吾輩は利根である。カタパルトはまだ(整備して)ない   作:上新粉

16 / 29
皆さまお待たせ致しました。
知り合いからアドバイスをもらったり、時間が空いて見直したりするたびに書き直しをしていたら予定よりかなり遅くなってしまいましたね。
それに加え次の作品の案が浮かんできてそれをまとめていたりなんかもしていましたが……
とまぁ相変わらずの言い訳はこの位に本編へどうぞ。


うむっ!有難いぞ!

 執務室を後にした俺は艤装を取りに工廠へと足を運ぶと、扉の向こうから話し声が聞こえてきた。

 

「これなら甲板から発艦できるよね?ね?」

 

「まあ車輪もついてるので発艦はできますが……武装はついてませんよ?」

 

「それでも索敵には使えるからいいの!何よりかわいいし!!」

 

車輪?かわいい?何の話をしているか分からないが突っ立っていても仕方ないので工廠に入ることにした。

 

「あ、噂をすればですね……どうも利根さんどうかs」

 

「利根さぁ~~~~ん!!」

 

明石の言葉を遮り此方へと一直線に向かってくる小柄な少女の頭が鳩尾へとクリーンヒットした。

 

「ぐふっ!?ず、ずいほう…………。」

 

「利根さんの水上機見せてー-!!ってあれ?どうしたの?」

 

飛びそうになる意識を何とか保ちながら突如体当たりをかましてきた少女、瑞鳳に訳を尋ねる。

 

「陸上で轟沈するかとおもったぞ…………で、これは一体どういう事なのじゃ。」

 

「うぅ……ごめんなさい。」

 

瑞鳳は肩を落として項垂れながら理由を話した。

要約するとどうやら彼女は航空機フェチで俺の持っている水上機設計図を見てかわいい?から実物が見たいということらしい。

 

「そういうことであったか……ほれ、好きに見て構わぬぞ。」

 

持ってきたUS-2を手渡すとさっきまで落ち込んでいたのが嘘のようにはしゃぎ始めた。

 

「きゃあっ!かぁわいぃー!!やっぱり実物はいいよねぇ~!」

 

嬉しそうにする瑞鳳が愛らしく暫く見入っていると不意に瑞鳳が真面目な顔してこっちを見て来るので慌てて目を逸らしつつ何事かと尋ねた。

 

「ど、どうしたのだ?瑞鳳よ。」

 

「あ、あの~……ちょっといい?」

 

「なんじゃ急に改まって。お主の方が長くここにおるのだ、遠慮することもあるまい?」

 

瑞鳳は暫くいい辛そうにしていたが意を決して俺に尋ねた。

 

「この子を私にください!!」

 

「…………はい?」

 

「私この子が欲しい!」

 

いや、凄い本気なのは伝わったけど一つ言わせてくれ。

 

「子供かっ!?」

 

いきなり欲しい言われてはいどうぞと言う訳にはいかないだろう……

 

「ちっ、違うの!えっとぉ……そう!この子は一人しかいなくてかわいそうだったから私が一緒にいてあげようとおもってその……」

 

子供呼ばわりされたのがよほど恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしながら必死に意味不明な言い訳を並べ始めた。

 

「はぁ…………仕方ないのう。」

 

「本当!?本当にいいの!!?」

 

まあ俺が持ってても使い道は少ないし、そこまで嬉しそうにされると渡してもいいかなって気になる……だが!

