一人の女性へ愛を捧げる男の物語 作:( ∴)〈名前を入れてください
「おじさん…大丈夫?」
「うっうん大丈夫だから問題ないよ」
幼児虐待の疑いを受けセイバー陣営の尋問が始まりそうになるも戦場カメラマンで培った語学力を生かして何とかあの場を煙に巻いたのは良いが間違いなく顔を覚えられた。
あのセイバーはヤバい…嘘をつきでもすれば間違いなく気づいてそこをついて来る。寧ろ話している時に何度自分が魔術師だと気付かれそうになった事か……
「取り敢えず…もうすぐ遠坂の家に着くから葵さんや凛ちゃんと話しておきたい事とか考えておいた方が良いよ?」
「うん…」
そう桜ちゃんは返事をするも繋いでいた手を強く握りしめ顔を俯け歩く。無理もないいきなりあんな糞みたいな家に連れ込まれて酷い目にあったんだ。いきなり元の生活に戻れる何て考えられないに決まっている。
だけどそれを強いた化物はもう家にいない今なら元の生活に戻れる筈なんだ。こんな糞みたいな魔術を使う世界にいる必要は無い。使えば使うほど自分と相手を傷つけるような物を何故使いたがるのか理解が出来ない。
寧ろこの聖杯戦争を何故魔術師共は行っているのか全く理解出来ない。
不老不死?根源に到達する事が家系に連なる命題?馬鹿かお前らは何でそんなちっぽけな杯に願いを叶えてもらう為に周りに被害を与え戦うなんて考えるんだ。
普通がどれだけ素晴らしいのか理解が出来ないのかお前達は。そんなに魔道に堕ちたいと言うのか
「おじさん…そろそろ家が見えてくるよ」
「おっと…少し考え事をしていたよ。教えてくれてありがとうね」
さっきまでの考えを振り払い遠坂の家の敷地内に入っていく。どうせこっちが入ってきた事は理解出来てんだろ?お得意の魔術って奴でな。ならさっさと出てきやがれ時臣、こっちはお前に話したい事が山ほど有るんだよ。
「桜ちゃん。済まないけどお家に戻って凛ちゃんとお話する前に時臣を此処に呼んで来てくれないか?」
「えっ…入らないの?」
「僕はちょっとここで時臣と話さなきゃならない事が沢山有るからね。頼まれてくれるかい?」
そう頼むと頷き家の中へと入っていく。心なしかその足取りは軽く嬉しそうにしているように見えた…これで良い、これで良いんだ。
後はあの馬鹿野郎と一つ話をするだけだ
「君がこの戦争に参加するなんて考えも付かなかったよ。魔術師の名門たる間桐家に生まれた癖に魔道から逃げた落伍者たる君がね」
「はっ育児放棄ネグレクト幼児売買推奨の糞野郎に言われる筋合いは無いね。人としての常識に欠けに欠けてる誇り高い魔術師様?」
後ろから皮肉塗れの挨拶をかけられたのでお返しの挨拶を返してやるがその顔は何時も通りの済ました顔をしていやがる
腹立たしい…常に優雅を持って行動せよってやつ何だろうがここまで言われて何も感じないって言う事なら俺はお前を心底軽蔑するね時臣
「で?そんな落伍者が私に何のようでここまで来たのかね?間桐家に養子に出した筈の桜をこの家に連れてくる意味を君は理解しているのか?」
「子どもには親と触れ合う時間がこの世で何よりも大切だからな。あんな薄暗い所で魔術ばっかりやってたらテメエみたいな子どもを間桐の家に送るなんて人の情にに欠けた糞野郎になっちまう。何も可笑しい事はしていない筈なんだが?」
俺の言葉にようやく反応したのかピクリと眉を顰める。心底良い気味だその顔が見たかったと言っても過言では無いからな
「……一体何の用で来たのかそろそろ聞いても良いか?」
「そうだな。詰まらない話はそろそろ止めて本題にさっさと入ろう。俺もテメエみたいな奴の顔を見るより久しぶりに凛ちゃんや葵さんに会いたいからな」
「…何故間桐の家に桜ちゃんを送り込んだ。他にも色んなツテがあるだろうに家を選んだ理由は一体何だ?」
「……何をしに来たかと思えば…下らないそんな事で私に会いに来たとでも言うつもりか?」
下らないか…桜ちゃんを間桐の家に送ったのはそんな事でお前の中では済まされる事と言うことなんだな?
