小鼠道中 ~彼女は種が食べたいだけ~   作:馬鈴薯

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お久しぶりです、芋です。
悪い癖が…そして最近の意気消沈。やっぱり気分は大事だと思ったこの頃。
二千文字程度のお手軽話を書いてみようといコンセプトから、ドンドン遠ざかる。


8話:抜けた先と古き類

 無限落下が続くと思われた空間は唐突に終わりを迎え、床や壁は目が覗く気味の悪い空間であったが、鼠ノ子は取り敢えず足のつく空間へ着地した。

 その空間を知ってか知らずか、進むも見えない壁に拒まれること無く、ただ延々と目玉が続くだけ。そう、まるで続く落下が横向きになったかのように。

 試しに、目を掴もうとしても空を切り、地面に伸ばそうにも自身が浮いているのか、同じく空を切る。その様子に嫌気が差し、とうとう怒鳴りあげた。

 

「…たくよぉ、せっかく良い所まで持って来たのに邪魔すんなっての…なぁ、紫!」

 こうなった要因の名を叫ぶが、反響して戻ってくるだけで風景の変化は無い。しかし、その風景に裂け目が出来ると、その裂け目から何者かが現れた。

 

「お呼びかしら?」

 その者は勘に触る目元を見せながらも、扇子で口元を隠しながら鼠野子へと話しかけると、鼠野子も分かっていたとばかりに目を合わせる。

 その様子には先程の戦闘時とは打って変わった、ただ話をするという目的の為だけに構えられた両者共に戦意無しといった感じで佇むだけである。そして両者ともそれを理解したのか、一息の後まず口を開いたのは鼠野子の方だった。

 

「なぁ紫、もう少しだけアイツと戯れていたいんだが…?」

 

「戻っても、事後処理済みよ? それでも行きたいなら、貴方のやる事を終えてからにしなさい」

 

「終わったら私は外じゃないか。どうやってやり合えってんだよ?」

 

「それはまた次回って事でしょう。 現状適任者は貴方しか居ないんだから」

 紫はそれだけ言いきると手のひらを叩き、音を出すことで話の区切りとしたのか。彼女が振り返った先には先程とは別の風景が除くスキマが開いていた。

鼠野子もその意図を理解してか、面倒くさそうに息を吐きながらも、紫の後を追うようにその裂け目へ足を踏み入れると、土間の広がる空間に出た。古民家の玄関である土間に出たとなれば次に出るべき行動は決まったようなもので、二人は外履きを揃えて上がると片方は懐かしむようにその家内を見渡す。

 幻想郷にて至ってよく見られる木造家屋に、一部外の世界からの調度品で飾られたあの館とは違った雰囲気に、鼠野子は感想とでも言える言葉を吐き出した。

 

「変わらないねー此処も」

 

「悪いように聞こえるのだけれど?」

 

「いんや褒め言葉さ…それよりもアイツ等は何してるか分かるかい?」

 

「アイツ等……? 思い当たる節が多すぎて誰のことか……」

 紫は態とらしく人差し指を顔に当てながらも、悪戯な笑みを向け笑う。対して鼠野子は指を三本立てて答えた。

 

「なんて言おうか……三人衆?幹部?う~ん……とにかくアイツ等さ」

 それだけで判断が着いたのか、紫はまたも演技じみた表情でジェスチャーで答える。それを見た鼠野子も納得したのか、その考えは次の行動のためにと奥底に止め廊下を進み一室へと案内を受けた。

 その部屋には何度か顔を合わせた二人が先に待っており、そして良い匂いが充満していた。

 しかし、鼠野子自体には食事と言う行為が必要ない。現に今の人格になってから彼女は空腹という状態に陥っておらず。今の彼女にとって食事とは盗ることであるため、先の戦闘であれやこれやと盗った事で空腹を通り越して満腹と言っても良い状態だった。

 そんな事で、鼠野子は目の前の状況に呆れる事しか出来ないでいた。

 

「毎回思うんだが、なんで来る度にこんな事になるんだ?」

 

「こんな事って…準備をしてくれた藍に失礼よ」

 

「そっちじゃねぇ、何度目だこのやり取り。 10回目から言ってたよな!? 私は食事が必要ないって、何回目だ?」

 

