レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY 作:招き蕩う黄金劇場
『くっ、衰弱しているな……』
声が聞こえる……。男性の声だ。しかし、どうして声が聞こえるのだろうか……? おかしいな。
『応急処置だけでも施すか……。エピスキー(癒えよ)!』
何故だろうか……体が軽くなったような感じがする。というより体の感覚が戻ったという方がしっくりくる。
しかし、僕は既に死んでいる筈なのだ。体なんて僕には存在しない。多分これは夢の一種なのだろう。現代理論をもって尚わからない死んだ後のこと。どんなことが起きたとしてもおかしくはないのだろう。
『もしリリーならこの娘をどうするだろうか……我輩は……どうすれば……』
それにしてもこの夢は匂いも感じられるし、随分とリアルなのだな。
眼は開けれるのだろうか?まぁ、夢だし大丈夫か。
そっと目蓋を上げる。見えたのは――
――住宅街
僕が死んだ墜落現場でもなく天国や地獄でもない、寂れた暗い住宅街があった。
そして、周りをさらに見渡すと僕の側にさきほど聞こえてきた声の主であろう、ねっとりとした黒髪で鉤鼻が印象的な男性が居た。
「気付いたのか……」
誰なのだろうか?夢とは記憶の整理ときいたことがある。そのため実際に見たり経験したことのない事柄は夢に出ないらしい。
そして僕は今目の前にいる男性に会ったことなど一度もない。となると夢ではないのか?
僕が考えていると、無視されたと感じたのか少し強めに言ってきた。
「気付いたのなら返事ぐらいしたまえ」
一応返事しておくか。
「あぁ……少し考え事を……っ!?」
何故か僕の声が凄く高くなっていた。
そういや、考え事であまり気にしていなかったけれど目線が低い。挙げ句の果てに視界にチラチラと金色の綺麗な糸……否、自分の髪と思われるものが映る。
僕の身長は平均的な日本人男性の身長だった。髪も染めたことはない。
これは一体……!?
僕は急いで自分の外見を確かめるため走り出す。よくts転生系小説の主人公なんかはこういう展開の時、人目を全く気にせず下腹部周辺を触ることで男性のままなのか女性になってしまったのか判断する。
しかし、そんなものはナンセンスだ。現実でそれをすると変態か痴女の烙印を押されてしまうことだろう。
故に僕は急いで鏡かそれに類するものを探す。服屋に行けば姿見があるだろう。
「何処へ行くのだ……! 聞いていないな……。仕方ない我輩も同行しよう」
後ろから男性の声が聞こえてくる。しかし今はそんなことに気を遣っている場合ではない。
気にせず僕は走る。
しばらくすると大きな通りに出た。
そのまま走り続ける。
するとついに服屋を見つけた。走りながら入店すると何人か驚いたようにこちらを見てくるが気にしない。
店内をまわっていると運良く試着室があったため、急ぎそこに駆け込む。そして鏡に写る自らの姿を見る――
――鏡に写っていたのは一人の美幼女だった。年齢は5歳くらいだろうか。
金髪のロングヘアーに病的にまで白い肌に恐ろしく整った顔立ち、そして――紅い瞳
赤いレザージャケットを着た姿はどこか儚さを感じさせると同時に力強さもある。さらに力のセーフティとも言える黒いリボンが金髪によく映える。ある一点を除けばこの少女 レティシア=ドラクレアは完璧であった。それに原作よりも小さいため鉤鼻男が心配するのも頷ける。その除くべき欠点さえなければ、告白して振られていただろう。振られちゃうんだ……それと僕はロリコンだということを言っておこう。
ただ一つの欠点、それは――僕であること。
確かにレティシアちゃんは最高に大好きだ。パソコンにはレティシアちゃんの画像が他人がひくレベルで保存されているし、何度レティシアちゃんが現実に居たらと妄想したことか。しかし、それは僕が男であったから成り立っていたのだ。僕が男だったからレティシア=ドラクレアというキャラクターを好きになることが出来たのだ。
レティシアになりたいなどと思ったことは一度もない。願ったのは――フィギアだ。
