六畳間を広げよう   作:猫月

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はじめまして。ようこそいらっしゃいました。
これは、かにしのや明日の世界のシナリオライターの建速さんのライトノベル『六畳間の侵略者』を元にしたssです。
あらすじで書いたとおり短編を何個か連載する予定なので、短編行けは勘弁お願いいたします。
六畳間を知ってる人も知らない人も、楽しんでもらえれば幸いですが、書き手の腕が拙い所は申し訳ないなと思っております。
あと、俺の○○はこんなんじゃない!!と言うお方には、先に謝っておきます。すみませんでした。ですので無言でブラウザのバックでお願いいたします。


第1話

 

 

その六畳間は侵略を受けている。

 

 

ころな荘106号室。築二十五年の二階建て木造アパートにあるその一室は、ワンルームキッチンバストイレ付の6畳間だ。

元より街の中心よりやや離れていて家賃が安めのころな荘だが、いわく付であったこの一室は他にの部屋と比べて断然安い五千円という価格だった。

その部屋の安さに飛びついたのが、現賃貸者里見孝太郎だった。

三月末に決まった急な父親の転勤によって、高校一年生という若さながらも一人暮らしをすることになったのだ。

彼は合格が決まっていた吉祥春風高校に通うため、父親と離れてこのお得なアパートを借りることとなった。

 

それが今年の四月始めに決まった事。

 

そして四月四日に引っ越してきた彼を迎え入れたのが、早くに両親を亡くした同じく吉祥春風高校にい通う大家さん笠置静香と、曰くの原因である東本願早苗という名の幽霊少女だった。

里見孝太郎は突如現れた幽霊少女に怯え――ることもなく、優しく迎え入れ――ることもなく、徹底的に抗戦した。

この部屋の自縛霊たる早苗と孝太郎の戦いは夜を越えて行われたが、決着はつかずに翌日へと持ち越された。

 

だが次の日、早苗と孝太郎の戦闘は行われなかった。何故なら新たな問題が発生したからだ。

その問題の名は虹野ゆりか。ころな荘106号室でコスプレパーティーを開くためにやってきた、コスプレ少女である。

この部屋から溢れる強い魔法の力を悪の魔法少女から守るという設定の下、魔法少女レインボーゆりかはこの部屋へと住み着いた。

 

その翌日、愛と勇気のプリンセス☆魔法少女レインボーゆりかが、情けなくも幽霊に脅かされる中、更に問題が発生する。

大地の底に住む地底人が地上へと現れたのだ。

 

現れた地底人の名はクラノ=キリハ。地上侵略の司令官である彼女は、祖先を崇めるため、そして侵略兵器のエネルギーを集めるために、コロナ荘106号室に祭壇を築きたいらしい。

策士であるキリハの悪辣なる作戦に翻弄されながらも、なんとか一晩耐え切った孝太郎の前に、呪われた様に最後の侵略者が来訪した。

 

その名も、皇女ティアミリス=グレ=フォルトーゼ。そしてそのお付のルースカニア=ナイ=パルドムシーハ。

神聖フォルトーゼ銀河皇国という遥か彼方の銀河からやってきた皇女は、皇族の試練を果たすため、ころな荘106号室を侵略し、その住人里見孝太郎の忠誠を請わせなければならないらしい。

 

そんな彼女に反発して106号室における戦争が始まった。

だがそれは、206号室在住の大家笠置静香によってすぐさま鎮圧され、四月九日。

ここに侵略者たちの協定。ころな陸戦規定が交わされることとなった。

 

――その六畳間は侵略を受けている。

 

そんなこんなで、陸戦規定の下武力行使を行わぬ賑やかなる闘争が始まってから、早八ヶ月。

孝太郎、早苗、ゆりか、キリハ、ティアとルースの勢力差は均衡を保ったまま、誰しも脱落することなく仲良く続いていた。

 

 

 

プロジェクト六畳間を拡げよう その一  手帳の下にあるものは

 

 

 

吉祥春風高校文化祭。十一月の初めに行われたそのお祭りにおいて、演劇部と編み物研究会。そして侵略者の少女たちの舞台『青騎士物語』は無事に成功を納めた。

出演者たちはそのお祝いとして文化祭の打ち上げの中、祝杯を挙げたり、記念撮影をしたりとはっちゃけたのは記憶に新しい出来事だ。

そして十二月も後半を向かえ、急進派の地底帝国を凌いだ後の頃。

 

