正直オリジナル回の方が書きやすいです。
単行本とにらめっこしながら書いてると、ノーパソの横に飲み物とか置けないし......
たまに「これ原作読めばいいんじゃね?」という頭の中の何かの囁きに心が折れそうになります。
そんな愚痴もほどほどに、今回もお楽しみください。
僕は今日、ある新事実を知った。
それは何かというと、『覗きは誰がやろうと怪しい』ということだ。
何を当たり前なことをと皆言うかもしれないけど、実際びっくりしたんだぜ?
だって、僕が見たのは奉仕部室を覗く雪乃ちゃんと結衣ちゃんだったから。
かわいい女の子でも覗きをしてると、こう、通報しようかな、という気持ちが湧いてくる。
見かけって大事だなぁ。
「『何してるの?』」
「ひゃうっ!!」
あらかわいい。
僕が声をかけると2人の身体がびくぅっと跳ねた。
「く、球磨川君……。びっくりした……」
まぁ、それはお互いさまなわけだけど。
「いきなり話しかけないでもらえるかしら?」
なにそれ理不尽。
話しかけずに自分がいることを主張しろと言ってきたぞ、この子。
かと言ってボディタッチをしようものならおそらく、2人から袋叩きにあうだろう。
はっ!
僕にアイデアの神様が降臨した瞬間だった。
「『じゃあこれから話しかける前に連絡するから電話番号とメールアドレス教えてよ!!』」
「嫌よ。あなたに教えるくらいならネット掲示板に公開するわ」
僕の提案は一刀のもとに両断された。
「『そりゃ残念。で、何してたの?』」
遊びもそこそこに本題に入る。
「部室に不審者がいんの」
これまで会話に入らず部室の中を注視していた結衣ちゃんが口を開く。
「『いや、どう見ても君たちが不審者だぜ? 扉の前に鏡でも設置したのかい?』」
「いいから、そういうのいいから。早く見てきてちょうだい」
我らが部長に命令されては仕方がない。
扉から離れた2人と入れ替わるように前に進み、勢いよく扉を開けた。
「『うわっ』」
部室の中は開かれた窓からの風により、プリントが飛び交っていた。
プリントの嵐をかいくぐって進むとやっと人影が見えてきた。
「クククッ、こんなところで会うとは驚いたな……。待ちわびたぞ、球磨川禊」
……誰だっけこの人。
もうすぐ初夏で気温も上がってきたというのに厚手のコートを羽織って、指ぬきグローブを手にはめている、恰幅のいい男子がそこにはいた。
「球磨川君、あちらはあなたのことを知っているようだけれど……」
雪乃ちゃんは僕の影に隠れながら、怪訝な顔で僕と彼を見比べる。
「『僕には全く覚えがないんだよ......。ほら、僕って男子に興味ないし』」
僕がそう言うと雪乃ちゃんは僕から離れた。
チッ、失敗したか。
そんな僕を見て不審者君は大げさに肩をすくめて首を横に振った。
「まさかこの相棒の顔を忘れるとはな……。見下げ果てたぞ、禊よ」
「相棒って言ってるけど……」
後ろにいた結衣ちゃんまで僕から距離を取る。
その目は「クズはクズかごに」という目だ。
なんか知らないけど、僕のただでさえ悪い印象がこの数分で急降下していくのを感じる。
「そうだ相棒。貴様も覚えているだろう。あの地獄のような時間を共に駆け抜けた日々を……」
そうは言われても、覚えていないものは覚えていない。
というか、奉仕部関係以外で僕が他の人と関わるということ自体がそもそも……あ。
