吾輩は利根である。カタパルトはまだ(整備して)ない 作:上新粉
次の日、俺はヴェールヌイと合流し電探を起動させ周囲に人が居ないことを確認したあと、昨晩あったことを彼女に話した。
「という事を筑摩と話したのだが……まずかったかのぅ?」
「いや、その設定自体は疑われ無ければ問題ないね。ただ同じ部屋で暮らすのは良くない。」
「うむ、やっぱりそうじゃろうな。ヴェールヌイに話しに行くと言っておったからすまぬが説得しておいてくれぬか?」
「もちろんだ。何としても諦めさせるよ。」
取り敢えずこの話はヴェールヌイに頼る事にして今日の本題に戻るとしよう。
「ではこの事はお主に任せるとしよう。それでこれから何を始めるのじゃ?」
恐らく説得させる材料を考えていたであろう彼女に聞くと思い出したかのように説明を始めた。
「っとすまない。まずは移動訓練から始めようか、取り敢えずあっちに置いてあるポールの所まで走って見てくれ。」
「走ればいいのじゃな?」
そう言って俺は海面を思い切り蹴り駆け出す……
「おわぁ!!?」
事はなく足を滑らせ海面に顔面からダイブしてしまった。
幸い艤装の効果なのかしずむ事はなかったが代わりに顔面を強打してしまった。
一体何が起きたんだ?鼻が折れそうなほど痛い!なんで!?
「そうか……すまない、これも説明しなければいけなかったね。」
訳が分からず痛みに悶える俺に手を差し出しながらヴェールヌイは謝った。
そうか、飛んだり走ったりしないのは彼女達が艦艇の魂から生まれたものだからという訳じゃなかったのか!
彼女の手に掴まり立ち上がりながら走れなかった理由を何となく理解していた。
「私達は基本的に海上では船と同じ挙動しか取れないから海上を進む事を走ると言っているんだ。」
「駆けたり跳ねたりは艦娘には出来ない様になっておるのか?」
「それは……ちょっと分からない。そもそもその考えは無かったし、出来るともおもえないね。」
なるほど、考えつかないか……じゃあ可能性はあるという事か。まぁ今の俺じゃまだ無理なんだろうが……
取り敢えず移動出来なきゃどうしようもないしその内練習してみればいいか。
「では移動するにはどうすればいいのじゃ?」
「移動するには念じるんだ。前進したいなら前進と。」
と言いながらヴェールヌイは実際に前進して見せた。
「それならできそうじゃ!ゆけ!全速前進じゃ!」
おお!?進み出したぞ!段々早くなっていくなっていく……これは気持ちいいな!
徐々に速度を上げていき遂に最大速に到達した。
流石に恐くなってきたな……今何キロ出てるんだ?
サングラスに速度計がついていたので確認してみると32.9ノットと表示されており時速表示に切り替えると61km/hと出ていた。
ジェットコースターに乗り慣れてない俺からしたら結構きついわ。
「と、止まるのじゃ!機関停止じゃあ!」
すると徐々にスピードが落ちていき、やがて完全に止まった。
「どうだったかい?」
「……すごいのじゃ。よくこんな速度で進めるのぅ。」
「大丈夫、じきに慣れるさ。一旦工廠戻って的を持ってこよう。射撃についても確認しなきゃいけないからね。」
俺達はいちど陸に戻り工廠へとむかっていると、後ろから筑摩に呼び止められた。
「ヴェールヌイさん、利根さん。おはようございます。」
「お、おはよう筑摩。」
「おはよう筑摩さん。」
「すこしお時間よろしいですか?」
「私に用があるんだろう?利根さん、先にいって訓練用の標的を借りてきてくれないか?この書類を工廠長に渡せば貸してくれるから。借りたらそのまま波止場にいっててくれ。」
「う、うむ。わかったのじゃ。」
あとはヴェールヌイに頼んで俺は的を取りに行こう。
それから少し歩き工廠へとたどり着き工廠長さんの所へむかった。
「すまぬが訓練用の標的を借りたいのだが。」
そういってヴェールヌイから受け取った書類を工廠長へ渡した。
工廠長は渡された紙にしばし目を通すと
「いいですよ~いまもってきますね~」
といって快く承諾してくれた。
「はい、これがくんれんようのまとです~。
ほんじつひとさんまるまるまでにこちらまでかえしにきてくださいね~。
あとはじかんないならまとのこうかんができますよ~。」
「了解したのじゃ、ではありがたく借りていくぞ!」
工廠長さんにお礼を言い、そのまま波止場へと急いだ。
波止場へ到着すると暗い表情のヴェールヌイといつも通り笑顔の筑摩が出迎えてくれた。
「い、いったいどうしたのじゃ?」
俺が問いかけるとヴェールヌイは無言で首を横に振った。
「利根さん、やりました!」