その問題は発生した。

「さてみんな。問題である手帳はコレなのだが」

六畳間に置かれた唯一つの机の上に、キリハが一つの手帳を乗せる。

黒色の小さなそれは、吉祥春風高校に通う誰もが持っている生徒手帳だった。

だがそんな平凡な手帳を前に、六人の少女――早苗、ゆりか、ティア、ルース、静香、そして持ち出したキリハでさえも、緊張を隠せずにいた。

「それがコータローの…」

「そう、孝太郎の手帳だ。ちなみに我も中は確認していない」

キリハの言葉に五人はごくりと唾を飲み込んだ。

「つまりは、キリハさんも誰の写真かはまだ分からないということね」

静香の言葉にキリハは頷く。

「ああ。誰の写真が挟まっているかは我にも分からない」

「けど、誰の写真も挟まっていないかもしれませんよ。サトミ様はこういうのには疎い方ですし」

『でも、マッケンジーから写真貰ってたのは本当だよっ!あたし今日の朝見たんだから、誰の写真かは孝太郎教えてくれなかったけど』

逃げ道を作るようにルースが可能性を提示するが、それはすぐさま早苗に否定された。

「そもそも、そう早苗から話を聞いてこうやって集まったわけだ。写真が挟まっているのは前提としておいていいだろう」

「うむ、キリハの言うとおりじゃ。問題はその写真が誰かということかの」

キリハとティアの指摘で、いかようにもなく視線は再び孝太郎の手帳へと集まった。

平凡で大量生産の安物の手帳が、少女たちにとっては核兵器よりも危険で、金剛石よりも貴重なものになっていた。

 

その理由は、学校で今流行っている一つのおまじないだ。

 

――胸ポケットにしまう生徒手帳に、気になる相手の写真を挟んでおくと仲良くなれる。

そんな、どこの学校にでもあるような簡単なおまじない。

それが流行りだしたのは、現生徒会の会長と陸上部の男子生徒がクリスマスを前に付き合いだしたことがきっかけだが、きっかけなどはどうでもいい。

重要なのは、そんな話が流行っている中で、意中とはいかないまでも気になる相手が、親友から写真を手に入れて、おまじない通りに挟んだというとこだ。

 

つまりはそこに、気になる相手――里見孝太郎の好きな人が写真がある。

全員共、孝太郎のプライバシーを覗き込むような罪悪感は抱いていたが、それ以上に気になり、期待と不安で緊張していた。

「やっぱりやめましょうよぉ~こんなの里見さんにばれたら一大事ですぅぅ」

誰もが手帳に手を伸ばせない中、止めようと言い出したのは虹野ゆりかだった。

孝太郎に対する罪悪感や、彼女の良心がその行動を留めた――のではなく、自分ではない人物の写真が入ってる可能性にヘタレ、また、孝太郎にばれたときの惨状に思いを馳せたのだ。

この寒くて仕方ない時期に、一週間ご飯抜きや、寝袋一つで放り出される事になってはたまったもんではない。

「そうですね。サトミ様の心を覗くような真似は、止めておいた方がいいかと思います」

『でもでも、ゆりかとルースは気にならない?孝太郎の好きな人。もしかしたらこの中にいるのかもしれないよ?』

「そうよね~もしかしたらルースさんかも。いつもお世話になっている内に、こうコロッと…ね」

「なっ…さ、サトミさまが、わたくしのことをっ?!」

ゆりかと違い、正義感や良心から止めようとしたルースは、そんな早苗と静香の一言で簡単に揺らいだ。

年頃の女の子の乙女心は正義感や良心よりも強いのだ。

「むっ、コータローがルースをか。それならまだ納得いかぬ分けでもない…か?」

なにやら複雑そうな顔をしながらティアは頷き、

「ふふっ、それなら我の可能性も高いということかな」

ルースと一緒に家事の全般をこなすキリハは得意そうに笑う。

『ま、待ちなさいよっ!!孝太郎はああ見えても結構世話好きなんだからっ!!写真はあたしに決まってるでしょ!!』

焦りながらも、いつも近くにいる早苗が自分を主張すると、

「年上で里見君に近い人っていうと、桜庭先輩もありえるんだよね」

静香が新しい可能性を持ち出した。

「サクラバハルミか…あやつも手ごわい相手じゃからの」

「ああ。体育祭の時の写真といい、大本命と言って過言はない」

編み物研究会に所属する桜庭晴海の存在に、ティアとキリハ、早苗の表情が一気に曇る。

ここに居る少女たちの誰にしても、彼女より孝太郎に好かれている自信はなかった。

手帳がさらに危険な忌まわしきものに感じて、部屋の中にお通夜のような空気が漂う。

 

