吾輩は利根である。カタパルトはまだ(整備して)ない 作:上新粉
メインタイトルを思いついたときに「これだ!!」となりいまさらになってタイトルを変更するのもなと思ったのでタイトルはこのままで行こうと思います。
翌朝、俺は明石に頼んでダブルデリンジャーを改造して貰いダブルではなくなったデリンジャーを持って波止場に来ていた。
「よし、では試験運用といこうかの。」
誰に言うわけでもなく一人呟き、デリンジャーを構える。
正射必中ってアニメで赤城さんが言ってたけどこいつにも正しい構えってあるのだろうか?
多分銃口を水平より上に向けてれば大丈夫だろう。
「水上機発艦じゃ!」
そういって引き金を引くと乾いた発砲音と共に高速で弾丸が飛んでいき少ししたところで水上機へと姿を変えた。
おお、アニメで見たような発艦の仕方だ。長門のはそのまま水偵が発艦していたし艤装によって様々なようだ。
「あー、あー、こちらゆーえすつーとねさんきこえますか?」
「おお、通信できるのか!聞こえておるぞ。」
ってそりゃそうか。この電探がおかしいだけで普通は通信を取り合って弾着観測射撃をするんだよな。
「そうじゅうになれるためまわりのさくてきにいってきます!」
「了解した。敵を発見した場合直ぐに知らせてくれ。」
さて、俺はその間に利根に謝らなければ。
利根~聞こえてるか?
ーーなんじゃ?あほな吾輩に用などなかろうーー
いや……その…………昨日は悪かった。
その…………別に悪い意味で言いたかったわけじゃなくて、可愛げがあるというか……なんていうかその……とにかく怒らせるような事をいってしまって本当にすまない!!
ーー………………はぁ。まあよい、悪気が無いことは分かっておるしのーー
ーー今回は許してやろう、次からは発言には注意するのだぞーー
ああ……反省してるよ。
ーーうむ、それよりも通信が入っておるぞーー
え?ほんとだ。全然気付かなかった……
「こちら利根、どうしたのだ?」
「こちらゆーえすつー。あばれているてきをはっけんしました!」
「敵じゃと?場所と艦種を報告してくれ。」
「はい、ばしょはそこからせんろっぴゃくきろさきです。なまえはわかりませんがひとがたなのでたぶんひめです!しゃしんをとったのであとでおみせします。」
「千六百キロ先というと鎮守府近海あたりか?了解した、では戻ってきてくれ。無事を祈っておるぞ。」
「はい!」
姫級か……なんで暴れてるのかは分からないがこの間のヲ級flagship達がこっちに来た原因なのだろうか。
ヴェールヌイに伝えるべきなんだろうけどまだ意識が戻ってないし……利根、この場合誰に伝えればいい?
ーーうむ、第一艦隊旗艦の榛名か翔鶴辺りが妥当だが第一艦隊なら筑摩が一番話し易かろうーー
そうか、筑摩は恐らく出撃準備中だったはず。
とにかく掛けるだけ掛けてみよう。
筑摩に電話を掛けると数回のコール音がなったあと無事に筑摩と連絡が繋がった。
「はい、筑摩です。どうしました利根さん?」
「筑摩よ、いつもすまぬ。早速だが伝えたい事がある。鎮守府近海にて姫級と思われる深海棲艦が暴れておると吾輩の水上機から報告があった。」
「姫級?種類は解りますか?」
「それは今の所解らぬが、写真を撮ってもうすぐ帰ってくるからそれを確認すれば解るはずじゃ。」
「そうですか……わかりました。秘書艦代理の榛名さんに伝えておきますので利根さんはその写真を工廠で現像してもらったら直ぐに執務室に来てください。」
「うむ、了解した。頼んだぞ。」
「きとうしました!かいしゅうしてください!」
丁度いいタイミングに帰ってきたな、機体を回収して工廠へ行くとするか。
工廠で現像してもらった写真を持って執務室へ向かうと既に第一艦隊の面々が集まっていた。
普段の優しそうな雰囲気はまるで無くその真剣な表情が一点に集中した時の迫力は凄まじく思わず後ずさりしそうになってしまった。
しかし見つけたのが俺(の水上機)なので意を決して中へ入る事にした。
「お待ちしてました、秘書艦代理の榛名です。早速ですが写真を見せていただけませんか。」
「う、うむ。これがその写真じゃ。」
写真を榛名へ渡すとそれを暫く眺め、隣の翔鶴へと渡した。
「翔鶴さん、この深海棲艦に見覚えはありますか?」
榛名の質問に翔鶴は首を横に振る。
「いえ、見覚えはありませんね。」
そのまま全員に回されるが誰も見覚えがないらしい。
だが俺は知っている、正確には情報として知っているだけだが。
確かにこの鎮守府が出来てから4-5以外には出現していない姫だ
残念ながら俺の鎮守府はまだ4-5に出撃していないので知らなくても仕方ないのだろう。
しかしどうしようか……俺の立場としては知っているのは不自然だしな。
何かいい方法はないだろうか。それにしても……
「港湾棲姫…………か。」
あまり暴れ回る様なタイプじゃなかったと思うが……まあ俺の勝手な思い込みだが。
「港湾棲姫?利根さん、なぜあれが港湾棲姫だとわかるのですか?」
榛名に問い掛けられ自分の口から漏れていた事に気づき、しどろもどろしながらもどうにか返答を考えた。
「うぇ!?い、いやそれはだな。敵の……そう!敵の情報を調べてた時に港湾棲姫という者がこの写真のような特徴をしておったのをおもいだしてな!」
確か出現が確認されている深海棲艦の情報は艦娘なら確認できるようになってるから大丈夫なはず。
よし、榛名も確認してるみたいだしこれで辻褄は合うだろう。
「そうですね……確かに私たちのまだ出撃していない海域に出現していると報告がありますね。」
「流石は利根さん、よく勉強してますね。」
筑摩も褒めてくれたし、取り敢えずは誤魔化せたか?
