レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY 作:招き蕩う黄金劇場
「イッチ年生、ついてこい!」
案内係の森番を先頭に、僕を含むホグワーツ新入生がつづいていく。
僕たちは、暗いなか滑りやすく足元の悪い、狭い小道を進んでいった。これでは怪我をしてしまう人が少なからずいるだろう。実際にハーマイオニーが躓き、転びそうになった。
「ハーマイオニー、私の腕に掴まるといい」
僕は右斜め後ろを危なげに歩く、ハーマイオニーに手を差しのべた。
そして懐から杖であり近接武器でもある刺突剣を取り出す。当たり前の事だが鞘はつけてある。そして光源を作り出す呪文を詠唱する。
「ルーモス・マキシマ ! (強い光よ)」
すると辺り一帯を光源が眩しく照らす。
何人かの生徒が驚いたように首を光源の方に向けた。ハーマイオニーも同じように光源の方に首を向けると、今度は僕の方に首を向けた。
「レティシア、あなた本当に凄いわね。それと腕、ありがとう」
「うむ、気にすることはない。それに、この程度ならハーマイオニーもすぐに出来るようになる」
「そう」
しばらく歩いていると、先頭を歩いている森番が歩みを止める。そして此方の方に振り向いて言葉をなげる。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。
この角を曲がったらだ」
曲がり角を指差しながら森番は言った。
「うぉぉぉォォォ ! 」
周りから一斉に声が沸き上がる。
ハーマイオニーは叫び声に眉をひそめながらも安堵した表情になっていた。ここまで歩くのに疲れたのだろう。僕はこの体になってからは、あまり疲れることがない。僕は吸血鬼の体って凄いなぁとしみじみ感じたのだった。
曲がり角を曲がると、狭い道が急に開け、大きな湖の畔に出る。
向こう岸には、巨大な城があり夜空と合わさってどこか威厳を醸し出していた。
「四人ずつボートに乗って」
森番がボートを指差す。
ハーマイオニーはいつの間にか現れていたハリーとロンとネビルと一緒に乗るみたいだ。
僕はハリー達のボートとは別のボートに乗り、腰掛ける。
するとドラコとクラッブ、ゴイルが乗ってきた。
「やぁ、レティシア ! 一ヶ月ぶりだね。手紙の返事ありがとう」
「あぁ、久し振りだな。ドラコ」
ドラコが話しかけてきた。実は僕は、ドラコとダイアゴン横丁で出会ってから、手紙のやり取りをしていたのだ。
彼の手紙の内容はジョークも交えてあり、なかなかに面白く、飽きることはなかった。
「そうだレティシア。ハリー・ポッターと会ったかい?」
ふとドラコがそんなことを聞いてきた。しかし馬鹿正直に答える必要性は皆無だ。
スリザリンとグリフィンドールに交友関係を持っていて損はない。ここで正直に答えて、自ら繋がりを崩そうとする奴はただの愚者だ。
「ハリー・ポッター? 会っていないがその人間がどうかしたのか?」
「ポッターに友人の誘いをしたんだ。けど断った。ポッターには本当にガッカリだよ」
マルフォイが肩を竦めながら言う。ここでフォローでもすれば好印象だろう。
「そうか、残念だったなドラコ。まぁ、案ずるな。お前はマルフォイ家の長男なのだろう?」
「そうだね、レティシア。ありがとう」
会話をしている間にボートは城の真下と思われる暗いトンネルをくぐっていた。
「そうだ、レティシアはどの寮が良いんだい?」
「スリザリンかレイブンクローだな」
ホグワーツには四つ寮がある。寮によって選ばれる人物の性格が違う。
僕は多分スリザリンかレイブンクローとなるだろう。
「どちらに選ばれてもレティシアならよく映えると思うよ」
「そうか。ドラコはスリザリンに入るのだろうな」
「当たり前さ。スリザリンは才能で選ばれるからね。
それにしても、どうやって組分けるんだろう?」
「行けばわかる。心配することはない。
それにもうすぐ船着き場につくぞ」
ボートがトンネルを潜り抜けると、地下の船着き場に到着した。
そして、船着き場から続く岩の通路を登っていくと、開けた草むらにでた。そこからさらに石段を登り、ようやく城の扉の前に辿り着いた。
「レティシア、いよいだね」
「そうだな、ドラコ。いよいよだ」
僕はドラコの問いに肯定の意を示すと開こうとする扉を眺めていた。
―――――
扉が開くと、緑色のローブを羽織った厳格な雰囲気の魔女が現れた。
森番と魔女は言葉を交わすと、扉を大きく開け放った。
玄関ホールは広く、一戸建ての家が入りそうだった。石壁に備え付けられた松明が僕たちを明るく照らす。