 

「しかし、一度しか発艦させていないとはいえ、こやつは我輩の相棒じゃからの。只で渡す訳にはいかぬ。」

 

「ど……どうすればいいの?」

 

途端に瑞鳳の顔に緊張が生まれるのを見て俺の心に悪戯心が芽生える。

 

「さて、どうしようかのう~。」

 

俺は含み笑いをしながら考える素振りをみせる。

後ろで明石が侮蔑の眼差しを向けているような気がするが気にせず瑞鳳に一つ質問をした。

 

「瑞鳳よ、今月の勤務はどうなっておるかの?」

 

瑞鳳にとって予想外の質問だったらしく戸惑いつつ自分の勤務を確認し始めた。

 

「えっとぉ……今は第二艦隊にいるから休みの日以外は基本的に出撃かな~?」

 

俺の鎮守府では主力メンバーの一人だから忙しいのは大体想定内だ。

 

「そうか……では忙しいのだな。無念じゃ……」

 

俺は笑いそうになるのを必死に抑えつつ、とても残念そうに呟く。

 

「対空演習を手伝って貰おうと思ったのだが……時間がないのならしかたあるまい、残念じゃがこいつも渡せぬのう。」

 

「あ、あー!?待ってぇ!来月、来月なら空けられるからぁ!!」

 

瑞鳳から取り返して格納庫に仕舞おうとすると、瑞鳳は涙目になりながら声を上げて呼び止めた。

 

「来月では間に合わぬのじゃ……はぁ……だれかおらぬかのう。」

 

「うぅ……待ってよぉ…………どうすればいいのぉ……ね~ぇ……。」

 

今にも泣き出しそうな瑞鳳を見て、流石に不味い空気を感じた俺は慌ててUS-2を瑞鳳に渡した。

 

「ちょっ!?す、すまぬ、流石に意地が悪かった!ほ、ほら。こやつをお主に託したぞ。」

 

「ぐすっ……ずず……いいの?」

 

「ああ、お主に使ってもらった方がこやつも活躍出来るはずじゃからの。」

 

「……ずずっ……うん、ありがと。大事にするね。」

 

天使の如き無垢な笑顔でお礼を言う瑞鳳の姿が俺の良心にクリティカルヒットした。

 

「明石ぃーー!!吾輩を思いっきり殴ってくれ!」

 

「今手元にスレッジハンマーしかありませんがよろしいですかぁ?」

 

柄が1メートルもありそうな大きなハンマーを肩に担ぎこっちをジト目で睨む明石の姿に俺は戦慄を覚え流石に変更を頼んだ。

 

「すまぬ!それ以外で頼む!」

 

「わがままですねぇ……ではこちらで。」

 

そう愚痴りながらハンマーを下すと近くに置いてあったパイプレンチを拾うと俺の目の前まで来た。

そしてレンチを持つ手を振り上げる。

 

「……えいっ!」

 

掛け声と共に振り下ろされたパイプレンチは見事に俺の後頭部にクリティカル……はせず、コツンと軽い衝撃だけが頭を揺らした。

 

「っ!…………あ、明石?」

 

「こんな事していないで瑞鳳さんにしっかりと謝ったらどうです?」

 

「そ、それもそうだな。」

 

明石の言葉にはっと我に返り、瑞鳳の前まで近づき正座をする。

俺はそのまま両手を床に置き頭を地面に擦りつけた。

 

「すまん!悪ふざけが過ぎた、許してくれ!」

 

瑞鳳は目をこすると土下座する俺の前にしゃがみ込む。

 

「大丈夫!こっちこそ訓練に協力出来なくてごめんね?代わりに私から鳳翔さんに頼んでみるね。」

 

一○○対○で俺が悪いのに瑞鳳に謝らせてしまうなんて……

 

「あかしぃ!やっぱりガツンと一発頼む!」

 

「そうですね!やっぱり一発いっときますかっ!」

 

「えぇ!?だから私は大丈夫だってばぁ~!」

 

瑞鳳に止められたので明石は渋々レンチを持つ手を下げた。

少し冷静になった俺は内心安堵していた。

 

「鳳翔さん受けてくれるって!」

 

「本当か!?それは有難い、助かったぞ!」

 

暫くして鳳翔さんと連絡を取っていた瑞鳳から承諾が取れたと言われたので、俺は早速鳳翔さんの下へ挨拶に行く事にした。

 