「ん~……100回ちょっとかしら?」

 当然数は合っていない。ちょっと等と言う曖昧な表現で、彼女の求める答えは出ることは無い。しかし、慣れていながらも久しぶりの笑える光景を目にして、鼠野子は笑う。

 ひとしきり笑い終えると、打って変わって真剣さを帯び、大きく息を吸い吐き出すと、切りだすかのように紫と正面向かう。

 彼女も聞くまでもないと言った感じだが、当人の覚悟を聞き届けるのが依頼主としての勤めと思ってか、息を呑むように待つ。その雰囲気に当てられてか、式の二人も同じように事が済むのを見届けようと息を潜め待つ。

 

「此度の祭事も承った。 アチラの私も上手く導いてくれや」

 

「当然…その為の晩餐ですから」

 紫は聞き入れたとばかりに頷くと、座卓の一画を指さし、座るようにと促すと彼女は素直に従い座布団へと座る。そして彼女の言う晩餐とは、今は眠る未熟者への手向けでもあり、今の人格との時間稼ぎも兼ねていた。

 今の彼女が眠った時、次に表に出るのは未熟者の方で、また表に出るためには決まって彼女の身体が窮地へ陥いらなけれならず、望んで進むはずのない道を辿ることになる。その時はいつ訪れるか不確定だからこそ、今その人格が表に出ている時間を大切にしようと言う、独断的な我儘にも似た何かであった。

 先の会話から二人の交流は早く過ぎこそすれど、長いもので。両者とも妖怪さながら長い時を見てきた。そして、その間に起こる、異変とでも呼ぶ事象……中でも、紫や平時を保つ役目を負った人妖にも解決できないことを、中から外に持って行くという方法で、完全な解決策が見つかるまで先延ばしにすることを延々と繰り返す……それが、彼女が帯びた使命の様なもの。

 しかし、自分勝手な妖怪という存在でありながら、何故このような行為に走るかといえば。単純にこの狭い世界が好きと言う、単純な心意気で動いているのだった。

 

「ま、コイツにも頑張ってもらうかね……」

 そう言うと、自身の体を軽く叩き。卓上に乗る稲荷寿司を一つつまむと、その味わいに驚きの声を上げた。

 

「おっ!? 旨いなコレ」

 そう言うやいなや、先程言っていた言葉は何処へやら。がっつくように食べ始め、みるみるうちに皿は空となり。またも、会話の時間が訪れた。

 それを最初に切り出したのは、事を起こすと決めた彼女だった。

 

「そういや居ない間に、また異変とやらでも起きたのかい?」

 

「起こす側が聞くなんて、随分勉強熱心ね」

 紫も食後のお茶を啜りながらも、その質問へと考えを移す。

 その様子は呆れながらと言ったものだが、これも毎回の決まり事。彼女が居ない間、当然ながら出来事の把握ができるはずもなく、言わば時代遅れとなる。

 しかし、全員に関わる事案であるのも事実であり。目視できない人はともかく同類や敵として立ちふさがる可能性のある人物の情報を求めることは至って普通の事であった。

 もっとも、それ以前の記憶は大体程度には把握しているので、一度でも接触をした人物を忘れているというわけではない。今回は言わば居ない間に潜んでいた目立つ勢力や、外からの新参者が来たりしていないかの確認程度であった。

そして紫が求めていた情報を吐き出す。

 

「氷精が喧嘩したくらいかしら?」

 

「そんなチャチな出来事以外にもあるだろ? 前回には無かったいけ好かない場所が一つ……」

 

「あぁ、命蓮寺の事かしら? 確かに、あそこには財宝を集める娘が居たわね」

 それを聞くと、鼠野子は何処からか取り出した、ボロボロの紙切れに丸と先ほど聞いた『命蓮寺』の文字を書き連る。その紙切れはよくよく見れば、ボロいながらも地図らしき役割を果たさないでもない様な図面だった。

 もっとも、使用歴の長い本人にしか分からないような滅茶苦茶な図面ではあったが、その本人である彼女には問題は無い。それだけ書き終えると徐ろに立ち上がり、土間を目指し立ち上がり動き始める。

 向かった土間で、先程脱いだ外履きを履き外へ出ると、風呂敷に右手を入れ筒状の何かを取り出し、空へ向けボタンを押すと、先から出た煙らしきモノが天へと登り、チリチリと燃えるような火の玉を残し、ゆっくりと落下を始める。

 

「さーて、薄情者とくる逆とくるか……」

 それだけ呟くと、即座に引き返し家の中へと戻っていったのだった。

 

 

