小鼠道中 ~彼女は種が食べたいだけ~   作:馬鈴薯

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どうも、芋です。

今回はある種の山です。これを受け入れてもらえるかどうかが、この中で一番の心配事。



7話:潜む魂

 穴が空き、ヒビの入る壁を抜け、廊下へ足を下ろしたレミリアが足音を立てて近づく。

 

「それじゃ…盗ったものを返してもらうわね。」

 そう言うと、壁にもたれ掛かり小さく息こそしているが。目は虚ろに開いた少女の風呂敷へ手を入れた……

しかし、彼女の手によってレミリアの手は掴まれる。

 

「あー痛ってぇ…やっぱ未熟だな私…」

 唐突に響く声。それに一瞬驚くが声にはしない。

 レミリアは先程の口調の違いと、言葉とともに湧いて出た雰囲気の違いで、声の主が別者であるのを即座に察した。

 

「世から、自信の存在を盗れば簡単に避けれたものを……ま…技量、知識共に足りてないし無理か…」

 未だ手を掴み、一方的に独り言を繰り返す別者に、レミリアはとうとう声を掛けた。

 

「貴方は誰かしら? それと、勝ったのだから約束通り、物を返して欲しいのだけれど……」

 

「あぁすまんすまん、こんなナリでも約束事は守るさ。ほら、コレだな」

 レミリアに最初に渡されたのは咲夜のナイフ。次に開かれた空の手で、自信の力が戻ってくるのを感じ、いつもの調子へ戻る。

――この様子だと、咲夜の方にも戻っているだろう……

 そう考えていると、従者が姿を現し、同時に面白い何かを見た。

 しかし、レミリアは敢えて口にはしない、それは直ぐに起こりうる事だったからだ。

 

 

「お嬢様、お手数を掛けてしまい申し訳ありません…」

 

「まぁ、貴方はある程度頑張ったわ…『窮鼠猫を噛む』さえ守れば、こうはならなかったのだけれども…」

 

「それは…私の力不足です……申し訳ありません…」

 再度、頭を下げる咲夜と、それを見守るレミリア。そんな、二人に空気とかした少女は口を開いた。

 

「かーっ感動的だねぇ、良い主従関係だ! 守る力戻って再度の忠誠、良いもんだねぇ!」

 

「お前は、侵入者の!?」

 驚いた咲夜は、戻ってきたナイフを構え襲いかかろうとするが、レミリアの手が行く先を拒んだ。

 

「悔しいでしょうが、手を出すのは私が許さないわ」

 主にそう言われると、咲夜は言葉通り悔しそうな顔をしながらも、冷静を保ちナイフを普段の場所へ戻した。それを見た少女は、その場面をはやしたてた。

 

「流石だ流石。もうちょっと威厳が必要だと思うが、それには成長が必要だから、まだまだ先のことだな」

 

「貴方も同じ事ではなくて?」

 

「おぉそうだな! ところで…第二ラウンドはあるのかい?」

 少女は怪しく笑う。

「貴方が望むなら――」

 返すように、悪魔な笑みを浮かべるレミリア。

 

「それじゃあ、いっちょ派手に盗りますか! おっと、その前に名を交わそうか!」

 大声を上げ立ち上がると、少女はポーズを取った。両手を腰に当てた最初のポーズだ。

 

「かのねずみ小僧が末裔、鼠小娘。『幻想郷一の悪手癖』な小走 鼠野子たぁ私の事」

 ポーズに返すようにレミリアは片足を内側へ引き、スカートの裾を手で摘むと、お辞儀をした。

 

「紅魔館の主にて吸血鬼、レミリア・スカーレットよ…以後お見知り置きを」

 

「へぇ、二つ名とかは無いのかい?」

 

「スカーレットデビルとでもっ!」

 まず、レミリアが光弾を放った。 レミリア 対 鼠野子による、全力勝負が幕を開ける。

 

 先程放たれた迫る光弾をひょいと躱し、後ろの壁が吹き飛ぶ。鼠野子は慣れない体の足先をトントンと床を突き、自身の状態を把握しようと努めるが。レミリアはそれを隙として捉え光弾を放つ。

 しかし同じように躱され、館の壁が再度崩れる。

 未だ体の状態を確かめる彼女は、ふと思いついたように相手へ視線を移し、惚けた顔を見せた。

 

「言い忘れてたけどさぁ…私飛べないんだ。 というわけで、ハンディなんて…」

「あげる訳無いでしょう!」

 レミリアが言い切り。元から答えなんて分かりきっていたかのように彼女は、迫る光弾を躱し続ける。

 回避に至って、逃げる事を生業とした鼠野子は上々といったところであった。小さい体に慣れていないのもありながらの上々、つまり本当の実力は不明。現在はウォーミングアップの初めも初めと言った所。

 さらに、どう出ようか考えているのか。勘に触る笑みを浮かべひょいひょいと躱し続ける。

 そして、ついに決めたのか、風呂敷へ右手を突っ込んだ。

 

