「うわ……マジかよ。眼が追いつけねぇ」
「凄い……。高機動戦闘を行いながらの、精密射撃なんて……」
非常用避難シェルター内部で、モニターに映し出されている映像に、一夏はセシリアは魅入っていた。
紅と紺が交差するごとに、光の粒子が舞い、銃弾が交わり合う。
「2人とも、大丈夫か!?」
「織斑先生。はい、私達は無事ですわ。……ただ、ランガードさんが戦っておりますが……」
「それなら大丈夫でしょ。アーウェン君、まだ本気出してないみたいだしね~」
「まだって……あれが本気ではありませんの!?」
ピット内から繋がる非常用通路を走って来たはずなのに、千冬と春秋は息1つ切らしていないのは、日ごろの鍛錬の賜物か。
なんにせよ、2人の無事な姿を見て、千冬は安堵のため息を零す。自分自身、ブラコンだと思うが一夏はそれほどまでに大事な存在なのだ。
シェルター内のモニターを見ていた何気ない一言に、セシリアは驚いたように反応する。2人がかりで苦戦したISを相手取りながら、本気すら出していない。
飄々として、何処か抜けている感じの日常の彼と、目の前で激戦を繰り広げている冷静な彼。まるで二重人格のような性格に、セシリアは強い興味を抱き、その心がどんどん引かれていく。
「おっと、リグを使うのか。セシリアちゃん、後学の為に、彼のリグを良く見ておくと良いよ」
「リグ?……あれ、ビット兵器!?彼のISにも搭載しているのですか!?」
「正確にはリモートコントロール兵器だよ。君のブルー・ティアーズと同じ、遠隔操作可能な小型兵器だけどね」
・アーウェンクル・
無人機からビットが射出され、こちらを捕捉し、襲い掛かってきた。確かに、攻撃の精度は高いが、避けれないものではない。
たが、邪魔な事は事実だな。ならば、こちらも使わせてもらう。
「行け、エスコート・リグ。ターゲット、ビット兵器」
俺も両肩部のインサイドから、小型飛行機の様な形の小型自律兵器、エスコート・リグを射出し、無人機のオービットに向かわせる。
こちらは2機のみのリグに対して、向こうは軽く10機は操っている。そうなると、恐らくあのISは無人機。そして、IS本体を操作するAIの他にバックアップを勤めるコンピューターが存在するのだろう。それも、かなり大型のもの、もしくは最先端技術の固まりか。
2機のリグから放たれた銃弾が、ビットを破壊するのを尻目に、背部クイックブーストを使用して、一気にトップスピードまで速度を引き上げる。
正面から放たれるビットのレーザーを、身体をローリングさせ突っ切りつつ回避し、新たに両手に展開した銃剣――04-MARVE――で撃ち落とす。
眼前にまで迫られた無人機は、バックブースターで後方に下がると背部グレネードランチャーを展開し、こちらに標準を合わせるが……遅い。
左肩のクイックブーストを使い、半身を無理やり射線から外し、その勢いで前方に飛び出た右手の04-MARVEを撃ち込む。
砲弾が膨大な熱量を伴って発射されるが、それは俺に当たることなく後方のアリーナの障壁を破壊し、俺の04-MARVEから放たれた銃弾は、無人機の右腕を吹き飛ばす。
なるほど、無人機故、搭乗者の安全を守る絶対防御は搭載してないと言う訳か。その分のエネルギーをシールドにまわせるならば、確かに燃費は良いだろうな。
そんな事を考えていると、俺を後ろから撃とうとするビットが2機。判らないと思ったようだが、俺は特殊なんでね。グリッドレーダにより、ある程度は分かっている。
振り返ることなく、他のビットを破壊し終えたリグにレーザーブレードを展開させて、両断する。
射撃武装でありながら、リグにはレーザーブレード発信機が搭載されているから、こんな無茶な芸当も可能になるわけだ。春秋の才能に感心すると同時に、少しの恐怖を覚えるよ。
『相変わらずだね、アーウェン君。うんうん、みんな驚いているよ』
『春秋か。直ぐに畳み掛けて終わらせる。話は後にしてくれるか?』
『それなんだけどさ、出来れば鹵獲してくれないかな?ほら、色々と情報が欲しいし、それじゃ、よろしく~』
『冗談はよしてくれ。無人機相手に降伏勧告なんて出来ないぞ。って、おい!!』
