鼻水とかくしゃみなんかはあまり出ないんですけど、毎年目のかゆみがものすごくひどいです。
目薬が手放せない今日この頃。
「エイプリルフール!! 画面の前の皆、こんにちは。僕の私の安心院さんだよ。本編だと思ってわくわくしながら開いた君。残念ながら四月馬鹿だ。本編はまだできてないよ。どうせエイプリルフールだろうなと思いながら開いた君。生きてて楽しいかい? さて、本編じゃなければなんなんだと思う人がもしかしたらいるかもしれないね。いないよね? 前もやったもんね? うん、察しの通り今回は番外編だよ。例によって本編には何の影響も与えない。ただエイプリルフールがやりたいからというだけの理由で用意した暇つぶしだ。もちろん川崎沙希は出てこないし、あろうことか球磨川君も出てこないんだ。驚きだね。では、番外編。スタートだ」
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どこにあるかもわからない小部屋。
中央に置かれた一つのテーブルと二脚の椅子以外のインテリアは何もなく、前後左右上下を目が痛くなるほど白い壁が囲っている。
そんな部屋で二人の男子高校生が向かい合って座っていた。
一人は学生らしからぬ金色の頭髪に勝気な目、黒いブレザーを着て左腕には腕章を付けている。
もう一人は学生らしい黒髪だが若者らしからぬ生気が宿ってない目。同じく黒いブレザーを着ている。
二人の名は人吉善吉と比企谷八幡。
このニ人が何をしているのかと言うと。
「(やべーよ超気まずいよ何で他校の先輩と密室で二人きりなんだよ何考えてんだよ安心院なじみ! どーせ『退屈だから』とかそんな理由だろうけどな!! 比企谷先輩も自己紹介したきり全然話さねえよ話す気配がねえよ。ここは俺が話を切り出すべきなのか? でもずっとこっち睨んでるしな...)」
「(え、なにこれどういう状況なの? 気が付いたら他校の男子生徒と二人で密室に閉じ込められていた。何を言ってるかわかんねーと思うが俺にもわかんねーよ誰か教えて! 人吉とやらもかなり気まずそうだ。ぼっちにはこの状況ハードル高過ぎだろ。そんな目で俺を見るな! 俺にはどうしてやることもできないんだ! 頼むから解放されるまでこの空気でいようぜ!!)」
突然の状況変化に混乱していた。
この状況に至るまでの経緯を説明しておくと、例によって平等なだけの人外、安心院なじみが自身の持つ一京以上もあるスキルの一部を使用して二人の精神だけをこの空間に閉じ込めたのだ。
端的に言うと、『安心院なじみが満足するまでこの部屋からは脱出できない』である。
つまり、比企谷の選択は間違いであり、ここを脱出できるかどうかは人吉の行動次第ということになる。
ある種膠着状態が続いている中、ついに人吉善吉が意を決して行動に出る。
「あ、あー、その。比企谷先輩は何か部活とかされてるんですか?」
満面の笑みを浮かべ質問する人吉に対し、比企谷は目をそらしつつ答える。
「ん...奉仕部っていう、何でも屋っつうか便利屋っつうか、そんな感じの部活に入れさせられた」
「入れさせられた?」
「生活指導の先生に奉仕活動を命じられてな...。あ、別に不良だったとかそういうんじゃねえぞ。今でも何で奉仕部に入れられたのか疑問だ」
「はあ...」
「しかもそこにはまるで氷のような女がいやがるんだよ。何かにつけて俺を罵倒してくるし、自分が正しいと信じて疑わないし、自分の価値観を人に押し付けてくるんだよ!」
「お、落ち着いてくださいよ」
説明というよりも愚痴に近くなってきた。
ヒートアップする比企谷を人吉は落ち着かせる。
「大変っすね。俺も生徒会で似たようなことやってるから、気持ちはわかりますよ」
「へえ、生徒会もそんなことすんのか。うちの高校の生徒会はしてなかったと思うけどな」
「うちの学園も先代まではやってなかったですよ。今期の生徒会長、俺の幼馴染なんですがね、そいつの生徒会長選挙での公約が『目安箱』の設置だったんです」
「目安箱ねえ。いい名前だな。今まではどんなことやったんだ?」
「えっとですね...剣道場の不良を更生させたり、迷子の犬を探したり、美術部の絵のモデル探しとかですかね。ほとんど俺じゃなくて生徒会長が解決したんですけど」
「何だそれ、漫画みてえだな」
「俺は生徒会長がやったことの後始末とかが主な仕事ですかね。めだかちゃん考えなしに暴れるから...」
「...お互い女子には苦労してるんだな。お前とはいい傷のなめ合いができそうだ...」
