが艦娘としたら大和型の21倍の建造時間だからな。そりゃ一つの鎮守府に一隻までなんて制限が掛かるわけだ。

 

「では明石の人数が充足してきたから着任出来るようになったわけじゃな?」

 

「はい!それと装備の発見により開発が出来るようになると思われていたからですね。それで最初の話に戻りますが、確かに着任出来るまでに増えましたがまだ数が多い訳じゃありません。」

 

「ふむ、休みなく建造していたとしても現在160隻程か?」

 

「まあ当然資材も結構使うのと私以外の特務艦も建造されるので実際今の日本に明石は98隻しかいませんね。」

 

「怖くてあまり聞きたくないがレシピはどうなっておるんじゃ?」

 

恐る恐る尋ねると明石は不敵な笑みを浮かべ紙とペンを取り出し簡単にレシピを書いていく。

 

「はい、こちらになります!」

 

 

 

 

燃料 12000 弾薬  4000

鋼材 25000 ボーキ 11000

開発資材 300

 

Oh…………大本営流石っすね……

 

「あはは!幸か不幸かこのレシピで大淀も速吸ちゃんも伊良湖ちゃんも間宮さんも建造できるみたいですよ?それに私と間宮さん以外は高速建造材使えますから時間も掛かりません!建造してみます?」

 

「出来るかぁ!ってすまんの、話が脱線してしまったな……つづけてくれ。」

 

「はい、それで人数が少ないので鎮守府ごとに最大保有数を1隻までにしたんですがそれでも艦艇修理設備を諦めきれない提督が……」

 

「巡回に来た明石を拉致して艦艇修理設備を奪ったと……」

 

「はい……そして証拠隠滅の為に解体してしまったんです。」

 

「なんと、それで明石を特定させない為のマニュアルか……しかし気付かれないように徹底しても気付く物もおるだろう?」

 

俺は気付かなかったが流石に少し違和感がでてこないか?

 

「それは着任している明石と思わせる為のマニュアルではなく、大本営から視察に来る明石さんと見分けがつかないようにする為のマニュアルだからですね。」

 

「大本営から来ているのか?」

 

「はい。実際の検挙例もあるのでかなりの抑止力になっているんですよ?」

 

「しかし大本営の明石が解体される事体が起きてしまわぬか?」

 

「それはあり得ませんよ!あそこの明石さん陸上ならそこらの戦艦より強いですし。それに最悪何があっても工廠妖精さんが解体前にデータベースから個体情報を削除する為に確認するのでそこで気付きますね。」

 

「なるほど、それならあんしんじゃな!」

 

しかし戦艦より強い明石ってどういうことだ?なんて考えていると夕張が突然素っ頓狂な声を上げた。

 

「はぁ!?一体どうなってるの!?」

 

「突然どうしたのだ夕張よ。」

 

気になって真ん中のモニターを見てみるとヴェールヌイ視点が画面一杯に映し出されていた。

 

「ふむ、確かにヴェールヌイは凄まじかったがお主はヴェールヌイの戦ってる姿を見たこと無かったのか?」

 

俺の言葉を聞いた夕張は何故か溜息をついて呆れていた。

 

「な!なんじゃ!?なぜ吾輩を見て溜息をつくか!?」

 

「はぁ…………これは重傷ですね明石さん。」

 

「そうね……これはどうにかした方がいいわね。」

 

え?俺何したの?そんな呆れられるようなことしたの?確かにヴェールヌイに運よく3ダメージ与えただけで即効轟沈させられたあっけない幕引きだったけど……

でもレベル差半端無いし少し位多めに見ても罰は当たらないとおもうよ?

 

「なにがわるかったのじゃ?おしえてくれ!」

 

「ほんとに自覚が無いというか自信が無いんですね。」

 

そういうと明石は映像を巻き戻し再生しながら解説を始めた。

 

「まずこれが利根さんが放った砲弾です。これを見てどう思いますか?」

 

そういって明石はちゃぶ台に置いてある少しさめたカレーを取りにいった。

ほう、これが俺の砲撃を回避したヴェールヌイの動きか……おお!なんて華麗な回避だ、まるで弾が避けてるようだ。

難なく四発目まで回避されてしまった……ん?ヴェールヌイが高角砲をかまえた?まさか五発目を避けながらあそこまで正確な射撃をしたと云うのか!?

いや……違う!なんてこった!?

 

「ま、まさか弾に弾を当てて相殺するとは……凄過ぎて恐ろしいの。」

 

なるほどこれは流石に夕張もびっくりするはずだ……ってええ……なんで二人とも落胆してるの~?