しかしその空気を浄化したのは、まさしくお通夜の主役である幽霊少女であった。

『け、けどさ…晴海だったら、わざわざ写真貰わなくても良いよね?体育祭のがあるんだから』

まさしく曇り空を払拭する一筋の光。天啓に等しい幽霊の一言だった。

「そう言えば、そうじゃの…コータローがわざわざ新しい写真を貰うとは思えぬ」

「ああ。孝太郎はそういうタイプの人間ではない。どちらかと言うと奥手で、写真は一枚あれば十分な方だ。つまり…」

「ゆりか様の言うとおり、この中にサトミ様の想い人が……ああ、いけませんサトミ様、殿下と言う人がありながら、わたくしなどを―っ」

ティアとキリハは復活し聡明な思考を働かせ、ルースは思考を暴走させる。

危険で忌々しかったはずの生徒手帳が、こんどは黄金もかくやと言わんばかりに神々しく有難い物に見えてきた。

早苗の一言は、早苗だけでなく彼女たちにとっても希望の一言だったのだ。

『だーかーらー絶対にあたしに決まってるってっ!!ずっと一緒に居るんだからねーだ』

「一緒という事なら、もしかしたら私という可能性もっ!?」

 

――ただ一人、

 

「いや、それはないじゃろ」

「ああ、可能性はかなり低いな。一パーセント有ればいいのだが」

「ゆりかちゃんかーちょっと想像出来ないかな」

「そうですね。ゆりか様には申し訳ありませんが、わたくしにも少し想像が…」

『えーゆりかが?あはは、そんな事絶対ありえないって』

皆に否定されたゆりかにとっては別だったが。

「そーですよねーどうせ私なんて可能性ないですよねー…でも、少しは期待してもいいじゃないですかぁ!!」

全否定されて叫ぶゆりかを横に、少女たちの話は続く。

「この中だと、わらわが思うにルースだろうか。無論わらわ自身も可能性が無いと言うつもりはないがの」

「うーん…私はキリハさんが有力だと思うな。最近一気に近づいた感じがしたし」

「で、殿下、そんな事は…けど、わたくしもサトミ様の事は」

「近づいた…か。まあ、以前より仲良くなったことは確かだが、それは友達としてなんだが」

ティアと静香の予想に、ルースは恥じらい、キリハはむずかしいと苦笑する。

『まあその二人なら、文句は言えないか。あたしもお世話になってるしね』

渋々ながらも納得した早苗によって、緊張でもお通夜でもなく和やかな空気になった一〇六号室だった。

 

しかしそれは一時の事。

 

見事にスルーされた一人の少女によって、戦場である一〇六号室の和やかな空気は、いとも容易く壊された。

それは誰もが望みながらも、手を伸ばすことは無かった暴挙。

「わ、私なんて、ここでもどこでもそんな扱いなんですよぉ!!いいですよぉ、だったら私が確認するだけなんだからぁ!!」

弄られすぎて自棄になったゆりかが、机の上に置かれた手帳に手を伸ばしたのだ。

和やかな空気の中で虚を付かれる事となった面々は、誰もその手を止めることもできずに、孝太郎の手帳が開かれていく。

行為としては一秒も満たぬその行動が、少女たちにとってスローモーションのようにゆっくりと見えたのは、言うまでもない。

さしずめシュレーディンガーの猫。あらゆる可能性があったはずの、その末路がここに明かされるのだ。

そしてそれは――

 

「おっ?」

「「なっ!?」」

『えええっ!?』

「さ、里見さんは、なっ、なっ、何て物を挟んでるんですかぁ~!!」

開けたゆりかさえ悲鳴を上げる、最悪のパンドラの箱だった。

 

すぐさま隠そうと、慌てて閉じた手帳から落ちたのは一枚のカード。

メタリックに輝く真新しいカードは、キリハとのデートの思い出の品でもある。

 

≪カブトンガー一号。ヤマトカブトムシ≫

 

そう描かれた文字の上に、カブトムシを模したヒーローが描かれていた。

 

