3月1日 一部修正
・春秋・
医務室
「いやはや、勤めて一番最初の仕事が、自分の怪我の治療ってマジで締まらないね」
軽口を叩きつつ、千冬ちゃんからプレゼントされた紅葉マークに、シップを貼り付ける。う~ん、我ながらなんて情けない顔。
こんな所、アーウェン君に見られたら、また笑われそうだなぁ。僕より若いのに、随分としっかりしてるからね~。
……まぁ、総帥から彼が非合法な改造を施されていると聞いたときには、本気で驚いたものだよ。実際、明らかに反射神経、思考速度等が飛びぬけて高い。
日常生活では、穏やかな彼だけど、戦闘訓練になると一変して、周りを驚かせていたよ。
「神経の光ファイバー化、一部分だけでなく全身の神経を、なんて狂気の沙汰だ。しかし、それのお陰で新しい治療法の確立もまた事実……か」
事故により切断された神経組織を、人工的な回路に切り替える手術方法は以前より存在していた。だが、失敗する確率も高く、難しい物だった。
しかし、アーウェン君の身体を解析し、術式を調べれば調べるほど、高水準だが、従来の方法でも対処可能な所が多々発見できた。
いやはや、何処の誰だか知らないけど惨たらしく、そして、奇跡的な改造を行ったと感心するよ。……仮にした人が現れたら、僕は全力で殴り飛ばすけど。
「まぁ、こんな貧弱が殴っても痛くないだろうけどねぇ、あはははは……はぁ~」
うん、自分で言ってて悲しくなってきた。最近、研究ばかりで身体がなまってるからなぁ。久しぶりに剣道やるかね。
そんな事を考えていると、コンコンと扉を誰かがノックする。おやおや、お客さんのようですなぁ。
「あいてますよ~。怪我かな、病気かな?改造手術は行っておりませんので、あしからず~っと」
「し、失礼します。怪我とかじゃないんですけど……あの、もしかして、春兄……?」
「おんや~?僕をそう呼ぶ君は、もしかして……一夏君かな?随分と久しぶりだね~」
「ほ、本当に春兄が居た……。あ、その、お久しぶりです!!」
「はいはい、そんなに頭を下げなくても良いよ。ほらほら、こっちに来て座りなよ」
「はい!!……ほら、箒も照れてないで、こっちに来いって!!」
扉を開けて入ってきたのか、我が弟的存在の一夏君ではないか。いやはや、これは嬉しいサプライズだね。
そんな彼が、誰かを引っ張っているが……もしかしなくても、もしかするかな?
「う、あ。そ、そんな引っ張るな一夏!!……その、兄さんお久しぶりです」
「おっと、僕の事を覚えててくれたんだね、箒ちゃん。うんうん、お兄さんは嬉しいよ~」
「そんな!!春兄の事を忘れるなんて、ありえないですって!!」
「そうですよ!兄さんのおかげで、どれだけ助かった事か……本当にありがとうございます」
「何のことかな?ほら、箒ちゃんもこっちにおいで。……う~ん、一夏君はかっこよくなったし、箒ちゃんも可愛くなったね」
僕が差し出した椅子に座る2人は、本当に大きくなったものだよ。僕の記憶の中には、まだまだちっちゃい頃の2人しかなかったからね。
けど、面白いものだ。一目で、一夏君と箒ちゃんだと気がついたよ。うん、流石は兄馬鹿を自負してただけのことはある。
「かっこよくって……春兄、昔から俺達の事をからかう癖、治ってないんですね」
「一夏君。そこは素直に受け取っておきなって。ほら、箒ちゃんなんて照れちゃって、可愛いじゃないか。うんうん、耐性付いてなくて、お兄さん安心したよ」
「か、からかわないでください!!……けど、安心しました。兄さんも本当に元気そうで」
「うんうん、突然居なくなるから、本当に心配したんですよ!!千冬姉に聞いても、何も教えてくれないし」
「あ~、うん。千冬ちゃんとは喧嘩別れな感じだったからなぁ」
ポリポリと頭をかきつつ、ポットからお茶を注いで2人に差し出す。うん、日本人やっぱり緑茶だね~。
「あ、兄さん、やっぱり居なくなったのは私達の……」
「は~い、箒ちゃんストップ。それは秘密で言いっこ無し。こうして、君たちに会えたんだから、問題は無しなのさ」