あの能天気馬鹿め。俺が一番苦労する方法を選択してくれたな。
ため息を零してリグを自分の周囲に呼び戻し、何時でも攻撃できる様に装填させると、両手の04-MARVEを突きつけて無人機の様子を伺う。
本来ならば、ここで完全に叩き潰すのが良いんだろうが……春秋の無茶な要求。俺自身、出来れば、鹵獲して情報を集めたいのが本音だ。
だが、現実、そんなに簡単に事が運べは、誰も苦労しないわけだ。それに、降伏勧告をしようにも、相手は無人機。話が通じるわけが無い……と思っていたら、そら来た。
残った左腕のレーザーブレードを振り上げて襲い掛かってくる無人機に04-MARVEとリグの弾丸を撃ち込むが、前進は止まらない。余剰エネルギーを全てシールドにまわしてやがる。
スキャンバイザーの下で、舌打ちをしながら04-MARVEを格納し、左腕のMOONLIGHTを起動させ、蒼白い光の刃が迎え撃つ。
刹那、バチバチと音を立てて、レーザーブレードがぶつかり合う。一瞬、均衡するかと思われたぶつかり合いは、出力の差で勝敗が分かれた。
MOONLIGHTの出力を上げると、鈍い音を立てて、無人機のレーザーブレードに徐々に食い込み始める。どうやら、出力ではMOONLIGHTの方が上らしい。
音を立てて、無人機のレーザーブレードを切断し、右腕に付けられているもう1つのMOONLIGHTで残っていた無人機の左腕、そして、近距離射撃を行おうとしていたグレネードランチャーの砲身を切り落とす。しかし、無人機の特製なのだろうか、痛みを感じぬ人形は、体当たりをするかのように、前進を止めない。
舌打ちをしながら、左背部武装のチェーンガンを展開し、高速で撃ちだされる弾丸を、無人機の胴体に浴びせながら、蹴り飛ばす。
そして、右背部武装の大口径グレネードランチャーの砲身を伸ばし、蹴り飛ばした先に、砲弾を撃ち込んだ。
眩い光と轟音を放ちながら、灼熱の炎が無人機に襲い掛かる。これで落ちなければ、化け物だな。
「堕ちないか、最後のエネルギーを防御に回したな」
爆煙からの中から出てきた無人機は、各部をスパークさせ、右足も膝から下が消し飛ばされている。それなのに、機能を停止しない。
すこぶる丈夫な機体なのか、それとも、無人機の妄執なのか。
【選定完了、適性合格。彼をH-1デバイスと認定。これ以上の戦闘行為は無意味、撤退せよ】
再びブースターを吹かす無人機の姿に、まだ続けるのか?と思っていると、何をする事もなく、天井に開いた大穴から飛び出すと、一気に飛び去っていってしまった。
追撃は……不要か。織斑先生には、無理な戦闘はするなと言われているし。10秒ほど、天井の大穴にリグとMARVEを突きつけていたが、何も起こらないので格納。
それと同時に、ドッと疲れが込み上げてきた。それと同時に、ナインボール・オニキスの性能に驚愕する。流石はグローバルコーテックスの技術の粋を集めた機体。
なにより、俺の覚えている記憶の中で、最強と呼ばれた……名も姿も知らぬ『誰か』の機体と同じ姿。
『こちら千冬。ランガードご苦労だった。お前も帰還しろ』
『了解。……先生、追撃部隊は向かわせたんですか?』
『いや、あの機体はステルス性能があるらしい。アリーナから飛び出した瞬間に、レーダーから消えた』
『なるほど。つまり、侵入してくる際もレーダーに反応が無くて、気が付けなかった……と』
『悔しいが、お前の言うとおりだ。それに関しては、教員達で対処する。お前が気にする事じゃない』
『そうですね。……その手の処理なら、春秋も得意でしょうから、使ってください。では、任務終了、これより帰還します』
無人機の性能の高さに驚くと同時に、何故IS学園を襲ったのか。そんな事を考えながら、開け放たれたゲートの向こうで待つ一夏や箒の元に戻る俺であった。
・海上・
海面すれすれで飛行する紺色のIS――実働部隊機――のカメラアイが点滅し、一定のポイントで停止する。
少しの間待っていると、海中から巨大な影が上ってくる。海上に姿を現したそれは、大型機動兵器D-C101-D。色や形が何処か、海老やザリガニを髣髴させる。
