上条side
なんて事だ…
インデックスのおやつを買いに行っている間に何があった…
家に帰るとすぐに俺はインデックスを呼んだ。どうせお腹がすいてくたびれているだろうと直感したからだ。
だがインデックスが俺の下にマッハのごとき速度でやってくる事はなかった。
再度俺はインデックスを呼ぶのだが、インデックスが現れる気配はない。
念のため拗ねてどこかに隠れているんじゃないかと思ってあちこち探してみる。
でも彼女は見つからなかった。
耐えきれずに出て行ったのかと思ったが、あいつがスフィンクスを置いて外出するとは到底思えなかった。
そして何よりも、インデックスを探す途中に見つけたこの手紙の中にインデックス失踪の答えが記されていた。
『上条当麻へ
禁書目録(インデックス)はこちらで預かっている。
身柄を返して欲しくば、私が指定した場所に独りで来るように。
誘拐犯より♪』
「…不幸だ」
本当にツイてない。しかもなんでまともな脅迫状に見せかけて最後だけ「♪」が付いてるんだよ…
って、そんな事はどうでもいい。
とにかく、例のごとくインデックスは何者かに誘拐されてしまったようだ。
目的は恐らく魔導書なのだろうが、それならなぜわざわざ俺を呼び寄せる?
それとも、本当の目的は俺…?
それなら上等だ。
関係ないインデックスを巻き込みやがって、絶対インデックスは助け出すし、誘拐犯の思い通りになんかなるつもりなんか全くねぇ。
俺は弱い。だが、俺には唯一宿った力、幻想殺し(イマジンブレイカー)がある。
ステイルの設置していたルーンが作動していない所、家が荒らされた後がない所から、誘拐犯は瞬間移動系の能力者。
ならやることはただ1つ、誘拐犯が考えてるふざけた幻想をぶち殺す!
そう思い立つと俺は封筒の中に手紙とは別に入っていた地図を取り出した。
「…雛見沢村…古手神社?」
そこは学園都市から出て結構近くにある山地の中の集落であった。
こんな村があるなんて初めて聞いたなぁ…
「…とにかく動かないと始まらねぇだろうが上条当麻!!」
そう自分に言い聞かせると、俺はマンションを出た。
学園都市は学園都市内外の行き来の規制がかなり厳しいとされている。
だけど、今まで結構な数の魔術師の侵入を許してしまっている限り、その規制の真偽は疑わしい。
まあそんな事は今はどうでもよく、俺は学園都市内でのIDを持っているため、それを使って学園都市の外へ出た。
雛見沢村は学園都市から出てすぐ、山地の中の舗装道路を登った先にあるらしい。
「ちくしょー…思ってた以上に長いな…」
しかも今は夏真っ盛りな8月、太陽の光に当てられ俺の体力は凄まじい勢いで削られていた。
そんな時、後ろから車のエンジン音が聞こえてきた。
気になって振り返ると、そこにはまあ古臭いリムジンが雛見沢を目指して山を登る光景があった。
「なんだなんだ…金持ちが小さな村に用でもあるのか?」
リムジンを見て俺はふと思った事をぼそっと口に出してしまった。
するとリムジンは俺のそばまで来た所でピタッと止まった。
え…なんて地獄耳なリムジン?
「はろろ~ん♪雛見沢じゃ見ない顔ですね。雛見沢に何かご用でしょうか?」
リムジンの後部座席のドアの1つが開くと、中から緑色の長い髪の中学生くらいの少女が出て来た。
「あ、申し遅れましたね。私、園崎詩音と言います。あなたは?」
「か…上条当麻…
って、名乗ってる暇なかった!!」
インデックスが攫われてるんだ!早く行かないと!!
「あ、待ってください!」
そんな俺を詩音と名乗った少女は俺に対して叫んだ。
「俺急いでるんだ!ごめん!!」
「だから待ってくださいってば!急いでいるのなら乗ってください!!」
「えっ…?」
俺は詩音の言葉を聞いた途端、体がピタッと停止した。
「えと…その…助かりました」
「あはは、私より年上みたいなんですからそんな敬語で話さなくても構わないですよー♪」
詩音はそう言うのだが、俺はどうしても縮こまってしまう。なぜなら…
「……」
運転手が怖い!怖すぎる!!
どこの組のヤクザの方ですか一体!?
後ろ姿だけでもよく解る!あれは絶対幾多もの修羅場を乗り越えた漢(おとこ)だ!!