「『あー、思い出した。体育でよくペアを組んでる……ざ、財前くん?』」
「剣豪将軍・材木座義輝だ! 我が魂に刻まれた御名を誤るとは、神をも恐れぬ所業よ……」
そうだった。自己紹介が長ったらしいから必要な情報だけ覚えておこうと思ってたけど、結局彼の存在自体忘れてしまっていた。
ていうか材木座ってすごいな。覚えにくい名前第一位に堂々のランクインだ。
「どうでもいいけどその人、あなたに用があるんじゃないの?」
この子、人の名前をどうでもいいって言ったぞ。
「ムハハ、とんと失念しておった。時に禊よ。奉仕部というのはここでいいのだな?」
すげーな、グランドラインにいそうな笑い方だ。
「ええ、奉仕部はここよ」
依頼人だとわかって警戒が解けたのか、雪乃ちゃんは材木座君の前に進んで出る。
「そ、そうであったか。平塚教諭に助言をいただいた通りならば禊、お主は我の願いを叶える義務があるわけだな?」
「『断る権利もあるけどね』」
ていうか雪乃ちゃんが話しかけたのになんで僕に向かって言うんだろ。
「奉仕部は別に願いを叶えるわけではないわ。その手伝いをするだけよ」
「……。ふ、ふむ。禊よ、では我に手を貸せ。ふふふ、思えば我とお主は対等な関係、かつてのように天下を再び握らんとしようじゃないか!」
「『かつてっていつ? あ、先週の体育でやったバスケでペアごとに総当たりしていくゲーム形式の試合のこと? あれ僕ら全戦全敗だったじゃん』
他の生徒は僕たちとの試合のことをボーナスステージと呼んでいた。
「うわぁ……」
僕の後ろで結衣ちゃんがドン引きしていた。後一言でも材木座君がしゃべったら逃げ出すんじゃないかな。
「球磨川君、ちょっと」
結衣ちゃんの様子を見ているすきに、雪乃ちゃんはこっちに戻ってきていた。
「何なの? 剣豪将軍って」
そっと耳打ちをしてきた。
「『んー、いわゆる『中二病』ってやつだね』」
「ちゅーに病?」
「病気なの?」
逃げる一歩手前だった結衣ちゃんも会話に加わってきた。
「『ほんとに病気ってわけじゃないよ。一種のスラングかな』」
中二病とは、中学二年生頃の主に男子によくある痛々しい言動や思考のことだ。
漫画や小説の登場キャラクターに憧れて、自分にもそのような一般人とは違う特別な何かがあるのではないかと思いこむのが特徴だ。
中学二年生といえば思春期真っただ中で自己形成を始めるころである。その頃の若者と言うのはとにかく自分が『その他大勢』に入ることを嫌う。
そんな中で好きな漫画やアニメ、ドラマの影響を受けて、自分でそういう設定を作りこむのだ。
では、なぜそんなことをするのか。
答えは単純明快。『かっこいいから』だ。
誰でも一度はしたことがあるだろう。『授業中にテロリストが学校を占拠。そんな中自分が八面六臂の大活躍をし、見事テロリストを撃退する』という妄想。
あぁいうのが外に出てしまったのが『中二病』というやつなのだ。
僕が簡単に説明すると雪乃ちゃんは理解したようだ。
ぶっちゃけ、この程度の説明でわかるということは、少なからず共感するところがある、ということなのだが……
まぁ、「世界を変える(笑)」と豪語している雪乃ちゃんはある種中二病まっさかりだ。
「意味わかんない……」
ほら、結衣ちゃんは理解してないだろう?