雪のように白いキメの細かい柔肌が傷つかないように頬を引っ張ってみると痛みを感じる。僕の経験上、夢で痛覚があったことはただの一度もない。このことからも今、僕のいるこの世界が現実である可能性がさらに高まった。
夢ではないと決まったわけではない。けれど現実である可能性の方が比べるまでもなく非常に高いのだ。
となると、僕はこの世界を夢ではなく現実として行動していかなければいけない。それは同時にレティシアとして生きていくことでもある。
もしも、この状況が人為的、作為的に起こした奴がいるのならば僕は決して許すことはできない。
もし本当にそのようなことをした奴がいるとして出会ってしまったら、僕は確実にそいつを殺そうとするだろう。そこには彼女や母が死んだ理不尽に対する怒りも混じっているだろうな。
憎悪を生きる糧にする。それは誰も推奨しない悲しい生き方だ。されど、僕にはそれも交えないときっとどこかで自殺してしまうかもしれない。
なぜなら今の僕には憎悪しか自己を守るものがないのだから。
さてこの世界で有利に生きる方法を考えることにする。
何も考え無しに生きるのと計画をたて生きるのとでは利益が違う。
まず意識をすれば体の中に何やら力のようなものがあることがわかる。それは感覚的に使い方が解るため、使おうと思えばいつでも使えるだろう。
十中八九レティシアのギフトだろうな。尤もこの世界にギフトなんて概念があるかどうかはわからないが。
無論ギフトとは単なる贈り物ではなく、神々にも対抗できる力というのがここでいうギフトのことだ。
これがあれば戦闘面では、問題ないだろう。
それとこれらのことから容姿だけレティシアになったのではなくレティシア本人になってしまったことがわかる。
なのでレティシア本人として振る舞った方が良いだろう。
運の良いことにレティシアと僕の口調は通じるものがある。一人称と細部に気を配れば口調に関しては問題ないはずだ。
ただ不可解なことが一つある。それは日光を浴びても何ら体に異常がないことだ。
気づいたのは此処に来る途中だ。まぁ、有り難いからいいか。
戸籍とかはあのねっとり髪に頼んでみようかな。うまくいけば養子くらいにはなれるかもしれない。悪くても孤児院を紹介してくれる筈だ。
あのねっとり髪は僕を助けようとしていたとき打算的な感じがしなかった。見た目は不潔だが悪い人間ではない。利用するには便利だろうな。
一度、僕は試着室を出ることにした。あまり長居をすると怪しく思われるからな。
服屋を出るとねっとり髪が腕を組み壁に寄り掛かっていた。いつ見てもねっとり髪の着ているローブを洗濯したくなってくる。
早速レティシアとして話しかけてみることにする。
「まだ待っていたのか黒髪の男よ。てっきり帰ったのかと思っていた。
まぁ、まずは助けてくれたことに感謝する。礼はいるか?」
一応もう一度ねっとり髪がまともか調べる。
打算や下心で行動していたのなら、それ相応のリアクションをするだろう。
「我輩はこの程度で礼などはいらない」
合格だ。では心的距離を縮めていこうではないか。
「男、名を何というのだ?」
「フン、まずは貴様から名乗るべきではないですかな……?」
そういや僕ってどんな名前だったろうか?霞がかかったように名前が思い出せない。
まぁ、問題はない。レティシアとして生きていくと決めたからな。
堂々とキメ顔で名乗ってやろう。
「私は箱庭の騎士にして吸血種の純血であり魔王レティシア=ドラクレアだ」
「我輩は半純血のプリンス セブルス・スネイプだ……」
セブルス・スネイプ……?僕はこの名前を知っている。なぜなら一昔前まではこのキャラクターに憧れていたのだから。
1997年にイギリスで出版され、瞬く間にベストセラーとなりスマーティーズ賞などをとった名作【ハリー・ポッター】
この作品に出てくる、愛に生き最期はお辞儀さんの蛇に殺された男性キャラクターであるスネイプ。
最後の最期で凄い人気を誇ったキャラクターなのだ。
だとすれば最高じゃないか……!