そう言って笑えば……ほら、箒ちゃんも笑顔になってくれる。一夏君は、頭に?マークを浮かべているけど、まぁ良いさ。
僕がグローバルコーテックに所属した理由を、彼女はなんとなくわかっていたんだろうね。
けど、うん、こうして見ると実に安いものだった。こうして、目の前で大事な弟妹達が、笑顔で居てくれるんだからね。
「そう言えば、アーウェン君とは話したかな?」
「はい。あいつのお陰で、男1人だけの孤独な学園生活から救われましたよ」
「周りは女子生徒ばかりだからねぇ。これは箒ちゃんもウカウカしてられないよ?」
ニヤニヤと笑ってからかうと、兄さん!!と箒ちゃんは顔を真っ赤にする。ほんと、一夏君の事が好きなんだねぇ。照れくさくて隠してるんだろうけど、ばればれだ。
……まぁ、好意を向けられている本人、一夏君が超の付く鈍感だから、少しかわいそうになるけどね。
「に、兄さんはアーウェンクルとは、知り合いなんですか?」
「まっ、アーウェン君は僕にとって弟みたいなもんでね。仕事上のパートナーでもあるし、僕は彼のISの開発者だ」
「それって、専用機持ちって事ですか!?……あいつ、やっぱり凄いんだな」
「あはは、アーウェン君は財団の秘蔵っ子だからねぇ。けど、一夏君も負けてないよ」
少し落ち込んだ様子の一夏君を励ますために、ポンと肩を叩いて眼を合わせる。大丈夫、君はアーウェン君にも負けてないさ。なんたって君は……
「君は、僕や千冬ちゃん、そして束ちゃんの弟であり、秘蔵っ子なんだからね」
「……春兄。はい!!俺……頑張ります!!」
そう言って笑う一夏君の顔は、本当に光り輝いている。うんうん、一夏君には、この笑顔が一番似合うね。
……それにしても、この笑顔でどれだけの女の子を墜としてきたんだか……本当に罪作りな弟だよ。
学生寮 アーウェンクルの部屋
「ふむ……2人用だが1人か。広くて良いな」
授業も滞りなく――所々で一夏の頭に担任が出席簿を振り下ろしていたが――終わり、割り当てられた部屋の中を見渡して、俺は満足げに頷いた。
広々として、キッチンまで完備されている一室は、ホテルやマンションのようだな。その中で似つかわしくないのが、多数の段ボール箱。その全てが、財団本部から送られてきた俺の衣服や嗜好品の本など。
それらの梱包を空け、最初に衣服を取り出してクローゼットに仕舞う序にラフな格好に着替える。制服は皺にならないようにハンガーに掛けて、仕舞うのも忘れない
テキパキとダンボールの中身を仕舞いつつ、ダンボールは畳んで後でごみに出しておくか。
最後に空けた段ボール箱から、9個の銀色の球体と、厳重に包装された小箱を取り出して、サイドテーブルの上に飾った。
大小様々な大きさの銀色の球体をセットして、台座のスイッチを押すとそれぞれの球体が半重力で浮かび上がり、ゆっくりと円を描くように回り始める。
そして、今度は厳重に包装されていた小箱を開けて、中にあったガラスケースを取り出して、それも飾る。ガラスケースの中には、白いウサギの石像が2体。
この2つは俺の大切な宝物だ。銀色の球体は、太陽系を模した物で、中央の一番大きな球体が太陽。それに続くように水星、金星、地球……となっている。
白いウサギは、月の石で作った石像だ。手先の器用なセルゲイ班長が、俺の為に作ってくれた世界でただ1つの石像。
「よし、こんなものか。……っと、この写真もだな」
っと、こを忘れるのは、まずいな。回っている球体とウサギの石像の間に、一枚の写真を飾る。それは、俺が世話になっていた月面基地の仲間達の写真。
セルゲイ班長を始めてする月面開発チームの面々は、全員が子供の様に輝いた笑顔を浮かべていた。
彼らは、人類の希望と夢の為に突き進んでいる。だからこそ、何時でも希望に満ちた笑顔を浮かべていられるのだろう。俺の憧れだ。
さてと、シャワーでも浴びるか。そう思ってい矢先に扉をノックされる。……あぁ、もう来たのか?
