小鼠道中 ~彼女は種が食べたいだけ~   作:馬鈴薯

3 / 8
少しの悲しみ。書き続けてたらこっちの方が良いと言う事に気がついてしまった。
主に5話程先の方で…


3話:魔理沙宅での目覚め

 薬を飲んで眠っていた彼女は、ひょんな事で目を覚ました。その目に写った景色は薄暗く、火の揺蕩う明かりだけが隅から差しているのを、ぼやけた思考で感じ取ると。目を覚ました時にやろうとしていたことを思い出し、その相手を探す。その相手である魔理沙は、机に書物などを起き自身の研究を進めていたのだった。

 

「お世話になりました! 私は鼠小僧の末裔、名付けて鼠小娘です!」

 異常が無くなり元気になったこともあるが。持ち前の性格からでたのか、更に元気な声でいきなり挨拶を始め。魔理沙は驚くこと無く、筆を止めなんとも言えない顔を向けた。その表情は――ちょっと違うのでは? という、感情に満ちており。彼女も自身が変なことを言ったか内心考える。

 彼女にとっては別段おかしな紹介でも無かったのだが。一般からすると、やはり変な言い出しなのは言うまでもない。

 

「それ…名付けてと言うより種族だろ? 名前とはちょっと違うんじゃ無いか?」

 魔理沙は言うが、まさにその通りである。

 しかし、彼女には名前が無い。それが事実であり、自身で隠している訳でも無い。

 深く聞くだけ無駄なのだ。

 

「気がついたら居た状態なので、名付け親なんて居ませんよ? それに名前なんかあったら不便じゃないですか、追われる身なのに」

 

「へぇ~追わているのか、つまり――」

 紹介の謎が解けた事と、その続きに出た言葉を聞き魔理沙はニヤリと横目に笑う。

 それを見逃す彼女ではなかった。

 なんせ一対一の対話で背を向けて話すのもおかしなもので、しっかりと面向かって話していたからだろう。しかし、その表情に込められた邪な考えを、自身の言葉や経験、生まれ持った知識から当てはめ、推測した結果。即座に出れるよう身構える。

 

「――捕まえれば金に成る訳だな。 という訳で、この魔理沙様に大人しく捕まりな!」

 

「捕まれと言われて捕まる泥はいません、泥棒稼業舐めんじゃねぇです! てりゃー!」

 彼女は身構えていた通り、捕まえると言うワードを聞くやいなや、秘密兵器が一つ『忍ばせた砂』を投げつけ、付近の窓へ突撃――ガッシャーンッ という満更な音をたてて逃走を開始。その時の彼女の心相は――泥棒たる誇りに、縄という埃を掛けたくないというものであった。

 

 

「窓壊しやがった、ぜってぇ捕まえてやる……」

 ともかく屋敷から逃げ出し、地面へ着地した彼女の耳へ物騒な言葉が響く。しかし、逃げ切る自信があるのか、それとも少しばかり追いかけられる事を美徳とするのか、彼女は俊足8割と言った感じで闇夜を駆ける。

 周りは魔法の森で、視界はアテになりにくく、例の風船が奇妙な音を立てているが。逃げるという行為に集中した彼女の耳にその音が入り込むことはない。むしろ相手の状態を、後ろから聞こえる声で楽しんでいるといった状態だった。

 

 遠耳にドアを開け放つ音が聞こえると、彼女は全力で駆け始める。

 それまでの間に自慢の俊足を活かし、ある程度の距離を稼いでいたわけだが。彼女の前を一筋の閃光――否、星が瞬き広がった。それは夜空が森を突き抜け降りてきたかのよう……その景色に見惚れ足を止めかかるが、彼女は首を横に振り自身を保つと、先程と同じ速度で木々を縫い始める。

 

 

「追いついたぜ。 泥棒稼業なら、ちっとばかり齧ってんだ。 良くやるが…やられる側に立つのは今回が初めてだぜ……」

 後方から聞こえるはずのあの声が、何故か前方から聞こえ、彼女は足を止めた。しかし、捕まったわけではない。彼女は四方を見渡し、逃走経路の状態を見極める。

 前方…無い。 後方…逆戻り、意味が無い。 左右……それらの確認が終わると、決めたのか。彼女は自身の風呂敷へ手を入れ、何かを取り出し相手と自身の中間と思われる場所へ投げた。

 それはボフンッ と音を立てながら、即座に燃焼し黒煙を振りまく。正体は秘密兵器が一つ『煙玉』

 視界の遮断に成功したところで彼女は右側へ直進を開始。その道へ入る直前に常套手段として、逆側に適当な枝を投げるのも忘れないという周到ぶり。

 しかし、音は遮断できたわけではない。それは両者とも同じであり、声を出せばお互いに何を言っているか聞き取ることが可能な距離――そして声が響いた。

 

「煙幕『黒煙の舞』ってとこか…? 宣言無しだから正当防衛だよなぁ――」

 はっきりとそう聞こえ、彼女は何事かと少しばかり足を緩める。ここで『逃げられた~』という言葉であれば、勝利の駆け足軽やかにと言った所であろうが、先程の事といい。どう出るのか気になってしまったのか、速度が落ちる。

 

その時魔理沙は、あるルールに則った行動に出ようとしていた。

 

「コレで煙を払うぜ!恋符『マスタースパーク』」

 その掛け声と共に。七色の極太光線が煙をぶち払い、先程彼女が足を止めていた辺りを通過して行った。

 それを見た彼女は戦慄を覚え、逃げるのを再開しようとするが。昼頃の光景に脚が言うことを聞かず、気をつけていたはずの、余計な音をたてないという決め事を破り。

 枝へ衣服の一部を引っ掛け、無慈悲に響く音。その音に魔理沙は振り向き、八卦炉を構えた。

 

「そこにいるな! もう一発、マスタァースパァークッ!」

「ひぃいいいい……」

 本日、三度目となる光線が彼女の身を焼く。しかし、一度目二度目と違って火力が火力なのか、気を失うことも、吹き飛ばされることもなく、彼女は地面へ伏していた。そんな状態の彼女へ魔理沙は近づく。その音を聞き、彼女は胡座へと姿勢を整えると、覚悟を決めたのか腕組みをした。

 

「ぅ……さぁさぁ、煮るなり焼くなり好きにするが良いです。 私は逃げも隠れもしませんよ」

 彼女は縄で捕らわれることを前提に、姿勢を整えたが。当然素直に出るからには裏の考えを持っている。

 それは、縛られたとしても、秘密道具『隠し綱切』という刃物を用いて、捕らえたという心理を突いて逃走を計るというものであり。魔理沙もそうするであろうと思っていたのだった。

 しかし、その思いとは裏腹に。魔理沙は縄を持たず、青い傘の覗く何かを片手に持ち、それが何かも伝えず彼女の顔へ突きつけた。

 香る異臭、気持ちの悪い感触に彼女は根をあげる。

 

「うわっ、そんなもん寄せんじゃねぇです!? 臭いです、ブニブニして気持ちわる…い、あれ? 急に眠く…なって……」

 急激な眠気にフラつきながら、眠気に飲まれまいと気力を振り絞り、魔理沙の言葉を彼女は聞いた。

 

「今時、縄で泥棒捕まえるやつなんか居ないんだなーコレが……ついでに言っとくが、私はいつも魔法で追いかけられるんだぜ!」

 そう決める魔理沙に、彼女は思ったのだった――魔法が使えない…私へのあてつけで……しょうか…?

 それを最後に、彼女は完全に眠りに突いたのだった。




魔理沙正式に捕獲! 借り物タッグ結成なるか!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。