Q.Dependence=Like or ×××?   作:crooze

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 その日は、いつもと何ら変わらない唯の日だった。

 ……といっても、最近はお姉さまに「魔法」という力を教わっているから其処まで暇って訳じゃない。

 

 寧ろ、お姉さまに魔法を教えてもらう日々は新しい発見が沢山で、とっても楽しいのだ。

 

 お姉さまに教えてもらい、手に入れた「魔法」という新しい知識は中々面白くて興味深かった。まるで深淵を覗き込んでいるようで、どんどん底なし沼に嵌っていく。

 わたしが生まれながらに持つ「力」とはまた違う方向の力は、わたしの好奇心を刺激してやまない。

 

 知識欲というものは、いくらやっても尽きないんだなと実感した。

 

 わたし達は吸血鬼だから、力も強いし魔力も強い。だから魔法だって、基本出来ない事は無い。

 何でも思いついて実行するだけの力はある。「魔法使い」では魔力が足りなくて出来ない事も、わたし達吸血鬼という悪魔なら、あっさりと出来てしまう。お姉さま曰く、「キャパシティの違い」だそうだ。よく分からないけど、お姉さまがそう言うならそうなのだろう。

 

 それも魔法という力に没頭する理由の一つだろうか。

 まあわたしの場合、好奇心も確かにあるけど、暇潰しや気晴らしってのも大きいかもしれない。

 

 幾らでも工夫が出来て、幾らでも応用が出来る。これほど楽しい暇潰しも無いだろう。

 時間がある時は、お姉さまの借りてきてくれた魔道書を読みふけり、お姉さまがいる時はお姉さまと魔法の練習をする。

 

 お姉さまにとっては気晴らしであったようだけど、わたしにはぴったりだったようだ。

 何せ、時間なら腐る程有り余っている。わたし達は吸血鬼だから、寿命はとっても長い。

 

 そういえば、前に「人間」という生き物は、わたし達吸血鬼とは違いたったの数十年程しか生きられないらしいってお姉さまが言ってたなあ。そんなに短いなんて、やりたいことがやれずに死んじゃいそうだ。あ、でも、短いからつまらないって事はなさそう。

 

 

 そんな事を思いながら何時もの様に寝台に寝転がって、魔道書を読んでいた時だった。

 

――突如、空間から異様な力を感じた。

 空間という言葉以外見当たらない。はっきりと、わたしのいる地下室の空間から異様な力、そして気配が漏れ出ていたのだ。

 

――こんな感じ、生まれて初めてかも。

 

 そもそも、こんな事になる事自体がおかしいのだ。何か、ただならぬ事が起きているのかもしれない。

 読んでいた魔道書を閉じて、寝台から起き上がった。何が起きても対処できるように、魔力を集中させておく。

 

 ここまでわたしが備えるのには、訳があった。

 

――わたしとお姉さまが暮らしているこの地下室は、存在ごと秘匿されている。

 この地下室の存在を知る者は、紅魔館でも一握りの存在だけ。そして地下室の存在を知り、実際にここまで来れる存在はもっと限られてしまう。

 

 つまり、どう言う事かって言うと、外部の存在はこの地下室の存在自体を知らない筈なのだ。紅魔館の一部の存在しか知らないような場所を、外部の存在が知っているとは考えにくい。

 なのに、今わたしのいるこの地下室に、わたしの感じた事のない異様な力がある。

 

「……誰?そこに隠れてるのは誰なの?」

 

 恐る恐る空間に話しかけてみたが、反応は無し。

 お姉さまがいたら、異様な力がある空間を破壊して見つけ出すんだろうけど、わたしにはそんな事は出来ない。

 

 どうしよう、と思案していたら、空間から声が響いた。

 くすくすと、面白そうに笑っている。

 

「――あら、私がいる事に気が付くなんて――ふふ、面白い吸血鬼ね」

「……わたしの事、知ってるの?」

 

 声の主を探してきょろきょろと辺りを見回してみたものの、そんな姿はどこにも見当たらない。

 姿は見当たらないが、声は普通にわたしの耳に聞こえている。よく分からない現象だ。

 

 不思議な誰かさんは、わたしの質問に笑って答えた。

 耳を撫でるような、耳触りの良い声だ。ずっと聞いていたら、眠くなってしまいそう。

 

