その高等学校の校舎が立地されている場所は、他の学校のように平地ではなく、周りを木々で取り囲まれた小高い丘の上であった。
もともと昔そこには小さな城が構えられており、立地場所が林に取り囲まれた小高い丘になっているのは敵兵が侵入しにくくするためには好都合だったからなのかもしれない。
校舎近くには第二体育館と部活動や同好会の合宿で用いられる真新しい宿舎があった。その裏には体育の授業や陸上競技、サッカーで用いられるグラウンド、横手には室内プールが設備されている。グラウンドの北側に向うとさらにテニスコートと野球グラウンドがある。それぞれ大きな柵に囲まれているため、学校の敷地全体を取り囲むようにしてある林の中に誤って飛び込んでしまうという事態がそうそう起こらないようになっている。
グラウンドの東に進んでいくと、林の中に歩きやすいように整備された道がある。そこを歩いていくと、やや大きめの池と古ぼけた宿舎がある。池はこの場所に城が構えられていた頃からあるという歴史がある。だが、噂では城が落とされた時、命かながら逃げ延びた者たちが入水自殺を図った場所でもあるとのことだ。今もこの濁った池のそこには自殺を図った者たちの遺骨が沈んでいるかもしれないということだった。しかし、そこが濁って見えないことや底なし沼のようなものであることから、生徒が必要以上に近づくことは禁止されていた。そして、そんな不気味な噂のあるいけのすぐそばにはその学校が創立した当時に同じように設置された旧宿舎と呼ばれる建物があった。とはいえ、百年近い歴史をもつ伝統のある高校であるため、旧宿舎自体も相当以上の年季の入っている建物で、耐震的な問題もあり、十年以上も前から利用されておらず、その代わりに新設の宿舎が校舎と第二体育館近くに設置された。これまではそれらから離れすぎているという立地条件的な問題もあったのだ。そうなってしまえば旧宿舎と呼ばれていても、もはやそれは廃屋でしかない。池の不気味な噂とも相まってか、いつの間にか幽霊宿舎と生徒たちの中では呼ばれるようになっていた。
どの学校にも七不思議というものが存在する。
事実この学校にも七不思議が存在していた。
一つ、夜遅く、音楽室のピアノが一人でに鳴りだし、鍵盤が血で染まるということ。
一つ、雨の日、特別教室棟の非常階段が無限階段になるということ。
一つ、化学室のホルマリン漬けにされた物が動き出すということ。
一つ、トイレの花子さんがいるということ。
一つ、旧宿舎近くの池の水面から入水自殺した者たちの腕が現れ、引きずり込まれるということ。
一つ、夜遅く校舎には人間を引きずりまわして殺そうとするひきこさんが現れるということ。
一つ、旧宿舎の最奥にある部屋は開かずの間となっており、地獄に続いているということ。
旧宿舎付近については、それが宿舎として利用されていた頃から、そこには幽霊が出るという噂があったという。
ある者は、池の水面から無数の青白い腕が出たのを目にしたという。またある者は、その池に入水自殺した者の霊魂と思われるものを見たという。さらには、廊下や寝室に全身に刀傷や屋を受け血だらけの状態でいる落ち武者や頭から水を被ったように全身水浸しで、腐敗した身体の女性の姿を見たという者も昔の卒業生にはいたようだ。
そんな不気味な旧宿舎であるが、一つだけ噂ではない事実があった。それは宿舎の最奥にある一室のドアだけが鉄製で厳重にカギだけではなく南京錠もかけられているために開かずの間となっているということだ。特殊な鍵を使われているためか外側の南京錠を解除したところでどうしようもなかった。
昔からその開かずの間には何があるのだろうかと知ろうとした者たちが大勢いたらしい。しかし、その硬く閉じられたドアの向こうに一体何があるのか、それを知る者は誰一人としていなかった。
なぜならそれを知っている者たちが、誰一人としてこの世に存在していないからだった――。
*
歴史ある場所に百年の伝統を誇るN高等学校がある。
小高い丘にあるため、毎朝生徒たちは長く急な坂を上ってこなければいけなかった。
学校が林に囲まれているため、四方八方から生命の叫びともとれる蝉たちの大合唱が響き渡っている。
