もう少し、イリヤが切嗣を信じていたら   作:夜空 太陽(新アカ)

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「やあ、久し振りだね。士郎」

 

僕はそう言って士郎を殺そうとした男、バーサーカーにキャリコの照準を合わせた。

 

「衛宮切嗣!」

「ま、待てセイバー!」

 

僕を見るなり襲おうとする奴を士郎が宥める。

 

「貴方は誰?衛宮君とはどういう関係?」

 

遠坂の娘───遠坂凛が僕に尋ねる。

 

「遠坂!そこに居るのは俺の父親だ!」

「え、あんたは独り暮らしだって綾子が!」

 

適当な拳銃を取り出し遠坂凛に威嚇射撃を行う。

 

「その話は後でしよう。僕がしたいのは聖杯戦争の話だ」

「何が目的かしら?」

 

遠坂凛が僕の目をじっと見つめて言った。

 

「僕の目的は僕の娘を救った上で聖杯を完全に破壊することだ」

「何故?」

「簡潔に言おう。聖杯は呪われている」

 

僕は聖杯戦争後、イリヤ奪還の傍ら冬木の聖杯について調べ直した。

最初に嘗ての聖杯戦争の勝敗を調べた。

あの聖杯は確実に呪われている。

そのため、僕はアインツベルンが第三次聖杯戦争で呼び出した基本七クラスに含まれない復讐者(アヴェンジャー)のサーヴァントについて調べた。

アインツベルンが呼び出したサーヴァントの名は、この世全ての悪(アンリ・マユ)

ゾロアスター教の最悪の悪神だ。

しかし、この世全ての悪は唯の少年の姿で呼び出されて、直ぐに敗退した。

しかし、一番の問題はその後だった。

この世全ての悪は聖杯を呪った。

その結果が十年前の大災害、と僕は推測し、ユーブスタクハイトを殺害後にアインツベルンの記録を見て確信した。

 

「なっ!・・・いえ、待って。それなら十年前の大災害も・・・。

分かったわ、詳しい話は家の中でしても良いかしら?」

「ああ、それと士郎」

「何だ、爺さん」

「僕から後ろに十数メートルほどに女の子が居るから呼んできてくれないか?」

「わ、分かった」

 

僕が頼むと士郎はイリヤの下へ走っていった。

遠坂凛が屋敷に入ろうとするとバーサーカーは僕を見つめていた。

その表情は何処か戸惑い、そして怯えがあるように思えた。

 

「あ、それとバーサーカー。令呪をもって命ずる。『緊急時以外、衛宮士郎とそのサーヴァント、目の前の彼とさっき言ってた女の子を私の許可無しに傷付けることを禁ずる』」

 

目の前のバーサーカーが何かを諦めたようにすると、

 

「これが此方のせめてもの誠意です」

「ああ、君の誠意は見せてもらった」

 

そういえば、バーサーカーに向かってキャリコを向けている間、引き金を引くことはおろか、力を加える事が出来なかった。

 

「何故だ・・・?」

 

何故だろうあのバーサーカーには、何処か────

 

「いや、何でもない」

 

思考を振り払うように振り替えると士郎とイリヤが歩いてくるのが見えた。

 

「爺さん、この子でいいのか?」

「キリツグー!」

「ああ、大丈夫だよ」

 

僕は二人を連れて屋敷へと入っていく。

 

「あ、セイバーも来てくれ」

 

士郎がアイツに声を掛けた。

正直助かった。

 

「は、はい」

 

アイツは僕を見ていた。

第四次聖杯戦争の時と多少は僕の考えが変わっているのに気が付いているのだろうか。

そんなことを思いながら屋敷へ入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事だ」

 

僕はアインツベルンの行い、第四時聖杯戦争の詳細、そして聖杯の状態を出来るだけ分かりやすく説明した。

しかし、僕は魔術師殺しの所は黙っていた。

多分、士郎とイリヤに失望してほしくなかったから。

 

「完璧とは言いがたいけど分かりました」

「遠坂の娘は理解が早くて助かるよ」

 

と言って、士郎の煎れたお茶で喉を潤す。

食事が必要ないとしてもお茶は心を多少落ち着けてくれる。

しかし、父親の死の真相を知って飛び出さないのは、魔術師として称賛に値する。

しかし、遠坂凛の顔は青白くなっていた。

やはり、まだ十代の娘だな。

 

「爺さん、セイバーは爺さんのサーヴァント?だったんだよな?」

「ああ、そうだよ」

「何で・・・話そうとしなかったんだ?」

 

正直なことを言えば僕自身分からなかった。

彼女の生き方も、周りの考えも理解できないし、理解したくなかった。

英雄が嫌いだというのもあった。

アーサー王が行った国を守るために村を壊すというやり方も認められなかった。

しかし、その行いは僕のやり方に酷似している。

九を救うために一を見捨てる。

僕と彼女のやり方は確かに似ている。

しかし、一つだけ違う点がある。

それは───

 

「ソイツが人殺しを誇りを持っていたからだ」

「違う!私は・・・!」

「騎士の誉れ、王国の為と自分の行いを正しいと勘違いし、人殺しを正当化する!」

「騎士を愚弄するか!」

 

僕は咄嗟に立っていたセイバーの胸ぐらを飛びかかるように掴んでいた。

 

「爺さん!」

「良いか?それは、勝者の、権力者の考えだ!敗戦しても死なずプライドが傷付くだけの為政者の詭弁だ!

お前達、一部の騎士が勝ったり負けたりに一喜一憂する間に何が起きていたと思う!男は奴隷にされるか殺される!女はレイプされ、子を孕めば殺される!その対象は幼い子にだって向くだろう。

お前がアイツベルンの城に居た頃のイリヤの様な幼い少女が苦しみ、涙し、慈悲を請いている間に貴様等は何をしていた!

答えろ!アーサー王!」

「それは・・・」

 

僕はセイバーの目を見て言った。

セイバーは僕の目を見ようとしない。

その事実から目を背けるような行動に僕の怒りは加速する。

 

「目を背けるな!目を背けた結果が王国の崩壊だったんじゃないのか!」

 

セイバーが僕の胸ぐらを掴み返し叫ぶ。

 

「じゃあ、アイリスフィールの事はどうなのですか!貴方はアイリスフィールが聖杯に成ることを知っていてあの戦いに赴いた!その行いと私が生前行った事と何処が違うというのだ!」

「ああ、変わらないさ!だから僕がお前を無視し続けたのは唯の近親憎悪だ!唯、僕は人殺しを仕方ないとは思っても、正しいなんて思ったことは一度も無い!」

 

本音を叫び合う僕とセイバー。

あの時、第四次聖杯戦争の時にこうしていたら何かが変わったんだろうか。

十を守るために一を見捨てる。

その一の価値を考えることが出来たのだろうか。

 

 

「───止めろ!止めてくれ・・・!爺さん、セイバー・・・!」

 

 

士郎が叫んだ。

士郎がこんな声を出したのを僕は数えるほどしか無かった。

 

「頼むから・・・止めてくれ」

 

士郎の声は辛そうで今にも泣き出しそうな声だった。

 

「士郎・・・」

「マスター・・・」

 

そんな姿が見ていられなくて僕は士郎に背を向け障子を開く。

 

「キリツグ!」

「すまない、外で頭を冷やしてくる・・・」

 

そう言って僕は障子を閉めた。

 




切嗣のセイバーへの台詞は少し書いているのが辛かったです。
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