吾輩は利根である。カタパルトはまだ(整備して)ない   作:上新粉

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速さが足りない!
時間も足りない!
表現力も足りない!
しかし!


アイデアだけはある!


ふ~む……

鳳翔さんと一対一の対抗演習が始まってから一週間が過ぎようとしていた。

最初のころと比べ随分艦載機を落とせるようになってきたとはいえ、未だに戦略的勝利すら出来ていない。

今日の演習も二十機位は落とせたがこちらは轟沈判定となり鳳翔さんには一撃も与えることが出来ずに完全敗北となった。

 

「明日は主力艦隊の皆さんとの対抗演習ですね。」

 

工廠で艤装を仕舞っていると鳳翔さんに話しかけられた。

 

「うむ、そうじゃな……まだ鳳翔さんに一度も勝ってはおらぬがの。」

 

「大丈夫ですよ、利根さんなら大規模作戦前には私に勝つことは出来ますよ。」

 

「そ、そうかの?」

 

「油断しなければ、ですけどね。」

 

「うぐぅ……。」

 

鳳翔さんに窘められ反論もできずガックリと肩を落とした。

 

「ふふ、ですが明日の訓練はお休みにしましょうか。」

 

「へ、どうしてじゃ?」

 

「明日は時間までしっかり休んでから対抗演習に臨んだ方がいいですよ。」

 

「あ…………」

 

鳳翔さんに言われるまで気付かなかったが確かに明日の演習は朝食後一時間後だったな。

鳳翔さんとの演習の後に主力艦隊との演習なんて流石に無理かもしれん。

 

「うむ、ありがとう鳳翔さん。そうさせてもらおう。」

 

「いえ、それでは私はこれで失礼しますね。」

 

艤装をしまい終えた鳳翔さんは俺に一礼するとそのまま工廠を出ていった。

俺も朝食を取るため食堂へと足を運んだ。

 

 

 

 

 「んまいっ!」

 

俺は食堂で卵かけ御飯に舌鼓を打ちつつ明日の演習のメンバーを思い出していた。

俺がいるチームは旗艦が榛名改二、練度は確か九十七だったか。

次に瑞鳳改、練度は九十五で載せているかどうかはわからんが俺が渡したUS-2を持っている。

話した感じからは想像できないが一応鎮守府の中でも古参であり翔鶴と同時期に建造されている。

その次に神通改二、練度は八十六か。この世界では何度かしか会っていないためどんな性格かはわからん。

そして筑摩改二、練度は八十一だったな。有難いことに筑摩がいてくれたおかげで気持ちが少し楽になったというのはここだけの話だ。

最後に一航戦の一人、赤城改。練度は八十だが残念なことにうちの鎮守府の加賀さんは練度が低いため一航戦揃って出撃することはあまりないのである……本当に済まないと思っている。

 

……まあ、編成としては悪くないのか?

 

ーーしかし、相手はかなりの強豪揃いであるぞ?ーー

 

おお、聞いてたのか。

 

ーー暇だったからのうーー

 

なるほど、まあ確かに相手もうちの鎮守府の主力だからな。

まず旗艦のヴェールヌイ、練度百十……正直一対一だと今でも勝てる気がしないよ。

 

ーーそれに奴の指揮能力もかなりのものじゃーー

 

ううむ…………つ、次に翔鶴。練度は九十五だが試製甲板カタパルトを未入手の為、二次改装は行われていないがそれでも赤城を超える搭載数を誇る(改二だと加賀の搭載数にまで匹敵するらしい)上にうちの鎮守府では赤城よりも先に建造されたため実践経験は第一艦隊の中でもヴェールヌイ・扶桑姉妹に次いで多いのだ。

 

ーー艦載機の扱いなら鳳翔以上だからのーー

 

マジですか…………。

え、ええと……次に扶桑、練度は八十九。

彼女も最初期から鎮守府を支えてくれている最古参の一人であり二次改装を行ったことにより航空戦艦でありながら榛名を上回る程の火力を誇る超弩級戦艦である。

 

ーー我々の鎮守府では現状大和の次に火力が高いからのーー

 

そうなんだよなぁ............。

その上あっちにはビスマルクがいる。

練度は八十三だが扶桑と同火力を持つ高速戦艦だ。

更には戦艦なのに魚雷発射管がついており雷撃戦に参加可能で夜戦火力は大和型に次いで高い。

 

ーー吾輩も夜戦火力には自信があるぞ?ーー

 

ーーまあ、あやつには勝てぬがーー

 

利根よりも高いのか......

 

ーーあやつより高いのなど大和型位しかおらぬだろうーー

 

............なんか戦力偏ってないか?

 

ーーそりゃお主の実力を測るためなのじゃーー

 

ーー多少偏らせておるであろうーー

 

まあ、言われてみれば確かにそうだな。

 

そして暁と雷か。

練度は暁が八十で雷が七十七だったか。

二人ともヴェールヌイと同じ第六駆逐隊でありこの鎮守府でもかなりの古参達であり実力は決して駆逐艦と侮れるものではない。

......俺が間違って進撃させなければ今頃は............。

 

ーーええいっ!暗くなるでないっ!ーー

 

ーー後悔してもどうにもならんのだ!ーー

 

そうだな......後悔しても帰ってくる訳でも無いしな。

 

ーー莫迦者がっ!あやつの分まで背負って堂々と生きろと言っとるんじゃ!ーー

 

............