日中は季節が夏にあたる七月であるためにうだるような暑さであったが、夕方頃になると、周りが林であることもあってか大分気温も下がり、過しやすくなっていた。
時刻はすでに放課後を指しており、部活動に参加している生徒以外はほとんど帰宅の途についてしまっていた。
季節もあるためか、まだ空は日中と同じく青空のままで、風が少ないためか、真っ白な雲がゆっくりとした流れに乗って移動しているのが見える。
グラウンドを見れば、トラックを陸上部の生徒たちが、内側ではサッカー部の生徒たちが汗を流しながら走っている。さらに奥に行けば、野球グラウンドとテニスコートがあり、それぞれの部活の生徒たちが声を出して練習に励んでいる姿が見られる。
文化系の部活は吹奏楽部や演劇部があるが、それぞれの活動場所があるたった。
そのため、教室棟や三階の特別教室棟にはほとんど人気がなくなってしまう。
しかし、教室に残って雑談をしていく生徒たちも少なくはない。
二年生の教室は教室棟の二階にあり、例にもれず日中の騒がしさが嘘のように消えており、水を打ったような静けさが空間を支配していた。
だが、そんな静寂を破るようなけたたましく机や椅子が倒れる音とともに、女子生徒のものと思われる金切り声が聞こえた。
各学年五つのクラスに分けられており、一つが就職や専門学校がメイン、残りの四つはそれぞれ文系と理系に分かれていた。その内の一室、理系に属する二年二組の教室から騒がしい声と音が聞こえてきた。
教室では数人の女子生徒が放課後である今も残っていた。
しかし、年頃の女子生徒らしく楽しそうな雑談をしている様子は一切なく、一人の女子生徒が床に倒れ伏しており、彼女のことを取り囲むようにして数人が見下すような視線を向けていた。
「やめて、もうやめてよ……」
涙声で、しぼり出すように助けを請う。
だが、そんな彼女に対して無慈悲な蹴りが腹部に突き刺さる。
身を守るようにして身体を小さく丸めるようにするが、その上から容赦ない蹴りが彼女の身体を襲う。痛みでボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちる。雫が床をぬらしていく。頬に走った涙の跡に髪の毛がまとわりつく。助けを求める意味で泣き叫びたかったが、あまりの恐怖に喉の筋肉が硬直してしまい声が出なかった。
「うわ、キッモ。顔涙と鼻水でグチャグチャじゃん」
「うわー、汚い。それにクサイし」
連日続けられる暴力を伴ったいじめによって、床にされるがままになっている女子生徒が声を出せなくなっているのを彼女たちは知っていたため、さらに行為がエスカレートしていた。
無抵抗のまま暴力の的にされている女子生徒に対し、彼女たちは呼吸をするように罵詈雑言を吐き出す。それらが彼女の心をさらに深く傷つける。何度も聞かされた言葉が耳にこびりついて離れない。
長く艶のある美しい髪だった彼女のそれは、いじめからのストレスからひどく痛んだものへと変貌してしまっていた。
一人の女子生徒が腰まで届くほどある彼女の髪の毛をむんずとつかみとると、無理やり引きずるようにして彼女のことを教室から出した。彼女もこれからされることをすぐさま察して、じたばたともがくように抵抗するが、手足をガムテープでがっちりと固定されているため、動かせるのはわずかな範囲だけだった。抵抗は徒労に終わる。
身体の筋肉は鍛えることはできるが、頭皮はどうすることもできないものだ。力任せに引きずられ、頭には彼女の全体重がかかり、口からは声にならない悲鳴がもれる。
そんな惨めな姿を、横から見下すようにして女子生徒たちが嘲笑してくる。
そして、彼女たちは二階から一階へ下りる階段へとたどり着く。角度があり、段数もあるため運が悪ければ大怪我だけでは済まされないかもしれない。だが、いじめている女子生徒たちにとって、痛みに悶え苦しむ彼女の姿は非常に興奮を感じさせてくれるものだった。一度弱みを握ってしまえば、どんな人間であろうとも逆らうことはできず、従順にならざるを得なくなる。ここで大怪我をおったところで、気の弱い彼女が今さら真実を口にするとは考えられない。適当に転んだなどと言い訳をしてくれるだろう。