 

「いや、確かにすごいけど……ヴェルならそれ位やってのけるわ。」

 

「そうですね、それに彼女ならわざわざダメージを受けるようなこと普通しませんね。完全勝利する気だったあの時なら特に。」

 

「そこまで完全勝利に拘って無かったのではないか?」

 

「「それはない!」」

 

見事にステレオで返されるとは……

 

「ヴェルはそもそも演習で手を抜く子じゃないし、おまけにすっごい負けず嫌いでちょっと子供っぽい所があるからあんな挑発にも乗っちゃうのよ。」

 

「ついでに補足しておきますと彼女の実力なら低錬度の重巡洋艦なら5キロメートル以内まで一切撃たずに近づいても無傷で倒す位は出来ます。言ってる意味わかりましたか?」

 

明石はカレーを食べ終わりスプーンの先をこちらに向けながら尋ねた。

 

「なんと!もう食べ終わったのか!?」

 

「「………………」」

 

あ……聞いていたよ?うん。

 

「つ、つまり吾輩が損傷を与えたのは偶々だったということなのだろう?」

 

「はぁ~…………ここまで来るとほんとに偶然じゃないかって気がするわ。」

 

「まあ……この一戦しか演習をしてないのでまだ偶然という可能性もあるかもしれませんねぇ。」

 

「う、うむ?」

 

一体何の話をしているんだろう?まあいいか。

 

「そ、それじゃあ吾輩はそろそろ戻るとするか。」

 

「あ!もうこんな時間!?私も寮に戻るわ、明石さんお疲れ様!」

 

「はいお疲れ様。そうだ利根さん、一週間後の月曜に演習組んで置きますので覚えて於いてくださいね?」

 

「演習?まさかまたヴェールヌイとか!?」

 

「いえ、違いますが誰とかは来週のお楽しみです!」

 

「?う、うむ承知した。ではな明石よ、あまり無理をするでは無いぞ?」

 

「お気遣いありがとうございます。それでは利根さん、おつかれさまです。」

 

明石に見送られ俺は明石の工廠を後にした。

 

 

 

 

 風呂に入ってから部屋に戻り、眠っている筑摩を起こさないように布団に入り(床で寝てると筑摩がすごい心配するからであって疚しい気持ちはない……よ?)今日夕張と明石が何を伝えようとしていたのかを考えていた。

利根、起きてるか?

 

ーーん~……どうしたのじゃ?ーー

 

すまん、寝てたか?

 

ーーいや、まだ寝る前だから気にせずとも良いぞ--

ーーそれでどうしたのじゃ?ーー

 

いや、今日の映像を見て何か分かったか?

 

ーー……提督よ、分かってるとは思うが普段からそっちに意識を向けてはおらんぞ?ーー

ーーだから映像と云われても思い当たる節はないのう--

 

あ、そうだった……悪いな突然呼んで訳のわからない質問して。

ヴェールヌイの回避が凄かったって誉めたらなんかがっかりされたんだよ。

 

ーーまあよい、何の話か知らぬがあやつの実力はもはやその鎮守府で知らぬものは居らぬからのーー

ーーその映像を見せたのはそれ以外に何か見せたい所があったのではないか?--

 

そうか、でもヴェールヌイと俺の演習だったからな……

 

ーーならばお主が何かしたのではないか?ーー

ーーお主は二ヶ月間必死に頑張っておったからのーー

 

それはヴェールヌイの指導と利根の身体のおかげだよ。

 

ーー二か月前まで何もしていなかったのにしっかり奴の教育について来たのじゃ、謙遜するでないーー

 

まぁ、一応前までは仕事してたしな。

 

ーーそれでも四カ月も何もしてこなかったのだろう?ーー

ーーそんなに動かないと怠け癖がついてしまうものだからのうーー

 

そうか?……まぁ……ありがとう。

 

ーーうむ!困ったらいつでも言うといいーー

ーー愚痴を聞く位ならしてやるぞ?ーー

 

ああ、そんときは頼む。

 

ーーでは吾輩はもう寝るぞ?さらばじゃーー

 

おやすみ利根。

そのまま俺は筑摩にいつの間にか抱き枕にされながらも夢の中へ意識を落としていった。




作中では既に終わってますがリアルで礼号作戦を進めなければならないので暫く投稿が遅れるかもしれません。
まあ途中で息抜きに書くかも知れないけど。
遅くても27日には次話投稿する気ですね!
あとこのままだと主人公無双になる可能性が微レ存…………
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