このすば世界で趣味と実益を兼ねた魔法武器屋を目指してみる(by元魔王)   作:北南西東

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第一話「世に人は言う。まず何はともあれお金」

 

 まず何においても必要なのは金だ――。元魔王ブラウニングは、テクテク歩きながら考える。現在向かっているのはギルドと言う場所で、何やら職業を斡旋してくれるのだとか。

 とりあえずブラウニングとしては最終的には魔法武具店なんぞをやりながら、この世界にやたらいると言う冒険者達に商売しつつ可愛い嫁さん貰って子供を三人ばかし作って犬を飼い、幸せに暮らすのが目標だ。可愛い嫁さんはいつか探せばいいとして、まず元手となる資金を得ない事にはどうにもならない。

 魔法武具作成のスキルは材料をしっかり揃えないとダメらしいので尚更だ。そんな訳で。

 

「冒険者登録したいのだが……?」

「はい。では千エリス頂戴致します」

 

 到着したギルドの受付で、案の定な事を言われブラウニングはため息を吐いた。勿論、彼は一文無しである。無い袖は振れないので一旦ギルドを出るとさてどうしたものかと考える。

 現在ブラウニングにあるのは魔法武具作成スキル――と、魔王時代の異世界魔法と質量霊力化で得た馬鹿みたいな魔力である。だが後者を使うのはいくら何でも躊躇われた。こう、使うと祭り上げられてこちらでも勇者やら魔王やらやらされそうな予感がバリバリとする。そんなのは御免であった。

 なので使うべきは魔法武具作成スキル。だが、材料がなければ作れるものも作れない。そう、魔法武具だけにこだわるならば。

 

「……まぁ、千里の道も一歩からと言うし」

 

 そう言うとブラウニングはギルドから離れ、民間の方へと向かう。そこで道端にどかっと座ると適当にそこらの木から失敬した枝数本に魔力を込め始めた。

 スキル魔法武具作成。ブラウニングの魔力により様々な材料から錬金術よろしく物を作成するスキルである。そして作れる物は彼のイメージにより決定する。つまり――。

 

 幸運のアミュレット(木):幸運の魔法が込められたネックレス型アミュレット。装備した者の幸運をそこそこ上げる。ただし火属性の攻撃を受けた場合、装備破壊率30%。

 

「まぁ、こんなものか」

 

 アミュレット、と言うよりはアクセサリーである。これと同じものをブラウニングは持って来た枝の分だけ作った。そして、それらを手に立ち上がると早速とばかりにある場所に向かう。それはこの街の魔法道具屋であった。

 

 

 

 

「思ったより売れたな」

 

 何かやたらおしとやかで巨乳のリッチーなんぞがやってる魔法道具屋を出て、ブラウニングはうむむと唸る。何と一つ千エリスでアミュレットが売れた訳だが――彼が当初想定していた値段は百から二百エリス。それを五倍の値段で捌けたので良かったと言うべきなのだが……逆に心配になって来る。まぁ別にいいのだが。

 そんな訳で再びギルドへ向かう。受付のお姉さんはアレな目で見て来たのだが、気のせいと思い込む事にした。

 

「冒険者登録をしたいのだが」

「あの、登録手続きに手数料が」

「千エリスだったな」

 

 懐から金貨を一枚投げて手渡す。先程無一文だった男がどうやってこれを稼いだのかと言う目で見て来たがブラウニングはそれを無視。さっさと話を進める事にする。

 

「で、職業を斡旋してくれると言う話しだったか?」

「あ、はい。ではとりあえずこれをどうぞ」

「ん?」

 

 いきなりスッと差し出されたカードに、ブラウニングは目を細める。これは――。

 

「これで貴方の」

「ステータスが分かり、それで斡旋する職業を決める訳か」

「え?」

 

 説明を引き継いだブラウニングに受付のお姉さんが不思議そうな顔となるが、彼ははぁとため息を吐いていた。

 

 ステータス鑑定書:触れた者のステータスを看破、鑑定し、スキルポイントを決定する。火に弱い紙だから。水にも弱い紙だから。防御力紙、紙だから。

 そりゃあそうだろう。と人知れずブラウニングは頭を抱えそうになる。どうも魔法武具作成スキルは鑑定スキルも同時に兼ね備えているらしい。その点は非常に助かるが……。

 

「あの、どうか?」

「いや……」

 

 鑑定スキルに問題は無い。問題はステータス看破にあった。腐ってもブラウニングは元魔王。全ステータスカンストは当たり前。魔力に至っては全質量霊力化で改造使ったろ? と言われかねないチート具合である。さて、そんな彼がステータスを晒した日にはどうなるか? まぁ間違いなく騒ぎになる。

 

「……一つ、お願いがあるのだが」

「はい、何でしょう?」

 

 苦虫を噛み潰したような表情のブラウニングに言われ、お姉さんが首を傾げる。それに構わず、ブラウニングは頼みを言う事にした。

 

「ステータスが分かっても、どうか騒がないで欲しい」

「それはまた、どうしてです?」

「それは……一度、冒険者を辞めた事があるのだ」

「え」

 

 そんな事出来たかしら――と、お姉さんが思う前にブラウニングは一気にまくし立てる。

 