「よう、アーウェンクル。遊びに来たぞ」
「やっぱり、一夏か。ようこそ、歓迎するよ、と言っても、まだ何も無いが」
「あはは、そうかもな」
扉を開けた先には、同じようにラフな格好の一夏が立っていた。教室で、遊びに行っても良いか?と聞かれて、かまわないと答えたので、こうしてきたのだろう。
確か、こいつは篠ノ之箒と同室らしいが……。幼馴染とは言え、男女が同室で良いんだろうか?まぁ、そのお陰で、俺は気ままな1人部屋を満喫できるわけなのだが。
「良いよな、アーウェンクルは1人部屋でさぁ。お、なんだこれ?」
「まぁ、運が良かっただけだ。って、来て早々部屋を物色するな。それは太陽系模型だよ。俺の宝物だ」
キョロキョロと部屋に中を見渡して、早速というべきか、太陽系模型に一夏は興味津々のようだ。高いから壊すなよ?と伝えると、慌てて距離をとる。はは、本当に面白い奴だ。
「そう言えば、箒と同室らしいな。一夏の部屋の都合が付かなかったんだったか?」
「ん、まぁな。なんか千冬姉が、幼馴染だから、問題ないだろうってゴリ押ししたらしい。だからさ、頼みがあるんだよ。箒がシャワーの時とかに、アーウェンクルの部屋に来ても良いか?」
「俺はかまわない。……まぁ、覗いたら、まずいだろうからな」
「のぞかねぇよ!!……わざとじゃなくて、見たら命がなさそうだし」
青い顔をする一夏を少し不憫に思いつつ、了承しておく。まぁ、俺だってこいつとは話しをしたい。…俺にとっては、初めての同年代の友人なのだからな。
その後、適当にソファで寛いでいるように言うと、俺はキッチンで飲み物を用意して、テーブルの上に置いた。
「ほら、熱いから気をつけろよ?」
「お、サンキュー。これってホットミルクか?」
「あぁ、結構好きなんだよ、ホットミルク。」
「ふ~ん。……お、すっげぇ美味い。なんか甘いんだけど、なんか入れたのか?」
「そうだな、蜂蜜を少しだけ。そして、俺の愛情をたっぷりと……な」
「うげ、男の愛情なんて、嬉しくないんだけど。つうか、真顔で言うなよ、気持ちわりぃ!」
「おまっ、人の好意になんて事言うんだ!!」
軽口を叩きあいながら、俺達は笑い声を上げる。はは、本当に一夏と話していると、楽しくて仕方が無い。馬が合うとはこういう事を言うのだろう。
「お、もしかしてこの写真って、月面基地の人たちか?へぇ~、色々な人達が居るんだな」
「あぁ、国際プロジェクトだからな。国籍も年齢もまちまちだよ。まぁ、俺が最年少には変わりないが」
「なるほどな。けど、みんな良い笑顔してるなぁ。なんだろうな、本当に夢に向かって生きてる!!って感じがするよ」
「はは、そう言ってもらえると、俺も嬉しいな。ほら、隣にウサギの石造あるだろう?それ、月の石で出来てるんだ」
「マジでか!?そう言われると、なんか感動するだけど。なぁ、触っても良いか?」
「あぁ、良いぞ。ただし壊したら、月まで取りに行かせるからな。序に一緒に月面開発に、携わってもらおうか」
「月面開発かぁ。……宇宙って男のロマンだよなぁ。」