「右手に盗るは、我穿った神鎗……ありゃ? 物じゃないのか……」

 どうやら盗れなかったらしく、逆の手を入れ即座に引っ張りだした……その手には、紛れも無く真紅に光を放つ神鎗が握られていたのだった。

 

「ルール違反じゃないかしら?」

 レミリアは苦笑を浮かべ問いかけた。それに対し、彼女は純粋な笑みを浮かべた。

 

「なーに、使ってみたくて借りただけ借りただけ。 投げてちゃんと返すからさっ!」

 そう言うと、自身に当てられた時のように槍を投げた。

 

 神鎗グングニル――投げれば標的を穿ち突くまで、飛ぶという槍。

 しかし、レミリアはその運命を操った……確実に外れるというものに。

 交わることのない2つの運命に相殺され。グングニルは普通の投槍と同じ距離を飛ぶと地へと落ち。その光景に彼女はパチパチと拍手を送り笑う。

 

「おーおー! 当たると思ったのになー…流石流石」

「いちいち勘に触るコソ泥だこと……」

「幻想郷一の悪手癖なモンで」

 レミリアは弄ばれてる事態に不満を感じたのか、スペルカードを取り出す。しかし、自身を違和感が襲う。

 その違和感の原因は言うまでもない、彼女である。

 しかし、何が盗られたか理解できず。推測しているところで彼女の声が響く。

 

「盗って与えるモノもあるってね。 ここは狭いし、やり辛いと思わないかい? どうせなら外でやろう」

「私を吸血鬼と知ってのお誘いかしら?」

 しかし、彼女は答えを聞くまでもなく窓を突き破った。

 

「咲夜っ傘を!」

「畏まりました」

 従者によって即座に持ってこられた注文の品。それを開き、影を作って逃亡者の後を追いかけたが、その者は出て直ぐの所にて待ち構えており。その手に持つは、先程は持っていなかった小刀。しかも抜き身なそれは普通の刀とは違って刀身が黒く塗られた黒刀であった。

 しかし、その程度の武器に怯むレミリアではない。未だカードの宣言こそしてこないが、彼女とてある程度の法則には従っていたのだから。

 この距離ならば近接が有効。それは彼女の持つ武器からも見て取れる。だから、レミリアは唱えた。

 

――紅符『不夜城レッド』

 使用者の背後にて真紅の十字架が浮かび、波動と光弾を撒き散らす。

 ただ追いかけてきてくれるだけだと思っていた彼女も、予想外の行動に距離を取るが。おまけと言わんばかりに背後に手を回す。

 

「右に盗るは吸血鬼の傘!」

 そう言うと、レミリアの持っていた日傘は光の粉になるようにして消え、代わりに彼女の右手へ風呂敷の中から姿を現した。しかし、レミリアは日光に焼かれるといった事態に陥らず。迷い、一瞬動きを止めるが、原因の根本である彼女を睨みつけた。

 

「初めての日光浴って奴だ、お気に召したかい? お嬢様……」

「貴様、吸血鬼を侮辱するか!」

「おいおい、そんな事は微塵も思ってないさ。 嫌なら返すぜ」

 彼女は答えを聞く前に、吸血鬼と太陽の関係を持ち主へ返した。それと同時に傘をたたみ地面へ置く。

 無象は返そうと思えば、持ち主へ返るが。有象…つまり、物は直接的な意志がなければ動くことがない。そして彼女は、返してほしくば追いかけて来い。そう意思を込めた瞳を、日に焼かれるレミリアへ向けている。

 しかし、彼女の意思は別の者によって瞬時に塗り替えられる。

 

「痛ってぇ……見てたとは言え、やるねぇアンタ。 どうだい、さっきの悔しさは晴れたかい? 従 者 さ ん」

「卑怯者に答える義理はない!」

「そうかい…そうかい…返せといったのはアチラなんだけどねぇ……まっ、良いさ」

 そう言う彼女の横腹には銀製のナイフが突き刺さり、今もグリグリと傷を広げようと咲夜は捻る。しかし、言葉で痛いと言ったきり反応はなく、彼女は咲夜の瞳を捉え、アイコンタクトのようなモノを送った。

 それを見た咲夜も一瞬で距離を取り、いつ回収したのか傘を広げ主の側に立っていた。

 

「先の私はガキだが、今は悪党なんでねぇ…そうだ、さっきの主従関係本当に良かったよ」

「っ!?咲夜、逃げなさい!」

「左に盗るは従者のガボッ……」

 言いきる前に言葉は途切れた。咲夜と呼ばれた従者が言いきる前にその組織を切り裂いたからであった。しかし、それは予想済みだったのか。首元を濡らしながら、邪悪な笑みを浮かべ彼女は唱えた。

 

――…盗るは従者の記憶と忠義

 彼女の手には青色で半透明な物体。気泡のような粒が動きまわる球体が握られていた。そして、それを丁寧に地面へ置く。

 

