扉を開けると
『ダァァーーリィーーン』
不愉快な野太い声の大合唱が聞こえてきた
「--失礼。忘れてください。とにかくよろしくお願いします」
この声の元凶を探してみると下手な作り笑いでごまかしながら座ろうとしている知り合いが目に入った。
「おい、明久。お前はまた何馬鹿なことしてんだよ」
こいつは吉井明久。俺の友達の一人で学園一のバカと言っても過言ではないと思う。ちなみに頭よりも行動のほうがバカなタイプ。
「ん?えっ!浩輝じゃん!なんでこんなとこにいるの?」
「あー。そのあれだ。めんどいから試験サボったんだよ」
教室を見渡して教室の質の悪さに落ち込んでいると、覇気のない声でこのクラスの教師であろう人に呼ばれた
「ちょうどいいです。今みなさん自己紹介中ですのでお二人もどうぞ」
「はい。加藤浩輝だ。一年間よろしく頼む」
「櫻井みなみです。一年間よろしくお願いします」
適当に挨拶をして空いてる席を探してそこに向かうとまたも知り合いがいた。
「よう雄二。お前なんでこのクラスにいるんだ。お前ならDクラスくらいなら行けただろ。俺と同じでサボったのか?」
こいつは坂本雄二。昔は神童とか呼ばれてめちゃくちゃ頭がよかったらしいが中学頃から喧嘩に明け暮れて、今じゃどこにでもいそうなレベルの頭だ。ただ頭の回転は速いから作戦立てとかさせたら強い。
「お前と同じにすんな。俺はこの最底辺クラスでちょっとやりたいことがあったからこのクラスに来たんだ。まあお前らが来てくれたおかげで少しやりやすくなったがな」
「まあその辺はどうでもいいんだがこのクラスの設備ひどすぎないか」
俺は周りを見渡す。汚れて使いにくそうなちゃぶ台に座布団、そのうえ少し異臭のする畳。俺は気にならないけど櫻井さんがかわいそうだな、女子も一人しかいないし。
「ま、その辺のことはおれの自己紹介の時にでもはなしてやるよ」
「ふーん。そっか。じゃあ楽しみにしてるぜ
俺がそういうと雄二は少し驚いた後楽しそうな顔になって聞いてきた
「なぜ俺が代表だと分かった?」
「まあ少し考えればわかりそうなことだけどな。お前も隠そうとしてなかったし。ま、一番の理由はお前がわざわざこのクラスに来たのに一般兵の地位に甘んじることはないだろってことだな」
そんなことを話していたら突然ガラリとドアが開き
「遅れて、すいません」
ちょっと疲れて見える女子生徒が現れた
『えっ?!』
誰ともなくクラス中から驚きの声が上がった。それもそのはず彼女、姫路瑞樹は一年の時テストごとに学年一桁の成績を修めていた生徒だからだ。
「ちょうどよかったです。今自己紹介中なので姫路さんもお願いします」
「は、はい!姫路瑞樹といいます。よろしくお願いします」
「はい!質問です」
前のほうに座っている奴が手を挙げる
「なんでここにいるんですか?」
それは聞き方によってはとても失礼になることにあの生徒は気づいているのだろうか?
「そ、その、試験中に高熱を出してしまい……」
その言葉にクラスの人たちは『ああ、なるほど』と納得していた。試験途中での退席は0点扱いとなるのでここにくるのは必然といえた
その言葉を聞きクラスの奴らからも声が上がる
「そういえば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」
「化学だろ。あれはむずかったよな」
「俺は弟が事故にあったと聞いて実力が出し切れなくて」
「黙れ。一人っ子」
「前の晩彼女が寝かせてくれなくて」
「今年一番の大嘘をありがとう」
予想以上にバカしかいなかった
そんな中姫路さんは雄二と明久の間の唯一の空いてる席に座ろうとしていた
もう興味のあることもないし本を読んで雄二の番を待ってようとか思ってたら、なぜか教卓が壊れて先生が代えを取りに外にでた。それと同時に明久が雄二を連れて外に出ようとしていて、俺は何か楽しいことがおこる気がしたからこっそりついて行った。
外に出ると明久が雄二にAクラスに対して試験召喚戦争を仕掛けようと持ちかけている。俺はそれを聞いて疑問点があった。明久は勉強する気がないから設備なんかどうでもいいはずなのにということだ。雄二も気になったらしく聞いていた。それに対し明久は良い言い訳を思いつかないのか唸っている。仕方ないしたぶんこれだろと思える理由も思いついたからちょっといじってみるか。
「姫路のため、だろ」
「ど、どうしてそれを!ってか浩輝。驚くからいきなり声かけないでよ!」
「わりぃわりぃ。で、どうなんだ?正解か?」
「ち、違うし。そんな理由じゃ-」
「はいはい。ごまかさなくていいよ。見てればなんとなくわかったし。雄二も気づいてただろ」
「まあな。このバカはわかりやすいからな。それに俺自身もAクラスには勝負を挑もうと思ってたしな」
ん?雄二も元から挑む気だった?なぜだ?
「え?どうして?雄二だってぜんぜん勉強しないよね?」
明久と同じことを考えてたってとこは少し癪だがその通りだ。雄二も設備は気にしていないはず。こいつの好きな人はFクラスにはいないし。たしかあの人は頭いいからAクラスのはず。ん?Aクラスは一番頭のいいクラスで、雄二はわざわざ最底辺クラスに来た?その上でそのAクラスに挑むのか。「あ!わかった」こいつほんとにおもしろいこと考えるな。
「ん?何がわかったんだ?」
「あれ。声に出てたか」
「ああ」
「雄二が何でこのクラスに来たかがわかったんだよ」
「へーぇ。聞かせてもらおうか」
雄二がまた楽しそうな笑みを浮かべる。こいつ自分の頭の回転が速すぎるせいで同じくらい頭回る奴見るとめっちゃたのしそうにするんだよな
「簡潔に言うと、学力がすべてじゃないって示したいんだろ」
「あたりだ!Aクラスに勝つための作戦ならもうあるから大丈夫だ。先生もきたし戻ろうぜ」
席に戻ると櫻井さんに今何をしてたか聞かれたが雄二の自己紹介の時にわかるよと言っておいた。じゃ元神童の手腕を見せてもらいましょうかね
「最後にクラス代表の坂本君よろしくお願いします」
雄二は立ち上がるとゆっくりと堂々とした足取りで教卓の前に立ち口を開いた
「俺が代表の坂本雄二だ。代表でも坂本でもなんとでも呼んでくれ」
「さてみんなに問いたい」
ここでいったん言葉を区切りみんなの顔を見回していく。それを見て俺はこいつが神童であったことを再確認させられた。実際騒々しかったクラスがだんだん静かになり、無音になったところでおもむろに口を開いて
「かび臭い教室」
「古く汚れた座布団」
「薄汚れたちゃぶ台」
「Aクラスは冷暖房完備の上リクライニングシートらしいが-」
「-不満はないか」
『『大有りじゃぁぁ』』
「そうだろう。俺もこれには問題意識を抱いている」
「そこで提案だが-」
「-我らFクラスはAクラスに対して試験召喚戦争を仕掛けようと思う」
我らが代表、坂本雄二は戦争の引き金を引いた