「か、か、か、カブトムシっ!!ま……またしても、わたくしの前にっ!!」

そのカードを見た途端、ルースの瞳からハイライトが消える。

ゆらりと立ち上がり、パルドムシーハの誇りと自らの心のままに、カブトムシを滅殺せんと動き出した彼女を、慌てて静香とティアが羽交い絞めにした。

「お放しください殿下っ!!わたくしにはパルドムシーハの使命があるのですっ!!」

「お、落ち着くのじゃルースっ!!流石にそれはいかぬっ、カブトムシと言え、コータローの私物なのじゃ!!」

『そ、そうだよ、きっと孝太郎の大切な物だから、勝手に破ったら許してもらえないよぉ!!』

「そ、そうそう!!流石にルースさんでも怒られるんじゃないかなぁ」

押し留めるティア、早苗、静香の言葉を聞き、ルースはピタリと動きを止める。

ほっと一安心した少女たちであったが、それは甘い考えだった。

「さ、サトミが、再びわたくしよりもカブトムシを選ぶ…?そんなの――認める訳にはいきませんっ!!」

再び激昂――いや、先程よりも激しく暴走し始めるルースに押し留める三人は慌てた。

「ほれ、ゆりかよ。それを持って逃げるのだ」

混乱の坩堝の中で一人落ち着きを保ったままのキリハが、カードを取ってゆりかへと手渡した。

「えっ…わ、私が、これを持って、ですかぁ?む、無理ですよぉぉ!!」

呆然としていたゆりかは危険物を手渡され、困ったようにキリハを見返した。

「ああ。それは孝太郎の思い出の品だ。もし無くしたりしたら寒空の下野宿だろうな……ルースから逃げるのと、どちらが楽かは我には分からぬが」

「ど、どっちも嫌ですぅぅぅ!!私にはどうしようもできませぇぇん!!」

当然のように告げるキリハに、ゆりかは猛然と抗議する。

 

だがしょせんはゆりか。更に言えば、パンドラの箱を開けたのもゆりかだったのだ。

その抗議は受け入れられることはなく。

「ゆ、ゆりかっ!!早く逃げるのじゃっ!!」

「それを、早くルースさんの見えないところにっ!!もうこっちも抑え切れないっ!!」

『いいから、とっとと逃げて!!でないとそのカード、ルースに破られるわよっ』

留める三人の言葉に、ルースの視線がカード越しにゆりかへと向けられる。

「ゆりか様、そのまま動かないで下さいね。青騎士、パルスレーザーを」

『イエス、マイレディ』

ルースの要請に答える機械音と共に、空中に次元の穴が拡がっていく。

「破るなんてとんでもありません。カブトムシは跡形も無く殲滅と決まっております」

ルースはカードを破り捨てるどころか、レーザー光線で消滅させる気だったのだ。

「わ、私ごと消滅させられますぅぅ!!」

勿論、カードだけうまく焼くことなどしないし、出来ないだろう。

命の危機に瀕していると気付いたゆりかは、慌てて106号室から飛び出していく。

「待ちなさい!!カブトムシっ!!」

それを追いかけていくルースwithティア、早苗。

静香はゆりかが逃げて安心したのか、それとも力尽きたのか一〇六号室に残った。

 

 

そして騒ぎの中心が遠ざかった後、部屋に残ったのはキリハと静香の二人。

「まったく…災難だったわ」

「ふふっ、そうだな。まさかこんな罠が張られてるとは」

疲れ果てた静香とは対照的に、面白いものを見たと笑うキリハ。

「もうっ、キリハさんも止めてくださいよ!!」

「悪かったとは思うよ。けど、それよりも気になることがあってね」

そう言ってキリハが手に取ったのは一冊の手帳。

里見孝太郎と書かれ、パンドラの箱となった生徒手帳。

それはキリハによって気負い無く開かれた。

「これがパンドラの希望か……まったく、たいした男だな孝太郎は」

「本当……傍迷惑なんだから、里美君は」

出てきた写真に、キリハはそうだろうなと笑い、静香は肩を落としながら微笑を浮かべる。

 

その写真は文化祭の打ち上げのときに撮った物。

出演者である、孝太郎、晴海、ティア、ゆりか、ルース、マッケンジーと、舞台設置を手伝ったキリハ、静香の八人で撮った記念写真だった。

 




というわけで六畳間でした。まずは読んでくださった方に感謝を。
そしてルースファンの皆様に謝罪を。ルースさん常はまともという事は分かっていますが、最近の巻にカブトムシ成分が足りないので出してしまいました。
あ、ちなみに自分にとってのゆりかはこんな扱いなので、こちらも一応謝罪をしときます。
そんなこんなで、こんな日常をいくつか書いていきたいなと思っています。
応援はあったら嬉しいですが、それ以上に六畳間に興味を持ってssを書いてくれる人が増えることを願っています。
どうぞこれからもよろしくお願いします。
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