「根無し草生活に嫌気がさしてな。しかし長年やっていたせいで、それなりにステータスがあるのだ」

「あの、では何故また冒険者に?」

「実は武具屋なんぞをやろうと思うのだが、金が要るだろう?」

「それはまぁ」

「なので手っ取り早く稼ごうとな。元手をとりあえず稼ぎたいのだ」

 

 嘘八百を並べ――いや良く考えたら殆ど本当の事を話しているのだが、ともあれへぇーと納得したお姉さんに、ブラウニングは安堵の息を吐いた。これで騒ぎにはなるまい。

 

「そんな訳で一つ頼む」

「分かりました。では」

「ああ」

 

 ひょいと渡されたカードを改めてお姉さんに返す。それを見て、いきなり彼女は吹き出した。

 

「な、な、ななななななな……!」

「こら騒ぎにしないと約束した筈だ」

「いや、ですけどこれ……!」

 

 ……そりゃあ、尋常では無いステータスが並んでいれば驚きもしよう。とりあえず、しーとジェスチャーし彼女を黙らせる。そして暫くして漸く落ち着いたか、ふぅと一息吐いて彼女は頷いた。

 

「と、とりあえず、このステータスならどんな職業でも可能です。魔力が高い……ので、アークウィザードをオススメしますが?」

「ふむ……戦闘職はあまり、な。先程も言ったが第二の人生をやり直すつもりなんだ。適当に戦闘も可能で、大体のスキルを覚えられそうな職業は無いか?」

「上級職は専門職が基本ですから……そうなると最低職の『冒険者』しか」

「じゃあそれで頼む」

「え……!?」

「それで頼む」

「で、ですけど勿体ない……」

「そ・れ・で・頼・む」

「………」

 

 もはや何を言っても無駄。そう判断したか、彼女は盛大に嘆息すると頷いたのであった。

 

 

 

 

 そんな訳で冒険者デビューを果たしたブラウニングは、手っ取り早く稼げるクエストを探しに依頼が出ていると言う掲示板を見る。

 あのお姉さんの反応ならば大体のクエストを受けても問題なかろうが、騒ぎになってもらっても困る。なので。

 

「とりあえずこれか」

 

 『ジャイアント・トード討伐。三日間の内に五匹討伐せよ』――なるクエストを受ける事にした。

 即効で金を稼ぐにはこれが一番なのだとか。繁殖期に大量に出て来るこのモンスターは金属にも弱いらしい事をギルドで飲んだくれていたモヒカンの兄ちゃんに聞き、ブラウニングはアミュレットを売って得た金でショート・ソードを購入し――即座に魔法武具作成を発動。ちゃんとした材料での魔法武具作成は初だったので相当の気合いと魔力を込めて行った魔法武具作成により、ショート・ソードは見る見る変化した。

 

 長剣ドレッド・ノート(鋼):魔力により破壊力を徹底的に上げられた長剣。切れ味抜群、スパスパ切れます。ただし物理攻撃しか使用不可。破壊確率:5%。

 

「……やり過ぎた、か?」

 

 どうも気合いを入れすぎたか、鋼の剣にしては馬鹿みたいな威力の剣が出来てしまった。まぁいいかと苦笑し、鋼製の鞘(こちらも魔法武具作成でショート・ソードから作った)に剣を納める。これで準備は完了だ。では早速。

 

「蛙狩りに行くとしよう」

 

 

 

 

 ジャイアント・トードが出現すると言う場所にブラウニングは到着するなり、うっすらと目を細める。見た目はただの野原だ。湿地ですら無いのだが、本当にこんな所に蛙が居るのか。

 

「まぁものは試しと言うしな」

 

 そんな訳でドレッド・ノートを構えてブラウニングは待つ――スキルで剣を扱うものもあるらしいが、魔王時代には長剣やら長槍やら無駄に武器を使っていたのでここら辺は無くても問題無い。むしろ必要なのは戦闘に関係無いスキルである――まぁともあれ待つ事にする。

 

 一分。まぁ気長に待つとしよう。

 十分。蛙もゆっくりしたい気分かもしれん。

 二十分。……剣を構えて野原に立つのって馬鹿に見えないだろうか?

 三十分――。

 

「はよ出て来んか両生類どもが――――っ!」

 

 短気な元魔王の魔力が篭った怒号により、実はブラウニングの魔力を本能的に恐れて隠れていたジャイアント・トードが我先にと地上に這い出て来た。その数、数百匹。

 

「……いや、五匹でいいんだが……」

 

 ブラウニングはちょっと唖然としながら呟き、とりあえず五匹潰すかとドレッド・ノートを一閃した。

 そう、一閃。一回振っただけである。それだけで、ずばば――――と斬撃が伸び、ジャイアント・トード数十匹を撫斬りにした。

 

「…………」

 

 一瞬、ブラウニングは沈黙し、改めてドレッド・ノートを見る。物理攻撃しか使用不可、と鑑定結果は変わらない。なら今のは単なる斬撃と言う事か。数百匹と湧いたジャイアント・トード達も凄まじい速度で散っている。それを見送りながら、ブラウニングは剣を鞘に納めて一言呟いた。

 

「……やり過ぎた、か?」

 

 そんなものは聞くまでも無い事であった。

 

(第一のクエスト完了! 二話に続く)

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