 

ーーそれがお主が電に出来る唯一の手向けじゃーー

 

............

 

ーーお主がそんなに引きずっておってはあやつも安心して眠れぬではないかーー

 

............そうか......そうだな。

済まない利根、俺の悪い癖がでてしまったようだな。

 

ーーそんな癖、さっさと矯正してしまうがよいーー

 

ああ、全くもってその通りだな。

沈めてしまった電の為にも俺は前を向かなきゃいけないな。

 

ーーうむっ!しかし明日の演習は中々に厳しいのうーー

 

そうだな、確かに厳しい戦いになりそうだ。

 

ーー勝敗はお主の頑張りにかかっておるのう?ーー

 

う……あまりプレッシャーをかけるのは勘弁してくれ、俺の心臓がもたん……

 

ーーまあ、あまり緊張するでないーー

 

ーーお主はお主の出来ることをすれば良いのじゃーー

 

俺の出来ることか......

よしっ!今はこのオムライスを美味しく頂く事にしよう!

 

ーーうむ!そのいきじゃ!ーー

 

俺はそのまま貪るように平らげると少しばかりの食休みをして訓練を続行するため工廠へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 「ふう、大分コツも掴んできたな。」

射撃訓練の後毎日訓練していたお陰で遂に横っ飛びが出来るようになった。

これができれば魚雷を避けることも簡単に出来そうだ。

 

ーーおおっ!そんなことが出来るのか!?ーー

 

あれ、見るの初めてなのか?

 

ーーうむ、この時間はいつもは出掛けておるからのーー

 

そうなのか、まあ別に構わんが。

 

ーーそれよりも今のはどうやってやるのじゃ!?ーー

 

興味津々だな......別に陸上でするのとそんなに変わらないさ、慣れは必要だろうけど。

 

ーーぬおぉぉ!いいのう!すごいのう!!ーー

 

ーーよしっ!吾輩もやるぞ!提督よ、今すぐ帰ってこい!ーー

 

いや、無茶言うなよ。帰るって言って帰れるものじゃないだろ......

 

ーーむぅ......仕方あるまい、戻ったらやってみるとしようーー

 

ああ、そうしてくれ。

さて、と。もう夕食時か......シャワーを浴びに部屋に戻るか。

俺は部屋に戻ってシャワーを浴びると部屋にいた筑摩と一緒に食堂へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 「「いただきます。」」

 

筑摩と一緒に若鳥の唐揚げ定食を食べながら、明日の演習について話し合っていた。

 

「しかし筑摩よ、朝思い返しておったのだが相手は中々の強豪揃いではないか?」

 

「そうですね、特にヴェールヌイさんと翔鶴さんは要注意ですね。」

 

「うむぅ......やはりそうか。」

 

頭を抱える俺を見て筑摩はくすりと笑った。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫よ、別に勝敗だけを見る訳じゃないの。」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ええ、明日の演習は利根さんの実力を皆に認めて貰うものなの。」

 

「だから利根さんは勝ち負けを意識せずに頑張ってくれればいいの。」

 

「ふむ、しかしどうせやるなら勝ちに行きたいのう。」

 

すると筑摩は唐突にくすくすと笑いだした。

 

「んん?どうしたのじゃ筑摩よ。」

 

「うふふ..いえ、利根姉ぇさんと同じ事を言うんだなと思って。」

 

「ぬ、そうかのぅ?」

 

あ、でも確かに利根は負けず嫌いだろうなぁ......

 

「明日は勝ちましょうね、利根さん。」

 

「もちろんじゃ!目指せS勝利!!」

 

「「おー!」」

 

その後夕食を終えた俺達は共に寮へと戻り、明日の為にいつもより早めに床に着いたのであった。

 

 

 

 

 

 翌朝〇九〇〇

鎮守府正面演習海域には主力艦隊十一人(と俺)が集結していた。

 

「えっと、それでは今回は明石さんの代わりまして実験兵装軽巡夕張が今回の演習の審判を務めさせていただきます!」

 

夕張が元気良く名乗りを上げる……が。

 

「え~……まあ、ここの人達にルール説明なんて今更ですね!」

 

「それでは皆さん三回目の砲撃と共に戦闘開始です!頑張ってください!!」

 

とまあルール説明はほぼすっ飛ばされたのであった。

夕張の通信の後通信器からは色々な人の声が聴こえてきていた。

 

「私と肩を並べるに値するか見せて貰おうかしら?」

 

「一人前のレディとして相応しいかどうか、試させてもらうわ!」

 

「利根さん、頑張んなきゃだめよ?」

 

「事故の無いように、頑張りましょう。」

 

「全力で参りますので、覚悟をしておいて下さいね。」

 

「Я иду」(行くよ)

 

おお、なんだか通信器越しなのに気迫を感じるな。

す、少し緊張してきた…………スーハー……スーハー……よしっ!

 

「さあ利根さん!榛名と!頑張りましょう!」

 

「索敵なら()()()()()()()に任せてよっ!」

 

おお、すっかりお気に入りだな。

 

「利根さんの実力、拝見させていただきます。」

 

「さあ、行きましょう利根さん。」

 

「さあて、のんびりと頑張りましょうか。」

 

ん?赤城さんってもちっと凛としてなかったかな?……まあいっか。

そして遂に始まりを告げる音が響きわたる。

 

「装甲巡洋艦利根、出撃するぞ!」

 




少し短いですがここで切ります!!

次回!全編戦闘回!!頑張ります!!!
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