メカクシティアクターズ   作:natsuki

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第九話 人造エネミーⅠ

「ご主人?」

 

 エネの言葉を聞いて、シンタローは漸く我に返った。長い長い夢をみているようだった。

 

「お、おう……エネ、どうした?」

「どうした、というのはこっちのほうですよご主人。まったくもって理解できませんよ。急にぼうっとして。熱中症でも早々に発症したのかと思いましたよ」

「そんな訳はねえ! いくら引きこもっていたからとはいえ、だ!」

「だったらいいんですけど」

 

 エネはそう言ってスマートフォンの電源を強制的に切った。こんな茹だるような暑さでスマートフォンの電源を入れていれば、強制シャットダウンなんてことになりかねないからだろう。

 しかし、それが可能なのは電脳空間を自由に動くことのできる身体を持つ、エネだからできる技でもある。

 即ち。

 生身の体のシンタローにはできるはずもないことであった。

 

「ちくしょう……早くデパートに……」

 

 と、ふと思ったシンタロー。

 

「そういや、どうして俺外に出ることになったんだ?」

 

 そう。

 実を言えば、彼が外に出る理由などまったくもって存在しない。

 エネのいたずらに腹を立てたシンタローが、ただあてもなく飛び出ただけに過ぎないのだ。

 

「……何もすることないんだったら、もう帰ったほうがいいんじゃ」

 

 そう呟いた、その時だった。

 

「やあやあそこのお兄さんっ」

 

 猫なで声が聞こえて、恐る恐るシンタローは振り返る。

 そこに居たのは黒いフードつきパーカーを着た男だった。ベージュの髪に、猫目の男だった。身長はシンタローよりも幾分小さいくらいだ。

 

「……俺に用か?」

「だってこのへん歩いているのは、今キミくらいしかいないでしょ」

 

 それもそうか。

 シンタローはそうも考えた。

 猫目の男の話は続く。

 

「まあ、どうして僕が君のことを呼び止めたか、というとやっぱり理由があるわけでして」

「理由がない、とか言っていたら俺はすぐにここから消えていたよ」

「おお怖い。……まあ、単刀直入に言いますと、我々の組織に入りませんか?」

「………………は?」

 

 組織。

 今、猫目の男はそう言った。見た目からしてシンタローよりも年下に見えるが、『組織』という胡散臭い単語を聞くと、なぜだかシンタローはすぐにここから逃げたくなってくる。

 

「いま、逃げよう……そんなことを考えたでしょう?」

「お前、心が読めるとでも言うのか?」

「いーや、それはどちらかというとセトの方かな。僕にはそんな『能力』からっきしだけど」

 

 シンタローの中のセンサーが言っている。

 こいつはヤバイ、と。

 こんな胡散臭い連中に構っていると、何が起きるか解らない。そう思ったのかシンタローは踵を返そうとしたが、

 

「まあ、別にすぐに入って欲しい……ってわけじゃないよ。でも、いつかその日は訪れる。『あの世界』に関わりを持つ、その日が」

「『あの世界』……?」

「ま、詳しくはこれを持ち帰ってね!」

 

 そう言って猫目の男は小さな紙を渡した。メールアドレスと電話番号があった。きっとその猫目の男のものなのだろう。

 

「……名前だけ聞いてもいいか?」

「いいよ」

 

 即答だった。

 

「僕の名前はカノ、鹿野修哉さ。ま、また近いうちに会えると思うけど」

 

 そう言ってカノは手を振って、その場を後にした。

 

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