中二病は現状に満足している人間には訪れないものなのだ。
現実がままならないから妄想に走ってるわけだしね。
「『ほら、あれだよ。小さいころ魔法少女ごっことかやったでしょ? 男の子ならスーパー戦隊とか仮面ライダーだけど。そういうのと一緒』」
「あ、あ! なるほどー……」
ここで唐突ですが魔法少女診断。
□「またあの夢か……」
□「なんだろう・・ 初めて来たはずなのに懐かしい感じ・・・」
□「みんなの応援で不思議な力が漲ってくる!」
□「なんだろう嫌な予感がする・・・」
□「世界を救うよりも友達を助けるために戦いたい!」
□×「思う」○「想う」
いくつ該当しても魔法少女ではありません(ただの思春期です)
「つまり自分が作った設定でお芝居してるようなものなのね」
くだらないことを考えていたら雪乃ちゃんがきれいにまとめてくれた。
「『彼の場合、室町幕府の13代将軍である足利義輝をベースにしてるんじゃないかな。名前が同じだと感情移入しやすいからね』」
「あなたを仲間とみなしてるのはなんで?」
「『んー、僕もよくわからないけど。たぶん『禊』って名前のせいじゃないかな。ほら、なんだか儀式みたいなのを連想させるでしょ? 球磨川は九州あたりの地名性だし、たぶん関係ないと思う』」
「……それがかっこいいのかしら?」
「『普通じゃないってだけでステータスになるんだよ。それに、彼はちゃんと史実をもとにしてるから、設定自体はそこまで破綻してないんだよね』」
演じる本人のキャラが破綻しているのだということは言わないでおく。
「……あれよりひどいのがいるの?」
雪乃ちゃんは彼を一瞥し、心底いやそうな顔で聞いてきた。
「『いるよ』」
「参考までに聞くけど、どんなもの?」
「『実は僕は『
「もういいわ、ごめんなさい。頼むから黙って」
雪乃ちゃんに遮られた。ここからがいいとこなのに。
僕が気持ちよく話している間に結衣ちゃんは雪乃ちゃんの後ろに隠れてしまった。どうやら僕も敵とみなされたらしい。
「だいたいわかったわ」
そう言って再度雪乃ちゃんは材木座君の前へ出る。
いや、結衣ちゃん。『ゆきのん逃げてっ!』はさすがにひどくない?
「つまりあなたの心の病気を治せばいいのね?」
「……。禊よ。余は汝との契約の下、朕の願いを叶えんがため、馳せ参じた。それは実に崇高なる気高き欲望にして、ただ一つの希望なのだ」
さっきから二人称はブレにブレていたが、ついに一人称までブレ始めた。
ちゃんと設定守らないと。
というか、材木座君は雪乃ちゃんに話しかけられると、必ず僕に向かって答えを返す。
まぁ、女子耐性があるようにも見えないからなぁ。
「話しているのは私なのだけれど。人が話しているときはその人の方を向きなさい」
そう言って雪乃ちゃんは材木座君の襟首を掴み、無理矢理自分の方へ顔を向けさせた。
雪乃ちゃんって自分のことを棚に上げて、人の礼儀作法にやたら厳しいよなぁ。
根っからの被奉仕者体質である。
それって奉仕部として致命的なんじゃないかな。
ちなみに、僕が部室で話しかけた時は、たいてい読んでいる本から目を離してくれない。
「モ、モハハ……これはしたり」
「その喋り方もやめて」
そこからは雪乃ちゃんのスーパー尋問タイムである。
なぜコートを着ているのか。なぜ指ぬきグローブをしているのか。
そんなことを絶対零度の声音と視線で聞いてくるのだ。
その姿はまさに恐怖だった。
雪乃ちゃんの尋問タイムの間、手持無沙汰になってしまったのであらためて周りをよく見てみると、夥しい数のプリントが散乱していたのを思い出した。
近くにあった一枚を適当にとってみると、それがプリントではないことがわかった。
それらを拾い集めて、通し番号順に並べてみると……ほらやっぱり。
「これ何?」
全てを並べ終えると、結衣ちゃんが覗き込んで聞いてきた。
Oh……。
二つの山の偉大さを知った瞬間だった。
「『小説の原稿だと思うよ』」
「ご賢察痛みいる。如何にもそれはライトノベルの原稿だ。とある新人賞に応募しようと思うのだが、友達がいないので感想が聞けぬ。読んでくれ」