という筑摩の言葉で俺は全て理解した。
あぁ、今日からどうしようか…………
「まぁ……そういうことなんだ。利根さんは今日から筑摩さんと同じ部屋で生活する事になった。わかったかい?」
この状況じゃなければどんなによかったことか!!一緒に住めるなんて幸せじゃないかって?俺の嫁はヴェールヌイだ!それに後ろめたすぎてそんな余裕はない!とおもう……
「そ、そうか。すまぬが世話になるぞ筑摩よ。」
「はい!こちらこそよろしくおねがいしますね利根さん。」
「む……利根さん、的はもってきたね。じゃあ早速射撃訓練を開始するよ。」
「じゃあ私は出撃準備があるのでこれで。利根さん、また後ほどお会いしましょう。」
「うむ、また後での。」
「ヴェールヌイさん、利根さんを私の部屋へ案内しておいてくださいね?」
「ダー……案内しておくよ。」
そういって終始笑顔のまま筑摩は去っていった。
「すまない。私は負けてしまったよ…………」
「まぁ決まってしまったものはしかたない。それよりもいまは訓練をはじめようではないか!」
「そうだね、じゃあ的を並べてくるから少しまっててくれ。」
「うむ、たのんだぞ!」
にしても今日の夜どうするかな~。道に迷ったことにして……ダメだな、ヴェールヌイにも迷惑がかかるし結局その場しのぎでしかないな。
ん~…………結局ぼろださないようにがんばるしかないかぁ……
一時間位待っているとようやくヴェールヌイが帰ってきた
「おまたせ、並べてきたよ。まずは水平射撃時の射程を測定しようか。少し右にずれて的にあたらない位置で打ってみて。」
「こっちか、よし!」
ヴェールヌイに言われた通りに右に旋回し十メートルほど移動し向きを直す。
そしてM500を水平に構え撃鉄を倒し(ダブルアクションなので倒さなくても実は撃てる)引き金に指を掛け……そして引いた。
するとM500とは思えないような轟音と共に銃口から砲弾が射出された。
見た目はかなり小さいが威力は実在した砲弾と比べても遜色ないものなんだと、吹き飛びそうな程の反動と一番手前の的の辺りで着水した砲弾が上げる水しぶきの大きさが物語っていた。
「距離……6000……か、やっぱり水平射撃だとこんなものだね。」
「6000とは短いのかの?」
「短いね、6000だともう雷撃準備に入る位だよ。砲撃戦は大体20000から25000位には行われるんだ。」
「やはり仰角をつけて撃たねばならぬか。」
ならばそれは練習して感覚を掴んでいかないといけないわけか。まあかなりきびしそうだがやってみない事にはな。
「砲撃戦も必要だからすぐにやるけど、今日の所は移動の練習の為に移動しながら5000位まで近づいたら撃つんだ。別に当たらなくても構わないから出来るだけ狙ってみて。」
「よし!利根、出撃するぞ!」
「じゃあ第一戦速で私についてきて。電探で的の距離を測りながら射程内に入ったら撃つようにね。」
そういってヴェールヌイは進みだした。
「りょ、了解じゃ!」
ええっと、第一戦速ってどっかで聞いたことあるな、たしか18ノット位だったかな?
とりあえず18ノットで進んでみたがどうやらあっていたようだ。
次にサングラス電探を起動させる。的との距離は8000。
7000…………6000…………そして5000
「いまじゃ!」
M500を的に向けて引き金を引いた。
轟音と共に放たれた砲弾は的を大きく逸れその後方へ着水した。
「はずしたか!?」
「撃ち続けるんだ!」
ヴェールヌイの言葉を受け俺は再びM500を構え狙いを修正しながら一発、二発と撃っていく。
そして三発目でようやく的に当たった。
「やったか!?」
「ハラショー、いいかんじだ。命中率が高ければそれに越した事はないがその武器は他の単装砲より連射速度が速い。存分に活用したほうがいい。」
「そ、そうか。確かにそうじゃな。」
「よし、その調子で続けていくよ。」
結局当てられた的は五つの内最初の一つだけであった。
「うう……まさか一発しか当てられんとは……」
「いや、今日初めて海を走って初めて撃ったんだ。十分な結果だよ。それじゃあ的を返してから昼食にしよう。」
ヴェールヌイはああ言ってくれてるが本当にそうなんだろうか……はぁ……自信が無さすぎて嫌になるわ。
「そうじゃな、飯にしようかの。」
俺たちは工廠に的を返すと食堂へと向かった。
今回の話を書いてたら今後の戦闘シーンが不安になってきましたね(汗)
まぁ結構後になると思いますが……。
いや、徹夜するつもりはなかったんですがね……
気づいたらこんな時間に……もう寝ますおやすみなさい……Zzz……