「では行ってくる。瑞鳳よ、色々と済まなかったな。」

 

「ううん、私は大丈夫。利根さんまたね!」

 

「それじゃあ頑張って来てください。」

 

二人に見送られ工廠を後に、俺は鳳翔さんの今いるという射場へと向かった。

途中売店で土産を買っていこうと立ち寄ると、一日百個限定の食堂のおばちゃん謹製芋羊羹が運よく残ってたのでそれを土産に持って俺は射場へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 射場への入口を開けると奥の方に矢を番え、真っ直ぐと的を見据える鳳翔さんの姿があった。

暫くしてその矢を放ったかと思うとすぐさま矢筒から矢を引き抜き弓へと構え放つ。驚くべき速度で瞬く間に五本の矢が一列になり三十メートル以上離れた的へと吸い込まれていく。そして最初に放った矢が的の中心を射抜き、その矢を貫く様に次の矢が中心を射抜いていく。

その数瞬の出来事を目の当たりにし、俺は開いた口が塞がらくなっていた。

 

「こんにちは利根さん。瑞鳳さんから話は聞いてますよ。」

 

入り口で突っ立っている俺に気付いた鳳翔さんは俺の前まで来て微笑みながら話しかけた。

 

「へ!?え、あっと……あ、挨拶に…………これを。」

 

惚けていたところに話しかけられ、動揺してしまい上手く口が動かないまま手に持った紙袋を差し出した。

 

「えっと……私にですか?」

 

いきなり紙袋を差し出され困ったように首をかしげる鳳翔さんを見て俺は我に帰った。

そして落ち着きを取り戻す為に深呼吸をし、改めて要件を話した。

 

「うむ、突然失礼した。対空演習に付き合ってくれると聞いて挨拶を兼ねて礼を言いに来たのだ。それでお土産にとこの羊羹を持ってきたという訳なのじゃ。」

 

「あぁ、そういうことでしたか。お心遣い感謝します。ですがお気になさらずに、皆さんの力になれるのなら私はいくらでもお手伝い致しますよ。」

 

ああ……俺はこの人のことをお母さんと呼びたい!流石に口にはしないけど……

 

「うむ、すまぬが今月中に対空迎撃を完璧にとはいかぬが高い精度で出来る様になりたいのじゃ。時間が空いてる時で構わぬがこれからよろしく頼む。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。そうですね……」

 

すると鳳翔さんは懐からおもむろにスケジュール帳を取り出して鉛筆を持ち出した。

 

「午前中なら日曜日以外空いていますね。利根さんの方はどうでしょうか?」

 

「吾輩は今月は出撃指示のない限り自分の意志で動いていいそうじゃ。」

 

俺がそう答えると鳳翔さんは少し考えてからにこやかに言った。

 

「では週六日でやりましょうか。」

 

「へ?そ、それは有難いが鳳翔さんは良いのか?」

 

俺の質問にさも当然の様に答える。

 

「私は大丈夫ですよ?それに今月中に対空を完璧にしたいのであればこれでも時間が足りない位ですから。」

 

……まあ、実際その通りだと思うし鳳翔さんが良いというならお言葉に甘える事にしよう。

 

「すまん、ではよろしく頼む。」

 

「はい、それでは早速明日の○四○○に波止場でお待ちしております。」

 

「よ!?四時か……う、うむ……承知した。ではまた明日、訓練中に邪魔したのう。」

 

「いえ、気になさらなくて結構ですよ。またお会いしましょう。」

 

鳳翔さんに一言述べ射場を後にした俺は夕飯を食べてから部屋へと戻っていった。




瑞鳳をもっといじm……可愛がりたかったですが主人公の性格的に無理な気がしたのでやめました。
リアルが少し大変になりそうなので更に投稿が遅くなるかもしれませんが、それでも見て下さってる皆さまの為に、そして自分自身の為にも完結させますので生暖かく見守っていて下さい。それでは皆様4月にまたお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。