IS 熾天の器   作:へタレイヴン

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夏冬春秋

「そうですか。彼がIS学園に……。えぇ、僕の方も行く用意をしておきます。えぇ……はい、お任せください、総帥」

 

机に備え付けられていたモニターの電源を切り、白衣姿で眼鏡をかけた青年が椅子に深く腰掛けると、使い古された椅子がギシっと音を立てる。

どうやら、自分も彼、アーウェンクル・ランガードと一緒にIS学園に向かう事になったらしい。整備士兼保険医として派遣されるそうだが、不安がないと言えば嘘になる。

青年――夏冬春秋は机の上に飾られている写真に目を写す。

そこには、明るい笑顔の少年が真ん中に、左側には嬉しそうに笑顔で少年に抱きついている少女。右側には照れた様にそっぽを向きながらも、しっかりと少年の手を握る少女。

少年は春秋であり、左の少女は束、右の少女は千冬。彼の大切な幼馴染達だ。随分と遠くに来てしまったが……それは今でも代わらない。

 

「やれやれ、向こうに千冬ちゃんが居るそうだけど……どうなることやら」

 

すっかり冷めてしまったコーヒーを喉に流し込むと、春秋は引き出しから便箋を取り出して、ボールペンを走らせる。送り先は勿論、織斑千冬。

篠ノ之束は、彼のパソコンに侵入してくるので、送らなくても問題は無い。ネスト財団の頭脳ともいえる春秋だが、幼馴染達にはとことん甘いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご機嫌な鼻歌を奏でながら、少女――束はトコトコと目的地目指して歩いていた。目指すのは、彼女の大好きな幼馴染、夏冬春秋の家。

そこには、もう1人の大好きな幼馴染、織斑千冬も居るはずだ。彼らに会えると判ると、自然と歩みが速くなる。

立派な門構えと、典華流剣術道場と達筆で書かれた看板が掲げられている道場兼住宅が、春秋の家であり、千冬が剣道を学んでいる道場。

何時もの様に、道場の門から入り、中を覗くと竹刀と竹刀がぶつかる音、掛け声などが道場に響き渡っている。

その中で白い胴着の少女、千冬を見つけると、束は花の咲いたような笑顔で飛びついた。

 

「ちーちゃん!!あっそびにきったよー!!」

「……束、いきなり抱きつくなと、何度も言っているだろう。ええい、暑苦しいから離れろ!!」

「ちーちゃんの汗のにおいくんかくんか!!」

 

千冬の首筋に顔を埋めて、彼女の汗のにおいを嗅んでいる束の姿は、変態にしか見えない。と言うか、変態だ。何気に、千冬の胴着を脱がしに掛かっている辺り、始末が悪い。

脱がされそうになった千冬も慌てて束の額に拳骨を落として、自分から引き剥がした。……周りでは、兄弟子や姉弟子がまたかと笑っている。

 

「いたい!!ちーちゃんの愛が痛いよぉ!!けど、愛ならもっとちょうだい!!」

「相変わらず、お前の頭の中はお花畑のようだな。……それで、今日はどうしたんだ?」

「勿論、ちーちゃんと愛を育みに、いたいよぉいたいよぉ」

 

額に青筋を浮かべながら、千冬は束にアイアンクローをお見舞いする。天才と言っても良い頭脳を持っているのに、何故こうも馬鹿なのだろうか。……馬鹿と天才は紙一重とも言うのだが。

 

「はっはっは。相変わらず仲が良いみたいだね」

「し、師範。すいません、何時もお騒がせして……」

 

黒い胴着の男性――春秋の父親で典華流剣術道場師範――に千冬は慌てて頭下げる。……後ろに居る束はそっぽを向いて無視しているので、後で拳骨を落とそうと思いながら。

一体どうしてなのか判らないが、束は家族と千冬とまた赤ん坊の一夏、そして春秋以外を人として見ていない。周りの人間は、それを知っているので、春秋の父親も何も言わなかった。

 

「春秋!!束ちゃんが遊びに来ているぞ!!っと、そろそろ来客の時間が。千冬ちゃんも、無理はしないように」

 

