六畳間を広げよう   作:猫月

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エイプリルフールですしね。

正直失敗したぜー!!バックしてもよろしいですよ。ってほど六畳間らしさがないですw


とある嘘の日

 

 

 

「この場に集まる全ての者たちよ。我らはこのままあいつを見逃していいものだろうか!?」

 

カーテンを閉め切り、暗くなった部屋の中に幾つかの影がうごめく。

その影の一角の言葉に、残った他の影全てが唸りを上げて気勢を発した。

「「否!!否!!否!!」」

「そうっ!!断じて否だっ!!我らはあの物を許してはならないっ!!学年初からの4人の転入生も、秋に入った藍華さんも、全て全て奪い去っていったあの者をっ!!裏切り者の――里見孝太郎をっ!!」

「「里見孝太郎に裁きの鉄槌を!!里見孝太郎に裁きの鉄槌をっ!!」」

「ならばよし。その意気やよし!!我らの恨み、かの者に必ずや晴らそうっ!!今ここに四月馬鹿作戦を発動するっ!!」

まとめ役の影は周りの影を纏めると、懐から一枚の手紙を取り出して掲げる。

 

その桃色の可愛らしい便箋を。

 

 

 

 

 

六畳間を広げよう 4  とある嘘の日

 

 

 

 

 

可愛らしい桜色の便箋を手に、里見孝太郎は悩んでいた。

その便箋と悩み事を手にしたのは、学年末の最後の授業の日に遡る。

三月最期の修業式の日に、机の中に入っていた――のではなく、マッケンジーに手渡されたのだ。

「指定された日時に必ず答えを返すこと!!」

そう強く言い渡しながら。

中に入っていた手紙の内容は、奇をてらした物や不幸の手紙なんかではなく、単純で純粋な想いがつづられた手紙。

一年よりも前。中学生の頃に二年間仲間だった、一つ下の野球部マネージャーからの手紙。

『ずっと貴方のことが好きでした』と書かれたラブレターだった。

「まいったなコレは…」

珍しく一人きりの六畳間で、孝太郎は便箋を裏表と揺らしながら頭を悩ませる。

女の子に告白された事の少ない孝太郎にとって、真正面からの告白はコレが五人目だった。

そのうちの三人は保留を許されており、返事を返さないといけない一人目は状況が許さずに断る事となった。

だから保留もその場に流されるのも出来ず、自らの意思で返事を決めないといけないのはコレが初めて。

 

――相手のことはよく知っていた。

 

大人しめであまり喋らないけど、笑顔が可愛らしい一つ下の後輩。

いつも一生懸命で嫌な顔をせず雑事をこなし、練習量やスコアなどを書き留めてくれていたマネージャー。

部活が終わった後の自主練習も、一緒に手伝ってくれた仲間。

中学三年間の野球人生の中で、二年もの間常に一緒に居た彼女。

孝太郎はてっきりマッケンジーの事が好きなのだと思っていたが――そうじゃないと。

ハッキリと書かれたラブレターに、どう返事を返すべきか悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

主が一人足りない六畳間で、六人の少女たちが卓袱台を囲んでいた。

この建物の住人である六人の少女たちは、額に冷や汗をにじませながら、今から重大な会議が始まるかが如く、緊張した顔もちを見せた。

 

そして囲まれた卓袱台には里見孝太郎様へと書かれた、薄紅色の便箋。

 

今朝早く、玄関の淵へと落っこちていた物だった。

きっと出かける間際に、孝太郎が落とした物だろう。

 

「なるほど。コレが孝太郎を悩ませていた原因か」

 

キリハは便箋を手に取ると、慎重に裏表を確認する。

其処に書かれていたものは少なく、孝太郎へという受取人の名前だけ。

「便箋には差出人の名前は書いてないようですね」

「うむ。じゃが、わらわたち以外の人物がコータローの事を好きになるとは……盲点じゃった」

相手の把握をするルースに続き、嬉しそうな心配そうな声を上げるのはティア。

孝太郎に想いを告げていて保留されている二人にとって、孝太郎が好かれることは嬉しかったが不安も煽られた。

「だがそこまで不安がることもあるまい。孝太郎が我らを無視して他の者と付き合うとは思えぬ。付き合うとしたら、我らの想いに何らかの答えを出してからだろう。その辺りはしっかりとした男だからな」

「それもそうじゃったな」

「はい。サトミ様は義理深い方ですから」

好意をハッキリと示しているもう一人の人物。キリハの言葉にティアとルースは納得したように頷いた。

『そうね。その辺の心配はしなくていいと…で、コレはどうするの?』

意見がまとまり少女たちの緊張が解れたためか、危険物のレベルが下がった便箋を早苗が指差す。

「コータローは信じられる。そう結論づいたのじゃ、元の場所に戻せば良いのではないか?」

「そうですね。少なくともサトミ様のプライバシーを侵害する事になりますし」

 

至極全うな意見を出したティアとルースに対し、悪い虫を燻らせたのは静香だった。

 

「けど、気にならない?里見君を好きって子のこと」

年頃の女の子らしく、恋バナが好きな静香が周りの少女の邪心を煽る。

それにいの一番に乗っかったのは、この中で二番目に幼い早苗だった。

『あたしは気になる!!』

ポルターガイストで便箋を持ち上げると、ペリッと封を解いてしまった。

「や、やめましょうよ早苗ちゃんっ!!」

そこから先を慌てて止めたのは、予想外にもゆりかだった。

えも言えぬもやもや感を胸に抱きながら様子を見ていたゆりかだったが、なんとも嫌な近親感を抱いていた。

 

