もう少し、イリヤが切嗣を信じていたら 作:夜空 太陽(新アカ)
「シロウ、帰ってこないね」
「そうだね」
あれから半日ほど過ぎもう深夜だ。
全く士郎はこんな時間まで何をしているんだ。
もしかしたら女の子の家に行ってるんじゃ!
でも、士郎の事だ。好きになるとしたら確りした女の子に決まっている!
『いいかい坊や?確りしてる女こそ
不意にナタリアの言葉を思い出す。
駄目だよ、士郎。
お父さん、そんな不純な異性交遊許さないよ!
ここまで考えると舞弥を思い出し割りと真面目に死にたくなる。
絶対あれ不純だよね。
あれ?じゃあ、士郎が女性の家に泊まるのは愛を深め合うという点では全然不純じゃないんじゃないのか。
思考が空回りしていると突然イリヤの声が聞こえてきた。
「シロウはアルバイト?をしてるの?」
「そうだね、きっとそうだよ」
そういえば、僕の預金通帳を見たが殆ど引き落とされてなかった。
どうしても学費が足りないとき仕方なく落としたくらいだった。
士郎が大学に行けるくらいには残していたのに。
「キリツグー、お腹空いたー」
「まだ士郎が帰ってきそうにないからコンビニにでも行こうか」
そうして僕達は衛宮邸を後にした。
「いらっしゃませー」
店員の声を聞きながらコンビニの中に入る。
無論、イリヤは目立つからすぐ近くの公園で待機してもらっている。
僕は僕で認識阻害の魔術を掛けている。
適当な弁当とジュース、それと・・・やはり、あの煙草は無いか。
「16番を二つ」
煙草を頼むと近くに有った100円ライターを籠に入れる。
「1251円になります」
煙草の値段上がったなぁと内心考えながら会計を済ませるとイリヤが待つ公園へと向かう。
イリヤが弁当を食べている間、僕はイリヤから離れて煙草を吸っていた。
───やっぱり日本人と接する機会が殆ど無かったからだよな。英語圏はIとかMyだから。
僕はその間、『何故、僕の一人称は変わらなかったんだろう』と、凄くどうでもいいことを考えていた。
「ごちそうさまー!」
「おっと、食べ終わったか」
煙草を灰入れに入れてどうでもいい考えを捨て、イリヤの下へと歩く。
すると、頭の中に屋敷の結界が発動するのを感じた。
「イリヤ」
「何かあったの?」
「屋敷に士郎以外の侵入者だ」
「分かったわ、急ぎましょう」
そうして僕はイリヤを抱き抱えて走り出した。
「イリヤ、感知を」
「ええ、了解よ」
イリヤは髪の毛を二本抜くと使い魔に変えて感知の魔術を発動させる。
「付近に人間は二人、サーヴァントは三体───いえ、一体は逃走。屋敷の中と外にサーヴァントと人間が一組ずつ」
「分かった、速度を上げる。もう少し強く掴んでいてくれ」
残り十数メートルになると四人の人影を発見する。
最愛の息子。その傍らにはかつての道具。
そして、遠坂時臣の娘。その傍らには赤黒い外套を纏った浅黒い肌をした高身長の男。
高身長の男は遠坂のサーヴァントだろう。
「イリヤ、待っててくれ」
「うん。気を付けて」
「ああ」
そして、僕は士郎の下へ歩き出す。
数分前
───どうなってるんだ
その言葉が今の俺の心情を正しく表していた。
赤い槍を持った奴と双剣を持った奴の戦いを見て。
槍を持った奴に殺されたと思ったら生きてて、家に帰ったら、また殺されかけた。
そうしたらセイバーと名乗る女の子が助けてくれて、俺をマスターとか呼ぶし。
挙げ句の果てには穂群原の優等生、遠坂だ。
全く意味が分からない。
「衛宮君!?」
「遠坂、何が起こってるんだ!」
遠坂が戸惑い悩んでいると隣に居た男が─────
「■■■シ■■!」
突然その手に持っていた双剣を俺に向かって投げ付けた!
「バーサーカー、何を!」
黒い方はセイバーが反応し見えない剣で砕き、白い方は検討違いの方向へと飛んでいった。
それに安心して遠坂の方を見ると遠坂がバーサーカーと呼ばれた男を戒めているようだった。
遠坂がこっちを振り替えると突然驚いた顔をした。
「衛宮君!後ろ!」
その言葉に後ろを向くと検討違いの方向へと飛んでいった白い剣が俺の方へと飛んで来た。
「マスター!」
セイバーが俺を庇おうと前に出ようとするが数瞬足りない。
あの剣は一秒もしない内に俺を袈裟斬りにするだろう。
咄嗟に目を瞑る。
暗闇の中で聞こえてくるのは剣が風を切る音と────
────映画で聞いたような発砲音。
そして、激しい金属音だった。
「え?」
いつまで待っても痛みが襲って来ないので目を開くと白い剣は何処にも存在していなかった。
遠坂が何かしたのかと振り替える。
しかし、その瞬間、双剣を投げ付けられた時とは比べ物にならない衝撃が俺の頭を直撃した。
遠坂とバーサーカーの先に見えた人影が俺に死ぬ以上の衝撃を与えていた。
「何で・・・あんたが居るんだ」
「衛宮君!誰か居るの!?」
遠坂が俺の言葉に瞬時に振り向く。
過去に見慣れた顔に見慣れない格好。
そして、特に彼の手に持っているものが異彩を放っていた。
───それはあんたには似合わないだろう!
「爺さん!」
俺の死んだはずの義理の父親、衛宮切嗣がそこに見慣れない銃を構えて存在していた。
「やあ、久し振りだね。士郎」
その顔はあの日に似た表情を浮かべていた。