「良いからさっさと答えろよ」
「…間桐の家は遠坂と等しい歴史を持ち実質の当主たる臓硯は何百年も生きた魔術師。桜の異質な才能も間桐ならば伸ばしてくれる筈だ」
「…間桐の魔術の技術を伸ばす際に受ける苦痛は酷く苦しい筈。それも分かってお前は家に桜ちゃんを送って来たって言うことなんだな?」
怒りが頭の中ではグチャグチャに渦巻くがそれを耐えて最終確認をとる。もしもこいつが全てを承知でやった事ならば俺はこいつを殴ってでも更生しなきゃならない。
それが例えここで俺が死んだとしても
「当然だ間桐の家の事情は百も承知で送ったに決まっていだろう。一つ私からも聞きたいが君はバーサーカーを使役し「黙れ」……何?」
やはり…そうなんだな?全部知って全部分かっていてこれを行ったって言うんなら俺にも考えがある
「…歯を食いしばれ時臣」
「いきなり何を言っているのだ。まだ私の話は」
時臣が話を続けようとする前に足を踏み込み抉るようにあいつの顔面目掛けて全力で拳を振るう。
だがそれも何やら魔術にでも弾かれたみたいに当たる直前に弾かれる。そして奴が持っていたスティックで腹を殴られ思わず蹲ってしまうと上からスティックで頭を押さえつけられ動きを取れなくなる
「全く…いきなり殴りかかるとは。これだから魔道の落伍者は、少しは優雅を心掛けて行動すればどうだね」
「何が優雅だ。子どもを地獄に送り込む事が優雅って言うなら俺はそんなもんいらない!」
身体を踏ん張ってスティックの抑えを押しのけ無理矢理起き上がると同時に蟲を呼び出して時臣に襲いかかるよう命じる
だがそれも全て奴が出した炎によって全部消し飛ばされ俺の身体に炎が纏わり付く。
「へっ…こんなもん……熱く……なんて」
「…終わったな」
時臣はそう言いながら家の中へと戻る為に扉の方へと足を進める。少し相手をしてやれば何も出来ずこのザマだ。やはりバーサーカーがあそこまで戦えていたのはバーサーカーのスペックが恐ろしく良いと言うことだろう。所詮は魔術師の落伍者だ1人で戦って魔術師たる私に勝てる訳が無いと決まっていた。そう結論付け後ろから聞こえてくる肉が焼け焦げる音と雁夜の呻き声を背中に戻ろうと扉に手を欠けた瞬間、後ろから猛烈な圧迫感を感じ炎を後ろに向かって放つ。するとそれを掻き消すように拳が私の所に放たれてくる。
「(馬鹿なついさっきまでアイツは息も絶え絶えだった筈!こんな事を急に出来るはずが無い!)」
横に転がるように拳から避けると拳が放たれた余波で後ろにあった扉が音を立てて砕け散る。
馬鹿な…こんな事を出来るなんて有り得ない……拳だけで魔術師の落伍者たる間桐雁夜が出来る筈が
「何余所見してんだ時臣。俺を無視する何て寂しいじゃないか昔みたいに殴りあおうぜ」
雁夜の身体から私の放った炎と違い身体中から炎のような揺らめきが辺りに放たれる。その揺らめきは彼の傷を癒しているのか火傷の痕を音を立てて治癒していく。
有り得ない…何だこれは?魔力を感じないと言う事は魔術ではない。これはもっと別の力……そんなもので魔術をなんとか出来るとでも思っているのか!
