もう少し、イリヤが切嗣を信じていたら 作:夜空 太陽(新アカ)
───ああ、安心した
と、僕は言い残し目を閉じた。
苦痛は無かった。
聖杯の呪いはゆっくり進行する物だったから、寧ろ老衰に近かっただろう。
心残りは少しあるが士郎の事は少ない。
下手したら僕より確りしてるし、大河ちゃんも側に居てくれる。
でも、最後に僕を安心させるために言ってくれた言葉は嘘だと信じたい。
『正義の味方』なんて真に受けないでほしい。
それに、半端に教えた魔術も出来れば僕が死んだのを切に止めて欲しい。
こっちの世界には関わらず人並みの幸せを得て欲しい。
何時か士郎が女の子を好きになるんだったら、隣に立って無茶しそうになったら全力で叱ってくれるような子が良いな。
一番の心残りはイリヤだ。
士郎がある程度回復してからは何度かアインツベルンの城に向かったがユーブスタクハイトは森の結界を開くことをしなかった。
それでも、ユーブスタクハイトは一度だけ自身と使い魔を通して僕に一言だけ告げた。
『裏切り者は去るが良い』
と、本当に一言だけ。
僕はその場で憤慨した。
どちらが先に裏切ったんだ!
僕も、アイリも、イリヤすら裏切ったのはお前じゃないか、ユーブスタクハイト!
体力はおろか、魔術回路すらも失われつつあった僕には森の強固な結界をどうする事も出来なかった。
出来たことと言えば、城を見詰めていればもしかしたらイリヤが僕を見つけるかもしれないと祈りながら凍死寸前まで立ち尽くす事ぐらいだった。
僕は生涯で何人を救い、何人大切な人を失ったのだろうか。
姉のようだったシャーレイ。
師であり母のようだったナタリア。
僕に命を差し出し僕のために死んだ舞弥。
始めて本当に愛したアイリ。
その最愛の人との子供のイリヤ。
名前を並べると罪悪感が僕の胸を締め付ける。
肉体を感じない中で涙を流す。
もしかしたら、涙なんて出ていないのかもしれない。
流しているのは心の涙なのだろうか。
───私と同じ悲しみを背負いし戦士よ。
不意に声が聞こえた。
縦も横も分からないまま僕は周囲を見渡す。
───後悔、そして願いがあるなら、私の役目を譲りましょう。
お前の役目・・・?
───二度、彼の戦いに赴き願いを叶えなさい。
戦い?
まさか・・・聖杯戦争なのか・・・?
馬鹿な!少なくとも冬木の聖杯は僕がセイバーに命じて破壊したはず!
───それを知ることが望みならば尚更戦いに臨むのです。
残念ながら私に何かに頼るような望みはありません。
ならば、私と同じ非愛の戦士に・・・
僕は僅かに推考し答える。
分かった、僕は
───よく言いました。ならば行きなさい。
誰かに背中を押されるような感覚と共に少しずつ肉体が構成される感触を得た。
そして、僕は世界に降り立つ。
「サーヴァント・アーチャー。お前が僕のマスター・・・「キリツグ!」
銀髪に赤い目、妻を思い出させるような容姿の少女───
僕の娘───イリヤスフィール・フォン・アインツベルンがそこには居た。
あはは、結末が思い付かない・・・
まあ、二月の間でゆっくり考えます