大声で奥の間にいる春秋を呼ぶと、他の門下生達に指示を出しながら、春秋の父は道場を後にする。どうやら、来客があるようだ。

姉弟子から受け取ったタオルで汗を拭きながら、千冬は束を連れて道場の縁側に腰掛けた。晴れ渡って居るが、風が気持ちよく拭いている。

 

「はぁ、束。いい加減、師範にも挨拶をしろ。お前が来ても笑顔で対応してくれるのは、あの人くらいだぞ?」

「む~、私はちーちゃんとはるくんに会いにきたの。他の人なんて知らないし、見たくない」

 

ぶう~と頬を膨らませて、足をパタパタさせる束に、はぁ……と千冬は深いため息を零す。人嫌いと言うのか……それとも人と思っていないのか。

風に千冬の綺麗な黒色の長髪が揺れ、火照った身体を覚ましてくれる。そのまま眼を閉じようとする千冬の頬に、何か冷たいものが押し付けられた。

 

「ひゃあ!?……スポーツドリンク?」

「あはは、ごめんごめん、驚かせちゃったかな。はい、稽古お疲れ様」

「ちーちゃんの驚いた声かわいいよぉ~。そして、はるくんだぁ、はるくんだぁ!!」

「はいはい、束ちゃん、ここに居るよっ…ってうわぁ!?」

 

可愛らしい悲鳴を上げる千冬に、黒い胴着の少年――春秋は笑顔を浮かべて、頬に押し付けていたスポーツドリンクを手渡した。

ようやく現れた春秋に、束は押し倒す勢いで抱きつくと、彼の胸に顔を埋めてグリグリと甘え始める。

 

「いたた。束ちゃん、そんなにいきなり抱きついたら、危ないよ?怪我したら大変でしょ?」

「ごめんね、けど、はるくんなら受け止めてくれるって思ってたから、大丈夫!!」

「一体どういう理屈?……千冬ちゃん、ボトル、そんなに握り締めると中身溢れちゃうよ?」

「う、うるさい!!人の頬にこんなものを押し当てるな馬鹿者!!……その、ありがとう」

 

最後の方は照れたようにそっぽを向く千冬に、春秋はどういたしましてと答えると、胸の中の小動物状態の束の頭をゆっくりと撫でる。

こうして彼女に抱きつかれるのは、毎回の事で慣れてしまったが……慣れても言いのだろうか。

 

「ねね、はるくん。奥で何をしてたの?何時もは、ちーちゃんと練習してたよね?」

「型を纏めた本を作ってたんだ。ほら、他の人達も、見るだろうからさ」

「ふん、お前も攻めの型を学ぶべきだな。何時までも、守ってばかりだと負けるぞ?」

「……千冬ちゃん、僕の受け流しを一度も崩せてないのは、誰だっけ?」

「く……あ、あれは偶々だ!!今度こそは、私が勝つ!!第一、なんだあの受け流し技は!!私の菊閃を流すなんて、卑怯だぞ!!」

「あんなの貰ったら、2~3日は寝込むからね。……必死の覚悟だったよ」

「ちーちゃんって、手加減が下手だもんね~」

「……束、お前、少し調子に乗ってきたな」

 

ギンっと音を立てて、千冬が束を睨みつけるが、睨まれた本人はもっと睨んで!!とはぁはぁ言っているので、効果は薄いようだ。

天気の良い空には、千切れ雲が少しあるだけ。暖かな日差しと、涼しい風。そして、大好きな春秋の胸の上、千冬の隣と言う事で、束は安心しきったように小さな欠伸を零す。

 

「束ちゃん、眠いの?……昨日は何時に寝たの?」

「う~んと……今日の5時。ちよっと設計図かいてたら、のっちゃって~」

「相変わらず、研究馬鹿だな。その内、体調崩すぞ?」

「そのときは、ちーちゃんとはるくんに看病してもらうから、いいんだも~ん」

 

