メカクシティアクターズ   作:natsuki

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第四話 コノハの世界事情

「どうだ……。生き返った気持ちは?」

 

 気づくと少年は謎の液体の中で目を覚ました。正直、夢だと思っていた。

 

「おい、どうだと聞いているんだ。君は人類の歴史に残るんだぞ?」

 

 白衣の着た人間に言われ、自分の存在をおもいだす。

 

 彼の名前は――コノハという。

 

 どうやら、彼は終わった命を蒸し返す機械らしいのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 

 彼は昔の記憶を揺り起こす。

 

 確か、少女が泣き叫び、「また会いたい」と呟いて――そんな感じだったのをおぼえている。

 

 けど、記憶は曖昧で、それがほんとかどうかもコノハには解らなかった。

 

 コノハはそんなことを思いながら、塀の向こうの街を眺めていた。

 

 見た目世界の技術を濃縮したようにも視えるその街はただのハリボテに過ぎなかった。

 

「……“終末実験”ねえ……」

 

 コノハは先程科学者から聞かされた実験概要なるものについて思い出していた。要するにこういうことだ。

 

 この世界のある場所にスイッチがある。そのスイッチが起動さえすれば終末実験のはじまり、ってわけだ。

 

 でも、それが誰によるものかはさっぱりで、早く終わって誰かと話をしたいなあとか思ったりしている。

 

 ところで――“終末実験”は昨日時点で予想通りグダグダすぎて、もう8月も半分を過ぎようとしていた。

 

「もう諦めたほうがいいんじゃないかなあ」

 

 コノハはそんなことを思いながら街を歩いていた。ふと、信号機の方を見ると、

 

 

 少年が、期待はずれの車線の先で飛び散った。

 

 泣き叫ぶ少女を、コノハは特に思うこともなく眺めていた。

 

「ああ、またか」

 

 そう思って、コノハは空を見上げた。

 

 ――秒針は進み出すのをやめて、世界もろとも眩み出そうとする。

 

 この夢は――まだ、終わらない。

 

 

 

***

 

 

 

「……なんだ、大変だな」

 

 ハリボテの街の外で、コノハは眠そうに欠伸を一つした。

 

 外はなんだか騒がしくて、警報がさっきから鳴りまくっている。警備はどうなんだろう。警備は。

 

「……まあ、まだ時間はあるからいいか」

 

 そう言ってコノハはまた回想へ入った――。

 

 

***

 

 

 

 

 彼の頭はただ、考えていた。

 

 ひとつ――この世界に自分がいる意味。

 

 ふたつ――この世界で起きた夢みたいな出来事。

 

 みっつ――そして、現実に起きている事態。

 

 その全てを絡ませ、結論のように呟いた。

 

「この世界はどうやら少しヤバイらしい」

 

 

【これは彼と彼女のお話】

 

 だが、それを伝えようとも作られてしまった心ではもう言葉も届くことはないのだろう。

 

 枯れる太陽の音が響き、蒸せる炎天下の目が大地を見つめていた。

 

 夏バテした世間にはじき出された様な蝉の声がもう鳴り響き始めたとして、この身体では救うこともできない。

 

「……あの科学者、一体何がしたいんだ……。透けてる身体だと? 死んだからだを蘇らせてくれたのは嬉しいけれどこれじゃ生き殺しじゃないか……」

 

 こんな身体じゃ、彼と彼女を助けるために伸ばした手も届くわけはなかった。

 

 

 期待はずれの視界の先で、少年がまた飛び散った。踏み潰された。

 

 秒針はふざけて立ち止まって、踏み潰された未来を反対車線で見ていた。

 

 機械仕掛けの世界を抜けて、木の葉の落ちる未来――9月の風景へと、君の目で見なくちゃいけないのか?

 

 それを知ってか知らずか「ざまあみろ」と言おうとしているのか、少年は笑っていた。

 

 

 

――

「失礼。少しお話を伺いたいのだが?」

 

 コノハが物思いにふけっていると、ひとりの男が声をかけてきた。

 

「……誰だ」

 

「ああ。すまなかった。俺はシンタローというのだが……メカクシ団というのはご存知かな?」

 

「いいや。」

 

「そうか」

 

 シンタローとコノハの会話を、ヒビヤは後で眺めていた。

 

「……ところで僕をどうするつもりだい? どうせ実験体さ。殺すなりなんなり好きにするがいい」

 

「ほんとならそうしてやりたいがそうもいかなくてね」

 

 シンタローは少し怒っているようにも見えた。

 

「お前をリーダーの元へ連れてくるように言われているのさ。コノハ」

 

 シンタローはそう言って手を差し伸べた。

 

 コノハはそれをみて、握り返した。

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