レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY 作:招き蕩う黄金劇場
グロ注意ですのよ?
夢を視た。
阿鼻叫喚が木霊する燃え盛る炎の中で、倒れている夢を……
その夢には希望はなく血や叫び、絶望しかない――あまりにも救いのないセカイ。
そんな中で、一人孤独に倒れている。
ほぼ全身が炭化し腕はもげ、生きていること自体が奇跡の状態の体。
これが夢でなかったのなら発狂していただろう。尤も発狂していても声すら出ないだろうが。
やがてその地獄の業火を鎮めようとしているかの如く、空に暗雲が立ち込める。そしてその場に雨が降るのにそう時間は掛からなかった。
ザーザーと降り注ぐ雨粒の音は、さながら死者の魂を鎮める鎮魂歌のようであった。
―――――
僕の名前は■■■■ ■■■だ。地元の高校に通う、しがない学生だ。
今日は、最近できた同級生の彼女と僕の母と旅行をする予定がある。
僕の容姿は中の上くらいの目立たない顔に中肉中背と、ザ・普通てな感じで、派手で美人な彼女とは正直釣り合いがとれていないレベルだ。
本当にどうして彼女と付き合えれたのか謎である……自分で言ってて悲しくなってきたからもう容姿のことは終わり。おっと目から汗が……
話を戻すけど、今日行く旅行は母の誕生日会も兼ねているため、旅行先のホテルは少し値段が高いところにした。贅沢は味方だ!
交通手段は飛行機で2時間のフライトだ。そして飛行場からタクシーで目的地に行く。
そういや彼女は飛行機に乗るのが初めてらしい。朝、興奮した様子で騒いでいたのが印象的だった。
僕の場合飛行機は不快感の塊でしかないため気分が落ちるが……
「おーい! ■■■! 早くしないと遅れちゃうよー!」
彼女が此方に向かって手を振りながら叫んでいる。
お呼びのようだ。
母は既に車に乗車している。
さぁ、出発するか!
そういや朝、妙にリアルな夢を視たな……
どんな内容だったけ。すごく怖かったことは覚えてるけれど。
―――――
「ねぇ、■■■ 楽しみだね!」
空港に着いた途端、彼女が僕に向かって問い掛けてくる。
確かに彼女にとって飛行機とは未知の乗り物だ。わくわくするのは当たり前だ。
だが、僕にとって飛行機とは不快(ry
まぁ、このように飛行機は全くもって楽しみではないが、空気を読んで口を合わせておく。
「そうだなー、すげータノシミダナ」
少し片言になってしまったが問題はあるまい。
案の定、彼女はニコニコしながら空港を進んでいく。
まぁ、彼女も乗れば考えを改めるだろう。
そういや、なぜ僕がここまで飛行機を嫌うのか説明していなかったな。
まず第一に人が多すぎ。人混みには本当に慣れない。
次に耳鳴りがする。まぁ、これは対処の仕様があるからましだけど。
他にもあるのだが、説明が面倒くさいので割愛させていただく。
そんなこんなで出発時刻まで彼女と母と話していた。
―――――
「シートベルトは着けたか?」
「着けたよー。それより早く飛ばないかな……!」
彼女は楽しそうだ。今も目をキラキラさせながら飛行機が飛び立つのをいまかいまかと待っている。
母はそんな彼女と僕を見ながらニヤけている。 殴りたいこの笑顔……!イライラ
そして恒例の危険時の対処の仕方のテレビが終わってから、僕らが乗っている飛行機は動きだし空へと上っていった。
「おい、耳抜きしないと後が辛いぞー」
「耳抜きってなに?」
そこからかよ!
飛行機に乗って約10分が経過した頃、僕らは雑談に花を咲かせていた。
母は寝ていたため2人だけの雑談だったが。
それでも楽しく時間が過ぎていった。
けれど、そんな何気ない日常は一つの叫び声によって唐突にその時間は終わりを告げた。
「――エンジンから火が出てる!」
そんな一つの叫び声によって機内はパニックとなった。
そこからは展開が速かった。
僕は彼女を周りの怒声や叫び声から守るように立っていた。
彼女が最期に呟いた言葉は、無意識に呟いたものだったのだろう。とても小さな声だったが、僕の耳にはよく届き、ひどく悲しかった。
『■■■は死なないでほしいな』
エンジン全てから原因不明の炎があがった飛行機は制御できず――山地に墜ちた。
―――――
そこは地獄という言葉以外に当てはまらないセカイ。
彼女は衝撃で脳奬をぶちまけて死に……母は顔面と胴体に飛行機の破片が突き刺さって死んだ。
周りには『死』以外見当たらない。
上半身が弾けた子供。
胴体から夥しい血や内臓が溢れている青年。
顔面の右側がふっ飛んだ少女。
首に人間の腕が突き刺さっている老爺。
皮一枚で辛うじて繋がっている老婆の首。
もう原型がわからない肉塊。
そして飛行機の機体から炎があがり生存者達を焼いていく。
少しずつ少しずつ此方に向かって炎が進んでくる。
逃げようにも両腕が千切れていて立ち上がれない。
頭の中を占めるのは絶望と恐怖と生への渇望。
必死に匍匐前進で逃げる。
ふと何かが脳裏を横切った。
それは――朝視た夢だった……
今起こっている地獄の景色が、夢で視た景色と重なる。炎が僕を飲み込んでいく。
脳内を支配したのは、何か感慨にも似たものだった。
肌が焼ける。
肉が焦げ、血も蒸発する。
もはや痛覚などない。
そんなとき僕は
それは大事なひとを生き返らせたいだとか、時間を巻き戻したいだとか、ましてや自分が生きたいというものでもなかった。
この場において酷く場違いな願い……
――問題児シリーズのレティシアちゃんのフィギア欲しかったな――
薄れゆく意識の中、僕はそう呟いた。
声にでていなかったかもしれない。けれど僕は確かにそう呟いたのだった。
ポツリポツリと雨が降り始める。だんだんと雨の勢いは増していきザーザーと降りだした。
血や肉を洗い流していく雨は、どこか、死んでしまった者たちの嘆きのように聞こえていた。
この事故での死者は173名
生存者7名
行方不明者1名――ついに■■■■ ■■■は発見されなかった。