「あ、なるほど…安心してください当麻さん。彼は葛西辰吉と言いまして、私のボディーガードみたいな事をしてくださる人ですよ」
「上条さん…でしたか?よろしくお願いします」
運転中なので葛西さんは俺に背を向けたまま話しているが、彼に先ほどまで感じていた恐怖心は不思議と去って行ってしまった。
「こ、こちらこそ…あの、詩音と葛西さんは雛見沢の住民なのか?」
「うーん…はっきり答えると、違います。でも、半分雛見沢の住民みたいなものです」
詩音は俺の問いにすぐに答えてくれたが、まだ話が続きそうなので俺は黙っていた。
「私達は雛見沢の下にある興宮(おきのみや)という町に住んでいます。まあ、今では学園都市の一部でしょうが」
「はあ?」
彼女の言った台詞の意味が解らない。
今では学園都市の一部?学園都市は確かに出来て歴史は浅いだろう。だが、彼女が生まれた時にはもう学園都市は出来ていたはずだ。
「言った所で、信じて貰える話ではないと思いますが…」
どうやら訳ありのようだ。
つくづく俺は変な事に巻き込まれてしまう体質のようだ。
「実は、私達は今日、つい先ほど…30年前の世界からここに来てしまったんです…」
「30年前から…!?」
にわかには信じがたい……が、ひとまず信じてみようと思う。彼女の言った興宮という場所は確かに今では学園都市の一部に組み込まれている。
「所で、どうしてお前達は雛見沢に行くんだ?」
「えぇ、私の仲間達ももしかしたらこの異変に巻き込まれてしまったんじゃないかと心配で…だから向かっているんです」
仲間…つまり友達を遥かに越えた絆を持っている人達がいるって事か…
「そういう事です。あ、ついたみたいですよ?」
リムジンはいつの間にか神社の境内の前に止まっていた。目の前には石段が神社までそびえ立っていた。
「あぁ!詩音!葛西さん!どうもありがとう!!」
「当麻さん!?私達も行きますよ!」
「すまん!神社には1人でって言われてるんだ!!」
そう言って俺は詩音や葛西さんを置いて真っ先に石段を駆け上がっていった。
当麻がインデックス失踪に気付く前、古手神社ではまだ圭一達部活メンバーが話し合いをしていた。
「とにかく…これからどうする?」
「そうだね…圭一君の言う通り、どうしてこの世界に来てしまったかを考える前に何か行動しないといけないよ!」
「みぃ…ボクはお腹がすいたのですよ」
圭一の話題にレナと梨花が答えるなか、その梨花の言葉に魅音が反応した。
「梨花ちゃんの言う通り、私達は朝ご飯を食べていない。なぜならほとんど腐ってたからね…てなわけで、部長、園崎魅音には提案がある!」
「提案?いったいなんなんですの?」
「先ずは興宮(おきのみや)に降りるのが一番手っ取り早いんじゃない?」
沙都子が問いかけてきたのを待ってましたと言わんばかりに自身の提案を打ち明けた。
因みに興宮とは雛見沢から舗装道路の下り坂を下った先にある小さな町である。
小さな町とは言っても雛見沢とは違い、スーパーやその他様々な店が揃っているため、雛見沢の住民は大体がこの興宮で買い出しなどを済ませているし、部活メンバーも暇な時はよく興宮まで自転車で降りておもちゃ屋などで遊んでいた物である。
「そりゃ名案だぜ魅音!ここで空腹で倒れてしまうよりはマシだ!」
圭一が答えると、部活メンバー達は自分の自転車を取りに行くため、神社の鳥居をくぐろうとした。
するとその時、鳥居の間の空間が裂けるように開いた。
「なっ!?なんなんですの!?」
真っ先に沙都子が驚きの声を上げる。
「目…目玉や手がいっぱい出てるよ…!?」
敢えて「すきま」と表現するその空間の中からは沢山の目玉や手がこちらを覗いていた。
「しっ…誰か出てくるよ!隠れて!!」
魅音は他の四人に対し人差し指を口元に当てて見せると四人に身を隠す事を急かせた。
「そ…そうだな!よし、みんな隠れるぞ!!」
そうして5人はそれぞれ思い思いの場所に身を潜め、すきまの様子を覗く事にした。
「さてと…そろそろやってくる時間ね」
すきまからはインデックスを連れた誘拐犯の女性が出て来た。
「(妖怪って言ってたけど…これは魔術ではないみたいだね)」
インデックスは出て来たすきまを見て自らの脳内の魔導書を検索するが、それに一致する魔術は存在しなかったようである。
「何か考えるみたいだけど、私の考えでも読んでるのかしら?」
「読めるならとっくに読んでるよ…」
そう、彼女の考えはインデックスには一切理解出来なかったのだ。
目的は上条当麻だと言うのだが、殺す気は無いらしく、むしろ何かに利用させるつもりらしいが…それが何なのかが解らないのである。
