やっぱり球磨川禊の青春ラブコメはちがっている。   作:灯篭

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今回はちゃんと本編です!!



サキサキ編導入。
長くなりそうなので切りました。

小町ちゃんの存在をなかったことにした最大の弊害がここに。


無謀にも川崎大志は勇気を出す。

 言い訳をさせてほしい。

 

 

 昨夜、僕は間近に迫っているにっくき中間試験を赤点ゼロで乗り切るため日付が変わる時間まで勉強していた。迫っているとは言ったが、まだ2週間あるのでこれ以上根は詰めずにきちんと睡眠時間を確保できる時間に終了した。

 

 

 そして寝る前に牛乳でも飲もうかと冷蔵庫を開けた瞬間、床に置いておいては邪魔だからと冷蔵庫の上に積んでおいた段ボールが冷蔵庫の扉に引っかかって僕の頭上から落ちてきたのだ。さらに運の悪いことにその段ボールには、先日大量に買ってきた缶詰がいっぱいに詰まっていた。

 

 

 結果、あえなく僕は死亡。

 『大嘘憑き』で生き返ったころには。時計は午前9時半を指していた。

 

 

 補足しておくと、この日の安心院さんはやけに僕に構ってくれた。

 いつもなら適当に弄った後、必要以上に居座るようなら力づくで放り出されるのだが、今回に限ってはなぜか僕の愚痴にまで付き合ってくれるという親切さだった。

 

 

 蘇生した後に十中八九、遅刻して僕が笑いものにされるのを期待しての行動だと気づいた。

 

 

 正直サボってもいいのだが、そんなことをしたら平塚先生が自宅に乗り込んできそうだ。

 それは勘弁願いたい。

 

 

「『というわけで許してもらえませんか?』」

 

 

「却下だ。さあ歯をくいしばりたまえ」

 

 

 許してもらえなかった。

 これで何度目になるかわからない平塚先生の鉄拳が僕のお腹に命中し、僕はうつぶせに倒れる。

 

 

 ボディブローってじわじわ効いたりしないんだぜ? 知ってた?

 

 

「全く、このクラスには問題児が多くて困るな」

 

 

 そういう平塚先生の目は爛々と輝いていた。

 ごくせんとか金八先生に憧れて教師になったタイプか。

 どちらに憧れていたのかはわからないが。

 

 

 本命:ごくせん。対抗:GTO。大穴:金八先生。かな。

 世代的に考えて。

 

 

「そう言ってるうちにもう一人」

 

 

 平塚先生は倒れている僕のことは無視して、がらりと開けられた教室の扉を睨む。

 

 

「川崎沙希。君も重役出勤かね?」

 ふっと微笑みながら入ってきた女生徒に問う平塚先生。

 

 

 僕と扱い違いすぎやしませんかね。

 

 

 それに女生徒、川崎ちゃんは少し間を置いてぺこりと頭を下げるだけだった。

 そして川崎ちゃんは先生の横を通り抜け、倒れている僕に目もくれず自分の席へと歩を進めた。

 

 

 その、川崎ちゃんが僕の横を通り抜ける数瞬、たった数瞬の光景を僕は見逃さなかった。

 

 

 女子高生らしい丈の短いスカートから垣間見える黒い布地。綺麗な白い足に挟まれて映える深い黒。職人芸で刺繍されたかのようなレース。そう、それはまさしく、パンツに他ならなかった。

 

 

 そこから僕の脳内ではすさまじい勢いで記憶の整理が行われる。元々、僕の粗末な頭では多くのことを覚えることなど不可能だ。なので必要のない記憶を一斉消去し、一刻も早く先ほど見た黒レースを鮮明に焼きつける必要がある。昨日の勉強内容。安心院さんの所持スキル。体育のペアを組む材何とか君。彩加ちゃん……は残しておかねば。

 

 

 この間0.1秒である。

 

 

 球磨川禊、生涯に一片の悔いなし。

 拳を天井に突き挙げる。目からは自然と涙がこぼれてくる。

 サボらずに来てよかった。

 

 

「球磨川。女子のスカートを覗いた後に涙を流して穏やかな顔をするのはやめたまえ。危うく踏んでしまいそうになる」

 

 

 依然起き上がることのない僕の顔を覗き込むように平塚先生は僕のそばにしゃがみ込む。

 平塚先生はスラックスなので視線を下げたところでパンツは見えない。

 

 

「この件について少し話しておこう。放課後、職員室に来たまえ」

 

 

 僕の顔を片手で掴み、無理矢理目線を自分に合わせた平塚先生の後ろには、般若が見えた。

 

 

________________________________________

 

 

 放課後。

 小一時間に及ぶ平塚先生の説教(折檻)から解放され、僕は下校した。

 

 

 総武高校は進学校(笑)であるため、テスト2週間前にはすべての部活動は停止期間に入る。

 奉仕部もその例に漏れず、テスト期間終了まで部室を閉められてしまった。

 

 

 故に、最近の僕は暇を持て余してしまっている。

 

 

 は? テスト勉強?