機体上部に着陸した実働部隊機を格納すると、再び潜航を開始する。内部では、数機の実働部隊機がコードにつながり、起動するのを待っていた。
D-C101-Dは彼らの輸送もかねており、内部である程度の整備も可能となっているのだ。整備機械達が破損したパーツを取り除き、無人機の修復に全力を挙げる。
【H-1デバイス、全能力規定値以上。合格と判断する】
艦内に響く女性の声。誰も聞くものは居ない筈、それでも、声は眠っている無人機達に、まるで話して聞かせるように言葉を続けた。
【これより、D-C101-D及び搭載機はH-1デバイスの護衛を担当せよ。いかなる障害も排除する事。なお、月面での起動確認を感知。恐らく、月からも来る事でしょう。】
その言葉に、意志の無いはずの無人機達の眼が少しだけ光を宿す。それはまるで、H-1デバイス、アーウェンクル・ランガードを護ると言った意思表示のようだ。
【全ては人類の再生と、復興のため。地球の私達と月の私達。どちらが正しいかは不明です。だからこそ、最後まで知りましょう。学びましょう】
時刻 夜
「……こ、ここがランガードさんのお部屋ですね」
アリーナでの騒動の後、模擬戦を行っている場合ではなくなり、その場で解散という流れになった。
学園側は無人機の性能や特徴を聞きたかったようだが、流石に戦闘したばかりで、今日は休ませた方が良いと言う、千冬と春秋の意見で後日、話を聞く事になったようだ。
それなのに、彼女、セシリア・オルコットは目の前の扉――アーウェンクルの部屋――を見つめて、何度も何度も深呼吸を繰り返していた。
(な、なにを怯えていますの、セシリア・オルコット!!か、彼にお礼を良いにきただけではありませんか!)
自分にそう言い聞かせても、高鳴る胸は止まらない。一週間、彼と楽しく過ごし、淡く形を成していなかった恋心は、先ほどの無人機から庇ってくれた事、そして、圧倒する戦闘を見た事により、完全な恋心に変化していたのだ。彼の笑顔を見るたびに、こちらにも嬉しくなる。彼の何気ない行動でも全て見たい。
思い出すのは、一番最初に彼に囁かれた自分の名前。甘く脳髄すら溶かしそうな囁き声。それなのに、一緒に食事をする時の声は、凛とした澄んだ物。
もし、彼の腕の中にいられれば、もし常にあの声で囁かれたら……甘美なものとなるだろう。
少しだけ、そんな事を考えていたセシリアだが、自分がここに来た目的を思い出して、頭を横に振り、意を決したかのように静かに扉をノックした。
コンコンと言う音が、静かな廊下に響き、扉の向こうから誰かが動く気配がする。
「どうした、一夏。今夜は部屋で休むんじゃ……セシリア?」
「こ、こんばんわ、ランガードさん。夜分遅くに失礼しますわ」
「いや、かまわないんだが……一体、どうした?まぁ、立ち話もなんだし、入るか?」
てっきり一夏だと思って扉を開けたら、セシリアが居るのだ。流石のアーウェンクルも眼を丸くして、キョトンとしてしまった。どうやら、シャワーを浴びたばかりのようで、頭にタオルがかぶっている。とりあえず、部屋に招き入れようとするアーウェンクルにセシリアは若干、顔を紅くして小さくお邪魔しますと言って、彼の後ろに続く。
始めてはいる男性の部屋であり、見慣れない物――太陽系模型やウサギの石像――が飾られているので、失礼だと思いつつセシリアはキョロキョロと中を見渡したしまう。
そんな彼女に苦笑を浮かべつつ、適当にタオルで髪の水気をふき取ると、籠にいれる。これだけ適当に拭かれても、彼の蜜色の髪は艶を失わず、そして乱れる事は無い。
世の女性が見たら、羨むと同時に恨まれること間違い無しだろう。しかし、セシリアは別な所、湯上りで上気した肌や、シャツから覗く胸元に眼が言ってしまう。
どこか、危ない色香を持ちながら、アーウェンクルはキッチンで飲み物を用意し始めた。
「今日は大変だったな。何度も聞くが、怪我とかはしてないんだな?」
「はい、貴方が助けてくれたので、大丈夫ですわ。……あの、そちらの模型は?」
「ん、あぁ。太陽系模型だ。半重力で浮いてて、惑星の軌道と同じ動きをしてるんだよ。はい、熱いから気をつけてくれ」