「インデックス!」
そんな時、石段を駆け上がって当麻が姿を現した。
「とうま!」
「あら、意外と早かったわね」
インデックスと女性も当麻に気付き、それぞれ当麻に対して反応を示した。
さらに、女性はインデックスを連れ、神社の入り口の後ろにまで下がった。
「お前!インデックスから離れろ!!」
「残念だけどそうはいかないわね!」
怒りを露わにする当麻に対し、あくまで余裕しゃくしゃくに女性は対応する。
「一応名前を名乗っておこうかしら。私は八雲(やくも)紫(ゆかり)。妖怪よ」
妖怪?と今までの魔術師とは異なる敵に当麻は焦りを見せた。
「さてと…あなたの幻想殺し(イマジンブレイカー)は私の存在も打ち消せるかしら?」
「…舐めてんじゃねぇぞ!」
紫の挑発的な口調に対し、迫る宿題の期限に焦っていた当麻は右手に拳を作り、振りかぶったまま紫目掛けて走り出した。
「お前が幻想の存在なんだとしたら…その存在ごと、お前の幻想をぶち殺す!!」
当麻がその拳を振りかざした時、紫は不適な笑みを浮かべ、ただ一言「始まるわ」と述べた。
「っ!?とうま!ダメーっ!!」
紫の目的に気付いたインデックスは当麻に対し必死に叫んだ。
しかしその言葉の意味を当麻が考える暇はなく、当麻が振りかざした拳は賽銭箱の手前で何かを壊すような音と共に弾き飛ばされた。
これは当麻の右手が異能の力に触れた時に現れる物であり、それは即ち当麻は紫が仕組んでいた「何か」を壊してしまったと言う事になるのである。
「なっ…!?」
「ご苦労様、この子はお返しするわ♪」
上機嫌な様子で当麻に言った後、インデックスを解放した紫はすきまの中へと姿を消してしまった。
「な…俺は何を壊したんだ?」
「結界だよ」
ただ呆然としていた当麻に対し、インデックスは深刻そうな表情でそう言った。
「何の結界かは解らないけど、多分…本来なら壊してはいけない結界だと思う」
「結界を壊してしまったらどうなるんだ?」
「この世界から隔離されていた空間がこの世界に現れる…って言うのが一番簡単かな」
紫が何の為に当麻に壊させたのかは解らないが、これから何かが起こるのだけは確か…とインデックスは自分の予測を述べた。
「な…何が起きたんだ?」
物影から当麻達のやり取りを見ていた圭一は彼らのやり取りが全く理解出来ず、ついて行けなかったようだ。もちろん、魅音達他の部活メンバーも同様の心境なのだろう。
圭一は少し離れた場所で見ていた魅音に、これからどうするかをジェスチャーで問いかけてみた。
魅音からの返事は「とにかく様子を見よう」と言う物であり、それを理解した圭一も今しばらく様子を物影から観察する事にした。
しかし、そんな彼らの前に予想もしなかった人物が現れ、その人物に真っ先に魅音が反応してしまったのである。
「当麻さん!何かあったんですか!?何か凄い音がしましたが…」
当麻をここまで連れてきてくれた詩音が、当麻の様子を見る為にやってきていたのだ。
その後ろには詩音の警護の為にライフル銃を構えながら葛西が控えていた。
「あ、いや…別に何も?」
「し…詩音!?アンタどうしてここに……あっ」
当麻が詩音に返事するのと同時に魅音が物影から姿を現し、詩音に叫んでしまった。
その直後、魅音はしまったと言いたげな顔で両手で口を塞いだのだった。
「お姉!みんなもやはりいたんですね!!」
結局、魅音の行動により隠れる事を諦めた部活メンバー達も姿を現し、詩音との再会を互いに喜び合っていた。
因みに、詩音は魅音の双子の妹である為、髪型と服装以外は二人は非常にそっくりで、服装などを取り替えれば区別が着かなくなってしまう程である。
「とうま…この女の子達は誰なのかな?」
「へっ…俺だって詩音以外は解らない…って何ですかその黒いオーラは!?」
目の前のやり取りに呆然としていた当麻はインデックスに振り返った途端、一瞬で正気に戻った。なぜならインデックスの体からは黒いオーラと計り知れない殺意が感じられたからである。
「とうまーっ!!」
嫉妬の塊と化したインデックスはそのまま当麻の頭に向けて牙を向いた。
「ギャーーーッ!?不幸だぁーーーっ!!」
当麻の虚しい叫び声と、ひぐらしの鳴き声が雛見沢で見事なハーモニーを奏でていた。
今回の登場人物(☆は今回初登場)
▼とある魔術の禁書目録
・上条当麻
・禁書目録(インデックス)
▼ひぐらしのなく頃に
・前原圭一
・竜宮レナ
・園崎魅音
☆園崎詩音
・古手梨花
・北条沙都子
☆葛西辰吉
▼東方project
☆八雲紫