「何か今とても悲しいことをさらりと言われた気がしたわ……」
まぁ、中二病患者がラノベ作家を目指すというのは順当だ。
自分はラノベを読みこんでるから、書けないはずがないと思うのだろう。
その上、好きなことを仕事にできれば人生勝ったも同然だ。
「『でも、小説なら投稿サイトとかで読んでもらえばいいんじゃない? 僕たちに頼むより手っ取り早いでしょ』」
「それは無理だ。彼奴らは容赦がないからな。酷評されたらたぶん死ぬぞ、我」
うん、まあ、そうだろうけどね。
「『たぶん雪乃ちゃんの方が厳しいよ?』」
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翌日の放課後。
昨日の徹夜が響いたのか、登校してからの記憶がない。
まぁ、いつも授業中は週刊少年ジャンプを読んでいるのでそれほど大差はないか。
僕は半分眠りながら歩くという高等テクを駆使しながら、部室に向かうことにした。
今日はちょっとした荷物もあるし、さっさと行こう。
「ちょーっ! 待つ待つっ!!」
重い足取りで部室へ向かっていると、後ろから声をかけられた。
「クマー元気なくない? どしたー」
「『いやぁ、昨日依頼の小説読むのに徹夜しちゃって。結衣ちゃんの方は随分元気だね。意外と本読むの得意?』」
「え、あ、うん! あ、あたしこう見えて文学少女なんだよねー! あのくらいよゆーよゆー」
ダウト。
あの小説を読むのは本好きであればあるほど辛いはずだ。
そんな言葉尻を捕らえなくても冷や汗だらだらの結衣ちゃんを見れば一発でわかるが。
「『おつかれー』」
なんとか結衣ちゃんに支えてもらいながら僕は部室にたどり着いた。
扉を開けてみると、珍しく雪乃ちゃんが居眠りをしていた。
しかし、扉が開く音で目を覚ましたのか、目をこすりながらこちらを見る。
「驚いた。あなたを見ると一発で目が覚めるのね」
「『目覚まし時計としてどう?』」
「ノーサンキューよ。気持ち悪い」
つれないね。
「『その様子じゃ、相当苦戦したみたいだね』」
「ええ、徹夜なんて久しぶりにしたわ。あの手の小説は読んだことなかったし。好きになれそうにないわね」
「あー、あたしも絶対無理」
「由比ヶ浜さん、あなた明らかに読んでないでしょう」
図星をつかれて小さく唸る結衣ちゃん。
それから、眠気覚ましにコーヒーを雪乃ちゃんと買いに行ったりして、なんとか眠気を覚ましながら材木座君を待った。
「頼もう」
しばらくすると、材木座君が訪れた。
「さて、では感想を聞かせてもらおう」
用意された椅子にどかりと座り、腕を組んでふてぶてしい姿勢をとる。
「ごめんなさい。私こういうのはあまりわからないのだけれど……」
「構わぬ、凡俗の意見も聞きたかったところだ。好きに言ってくれたまへ」
雪乃ちゃんが申し訳なさそうに断りをいれてから、少し間を置いて感想を口にした。
「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」
「げふうっ!!」
つうこん の いちげき !!
材木座君はのけぞって倒れそうになるが、何とか体勢を立て直した。
「さ、参考までにどの辺がつまらなかったのか、ご教示願えるかな……」
こう言ってしまったのが運の尽き。
ここから雪乃ちゃんのスーパー批評タイムが始まった。
材木座君のHP、MP、SAN値が全てガリガリ削られていく姿は本当に見るに堪えなかった。
「『その辺にしておこうぜ雪乃ちゃん。君の感想だけで材木座君がゲームオーバーになっちゃうよ』」
適当なところで制止を呼びかける。なんたって今、文法などの指摘が終わって内容に触れ始めたばかりだ。
下手すると日が暮れる。
「『じゃ、次。結衣ちゃんね』」
「え!? あ、あたし!?」
部室に来てから原稿用紙とにらめっこを続けていた結衣ちゃんを材木座君の正面に座らせる。
材木座君に関しては、結衣ちゃんにすがるような視線を送っていた。