「後ろ向きっすね!? じゃあここでもう愚痴とか不満とかお互い吐き出しましょう! 見知らぬ仲だからこそ話せることもあると思うんすよ。お互い接点なんて無いでしょうからこれが本人に伝わることとかないでしょうし」
「そうだな...じゃあ人吉からいいぞ」
「ならお言葉に甘えて。めだかちゃんは融通が利かないんですよ! 身内に厳しく他人に甘いというか。誰彼構わず助けようとするのはどうかと思うんです! 襲い掛かってきた敵まで無傷で助けようとしないでほしいんですよ!」
「え、ちょっと待って。敵とかいるのん?」
「あ、はい。生徒会は風紀委員会と伝統的に仲が悪いみたいで、今年もその例に漏れずというか」
「マジで漫画じみてきたな。お前の妄想だったりしねえ?」
「めだかちゃんが普通の女の子だったらどれだけよかったか!!」
「わ、悪かったって。泣くなよ...。苦労してんのな」
「すんません...。比企谷先輩、どうぞ」
「お、おう。うちの部長、雪ノ下っつーんだけどよ。こいつがまあー性格悪いの。最初はあれだよ? 見た目だけはいいからさ、俺も舞い上がってたんだけど、口を開けば罵倒罵倒罵倒でいい加減うんざりだ。あいつは一人で何でもできる代わりに複数人での活動がまるでできない。嘘が嫌いって言っても必要のない時に必要のないことを言うのは間違ってるだろ。人の気持ちがわからないロボットかなんかかよ」
「お、おう。大変っすね。あ、写メとかありません? 見てみたいっす」
「ん、どうだったかな。由比ヶ浜がこの前送ってきたような...。あった、これだ」
「おっ、可愛いじゃないですか。奉仕部って三人だけなんすか? ハーレムですね」
「馬鹿言うな。こいつらなんかこっちから願い下げだ。俺は妹がいりゃそれでいい。人吉も生徒会の写メ見せろよ」
「あ、はい。これっす」
「おー、美男美女ばっかだな。...なんでこいつだけ違う制服着てんの? お前と同じ腕章つけてるし、生徒会役員だろ?」
「知らねーっすよ。転校初日からこの制服でしたし。転校前の学校の制服だって言ってましたけど」
「謎すぎるだろ、それ。うちなら指導室送りだぞ」
「あんまり先生は生徒に干渉しないんですよ。その代わり風紀委員会が罰を与えてます」
「生徒がなんでもやってんだなー」
最初の頃の気まずさは無く、二人とも自然に話せるようになってきていたその時、けたたましい音量のベルのような音が部屋中に響き渡った。
「うおっ! なんだこりゃあ!!」
「うるせええええ!!」
二人が耳をふさいで蹲っていると、次第に音が小さくなっていき、完全に消えると次いで女性の声が響く。
「やあ、二人とも。安心院さんだよ。おめでとう、君たちはこの部屋から出ることが可能になった。本当はもう少し面白いやり取りを期待していたんだけど、無個性二人じゃこんなもんかと妥協してやったぜ。ありがたく思いな。わはは。さて、肝心の出る方法だが、君たちそれぞれの向かって右側の壁のドアが現れてるはずだ。そこからそれぞれの学校へ帰れるよ。では、また会おうね」
そう言ってアナウンスは終わった。
二人が室内を確認すると、テーブルを挟んで向かい合った壁にそれぞれの名前が書かれたドアがあった。
「こ、こんなもんさっきはなかったよな...?」
「あー、気にしちゃダメっすよ。それよりさっさと帰りましょう。犯人には心当たりがありますけど、こういうところで嘘はつかない人ですから」
比企谷は訝し気な顔をしたが、疑ってもしょうがないと思ったのか、扉の方に向き直る。
「それじゃあな、人吉。少しの間だったけど、割と楽しかったぞ。普段言えない愚痴も吐き出せたし、いいストレス発散になった」
「お互い様ですよ。じゃ、またいつか」
と、二人はわずかな別れの言葉を交わし、同時に扉を開けた。
そこには。
「ふむ、貴様は私に不満があったのか。それは気づかなかったな。では善吉よ。放課後腹を割って胸襟を開いて話し合うとしよう!」
「あら、陰ヶ谷くん。人の陰口を叩くなんて随分偉くなったものね。少し聞きたいのだけれど、人に自分の価値観を押し付ける性格の悪い雪ノ下さんって誰なのかしら。私、すごく気になるわ。よかったら部室で私と二人っきりでお話ししましょう?」
扉が閉まるまで、部屋の中には二人の男の悲痛な叫び声が響き渡った。
はい、というわけでエイプリルフール番外編でした。
今日の昼過ぎに思いついてそのまま今日中に間に合うよう駆け足で書いたのでクオリティが低くてごめんなさい。
最初の『エイプリルフール!』がやりたかっただけでした。
本編を期待した方、申し訳ありませんでした。
後悔はしてない!