とりあえず用件を簡潔に言うことにしようか。
「ではスネイプさん。いきなりだが父親になってもらえないだろうか。」
「なに……?」
焦って直球過ぎてしまった。
しかし、凄いな。あのスネイプさんが動揺している。それもそうか。誰だって脈絡もなく急に、パパになって はぁと 何て言われたら動揺する。しかし、こういう時は判断が少なからず鈍るものだ。
ここは一気に畳み掛けることにしよう。
「私は遺憾ながら親族と呼べるものがいない。そのため私は保護者を必要としているのだ。
引き受けてくれないだろうか」
少し考える素振りを見せてからスネイプは答える。
「良かろう。引き受けてやる」
え?すごくあっさりうまくいったんだが。
なんか裏がありそうだな。
案の定スネイプは続けた。
「だが、ドラクレア。貴様の正体を明かして貰う。先の箱庭の騎士や魔王……あれは一体どういう意味だ。
貴様が見た目通りならば聞かなかったが……貴様の精神は既に成人近くの水準だ。それにどうしてあんな場所で倒れていたのだ」
正体か……。確かに5歳くらいの幼女が魔王とか言ってたり交渉してたらビビるわな。倒れてた理由は……わからないな。
さて、とりあえずレティシアちゃんの設定を語ってやろう。
もしかしたら、警戒させてしまうかもしれないが。
「教えてやるとも。聞きたいのだろう?
箱庭の騎士……これは我が一族が箱庭世界に貢献したとき贈られた称号だ。つまり私個人に対して使うものではない。
……魔王、これはクーデターを起こした同士の部下を殺したらついた。」
「な……!」
レティシアの設定って合ってるよな。
それにしてもスネイプさん驚いてるな。
多分、部下を殺したという部分に驚いているのだろう。
すると急に体の中に何かが体の中に入り込んでくるような不快感を感じた。
すぐさま龍の遺影を展開し、スネイプを捕縛する。
「開心術を使うとは、油断も隙もないな」
「この影は一体……!?」
驚いているみたいだな。それもそうか。
何せこの世界には本来ないものだからな。しかも急に出てきた影に縛られたんだ。軽くトラウマものだろう。
「それは私の能力だ。自分の影を操れる。無論、魔法ではないぞ」
スネイプが僕に対して睨み付ける。
警戒が高まってしまったみたいだ
「何が目的だ。ドラクレア……!」
「言っただろう。私の父親になってもらいたいと。もし出来ないのであれば孤児院を紹介してくれ。
あと、言い忘れていたが私が道で倒れていたのは自分でもよく分からない」
スネイプは思案を始める。
やはり養子は無理か……。警戒させてしまったしな。そもそもスネイプが子供とは言え不穏分子を抱えるとは思えないしな。
僕はスネイプを解放すると龍の遺影をしまう。
しかし、良い意味で僕の予感は覆された。
「良かろう。ドラクレア。お前の父親になってやろう。このさいお前の正体について言及はしない。
しかし、条件がある。」
「条件とは……?」
「ハリー・ポッター、現在5歳でマグルに育てられている。条件はポッターの監視と報告だ。
その程度、貴様には造作もあるまい」
ハリー・ポッターの報告か……。龍の遺影を使えば、簡単に出来るな。
それにしてもよく僕を養子にしようと思ったな。
何にしても計画通りだ。あともう一つの目的……魔法を使うこと。
「了解した。では、交渉成立だ。
それとスネイプさん……一つ尋ねたいのだが、私にも魔法を使えるだろうか?」
そう尋ねるとスネイプは一瞬キョトンとした表情を浮かべ僕に向かって言い放った。
「何を言っているのだ? 貴様は魔法を使えるのだろう?さっきから魔力を流しているではないか……」
「は? 魔力?何の事だ?」
「貴様が起きた直後から流しっぱなしの魔力だ!」
流しっぱなし?魔力が?
スネイプは青ざめると慌てた様子で駆け寄ってきた。
「貴様……!まさかと思うが我輩への牽制として魔力を故意に流しているのではないのか……!?」
勿論のことそのような事をした覚えはない。
「まさか無意識にそこまでの魔力を流しているなんて……!
ドラクレア、すぐに聖マンゴに向かう!我輩の腕に掴まれ……今すぐに!」
―――――
そして僕とスネイプは聖マンゴ魔法疾患傷害病院に姿現しをした。
聖マンゴで癒者の診察をうけた僕は魔力がとんでもなく多いということだけがわかった。どうやらスネイプは僕の魔力がだだ漏れているのを見て、何かの病気だと勘違いしたようだ。僕が10分間に周囲に出していた魔力は、一般の魔法使いや魔女の平均的な内蔵魔力の約7倍だったそうなのだ。勘違いするのも無理はない。
11歳以下の魔力がある者が10分間に出す魔力は全体の0.15%らしい。つまり僕の魔力は化け物なのだ。まぁ、レティシアちゃんボディなら不思議ではないな。
そして色々とあったが僕はスネイプの養子として暮らし始めた。