 知らない子ですね。

 

 

 そういうわけで僕は今、近くの駅前をブラブラしている。

 家に直帰して週刊少年ジャンプを読むのでもいいんだけど、近頃それしかしていないのでページをめくる前にすでに次のページが見える域にまで達してしまった。

 早く月曜日にならないかな。

 ちなみに今日は水曜日である。

 

 

 と、そこでサイゼリヤを発見。

 サイゼは値段設定も手ごろなので見つけた場合はできる限り寄るようにしているのだ。

 

 

 何より『サイゼリヤ』なのか『サイゼリア』なのか、曖昧なところが気に入っている。

 僕は『サイゼリヤ』派だ。

 

 

 店内に入り、ドリンクバーとピザを一枚注文する。

 せっかくだからいつも安心院さんの後ろにいるあの人の真似でもしてみるか。

 

 

 ちなみに名前は知らない。

 加えて言うと顔も知らない。

 さらに言えば声も知らない。

 知っていることと言えば、いつも安心院さんの後ろにいたこととファミレスでドリンクバーをいたく気に入っていたことくらいだ。

 安心院さんとファミレスに入ると必ず後ろの席でジュースの混ぜ合わせをしていた。

 

 

 とりあえずドリンクバーにあるすべてのジュースを自分の席へと運ぶ。

 ピザを持ってきた店員がギョッとしていたが、特に注意はされなかった。

 そんな感じで何をするでもなく、無駄な時間を過ごした僕。

 

 

 正式名称がよくわからないピザカッターでうずまき状に切ったピザを端から食べていると、窓の外の男子と目が合った。

 

 

 僕が通っていた中学の制服を着ているということは、僕の後輩にあたるわけか。

 面識なんて無いけど。

 

 

 その男子は僕を見るなり急いでサイゼリヤに入ってきて、店員の案内も聞かずに僕の方へと歩いてくる。

 

 

「あ、あの! 球磨川禊さんですよね!?」

 

 

「『え、あ、うん。そうだけど。何? 僕のファン?』」

 

 

 千葉に来てからはまだ目立ったことはしてないはずなんだけどな。

 

 

 心当たりを思い出そうと記憶を探っていると、いきなりその男子が頭を下げてきた。

 

 

「お願いします! 姉ちゃんの事で相談に乗ってくれませんか!!」

 

 

 ……ふむ?

 どうやら、僕に用があるのではないようだ。

 

 

________________________________________

 

 

 

 僕を訪ねてきた男子中学生の名前は川崎大志。

 聞けば、僕のクラスにいる川崎ちゃんの弟らしい。

 

 

 当然、僕との面識はない。

 そんな大志ちゃんがなぜ僕を知っていたかと言うと、単純に川崎ちゃんから聞いていたそうだ。

 

 

 なんでも『街中で不幸にもこいつを見かけたら、何を置いてもすぐに逃げろ』と言われたそうだ。

 ひどいなあ。

 

 

 ちなみに、川崎ちゃんとは去年も同じクラスだったのでその時から彼女が僕を知っているのも不自然ではない。

 

 

 僕に助けを求めたのは、『確実に姉のことを知っている人物』であると思ったかららしい。

 

 

 まあ何となく気になったことをいくつか聞いた後、僕は自分が所属する奉仕部について大志ちゃんに説明した。

 連絡先を交換し、明日奉仕部として相談に乗るということにして今日は帰らせた。

 

 

 2人には事後報告ということになるが、性格的に断るということはないだろう。

 万が一断られたら僕一人で大志ちゃんの相談に乗ればいいだけだし。

 

 

 そんなわけで翌日放課後。

 

 

 場所は結衣ちゃんからの希望により駅前の喫茶店になった。

 

 