さすがにこの姿を哀れに思ったのか、結衣ちゃんは精一杯褒めるところを考えようと頭を捻っていた。
「む、難しい言葉をいっぱい知ってるね」
「ひでぶっ!」
あーあ……
作家にそれは禁句に近い。
なぜなら、それは小説の感想ではなく、作者へのお世辞だからだ。
つまり、小説には面白いところはないと断言しているようなものなのだ。
「じゃ、クマーどうぞ……」
結衣ちゃんはそそくさと僕に席を譲る。
これ以上哀れな材木座君の正面にいることが耐えられなくなったらしい。
「み、禊よ……。お前なら理解できるな? 我の描いた世界、ライトノベルの地平がお前にならわかるな? 愚か者どもには理解できぬ深淵なる物語が……」
僕が批評席に座ると、材木座君は文字通り、僕に縋り付いてきた。
「『大丈夫だ。安心してよ。たとえ世間の誰一人理解しなくても、僕は弱い者の味方だ』」
「みそぎぃ……」
感極まって涙ぐんでいる材木座君を引きはがし、僕は持ってきた荷物を広げた。
「それは何なの?」
「『ノートパソコンだよ。ここに材木座君の小説を全部打ち込んでおいたんだ』」
雪乃ちゃんの質問に答えると、さらに怪訝な顔をされた。
「もう原稿はここにあるのよ? わざわざデータ化する必要はないんじゃない?」
いやいや、データ化しないと始まらないよ。
「『材木座君、このサイト見て』」
「ぬ……『Web小説投稿サイト ハーメルン』? これがどうしたというのだ」
「『これに君の小説投稿しといたから』」
空間が凍った気がした。
「な、な、なななななななぁあああああにぃいいいいいいいいい!?」
数瞬の後、材木座君の絶叫が響き渡る。
「『んー、僕も今初めて見たけど、だいたい雪乃ちゃんが言ったことと変わんないなぁ。あ、これどうかな。『キャラの俺TSUEEEEEE感がウザい。どんなことがあっても結局主人公がワンパンしてて正直見るに堪えない』。ハハハ、酷評だね』」
材木座君を見ると、彼はすでに虫の息だった。
おお ざいもくざよ しんでしまうとは なさけない。
「あなた、さすがに酷いわね。彼大丈夫なの?」
まぁ、新人賞に応募するならここでそれなりの成果くらいはあげないと。
「ちょっと」
結衣ちゃんが僕を肘でつつく。
どうやらフォローしろということらしい。
……自分で追い込んどいてなんだけど、無理じゃない?
しかたない。自分でしでかしたことだ。何とかしよう
「『僕は好きだったよ。最初から最後まで笑いが止まらなかった』」
材木座君は動かなくなった。
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材木座君が蘇生したのは、それから十分後のことだった。
「また、読んでくれるか」
とうとう僕は耳まで低スペックになっちまったようだ。
「ドMなの?」
結衣ちゃんが僕の陰に隠れる。
いや、君も人のこと言えないからね。
雪乃ちゃんの罵倒に喜んでたのを覚えてるよ。
……あれ、違ったっけ。
「あれだけ言われたのにまだやるの?」
雪乃ちゃんのローテンションな言葉に材木座君は頷く。
「無論だ。確かに酷評されはした。挙句の果てにネットに晒され、さらに叩かれた。もう死んじゃおっかなーどうせ生きててもモテないし友達もいないし、とも思った。むしろ我以外みんな死ねとまで思った」
しかし、と材木座君は続ける。
「それでも嬉しかったのだ。自分が好きで書いたものを誰かに読んでもらえて、感想を言ってもらえるというのはいいものだな。この気持ちをなんと呼べばいいのかわからないが……。読んでもらえるのは、やっぱり嬉しいよ」
そう言って笑う彼は、剣豪将軍などではなく、素の材木座義輝だった。
「『いいよ。また書けたら持っておいで。こんどは僕自身の感想を聞かせてあげるよ』」
「うむ、楽しみに待っているがよい」
コートをたなびかせて去る彼の後ろ姿を。
僕は素直に羨ましいと思った。
材木座回、終了です。
ここで小説を書き始めてから、材木座君の言葉に共感することができました。
さすがにあれだけの酷評を乗り越えるだけのハートの強さはありませんがね。