ここまで引きずってきた女子生徒がつかんでいた髪を離す。何本も抜け落ちた長い髪の毛が手のひらについたままだった。それを汚らしいものを扱うように叩き落とし、近くの水飲み場の水で手をきれいにした。
「あんた、ちゃんとお風呂に入ってる? さっきも言ったけど、本当にクサイし、汚い」
そう言いながら、掃除用具の入ったロッカーを開け、そこからアルミ製のバケツを取り出すと、その中に大量の水を入れ始める。
ばしゃばしゃというバケツのそこを叩く音だけが、静まり返った教室棟に無常なまでに響いていた。
「安心しなって、うちらがきれいにしてあげるからさ」
「そうそう、ならまずは服を脱がないとね」
一見親切そうに感じられる言葉でも、いじめられる彼女にとっては死の宣告にも等しいものであった。
抵抗しようと身体をあばらさせるが、その度に黙らせようと彼女たちから激しい暴力がぶつけられた。手足や身体だけでなく、顔にも躊躇なしにぶつけられた。今日も固いつま先が鼻先を蹴る。何度も蹴り続けられた鼻が、とうとう鈍い音を立ててありえない方向に折れてしまった。
どろりと赤黒い血が流れ、口の中に入ってくる。生臭く、鉄の味がした。
着ていたセーラー服は無残にも引き剥がされ、スカートも脱がされた彼女は下着を身につけているだけの状態になっていた。外とは無縁の吹奏楽部に所属しているためか、彼女の身体は陽の光を知らぬ白磁器のような肌をしていた。そのためであろうか、さきほどまではセーラー服に隠れて見えなかった彼女の身体には、無数の痛々しい青紫色に腫れ上がった打撲の跡があり、より強調されて見えた。
あられもない姿を晒している彼女を、女子生徒たちは階段の踊り場から何の躊躇もなく蹴り落とした。手足を拘束されているために、まったく抵抗も受身も取ることができないまま、段差に何度も叩きつけられながら下の踊り場まで転落した。
全身が砕けたような激痛に呻き声をもらすしかできない。そんな彼女に対して、水が一杯に入ったバケツを片手に女子生徒が階段を下りてくる。彼女に続くようにして、他の生徒も剥ぎ取られたセーラー服とスカートを持って下りてくる。
「ほら、きれいにしてあげるから感謝しな」
そう言って床に倒れ伏した彼女にバケツの水をぶちまけた。バシャンと水が床を叩く音が響いた。全身が水で濡れてしまった彼女はただただ怯えるだけで、身を縮こませている。
「着替えくらいは自分でできでしょ?」
「赤ちゃんじゃないんでちゅからね~、あははは」
手足を拘束していたガムテープをハサミで切る。ようやく自由になった彼女であるが、逃げ出すこともせず、ただ寒さと恐怖に打ち震えている。そんな彼女にとても明日から着てこられる状態ではないセーラー服とスカートを投げてよこす。
ヒラヒラと虚空を舞い、彼女の濡れた身体を隠すように落ちた。突然の感触に身体を大きく震わせて驚いた。
複数人の足音が遠ざかっていく。
階段の向こうから「また明日も楽しもうね」という残酷な言葉がかけられた。
彼女たちの姿が見えなくなり、足音も聞こえなくなったところで、ようやく彼女は床に横たえていた身体を起き上がらせる。
「床、汚しちゃったな……」
水で濡れているからか、それとも醜い自分がそこにいるからか。きっと彼女たちから見ればどちらもなのだろう。
夏とはいえ、水で濡れた身体は寒さで震えている。水泳の授業があったのでタオルが入っていることを思い出す。身体から水を滴らせながら立ち上がり、切られそうにもない制服の上下を腕に抱えて教室へと戻る。
どうして、いじめられないといけないんだろう……。
彼女、高階唯華はそう自問する。これまで何度もしてきたことだ。しかし、未だに答えが出たことはない。
突然彼女たちいじめグループに目をつけられ、そして、今日のようにいじめられるようになった。
初めこそは小さな嫌がらせ程度であったが、大人しい性格が災いしてか、あまり抵抗もせず、気にする素振りを見せなかったことがつまらないと思ったのだろう、いじめの度合いが徐々にエスカレートしていき、今では今日のように暴力は当然のようにされるようになっていた。