 その日の夜、鼠野子は睡魔という自身の体調を無視し家屋の縁側で一人空を見上げていた。その原因は昼頃に打ち上げた光が主で、会話にあった三人衆と呼ばれる者達の来訪を待っていたのだっった。

 

「久しぶりです、頭」

 縁側から覗く庭の草木から声が響く。明かりの無い闇の中で声を発する事で、確かに来たという証明と、存在しているという証明。相手も妖怪の類であった。

 その相手は闇に潜むばかりで、動くこともしない。頭の命のままにと……そして、その命を今か今かと姿を隠し聞き届けんとするばかり。

 鼠野子も声を聞き、気配でそこにいるのを把握はしていたが、相手の意思も理解しておきながら未だ口を閉ざし待っていた。

 

「はい、一番乗り……て、先越されてるな。 流石は忠犬って所?」

 

「運が良かったな、未だ獲物を貰っていない」

 

「私の性分なんだ、そう睨むなって。アンタとは敵対したくないよ」

 片方が弁明がましく言うと、片方もつまらないといった感じで鼻息を吹く。そんな姿の見えない二人が会話を続ける中も、残るは後一人である。

 選りすぐりの尖兵でも、酔狂者でもない。単純に遊び仲間の様でありながらも、個々の力量も適当な、種族の違う集まり。それが今揃った。

 もっとも、適当でありながらこの場所に辿り着けるほどの実力者たちではあったが……

 

「参りました……翼が在ればもう少し早く着けたのですが、とうの昔に失して…」

 

「自分で落としときながらよく言うよ」

 

「あら? 減らず口が一人……間引きでもしようかしら?」

 その言葉の次には薄い板金が擦れ共振する様な音を立てた。それで揃ったと見たか鼠野子は顔を下ろし、心なしかカサカサと揺れる木々へ向け、声を掛けた。

 

「良く来た、此度も祭事を請け負った。 やりたい奴は朱花咲く平野に集まれ。 刻は月が七度登った時、以上」

 

「「「御意っ」」」

 三者共似たような返答を返したが、未だ解散しては居ない。三者様々な観点故に湧き上がる疑問があるからだった。

 

「一つ質問……登った回数は今も含めて?」

 

「どっちだろうなぁ」

 悪戯に笑って答えるが、相手は黙りこんでしまった。

 

「じゃあ私も――」

 そう言った別の相手は息を大きく吸い込み……一気に吐き出した

 

「背縮んだ?これで私よりもちっさくなったね。これでやっとこの中で最小を抜け出せたよ……あっ頭を見下してる訳じゃないけど、少しだけ……ん~少しだけじゃなくてかなり劣等感あったからさ、なんか新鮮な気持ちなんだ。でさ、今も開発した光学ゴーグルで頭の身長を測ってるんだけど。誰か……いや狼さん、コレで私を測ってくれないかい?」

 

「獲物として頂戴するが宜しいか?亀よ」

 

「亀って…あんまり好きな呼び名じゃないけど、まぁ良いよ獲物として使いこなせるならね…」

 

「では、頂こう…因みに今回も貴様の負けだ」

 

「ゔぇ!?」

 亀と呼ばれた人物は自慢の機器を使われることもなく、そう言われた事で絞め殺されたかのような声を上げた。しかし、まだ憶測だけだと思い背伸びするようにして待っていると、狼と呼ばれる人物が態々測ったのか、先程渡された機器を下ろし内心蔑むように再度答えた。

 

「二寸低いな」

 

「どちらが?」

 

「言うまでもない」

 それだけ言うと狼はクルリと向きを変え歩き始めた。それに続いて静まっていたもう一人も後を追うように背を向けた。

 亀も不服ながらに後を追うが、何かを思いついたのか追いかけている二人へ声を掛けた。

 

「せっかく頭も戻ったわけだしさ、久々に夜雀の所に飲みに行くのはどうかな?」

 

「今宵はあの日故に、丁重に断らせてもらう」

 

「あ~…修行みたいな事かーじゃあ鴉は……」

 

「補助があるので」

 分かっていた答えを聞いた亀はつまらなそうな表情で後を続いた。その心は、二人の種族柄に悪態をついたものだった。

 

「あぁそうかい、面白くないなぁ」

 態とらしく言うと、彼女は自身の集落目指しグループから別れたのだった。




3人の名前考えないとなぁ…
亀さんが一番思いつかない…ひらがな名は考えたことがないのが辛い。
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