「時臣ィ!これからテメエに常識ってもんを叩き込んでやる!歯ァ食いしばって俺の話を聞く事だな!」
「お前の使っているその力は一体何だ!答えろ雁夜ァ!」
時臣の放った魔術を雁夜が拳を振るい吹き飛ばし拳を放つそれを時臣が避けを繰り返す。時臣が技ならば今の雁夜は力。まるでお互いのサーヴァントの戦い方のようで時臣が魔術を放つも雁夜はそれを気にせず殴り掛かりそれを時臣が避けて攻撃を放つ。
時臣の攻撃が雁夜に何の影響を与えていないが雁夜の攻撃も時臣に当たらない。
この鼬ごっこを繰り返していく中雁夜は時臣に向かって心の叫びをぶつけていく
「どうしてあんな家に桜ちゃんを送ったんだ!お前に人としての家族としての情は無かったって言うのか!」
「お前は只の魔術師だって言うのか!家族に情が無いのか!葵さんへのあの言葉は嘘だって言うのか!」
拳と共に放たれる心からの叫びが時臣の心を穿っていく。優雅で塗り固めていた仮面が崩れていき彼自身の本音が魔術と共に雁夜に放たれる
「情が無い訳無いだろ!葵も凛も桜も私の心底大切な家族だ!だが仕方なかったんだ!凛も桜も余りにも異質な才能を持って産まれてきた!分かるか!?」
「二人の才能を十全に延ばす事は私には出来ない!それどころか魔術師協会がもしも凜や桜の事を知ればサンプルを寄越せと言わんばかりに私に言ってくるに決まっている!家族をそんな事させる訳にはいかない。だからこそ娘を庇護出来る環境と何れ起こりうる魔術師協会からの追っ手から逃げる為に力を付けてもらう為に君の家に桜を送った!」
「生きながら脳味噌だけで生かされるより間桐家の方がよっぽどマシに決まっているだろうが!」
その言葉に雁夜は巫山戯るなと言わんばかりに更に拳を振るい叫ぶ
「だからと言って何故間桐なんだ!他の家という選択肢はお前に無かったとでも言うつもりか!?」
「無かったんだ!御三家として確かに伝手はあるがどれも信用出来る家は無い!御三家の1つアインツベルンは他家を異常なまでに信用していない。娘を任せる事は出来ない!ならば間桐しか無いに決まっているだろうが!」
「そんな事俺が知るかァ!子どもを何としてでも幸せにしてやるのが親のやるべき事だろうが!もっと別の選択肢を探すべきだったんだお前は!」
まるで子どもの言葉を放つ雁夜に時臣は怒りのままに魔術を放つ。貴様の言っている事は世間を知らぬ只の駄々っ子の言葉だと
「子どもを持った事の無い奴が偉そうに語るな!子どもの命を何よりも優先するのが親の使命なんだ!」
「子どもに寄り添って成長を見守り大人になり巣立つまで庇護してやるのが親ってもんだろうが!それが出来ないなら子どもを幸せにしてくれる場所を探すべきなんだよ!」
「減らず口をベラベラベラベラと…いい加減にしろ!」
スティックを雁夜に投げつけながら顔面目掛けて拳を振るう。普段ならばしない蛮行なのだが今の彼はそんな事を考える余裕は無い。簡単に言うならようは彼、遠坂時臣は今キレているのだ。
拳が雁夜の頬を捉えそのまま殴り抜くも雁夜は倒れずそのまま反撃に顔面に向かってお返しを顔面に返す。先程までの人を超えた力で無く唯の拳が時臣を襲う。
「大体君は何時もそうだった!そうやって如何にも自分が常識人ぶって魔術師を毛嫌いするそんな器量の小さい男だから葵にふりむいて貰えなかったんだよ!」
「今葵さんの事は関係ないだろうか!この若ハゲ!優雅(笑)!うっかりex!」
「子どもか貴様!?」
「男は何時だって子どもに決まってんだろうが!」
ギャーギャーと互いを罵倒しながら殴り合いを始める。まるで子どもが喧嘩をしているように自分の意見を相手に拳と一緒に押し付けている姿はとても大人には見えない。だがその姿は先程の彼等よりもとても生き生きとしておりその顔は鬱屈な感情というよりも明るさが何処かにあった。
そうして長い時間互いの言葉と拳をぶつけ合い肩で息をする。両方の顔はボコボコに腫れていたり青く染まっていたりと見るにたえない顔になっている。
「取り敢えず…時臣は凛ちゃんにお父さん臭い近寄るなって言われて死ね葵さんに3行半叩きつけられて二度死ね」
「死ね雁夜。童貞のまま哀れに歳をとって死ね俺より無駄に長く生きて意味もなく死ね」
互いの罵倒を忘れず息を吐いて頭に登っていた血を冷やしていく。そうして冷静になった2人は向かい合うと急に何だか面白くなって二人して笑い合う
「「ハハッ…ハハハハハハッ!」」
「ハー…どうして殴り合い始めたのか正直もう覚えてないな」
「奇遇だな。私もすっかり忘れてしまったよ……全く常に優雅たれを信条としている私とした事がこんな事をするなんて本当に恥ずかしい」
「じゃあ…最後の一撃かますとするか」
「それはこちらの台詞だ。私の全力の一撃を受けるが良い」
そうしてユラリと互いに倒れそうになりながらもそのまま目の前の男を殴る為に拳を振るいその顔面を殴り飛ばそうとした瞬間
「喧嘩は…駄目ーッ!」
幼い少女の声と共に放たれたガントが彼等の身体にぶつかり2人は錐揉み回転をするがの如く飛んでいきそのまま地面に転がるとピクリとも動かず倒れた。
勝敗 引き分け
こいつら子どもにしか見えない……