「そうだな。宇宙は無限の開拓地であり、無限の可能性のある世界って誰かが行ってたな」
ウサギの石像を手のひらに乗せ、窓から覗く満月を見上げる一夏につられて、俺も夜空を見上げる。誰かが言ってたな。月は何時でもそこにあるって……な。
翌日 一時限目
「これより再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める。クラス代表者とは対抗戦だけでなく、生徒会の会議や、委員会の出席なども役割となっている。まぁ、クラス委員長と考えた方が早いだろう。自薦他薦は問わない。誰かいないか?」
教壇に立つ千冬が、教室内を見渡す。本当なら初日に決める筈だったが、昨日は昨日でバタバタしていたので、予定より遅れてしまったのだろう。
一夏はへぇ~とのん気に聞いているし、アーウェンクルは海を眺めながら、授業が始まるまで居眠りでもしてるか……と我関せずの態度で眼を閉じてしまっている。
どうやら、両者とも自分より他の生徒がするだろうと、高を括っている様だ。しかし、そんな2人を他所に、クラスの女子生徒達はそれぞれが声を上げた。
「はい!!織斑君が良いと思います!!」
「いぃ、俺ぇ!?ちょ、待ってく……」
「私はランガード君を推薦します!!」
「げ……なんでそうなる」
戸惑う2人を他所に、織斑君の方が良いだの、ランガード君の方が適任だのと好き勝手盛り上がる女子生徒達。
「俺は辞退する。よって一夏に決定。はい、終了!!」
「ちょ、アーウェンクル、俺に全投げってふざけんなよ!!お前やれよ、俺よりしっかりしてるだろ!?」
「うるさい黙れ、俺は面倒が嫌いなんだ!!織斑先生!!俺も一夏を推薦します、と言うか、一夏意外にありえないと思います!!」
「だったら、俺もアーウェンクルを推薦する!!俺より絶対に、委員長の仕事をこなしてくれると思います!!」
がるるると威嚇しながら、一夏とアーウェンクルはにらみ合う。お前ら、仲が良いのに、こう言う時は敵対するのか。
しかし、そんな事をしていると、金髪の少女、セシリアが机を叩いて立ち上がった。
「納得いきませんわ!!そのような選出は認められません!!」
その声に、騒いでいた一夏、アーウェンクルの2人だけでなく、周りの女子生徒達も静かになる。
千冬にいたっては、やれやれとった様子で、額に手を当てている。
「オルコット、何か言いたいことがあるのか?」
「当然ですわ!!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしです!!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!!」
キッっとセシリアは、アーウェンクルと一夏を睨むが、前者はこのままセシリアがやってくれたら……と期待しているし、一夏は馬鹿にされたと思って睨んでいる。2人とも両極端だなおい。
「良いですか!?クラス代表者は一番強い人がなるべきなのです!!それならば、実力から言ってイギリスの代表候補生であるこの私こそ、一番ふさわしいに決まっていますわ!!