 奉仕部員にメールで事情を伝えたところ、結衣ちゃんは二つ返事でOK。いい子だ。

 雪乃ちゃんはテスト期間中ということと、学校外からの依頼ということで少し渋ったが、ちょっと挑発したらあっさり承諾した。

 

 

「は、はじめまして! 川崎大志っす! 今日はよろしくお願いします!」

 

 

 大志ちゃんは女子2人が来ると、ガチガチに緊張してしまった。

 無理もない。中学生にとって女子高生は大人のお姉さんなのだ。

 しかも二人とも美人。大志ちゃんにはもはや目の毒である。

 

 

「では早速相談を聞かせてもらえるかしら。うちの学校の川崎沙希さん、あなたのお姉さんについての相談なのよね?」

 

 

「はい、実は……」

 

 

 聞くと、どうやら川崎ちゃんが不良化してしまったのだという。

 毎日朝の5時に帰宅し、大志ちゃんがそれに対して何かを言っても『あんたには関係ない』の一点張りだそうだ。

 両親も共働きで、さらに子供が多いため長女である川崎ちゃんにはあまり口出しをしないらしい。

 

 

「お姉さんが不良化したのはいつ頃からなの?」

 

 

「は、はい。ええと……、中学の頃は真面目でした。総武高校受かるくらいだから結構成績も良くて……。優しくて、飯とかも良く作ってくれましたし。高一になってもあまり変わりませんでしたね……。高二に進級してからだと思います」

 

 

「二年生になってから何か変わったこととか、心当たりは無い?」

 

 

「んー……、クラス替えとか? F組になってから」

 

 

「なるほど、球磨川君と同じクラスになってからということね」

 

 

「『ちっちっち、僕と川崎ちゃんは一年の頃から同じクラスだったぜ』」

 

 

「一年の頃から徐々に汚染されていったのね」

 

 

「『僕は病原菌か何かかよ』」

 

 

「あら、そこまでは言ってないわよ、球磨川菌」

 

 

「『今露骨に菌って言ったよね』」

 

 

「噛んだだけよ。……そういえばあなたと顔を合わせるようになってから体調が芳しくないわね」

 

 

「『僕への熱い風評被害』」

 

 

 うーん。

 雪乃ちゃんとのこんなやり取りも久しぶりな気がするなあ。

 

 

 番外編二つも挟んじゃったからかな。

 

 

「それにですね! 変な店から姉ちゃん宛に電話もかかってきたんですよ!?」

 

 

「変な店?」

 

 

「エンジェル何とかっていう店の、店長か誰かから……」

 

 

「んー、そんなに変かな?」

 

 

「だってエンジェルっすよ!? もう絶対やばい店っすよ!!」

 

 

「えー……」

 

 

 結衣ちゃんが引いている。

 

 

 が、僕には大志ちゃんの気持ちはわかる。

 ここは理解者として助け舟を出してあげないとな。

 

 

「『わかるわかる。『キャバクラ エンジェル』とかありそうだよね』」

 

 

 大志ちゃん轟沈。

 てへぺろ。

 

 

「とにかく、どこかで働いているというのならまずその場所の特定が必要ね。そこの阿呆どもが言うような危険なお店じゃないとは思うけど、朝方まで働いているなら辞めさせないと」

 

 

「でも、やめさせただけじゃまた別のお店でバイトしちゃうんじゃない? ほら、あれ、どーき? どーきを無くしてあげないと」

 

 

「あら、由比ヶ浜さん動機なんて難しい言葉知ってるのね」

 

 

「ゆきのん馬鹿にしすぎだし! こないだクマーに教えてもらったの!」

 

 

「『ああ、チェーンメールの時だね。雪乃ちゃんがサボりでいなかった時だ』」

 

 

「サボりじゃないわ、私用よ。あなたと一緒にしないでちょうだい」

 

 

 ひどいな。

 僕まだ一度もサボったことないよ。

 

 

「川崎さんに対しては対症療法と根本治療が必要なようね。どちらも並行して行いましょう」

 

 

「『そういうことだから。川崎ちゃんに関する依頼は僕たちが受ける。大志ちゃんには逐一報告を入れるね』」

 

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 

 うむ、元気でよろしい。

 

 

 




特に山場も無く終わる今回。
作者は力をためている。

大志くんとのコンタクトちょっと強引過ぎましたかね。


これとは別にFGOの短編集的なのも書き始めました。
1話1500字くらいのぐだぐだ短編ですが、興味があればご覧ください。

ではでは。
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