「くっ…・・・やってくれる。思ったのだけれどスペルカードは使わないのかしら…?」

 見た事象の中で厄介なことが起こったことに、悔しさのこもった声とさっきから能力ばかりを使って攻めてくる彼女に、いい加減飽きたのか…それとも、程度を合わせてもらうためかレミリアは煽るようにして声を掛けた。すると、彼女は一枚のカードを取り出して握る。

 

――殺陣『五色煙陣一ノ小太刀』

 突如現れた球体によって発生した五色の煙幕が広がり視界を奪う。レミリアはそれに対する手段を即座に取り、振り払おうと地面へ衝撃を与えるが、その場所へ直ぐに5つの球が飛んできて辺りを埋める。

 ならばと、空へ翔べば――敵意をむき出しにした従者が殺意を……しかも、相打ちすら辞さない覚悟を瞳にレミリアへナイフを投げる…その数多数。しかし、それを躱すこと無く受け止めた。

 傷となり、痛む体。しかし、吸血鬼…この程度まだまだ持つ。レミリアは咲夜の瞳を捉え、あの時のように魅了しようとするが……二人の間に玉が飛んだ。

それには導火線が付いており、中に引っ込むと煙を撒きちらす。

 

「せっかく正攻法を用意したのをズルしてやられちゃ、こっちも堪んないよ。 それと言っただろう、空を飛べないんだ」

 声を出す組織が再生したのか。無言で事を起こした彼女は、やっと喋れるといった様子で、空飛ぶ相手へ伝えるが。レミリアは咲夜による猛撃の対処に集中しており、返事を返す余裕が無い。

 しかし、自身だけで勝つ運命はと見ては見るが――無い。惜しい線に行くモノもあるが、最後は敗北のみ。

 そんな事実に、自慢の八重歯で唇を噛み締めレミリアは卑怯とも言える手を使う。卑怯には卑怯を…相手もやったのだ、コチラがやっても何も文句は言われないだろう。

 レミリアはその運命を確定させた。そう…普段なら起こりえない増援を呼ぶという運命を……

 

「降りてこないんじゃぁ…跳ぶしか無いじゃねぇのっ!」

 彼女が待ちきれず行動に出る。

 煙の隙間を掻き分ける影が目に写ると、レミリアは相手の威力を上乗せした打撃を食らわそうと腕を伸ばし……命中。しかし、その瞬間に見たのは奴ではなく、今は狂った従者であった。

 陽動が表なら、来るのは逆。つまり背後とレミリアが振り向いた先には、読み通り黒刀の先端が迫っていた。しかし、読めたのと煙の色が対称色だった事が幸いし、擦りながらもなんとか躱す。

 

 こうなればレミリアの番。

 彼女は飛べない。つまり、このまま推力が無くなるまで跳ぶか、重力に引かれ落ちる。その間に返しを決めることも出来たが、レミリアはそれをしない。なぜなら、手を出したが最後…先の運命が変わり――負ける。

 逆にこのまま落としておけば、勝つ……それは勝利とは程遠いが、この厄介な存在を遠ざけ、鎮めることが出来るのだった。

 そして、訪れたその時。とうとう宙へ昇れなくなった彼女は、素直に落下を開始。途中になにか来るかと構えていたが、レミリアは事を忍んだ。

 それを、隙として捕らえたのか、彼女は次の技を繰り出す準備を始める。

 

――散符「ゴールデンラッシュ」

 地面に着いたら即座に反撃しようと、彼女の武器が一つ。箱が辺りに数個姿を現した。

 それは、落ちる彼女に合わせるかのように落下し、着地といった所で彼女はその中の二つへ手を伸ばしたが。落ちに落ちて彼女が着地した場所は、地面ではなく。ギョロリと目玉が覗く浮遊空間……スキマであった。

 足の着く間も無く、彼女は沼にでもハマったかのようにその中へと沈み行く。

 

「計ったな!? 吸血鬼ぃーっ!」

 叫び声だけが虚しく木霊し、無限に続くと思われる落下地獄の間はゆっくりと閉じると、それを操った者の声が響いた。

 

「呼んでくれてありがとう。探すのに手間取っていたのよ…なんせ、気配遮断はお手の物…結構厳しかったんじゃない?」

「厳しいだと? 貴様も吸血鬼を愚弄する気か?」

「あら怖い…それと、口調が崩れてるわよ?」

 言いたいことは言い終え、特にすることも無くなったのか、スキマ使いは座っていたそれに自身を落とし、その場を去る。残ったレミリアの元へ、何が起こったか分からないといった咲夜が駆け寄り、その状態に心配そうな表情を見せた。

 

「咲夜……疲れたわ、お茶を入れてちょうだい」

 泥棒が姿を消したことで、先ほどの空気は何処へやら。お茶という時間を持ってして、紅魔館にいつもの雰囲気が戻ったのだった。




回線遮断されて更新できませんでしたーっ!

とうとう名前出たけど精神が違う方だからね。弱い方はまだ名前無いから…(先でも決めてない
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