第一片や、極東の島国の野蛮な猿なのですよ!?」
「好き勝手言ってるけどな、イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
「それは言えてるかもしれんがな、一夏。ここで我慢しておけば、2人とも助かったものを……!!」
「あ、あなた、私の祖国を侮辱しましたわね!!そこのあなたもですわ!!馬鹿にして……!!」
「先に馬鹿にしたのは、そっちだろう!!」
アーウェンクルは、挑発に乗らずに流しておけば良いのに……と一夏に伝えただけなのだが、セシリアは馬鹿にされたと思ったのだろう。
な
「第一、あなたもですわ!!宇宙開発、月面開発なんて子供の夢みたいなものを何時までも、追いかけてますの!!」
「んな、お前、それは言い過ぎだろう!!子供みたいな夢っていってるけどな、どれだけ大変な事かわかってんのか!?」
「事実ですわ!!そんなの費用や時間の無駄です!!第一、無能な男だけで宇宙開発なんて出来るわけがありませんわ!!」
一夏がバン!!と机を叩いて立ち上がった。最近では、宇宙開発のニュースも良く流れているし、人類の新たな偉業とも言われている。
ましてや、友人であるアーウェンクルが、そこで働いていたのだ。一夏にとって、友達を馬鹿にされるというのは、とても許せるものではない。
セシリアの放った無能な男達、宇宙開発なんて無駄。その言葉に、アーウェンクルの肩がピクリと動く。たが、セシリアはそれに気がつかずに、言葉を続ける。
「グローバルコーテックスなんて、なりあがりの夢想者ですわ!!宇宙開発に資金を使いより、ISの開発にむぐ……!?」
「そこまでにしておいてくれるか。……彼らは、関係ないだろう?」
まだ何か言おうとするセシリアの口を、後ろから押さえつけて、アーウェンクルは耳元で低く囁いた。
その甘く囁く声に、セシリアだけでなくほかの女子生徒達の顔も真っ赤に染まり、腰が砕けている者さえ居る。
「俺の事は何を言ってもかまわない。ただ……彼らを、俺の恩人達を馬鹿にするのだけは、止めて欲しいな、セシリア・オルコット嬢?」
怒るのは、自分の事を馬鹿にされたからではない。彼の恩人を、人類の希望と未来を信じて働く彼らを馬鹿にされたから。
クスクスと笑みを零しながら、ささやく彼の声に腰が砕け、脳髄が溶かされそうになるのを我慢して、セシリアは手を振り払い、アーウェンクルに指を突きつけた。……今だか顔は真っ赤に染まっているが。
「こここ、ここまで私を侮辱するなんて……許せませんわ!!あなたたちに、決闘を申し込みますわ!!」
「良いぜ、それならはっきりしてわかりやすい!」
「やれやれ、2人で盛り上がってるなら、後は任せたぞ、一夏。俺は辞退する」
「辞退は認めんぞ、ランガード。」
「だから、俺に全部なげるんじゃねぇよ!!お前も一緒だろう!?」
「ふざけていますの、アーウェンクル・ランガード!!あなたにも、決闘を申し込んでいるのです!!」
「フルネームで呼ぶな、長くて大変だろう?……はぁ、面倒な事になったな。まるで怯えた子猫だな……お前は」
「お、怯えた子猫ですって!?もう、許しませんわ!!どこまで私を馬鹿にするのですか!?」
「子猫ですって、きゃ~、ランガード君キザ~♪」
「けど似合ってるから、かっこいいわよね~」
一夏はやる気満々だし、セシリアに至っては、プルプルと怒りで震えていた。どうにも、適当に流せる状況ではないと観念したアーウェンクルは、深いため息を零した。
実際、アーウェンクルにはセシリアが怯えた子猫に見えるので仕方が無い。何に怯えているのかは判らないが――例えば孤独とか――虚勢を張っているように見えたのだ。
しかし、口から出た言葉を消す事は出来ない。子猫なんていったお陰で、セシリアの怒りの火に油を注いでしまったらしい。
どうにか逃げ道はないかと考えていたようだが、何時までたっても終わらない様子に、我慢の限界が来た千冬は教卓をダン!!と叩く。
「ならば、3人で模擬戦を行い、勝った者がクラス委員長とするば良い。異論はあるまい?」
「げ、先生、辞退は……」
「却下だランガード。貴様が一番話を拗らせたんだ、責任を取れ」
ジーザス!!とばかりにアーウェンクルは天を仰ぎ見た。どうやら、最早回避不可能のようだ。口は災いの元とよく言ったものだ。
「良いか!!勝負は一週間後。授業終了後の放課後に第3アリーナで行う!!3人は、それまでに準備をしておくように」
「ふん、逃げない事を祈っておきますわ!」
「誰が逃げるかよ!!」
「くっそ~、これは面倒な事になったぞ……!!……まぁ、やるからには、勝つけどな」
やる気を出す一夏と敵愾心むき出しのセシリアに、見えないように小さく口元に笑みを作るアーウェンクルであった。
……どうやら、彼はやる時はやるらしい。