教師や両親に相談することも考えたが、いつかのいじめの最中服を剥ぎ取られ、今日以上の恥ずかしい状態で写真を撮られ、誰かに相談した時にはそれをみんなにばらすとおどされていたため、どうしてもできないでいた。それに、彼女の父親が勤めている会社が、いじめグループのリーダーであるが飯島由佳の父親が社長をしている親会社の子会社だったのだ。もし相談し、事の事態が晒されてしまった時には父親にも迷惑をかけてしまう可能性が出てしまう。それが申し訳なく、とても相談する気にはなれなかったのだ。
いつまで続くのだろうか、この地獄のような日々。
この苦悩を打ち明けられず、家族にも隠し続けなければいけない。
板ばさみになっている状態。だが、自分が耐え続けていれば誰にも迷惑がかからない。
いずれ彼女たちも自分をいじめることに飽きてくるだろう。そうすれば、もう耐え続けることも、両親に隠し続けるということもする必要もなくなる。
そう、自分さえ耐えていれば……。
しかし、それは自分をすり減らすこと。耐えている間にも、彼女の心は傷ついている。
もし、自分がこの辛さを耐えられなくなったらどうすればよいのだろうか。
自殺をするか、それとも――
「――あいつら、みんな死んでしまえばいいのよ」
彼女たちが死ぬかのどちらかなのだろう――。
*
すっかり遅くなってしまった。
季節は夏であるが、時計の針が七時を回ってしまえば当然のように辺りは暗くなってくる。 遅くまで練習をしている部活動もあるが、それは野球部に限られており、ほとんどの部活は終了し、生徒や教師は帰宅の途についてしまっている。
そのため、借りていた音楽室を後にすると、学校全体が日中の騒がしさが嘘のように静まり返っており、まるで眠りについているような感じであった。
学校自体が林に囲まれており、夜になると闇の深さが増すためか、夜の学校がもたらす独特な不気味さがより一層際立っていた。
式宮古がピアノのレッスンを終えたのはちょうど七時になる少し前だった。
彼女が使用していた第二音楽室は特別教室棟の三階にあった。吹奏楽部が使用する第一音楽室は二階にある。第二音楽室はもともと創立当時から何年か前まで部活として機能していた合唱部が使用していた教室だ。しかし、今では指導者もおらず、そもそも部員が一人もいないということで、事実上廃部の状態にあった。普段はほとんど使用されていない教室であるが、宮古のようにピアノを習っており音楽コンクールに出場しようと思っている生徒には無償で貸し出されていた。吹奏楽の顧問をしている音楽科の教師がマンツーマンで指導してくれた。
その音楽科の教師が吹奏楽部の指導に戻り、そのまま帰宅してしまった後も納得が行くまで練習を続けていた。一息ついていた頃に母親からそろそろ帰宅したらどうかというメールが入ったので、練習を切り上げ帰宅するために生徒玄関に来ていた。
「あ、あれ? 携帯がない」
玄関を出たところで、両親に迎えを呼ぼうと思い携帯電話を取り出そうとしたのだが、なかなか見つからない。最後に携帯電話に触れたのが第二音楽室だったので、そこに忘れてきてしまったのかもしれない。
向こうの野球グラウンドには照明が点き、部員たちの叫ぶ声が聞こえてきているが、学校自体はほとんど明かりが点いておらず、おそらく残っているのは学校に泊り込んでいる用務員の男性くらいだろう。
夜の静まり返った学校というのは、どうしたわけか不気味な印象を与える。
どうしても何かが出てくるのではないか、と不安と恐怖が自然を生まれてしまう。
できれば戻ることは遠慮したい気持ちの方が強い。しかし、携帯電話が泣ければ両親と連絡を取ることもできない。徒歩で帰るにも、あまりに距離がありすぎて、家につく頃には両親がカンカンになって待っていることだろう。仕方がないと思い、宮古は来たところをまっすぐ戻り、三階の第二音楽室へと向うことにした。
――校舎内は明かりもなく、やはり静まり返って不気味だった。
何とか目を凝らせば見える程度で、うっかりしているとなにかにぶつかってしまいかねなかった。生徒玄関から特別教室棟に向かうためのドアがすでに閉められていたため、遠回りになるが教室棟から渡り廊下を通って向うことになった。