「いいえ、全く知りませんわ。生意気な吸血鬼にお話を持って行った帰りに、面白い力を感じましたから少し寄ってみたのです」

「生意気な吸血鬼……?お姉さまはまだ図書館に居る筈だから、レミリアお姉さまかしら。レミリアお姉さまは凄いから、見下されてたんじゃないの?」

「レミリアお姉さま……貴方はあの吸血鬼の妹なのかしら?そんな話、聞いてないのだけれど」

 

 不思議な誰かさんは、わたしの自慢げな言葉を聞いて驚いた様だった。

 そんなにわたしがレミリアお姉さまの妹だって事に驚いたのだろうか。確かにわたしはあまりレミリアお姉さまには似てないけれど……どちらかというと、お姉さまと似てるって咲夜が言ってたなあ。

 

「そうよ。……そろそろ姿を現してくれてもいいんじゃないかしら?虚空に向けて話すのって、首が痛くなるのよ」

「……ふふ。本当に面白い吸血鬼ですわね。あの吸血鬼の妹だとは思えない」

 

 わたしの言葉に、未だ姿の見えない不思議な誰かさんが皮肉っぽく返した後――空間に、一つの切れ目が出来た。

 端にリボンが結ばれた、どこか不思議な切れ目だ。それがゆっくりと開いて――

 

 中から一人の女の人が、にゅっと這い出てきた。

 長い、わたしみたいな金髪にナイトキャップを被った、妖艶で美しい人だ。紫色のフリルの付いたドレスを着て、手には扇子?だったっけ、を持っている。

 女の人は切れ目から体を出して、わたしの居る地下室に降り立った。

 

「――姿を見せるのは初めてね。私は八雲紫。スキマ妖怪ですわ」

「わたしはセレネ・スカーレット。レミリアお姉さまとフランドールお姉さまの妹よ」

 

 

――これが、わたしとスキマ妖怪の「八雲紫」との出会いであった。

 

 

「あら、ここには貴方一人だけなの?」

「お姉さま……フランドールがいるけど、今は出かけてるから。ねえ、それよりもその切れ目、どうやって創ったの?」

 

 紫の質問に適当に答えてから、寝台から降りて紫に近づく。

 紫はわたしより背が高いから、見上げる感じになってしまったがしょうがない。わたしは紫に聞きたい事があるのだ。

 

 わたしが興味津々で紫に聞いてみると、紫はあっさりと、苦笑気味に教えてくれた。

 

 紫が手を軽く振ると、あの空間の切れ目がぱっくりと口を空ける。そこから見える沢山の眼球が、ぎょろぎょろとわたし達を覗き込んでいて、ちょっと気持ち悪い。見るのは二度目だけれど、本当に不思議な空間だ。

 

 わたしが切れ目を覗き込んでいると、紫が隣に立ってそれを指した。

 

「これは、唯の切れ目じゃないわ。スキマっていう、私が空間の境界を操って創ったものなのよ。離れた場所同士を繋げられるの」

「境界?」

「分け目、境目とでも言えばいいのかしら。私はそれを操ったりする事が出来るの」

 

 どうやら紫の話によると、彼女は境を操る力を持っているらしい。

 わたしには余り想像がつかない力だけど、スキマは便利そうだなあ。どこにでも好きな所にいけるなんて、羨ましい。

 

 紫の話を聞いて、ふとある事を思いついた。

――試してみる価値はあるよね。

 そう思って、薄く微笑む。

 

「……境目、物事の境界線……空間と空間の境界線を創り出す(・・・・)

「……え?貴方、何をして……」

 

 急にわたしから力が溢れて、隣にいた紫が驚いた様にわたしを見てくるが、今は無視する。

 紫の話を聞いて思いついた、わたしの生まれながらにして持つ力。

 

――あらゆるものを創り出す力。

 お姉さまとは反対の、創造の力。ゼロから1を創り出す力。

 わたしが思った事は簡単だ。

 

――あらゆるものを創り出せるのなら、境界線だって(・・・・・・)創り出せるのではないか。

 

 紫のように、あのスキマのように――空間と空間の間に、境界線を創り出す。

 

 ただそれだけ。

 想像して――創造。

 

 ゼロは1に姿を変え、無は有へと形を変える。

 新たに創り出された力は世界に干渉し、求む形に生まれ変わった。

 

「…………そんな、境界線を新しく創り出すなんて――貴方は、一体」

 

 紫の絶句と共に、わたしの創りだした、新しい境界線が芽を紡ぐ。

 境界線によって断たれた空間は断絶し――閉じられた空間として在り方を変えた。

 

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