ソファに座るセシリアの目の前に、コトっと静かにマグカップがおかれる。中身を見ると、暖めたミルクのようだ。カップを両手で持つという何処か子供らしい仕草のセシリアに、微笑ましいなと感想を抱きながら、アーウェンクルはパソコンの設置されている机の前に座る。
「まぁ、甘くて美味しいですわ。砂糖かなにか、入れましたの?」
「蜂蜜を少しな。上では、貴重品だったが、こっちでは簡単に買えるからな。ついつい、使ってしまう」
「あ……ら、ランガードさん。その……月面開発が無駄なんていってしまって、本当に申し訳ありません」
「なんだ、気にしていたのか?まぁ、言われてショックだったのは事実だが、そこまで怒ってない」
上という単語に、セシリアは彼が月面開発に従事していた事を思い出し、それと同時に月面開発になんて無駄と言った事を思い出し、慌てて彼に頭を下げる。
だが、アーウェンクルは気にしてないと言った様子で、笑顔を浮かべる。そんな彼にセシリアの心が再び温かくなる。
「言ったと思うが、俺のことはなんと言っても良い。ただ、人類の明日を信じて働いている人達の事は認めてやってくれ。俺の恩人でもあるからさ」
「も、勿論ですわ。最近、調べましたが、本当に命掛けで働いているようですし……そ、それに貴方の事を馬鹿にするなんて出来ませんわ」
いまやアーウェンクルは、セシリアにとって最愛の人。自分を庇ってくれた後姿は、物語の騎士の様であった。
最後の方は小声で聞こえなかったアーウェンクルだが、気にせずにパソコンの操作を始める。
「確か、この回線のはず……っと、繋がったつながった。セシリア、こっちに来てくれ」
「どうかしましたの?」
そう言って、セシリアがアーウェンクルの後ろからパソコンの画面を覗き込むと、見知らぬ数人の男性達が押し合いへし合い取っ組み合いしている映像が流れていた。
どうやら、映像通信らしいが、何処からなのだろうか?と頭に疑問符を浮かべていると、取っ組み合いを制した男性の顔がアップで映る。
『よう、アーウェン久しぶりだな!!元気にしてるか!」
『お久しぶりです、セルゲイ班長。はは、見ての通り、元気ですよ。そちらの皆さんも元気のようで』
『おうよ!!どいつもこいつも、元気ばかりが有り余って仕方がねぇよ。それなのに、外ではサボろうとするするから困ったもんだ』
『はんちょ~、俺らにもアークと話させてくださいよ!!』
『っるせい!!さっき、つながったばかりだろうが!!』
再び後ろで騒ぎ始める作業員達に、男性――セルゲイ・スミノフは大声で一喝する。何時までも変わらない彼ら――月面基地の面々――にアーウェンクルは笑みを深めていた。
何時もの笑みとは違う、無邪気な顔にセシリアは見とれながらも、彼が言っていた恩人、月面開発の人達なのだろうか?と考えをつける。
「彼らは、月面基地のメンバーだよ。さっきの人が、班長のセルゲイさん。はは、みんな本当に元気そうだ」
「そ、そのようですわね。なんだか、取っ組み合いしておりますが……」
『いてて、てめぇら、少しは落ち着…………』
再び画面の前に戻ってきたセルゲイだが、アーウェンクルの後ろ、セシリアを見つけて固まってしまった。
アーウェンクルとセシリアは顔を見合わせて、どうかしたのだろうか?と首を傾げると、画面の向こう側から大歓声がとどろいた。
『よっしゃぁぁぁ!!!アーウェンが、嫁を見つけたぞぉぉぉぉ!!』
『まじですか!!祝杯挙げましょうぜ!!取って置きをあけろぉぉ!!』
『ちょ、どんな娘ですか!?みせてくださいよ!!』
「よよよ、嫁!?わ、私が……ランガードさんの……」
いきなりの嫁発言に、セシリアは顔を真っ赤にして、身体をクネクネとくねらせる。どうやら、かなり嬉しかったようだ。
だが、1人アーウェンクルは冷静にやれやれと言った様子で、ため息を零している。
『違いますよ。彼女は俺のクラスメイトのセシリア・オルコットです。……第一、俺の嫁なんて言ったら、彼女に失礼でしょ』
「そ、そんな事はありませんわ、ランガードさん!!わ、私、あなたなら……」
『なんだよ、違うのかよ~、お前、いい加減にみつけろよなぁ』