三階まで上がり、そのまま渡り廊下を通ろうとしていた。
すると、特別教室棟の方から何かが聞こえてきた。
それの正体がピアノの音色であることにすぐに気づいた。最後に音楽室を使用したのは自分であるが、その後に誰かが入った気配などなかった。そもそも自分以外そこを使用することを予約している生徒はいなかったはずであるし、この時間帯を考えればありえないことだった。
ここで宮古は最近校内で噂になっている学校の七不思議について思い出していた。
七不思議の一つが音楽室に関係していることだったのだ。
夜遅くになると、音楽室のピアノが一人でに鳴りだし、さらに、鍵盤が血で赤く染まるというものだった。
宮古はあまりその類は信じない方であるが、本能的に恐怖を感じていた。
しかし、携帯電話が音楽室にあるのは間違いない。行きたくないことは山々であるが、このままでは家にも帰られないので勇気を振り絞り、ゆっくりと渡り廊下を歩き、音楽室へと向うことにした。
特別教室棟に到着した。
ここまで歩いてくる間にも、ピアノが奏でられる音は途切れることがなかった。
しかし、聞いていると素直に上手だと思えた。
微妙な気持ちのまま音楽室の前に立つ。
やはりピアノの音色はこのドアの向こうから聞こえている。
明かりが点いていないことから、音楽いつに誰かがいるわけではないことは分かる。
七不思議どおりであれば、それは遭遇者に危害は与えないはず。
おっかなびっくりにドア開けて中を覗く。
中は真っ暗で、正面奥に見えるガラス窓だけがはっきりと形が分かる。壁に張られている有名な音楽家たちの顔写真があるが、この時ばかりはこちらに視線を向けているようにしか感じられない。できるだけ意識せず、携帯電話を探そうとする。
出入り口のすぐ近くに電気のスイッチがあるため、それを押して電気を点ける。点かなかったらどうしようかと思ったが、それは杞憂だったようで何度かの点滅の後に今日室内を明るく照らすように点灯した。
明かりが点いたにもかかわらず、ピアノの演奏は続けられている。宮古はそのピアノに視線を向けた。するとそこには一人の女子生徒が座っており、一心不乱にピアノの鍵盤を叩いている姿が見えた。
しかし、宮古はすぐに違和感を感じた。それの正体はピアノの鍵盤に手を置いていながらふたが閉められているというものだった。
まるで演奏中に蓋を叩きつけられたのか、両手の爪はすべて砕けており、そこから血が流れ出していた。しかし、演奏する手を止めないでいるため、ピアノの鍵盤はまるで血があふれ出しているかのように真っ赤に染まっていた。慌てて宮古は彼女の手を止めるために肩に手を置いて、やめるように声をかける。そして、一体誰なのかと顔を覗きこんだ。
「いやああああああっ!?」
演奏し続けている女子生徒の顔を見た宮古は弾かれるように悲鳴をあげ、床に倒れながら後ろに下がった。
その際に手を女子生徒の方にひっかけてしまったためか、ずるりと鍵盤から彼女の手が離れ、バランスを崩した彼女は椅子ごと床に倒れた。
床に仰向けになっている女子生徒は、全身が石になってしまったかのように腕を天井に向けて突き上げた硬直した状態でいる。それはまるで名状しがたい恐怖体験をしたのかのようであり、目を見開き、顔面蒼白の死亡した状態でそこにあった。
はじめての方は、はじめまして。
いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。
クレナイです。
TRPG作品としては4作目になりますが、今回はクトゥルフ神話TRPGとペルソナシリーズのクロスオーバーとなっております。
まだオープニングフェイズと始まったばかりですがいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
ダブルクロスの作品も少しずつ執筆を進めていく予定です。こちらの作品と平行して完結目指して頑張りたいと思います。
ここまで読んでくださった読者のみなさまに、無上の感謝を、変わらず。
それでは、また次回。