ふにゃ~と溶けた笑顔を見せる束に、春秋は仕方がないなぁと言った様子で、背中をポンポンと一定のリズムで叩き始める。

心地よい温もりとリズムに、束の瞼は徐々に下がっていき、閉じる頃には、すぅすぅと小さな寝息を立て始めた。

 

「寝ちゃったね。ん?どうしたの、千冬ちゃん。こっちのほうを見て」

「な、なんでもないぞ!!べ、別に羨ましいなんて思ってないからな!!」

 

千冬は口ではそういっているが、明らかに束が羨ましいと言った表情をしている。千冬だって春秋のことは大好きなのだが、性格が災いして素直になれない。

こんな時は、何時でもストレートに大好きと言ってくる束が羨ましいとさえ思えた。しかし、相手は春秋だ。幼馴染の心は手に取るようにわかる。

 

「あ~あ、なんか少し寒いなぁ。誰か、右側から暖めてくれないかな~?」

「……な、なんだ春秋。寒いのか?」

 

束を起こさないように、左側に腕枕をしながら動かして、春秋はわざとらしく右腕を伸ばして千冬の方を目を移す。自分からきっかけを作れば、彼女も素直になれると学習しているのだ。

 

「さむいなぁ。このままだと僕、風邪引くかもなぁ~」

「ふ、ふん。仕方が無いな。お前がそこまで言うなら、わ、私が暖めてやろう。…み、右腕に頭を乗せるからな」

 

顔を真っ赤にしながら、千冬は春秋の右腕を枕にして寝転がった。気を抜くとにやけそうになる顔を、必死に引き締める彼女に春秋は小さく笑みを零す。

まぁ、その笑みのせいで、千冬の努力は崩れ去り、嬉しそうな笑顔で少しだけ春秋に密着する。心臓がバクバクと高鳴っているのは、千冬か春秋か。

なんにせよ、大好きな幼馴染の腕枕ならば、良い夢をみれそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

日本 IS学園 教員宿舎 織斑千冬の自室

 

仕事が終わり、自室に戻った千冬は何時もの様にシャワーを浴びる。先ほど、管理人から手紙を預かったが、後で確認するらしい。

スーツを洗濯機に押し込み、シャワーのスイッチを入れると、暖かなお湯が肌の上を滑り落ちる。10分ほどでシャワーを浴び終わった千冬が出てくるが、何も着ていない。

精々、頭を拭いたタオルを首にかけた程度で、美しく引き締まった裸体を晒しているが、誰も居ない自分の部屋だ。見るものは居ない。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップに注いで一口飲むとテーブルの上におく。歩くたびに豊満な胸が揺れる。

こんなにも美しい彼女ならば、引く手数多なのだろうが……あいにく、世界最強と呼ばれるブリュンヒルデであり、千冬に釣り合う男など早々居ない。

まぁ、仮に釣り合う男が現れたとしても、彼女の心は、既にあの人物に、夏冬春秋に奪われている。彼以外の男には、興味が無いのだろう。

 

「そう言えば、手紙が来ていたか」

 

クローゼットを開けて、下着とシャツを身に着けながら、千冬は適当に投げて置いた手紙に目を移す。どうせ、自分に軍事教官を頼みたいと言う類だろう。と思いつつ、一応は確認する。

差出人は誰だ?と封筒の裏を見て、千冬は眼を見開き固まってしまった。そこには、離別して以来会っていなかった幼馴染の名前が書かれていた。

 

「春秋…だと…?っ、お、落ち着け、何を焦っている。今更、奴から手紙が来たところで、何を……」

 

なぜか手紙をテーブルの上において、千冬はブツブツと自分を落ち着かせようと努力している。恐らく、何時ものクールな彼女の姿を見ている生徒や弟が知ったら、びっくりするだろう。

そして、数十秒ほど悩んでいた千冬だが、意を決して封を切り中身を取り出した。そこには、相変わらず丁寧な字で、簡単な挨拶と手紙を送った理由が書かれていた。

自分が、来期からIS学園の整備士兼保険医してネスト財団から派遣される事、こちらでも新しく男性操縦者が見つかったこと等等。

他にも色々と書かれていたのだが、千冬の頭には入ってこない。

 