セシリアの呟きは、画面の向こうがわから聞こえてくる落胆のため息にかき消され、アーウェンクルの耳には届かない。
そんな彼に、若干、がっかりしつつも何れは……とセシリアは決心を固めているので、問題は無いのだろう。
その後、他愛の無い話をしていると、セルゲイが何か思いついたように、向こう側のモニターを動かし始めた。
『そうだ、アーウェン。彼女に、あれをみせてやるか』
『あれ?……あぁ、そうですね。お願いできますか?』
「ランガードさん、あれってなんですの?」
「見てからのお楽しみ。……お、映ったな。ほら、見てみろ」
そう言ってパソコンの前を席を譲り、セシリアを座らせて画面を見せる。なんだろう?と思いながら、画面を見たセシリアから、まぁ……と感動したように、短い言葉が漏れた。
そこには、漆黒の空間――宇宙――に浮かぶ青い宝石――地球――の姿が映し出されていた。アーウェンクルやセルゲイ初めとする月面基地の面々が大好きな光景。
あまりにも美しい光景に、セシリアは完全に魅入ってしまっていた。
「綺麗だろ。俺の一番のお気に入りの光景なんだよ。月から見える最高の景色だな」
「はい、とても……とても綺麗ですわ。私、感動してしまいました」
『おいお~い、アーウェン。そこはさ、君のほうが綺麗だよ。って言って笑うのが常識なんだよ!!』
んな常識があるかと突っ込みを入れつつも、ふむ……とアーウェンクルは、考える素振りを見せ、徐にセシリアと見詰め合う。
優しく澄み切った瞳に吸い込まれそうになるセシリアだが、次の言葉で思考が完全に停止してしまった。
「セシリア、この光景より、君のほうが綺麗だよ」
「な…なな……きゅう~」
「せ、セシリア!?おい、大丈夫か、おい!!……班長、ショックで気絶されたんですが」
『それはない。……はぁ、その笑顔でその言葉を言ったら、誰でも落ちるわな。っと、そろそろ時間だし、今回の通信はここまでだ。それじゃな!!』
「あ、ちょっと!!……まったくいきなり、切るか、普通……」
妙な声を上げて、こちらに倒れてくるセシリアを抱きとめつつ、アーウェンクルはセルゲイに抗議の声を上げる。しかし、向こう側では、反則だな、とか、恥ずかしい奴とか好き勝手に言ってくれている。そして、通信の時間が終了して、暗くなったモニターに恨み言を吐きつつ、仕方が無いなと言った様子で、苦笑を浮かべていた。
その間もセシリアを抱き止めているわけだが、アーウェンクルとセシリアが更に密着するわけで……オーバーヒート寸前の頭でセシリアは再起動を果たす。……最も、彼に寄りかかる体勢だが。
「はぁ、いきなり気絶するから焦ったぞ。やはり、模擬戦の疲れがたまってるんじゃないのか?」
「だ、大丈夫ですわ。…む、むしろ今のは貴方が悪いのです」
「良く判らんが……とりあえず、すまない。っと、今夜は遅い、そろそろ部屋に戻ったほうが良いぞ」
「あ、もうそんな時間なのですね」
確かに時計を見ると、随分と時間がたっていたようだ。少し名残惜しいと思いつつ、セシリアは彼から離れる。
少し温くなってしまったホットミルクを飲み干すと、アーウェンクルに見送られながら、扉の前で小さく頭を下げる。
「その……無人機から、助けていただき、本当にありがとうございます。……その事で、お礼を言いに来ましたの」
「なんだ、その事か。気にしなくて良い。俺が好きでやった事だから」
笑いながら、アーウェンクルは自分より低い位置にあるセシリアの頭を優しく撫でる。撫でられるのは何時以来だろう……と思いつつ、セシリアはその暖かな感触に身を委ねた。
「それでは、ランガードさん「アーウェンクルだ。」…え?」
「ランガードって呼ばれるのは、慣れてなくてな。出来れば、名前でよんでくれ」
一瞬、どうしよう……と迷ったセシリアだが、彼の願いだ。けど、アーウェンクルでは、少しつまらない。
ほんの少し考える素振りを見せ、セシリアは綺麗に笑みを浮かべて、彼の名前を呼ぶ。
「はい、それでは、アーウェンさん。また、明日会いましょう。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ、セシリア。良い夢を」