プロローグ「欠けたカケラ」
ある日の朝、彼はいつもより少し遅く起きた。
学校が休みなのでのんびり眠っていられたためである。
「ん~…まだ眠いかも…」
休みだからって夜更かししてテレビなんか見るんじゃなかったなぁ…と彼、前原圭一は寝ぼけ眼を擦りながら布団をたたみ、自室を出ると階段を駆け下りて急いで居間へと向かった。
「ハラ減ったー!飯まだー?」
ドアを開けてすぐに、圭一はいつもなら台所で朝食を作っているであろう母親に向かって声をかけた…つもりだった。
「あれ…いないのか。」
特に疑問に思う事もなく、圭一はテーブルの上にも朝食らしき物がない事を確認すると、キッチンの下のドアを開けて中を漁りだした。
「確か買いだめしたカップめんがあったはず…」
と呟きながら漁っていると、ようやく目的の品物が見つかった。
しかしその途端、圭一の嗅覚に凄まじい悪臭が襲いかかった。
(く…腐ってる!?)
圭一は鼻を摘みながらカップめんのパッケージを覗く、賞味期限は切れていないし、カップめんが腐るなんてどんなに放置していたんだ…と疑問を感じ始め、ふとカレンダーに目を向けた。
そこには、圭一の知らない「平成」と言う年号が記されていた…
圭一は赤いタンクトップに茶色の短パンという圭一にとっての普段着に着替え、家の外に飛び出し、自転車を持ってくるとそれに乗って雛見沢村中を駆け回った。
雛見沢村は人口2000人に満たない寒村であるが、道行く先々には田んぼや畑があるため、必ず農作業をしている農家の方々がいるはずである。
しかし、今日は誰一人として人がいなかった。まるで消されてしまったかのように…
だが圭一は自転車を走らせた。
彼が絶対の信頼を寄せる仲間達が集まるであろう場所、雛見沢村の中心にある「古手神社」へと向かって…
圭一は自転車から降り、神社の石段を駆け上がった。
その先には、圭一が予期していた通り、彼が見知っている仲間達が待っていた。
「レナ!魅音!沙都子!梨花ちゃん!!」
圭一はその4人の名前をそれぞれ叫び、彼女達の下に走りながら手を振った。
「圭一君!圭一君も無事だったんだね!?良かったぁ…」
「圭ちゃん!外の様子見て来たよね?」
レナと魅音が交互に圭一に問いかけてくる。
「あぁ、一体どういう事なんだ…人1人いやしない!」
「圭一さんも居なくなったんじゃないかと心配していたんでございますわよ?無事で何よりですけど…」
「みぃ、圭一が無事でボク達は安心したのですよ♪」
さらに沙都子と梨花も圭一の無事を喜ぶ。
どうやら今の雛見沢に残っているのはこの5人だけのようである。
「まさか…みんな鬼隠しにあったんじゃ…」
魅音がふと呟くと、圭一は今朝自宅で見たカレンダーの記憶がさっと思い出された。
因みに鬼隠しというのは、世間一般でいう神隠しの雛見沢での言い回しである。
「魅音…鬼隠しにあったのは俺達みたいだぞ…」
「え?それってどういう事なのかな?かな?」
圭一が手に顎を乗せて呟くとレナが圭一に問いかけた。
「いいか、よく聞いてくれ。
俺達は今ここにいる時代は昭和58年の6月じゃないんだ…。
俺達は今、平成っていう昭和の次の時代に着てしまった…。
少なくとも…俺達が過ごしていた時代から30年近くが経過してるんだ!」
圭一はいつになく真剣な表情で、彼女達に信じがたい推測を述べた。
今回の登場人物(☆は今回初登場)
▼ひぐらしのなく頃に解
☆前原圭一
☆竜空レナ
☆園崎魅音
☆古手梨花
☆北条沙都子