「春秋が、こっちに来る……?ここに、教師として勤める……?」

 

教師ではなく、整備士兼保険医なのだが、どうでも良い事だろう。何度も何度も手紙を読み直すも、間違いは無い。

フラフラとした足取りで千冬が、ベッドに大きな音を立てて倒れこむ。枕に顔を埋めているが……その表情は笑顔だ。

 

「あの馬鹿者め。ようやく、私の元に戻ってくる気になったか。……春秋、早く私の元に帰ってこい」

 

サイドテーブルに眼を移し、1つの写真立てを胸に抱きしめる。それは、彼女が初代ブリュンヒルデに輝いた第一回モンド・グロッソ優勝時の写真。

トロフィーを手に持っている千冬と笑顔で彼女に抱きつく束。そして、整備士の格好をして笑っている春秋の姿が映っていた。

懐かしい過去の栄光にして、楽しかった最後の記憶。写真を抱きしめながら、千冬は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬のISは、天災篠ノ之束の作品だ。そんな情報を手に入れた各国は、束をなんとしてでも自国に引き入れようと、何度も接触を試みた。

しかし、それが嫌気がさした束は、ISコアの製作を投げ出して、行方を暗ませてしまった。

日本政府は束の家族、篠ノ之家が各国に利用されることを恐れ、要人保護プログラムと言う名目で、引っ越させる事になったのだ。

しかし、保護プログラムといっても、軟禁状態に近く、外部との接触は禁じられている。何処が保護なんだ!!と憤りを感じた春秋だが、彼にはどうすることも出来ない。

だが、それを打破すべきチャンスがめぐってきたのだ。世界最大規模の財団、グローバルコーテックスからの勧誘。

連絡を取り合えるように日本政府に取り計らう代わりに、宇宙開発プロジェクトに参加し、財団専属技術者になると言う条件付のもの。それでも充分だった。

自分が幼馴染と別れようとも……弟のように思ってきた少年と、妹のように思ってきた少女の仲を引き裂きたくは無い。そう思ったのだろう。

 

 

春秋が財団所属を決め、アメリカに移住する前日、月明かりの下、千冬は道場に正座して目当ての人物を待っていた。

ガラっと音を立てて入り口が開き、青年が、春秋が驚いたような……そして、悲しそうに一瞬だが顔を背ける。

それでも、春秋はなんとか笑顔を浮かべて、千冬に声をかけた。

 

「……千冬ちゃん、来てたんだ。こんな夜にどうしたの?」

「春秋、木刀を持て」

「え、木刀って……。まさか、これから稽古?あ~、もう僕じゃ千冬ちゃんの相手にはならないと思うけど」

「いいから、持て!!……持たなくても、仕掛けるからな……!!」

 

木刀を構え、一足飛びで斬りかかってくる千冬に、慌てて春秋は立てかけてあった木刀を持つと、振り下ろされた木刀を受け止める。

最早、敵無しの千冬の斬撃は重く、男の春秋でさえ吹き飛ばされそうな威力を誇る。慌てて距離をとり、木刀を構えなおすと、春秋は大きく息を吐き捨てる。

 

「相変わらず、鋭くて重い太刀筋だね。……流石はブリュンヒルデ。恐れ入った」

「黙れ。手を抜いていると、貴様の頭蓋を叩き折るぞ」

 

殺気むき出しの千冬に、春秋は冷や汗をたらしながら、静かに構えを別な物に変える。彼が最も得意とする受け流しの極意、風柳の型である。

風に揺れる柳の如く、全てを受け流すその型は、典華流剣術の極意の1つだ。しかし、千冬もこの道場で学んできた門下生。

彼女もまた、攻めの極意、菊閃の型を極めている。月明かりが差し込む道場で、木刀が舞う。千冬の高速の斬撃を、春秋が受け流す。

どちらも極められた技だが、唯一違うとするならば、千冬はISを装備してではあるが、世界の猛者達と戦ってきたのだ。春秋とは場数が違う。

月が雲に隠れた時に放たれた一閃が春秋の木刀を弾き飛ばし、そのままの勢いで千冬は彼を床に押し倒して馬乗りになった。

 