ーー全く抜けとるのお主はーー
ま、まぁ多分誤魔化せたし。大丈夫、大丈夫。
「吾輩の妖精さんの話によると敵味方関係なく近づくもの全てに攻撃を仕掛けてるそうじゃ。」
「だから鎮守府近海の深海棲艦達が正面海域に流れて来てたのね。」
俺の証言に扶桑さんは納得がいった様子で呟いていた。
それに頷き榛名が全員に告げる。
「そうですね。このままでは鎮守府正面の制海権も危うくなりかねません。皆さん、今から一ヶ月後に鎮守府近海にて港湾棲姫の撃退作戦を開始します!作戦参加メンバーは後ほど放送にて連絡します!」
「「了解!!」」
第一艦隊のメンバーと解散し俺は執務室を出た。
「さて、これからどうするかの。」
今日までほとんどヴェールヌイの組んだスケジュールで動いていたから正直何をすればいいのかさっぱりわからん。
普通なら何か訓練とか出撃とかそれぞれのシフトがある筈だがこの鎮守府には現状艦娘に指示を出す司令官なるものがいないからな。
何かしなければいけない気がするが何をすればいい………………まあ考えても分からんから取り敢えず秘書艦代理の榛名に指示を仰ぐとするか。
俺は再び執務室に入るため扉をノックする。
「利根である!少し聞きたいことがあるのだが。」
「はい、どうぞ入ってください。」
榛名の返事を受け扉を開け中へと入ると提督机横に置かれた秘書艦席に座って先ほどの写真を見ていた。
「今までヴェールヌイの立てたスケジュールで動いておったからこの鎮守府での動きがわからぬのだが。」
なにをすればいいか尋ねると意外な答えが返ってきた。
「そうですね、出撃以外でこちらから指示することは特にありません。ただ利根さんには次の作戦に参加してもらいます。」
「へ?いやしかし出撃も先日のが始めてだし、そもそもここに来てまだ二ヶ月しかたっておらんぞ。それにずっとヴェールヌイの指導を受けておったからどうしてよいのか…………」
慌てふためく俺を見た榛名は暫く考え、一つだけ指示をだした。
「では強くなってください、非人道的でなければ方法は問いません。対抗演習の希望があれば出来る限り善処しましょう。」
「な、なぜそんなに吾輩を作戦に参加させようとしておるのじゃ?」
俺の疑問に対して榛名は首をひねり悩み抜いた後、素晴らしい笑顔で答えた。
「はい、わかりません!」
秘書艦代理としてそれでいいのだろうか……
「ですが、利根さんが来てから色々とありえないことが起きてるので。ヴェールヌイさんが熱心に利根さんを教育していたり、利根さんの出撃した海域に本来いる筈の無いヲ級flagshipが出現したり。利根さんの艤装も今まで見たことの無いものですし。」
「ヴェールヌイが熱心に教育するのは有り得ない事なのか…………まあよい。しかしそれなら吾輩が参加したら余計な事に巻き込まれるのではないか?」
どっかの名探偵みたいにじゃないが……
「それもあるかもしれません。ですがそれでも利根さんが必要な気がするんです!」
「期待してくれるのはありがたいが……吾輩は正直不安じゃ。」
「根拠はありませんがきっと大丈夫です!」
根拠も無いのに何が大丈夫なのか分からないが、随分期待されてるようだ。
「……わかった、どこまでやれるか分からぬが全力をつくそう。だがもしも吾輩に力が足りぬと思ったら躊躇せず作戦から外してくれ。」
俺のせいで彼女達を沈めてしまうなんて事はもう二度と御免だ。
「分かりました、応援してますね。」
「うむ、それでは吾輩はこれで失礼させてもらおう。時間を取らせてしまってすまなかったの。」
俺は榛名に一言礼を言い執務室を後にした。