数ヶ月前に同じような事で痛い目を見た覚えが――と。

 

「里見さんの事だからこの前みたいにカブトン―――っ!!」

『馬鹿ゆりかっ!!その名前は言ったら駄目だって、何度言ったら分かるのよっ!!』

六畳間における忌み名を口走りそうになったゆりかに、バシリと便箋が当たり口を塞がれる。

口を閉ざす事に成功した早苗だったが、ポルターガイストでぶつけられた便箋はすでに開かれており、パラリと一枚の紙が落っこちた。

 

二つに折られた紙には、黒のマジックの走り書き。

 

『期待したか馬鹿め。裏切り者のお前にはこのぐらいがピッタリだっ!!』

 

悪意の篭もったその走り書きに、嫌悪感を抱きつつもゆりかが折られた紙を開く。

 

走り書きがあったのは印刷されたプリントの裏地。

 

そしてプリントの表には、大きく拡大された、皆のヒーロー―――

 

「だっ、誰だこんな物をよこした奴はっ!!?」

「へっ、へっ、ヘラクレスちゃんっ!!また出てきてしまったようねっ!!」

 

珍しくキリハを含む罵声の言葉とともに、今日もまた一人の少女が覚醒した。

それは新しい春が始まった、最初の日の出来事。

 

 

 

 

 

「ここか…」

 

便箋に書かれた日時。孝太郎は約束の場所へと到着した。

 

そこは孝太郎が通ってた中学校の、部活帰りに良くよった公園。

近くのコンビニで暑い日はアイスを、寒い日は肉まんを買い、寄り道した場所。

孝太郎とマッケンジーと、後輩の二人のマネージャーと語り合った場所。

 

「先輩、お久しぶりです」

入り口から見えるベンチに座った少女が、こちらに気が付いて小さく手を振る。

最後に見たときよりも大人びただろうか。

肩まで伸ばした黒髪を持つ少女は、昔のように可愛らしく微笑んだ。

 

「…おう」

 

それが懐かしくて嬉しくって。

 

それでもこれから言う事が辛くって。

 

少女よりも、彼女たちを選んだ孝太郎の喉からは、嗄れたようなそんな一言しか出なかった。

 

「先輩……」

 

少女は孝太郎の様子を見て、一度顔を伏せる。

そんな少女に孝太郎は言葉を投げかけようとした。手紙を貰ってからずっと考えてきた言葉を。

「手紙さ。読ませてもらった。けど俺には―――」

「先輩。今日何の日か知ってますか?」

その言葉を遮って、少女は孝太郎に訊ねる。

だが少女の質問の答えは、孝太郎には思いつかなかった。

 

「今日?春の選抜とは違うしな…何かの記念日だっけ?すまん…分からん」

「四月一日。エイプリルフールですよ先輩。だからそれ…冗談です」

 

便箋を指差しながら、少女はそう言って小さく笑う。

 

「冗談って…お前な、ここ一週間真面目に悩んだじゃねぇか」

少女の発言に驚きに目を丸くした孝太郎は、小さく悪態をついた。

少女はその姿にも嬉しそうに笑う。

「ふふっ…本当は、高校に上がる前に一度お話したかっただけですよ」

「そうかよ…それで何を話したいんだ?」

「そうですね。先輩が居なくなってからの一年間の話と、先輩の一年間を聞きたいです」

「長くなりそうだな」

 

そう言いながら、孝太郎は少女の横へと腰を掛ける。

彼女の想いを否定するという辛さはなく、昔に戻ったような気分で一年ぶりの話を始めた。

 

 

 

 

 

「じゃあまたな」

「それでは先輩。また」

夕暮れを向かえ、公園から去っていく孝太郎を少女は手を振って送り出した。

彼の背中が見えなくなると、ようやく振っていた手を下ろす。

 

「それでよかったのか?返事、聞かなくて」

「はい。里見先輩は一週間も私の事で悩んでくれたから、それだけで十分です」

狙いすましたように出てきた少年に、少女は笑顔で答える。

「だから言ったろ。コウはもう無理だって」

「分かってました…それでも、一度くらいは先輩の思いを独占したかったですから。それよりも、そんな所に隠れてないで、一緒にお話してくれても良かったんですよ。マッケンジー先輩」

一滴だけ嘘じゃない涙を流して笑う少女を見て、マッケンジーは苦々しくも呆れたように溜息を吐く。

 

「コウの女泣かせめ…」

「ふふっ…まったくです」

小さく呟いたその言葉に少女は頷く。

少女の意中の少年はもう、彼の家に着いたのだろうか。

マッケンジーは悪態を吐きながらも、親友と、親友に振られた少女のことを思うのだった。

 

 

そんな、自分に嘘をついた嘘つきたちの、嘘つきの一日は暮れていく。

 

 

 




というわけで、エイプリルフールネタでした。
本当はクラスメートが仕掛けた嘘の告白!!をメインにしようかと思ったけど、侵略者の少女たちはたぶんデバガメしないだろうなと考えてやめ。
そういえば、コウのことを好きな子って他にいるだろうなと考え、そして見守るマッケンジーを書きたかったのでこうなったw

侵略者の少女のオチは適当。安価のカブトムシ。ほんと考え無しでごめんなさい!!

ちなみに本編だと早苗ちゃん事件簿でエイプリルフールの暇なんか無いのでまったくの番外編です。知らないわけではないのですよと悪しからず。
それでは又ネタが思いついたときに会いましょう。

読んでくださって本当にありがとうございました。あと、感想を下さったかた本当にありがとうございました。
どうか六畳間が広がりますように。
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