「ははは、参った、降参で白旗揚げるよ。いやはや、僕じゃ千冬ちゃんには勝てないなぁ」

 

おどけた様子の春秋からは、影となった千冬の顔は見えない。何時もの様に、馬鹿者と返ってくるか思ったが……何時までも何も帰ってこない。

おかしいなと首を傾げると、ポタっと彼の頬に水がたれてくる。雲から出てきた月が照らし出したのは……千冬の泣き顔。たれて来た水は、彼女の涙。

 

「ち……ふゆちゃん?泣いて、どうしたの…?」

「…してだ。……どうして、お前まで居なくなるんだ……!!」

 

カランと、木刀が音を立てて床に落ちる。何時も凛とした表情の千冬が、ボロボロと泣きながら、幼子の様に彼の胸を叩く。

 

「父さんと母さんも居ない……束も居なくなった……もう、私と一夏には、お前しか居ないのに……どうして居なくなるんだ!!」

 

千冬の両親は、一夏が生まれて直ぐに交通事故でなくなってしまった。それ以来、夏冬家と篠ノ之家が2人を支えてきたのだ。

だからこそ、幼馴染である束と春秋の存在は、千冬の心の支えであったのだろう。

 

「……ごめん。ごめんね、千冬ちゃん」

「あやまるなばかもの……!!あやまるくらいなら、ずっとわたしのそばにいろぉ…!!」

 

頬に伸ばされた春秋の手を握り締め、千冬はボロボロと涙を流す。

行かないでほしい、行ってほしくない。自分の側に居て欲しい。何度も何度も言葉にするが、春秋は、ごめんねと謝ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今度こそ、今度こそお前を手放したりはしないぞ、春秋。お前は私のものだ、私だけのものだ。……束にも、絶対に譲らない」

 

絶対的な自信に満ちた笑顔を浮かべて、千冬は拳を天井に突きつける。今度こそ、お前を私のものにすると言う意志の表れ。

それと同時に、もう1人の幼馴染、束に対する宣戦布告でもある。

 

「ふん、何時までも表に出てこないのならば、春秋は私が貰うからな、束」

 

写真立てをサイドテーブルに戻すと、千冬は目を閉じた。こんなにも来学期が待ち遠しいと思ったのは、実に久しぶりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所

 

 

 

 

「はるくんがIS学園にかぁ。うう~、邪魔な人達いなければ、束さんも行ったのにぃぃ!!」

 

うさぎ耳のカチューシャを付けて、何処か不思議の国のアリスを思わせる服装の女性、篠ノ之束は悔しそうに頭をブンブンと横に振っていた。

 

「はるくんはるくんはるくん……はぁ~、パソコン越しに見るんじゃ無くて、直接あいたいよぉ~。抱きしめて欲しいよ~」

 

ブツブツと呟きながら、束はアルバムをめくり、春秋の写真――全部盗撮したもの――を眺める。

予定なら、数年前にグローバルコーテックスから誘拐して、一緒に研究している筈だったのだが……

 

「けど、流石グローバルコーテックスだね。あんなにガードが固いなんて束さんもびっくりだよ。うう~、あのセキリュティは絶対にはるくんだぁ!」

 

破ることには苦労しないが、何だかんだで地味に時間を取らせるセキリュティシステムは、やはりと言うかなんと言うか春秋の設計であった。

束が自分の元に現れると予想して、組み立てていたようだが、予想通りだったらしい。

 

「けど自分のパソコンには、私専用の回線を用意してくれてるんだもんねぇ。そんな優しいはるくんだ~いすき!」

 

 

回線が隔離された自分専用パソコンに、きちんと束専用回線を用意して、財団本部のメインコンピューターに被害が行かないようにしている春秋もさすがと言うべきか。

ふんふ~んと束は鼻歌を歌いながら時刻を確認すると、春秋のパソコンに接続して、彼の寝顔を眺めるのだった。

 

 

 

 

 




また短いのに詰め込みすぎて、訳がわからなくなった……
今度から、少しずつ時間をかけて書いていきますか。
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