僕は今まで光源に使っていた刺突剣を『龍の遺影』に収納した。
魔女――マクゴナガルについて僕たちはホールを横切っていった。そしてマクゴナガルは僕たちをホールの脇にある空き部屋に案内した。
「ホグワーツ入学おめでとう。
新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。」
マクゴナガルは新入生に挨拶をした後、寮についての説明を始めた。
寮はグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンだ。
新入生はこの四つの寮から組分けられるのだ。
「まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい」
マクゴナガルはそう言い新入生を見渡す。
「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」
そう言い残すとマクゴナガルは部屋を出ていった。
僕は見知った顔を探すために辺りを見渡したが、知らない人ばかりなので携帯ゲームで暇を潰すことにした。
すると突然後ろから悲鳴があがる。その方向を向くと、ゴーストが二十体程現れたのが見えた。
ゴーストたちはなにやら議論をしているみたいだ。ゴースト達の会話のなかでピーブズという単語がよくでてくるのがわかる。多分ゴーストたちはその、ピーブズについて議論しているのだろう。ゴーストたちの表情が険しいため、ピーブズとやらは害のあるものかもしれない。
僕はこの6年で転生前の記憶が大分曖昧になっている。そのため、このハリー・ポッターの世界のことも、大まかなストーリーの内容と主要キャラくらいしか覚えていない。故にゴースト達が話題にしていたピーブズなるものも、新しく知り得ないといけないのだ。
僕たちのいる部屋の戸が開く。マクゴナガルが戻ってきたようだ。
「組分け儀式がまもなく始まります。
さぁ、一列になって。ついてきてください」
皆が重苦しい雰囲気のなか、一列に並び始める。僕は茶髪の少女の後ろに並んだ。
僕たちは部屋を出て再び玄関ホールに戻ると、そこから二重扉を通り、大広間に入った。
空中には何千本もの蝋燭が浮かんでおり、四つの長テーブルを照らしている。それぞれのテーブルには寮ごとの上級生たちが着席しており、蝋燭の光が反射し輝く金の皿とゴブレットが並んでいた。
さらに広間の上座にはもう一つ長テーブルがあり、そこには教師陣が座っていた。新入生一同は上級生の方に顔を向ける格好で並んだ。
ふと天井を見上げてみると、魔法で出来ているのだろう満天の星空があった。完成度は非常に高く、本当に夜空を見上げているかのように感じた。
マクゴナガルが椅子を用意したのを見て、誰もがそこに注目する。
椅子の上には萎びた古いとんがり帽子が置かれた。見ているとスネイプのローブのように洗濯したくなってくる。
広間がシーンと静かになると、帽子が
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住う寮
勇猛果敢な騎士道で他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレインブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
必ずここで得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん ! 恐れずに !
君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)
だって私は考える帽子 !
帽子の歌が終わると広間が拍手喝采に包まれる。帽子はそれぞれの寮にお辞儀をし、再び沈黙した。
組分けは、帽子を被るだけと分かった新入生たちはどこか安心したような表情をしていた。
マクゴナガルが長い羊皮紙の巻紙を手にして前に立った。
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください」
「アボット・ハンナ ! 」
「ハッフルパフ ! 」
「ボーンズ・スーザン ! 」
「ハッフルパフ ! 」
……
組分けは順調に進んでいき、ついに僕の番となった。
「ドラクレア=スネイプ・レティシア ! 」
一人だけ学校指定のローブでないせいか、ざわめきが大きくなり、囁き声が聞こえてくる。
『おい、見ろよ……すげー美少女だ……』
『本当に人間なのか……? 天使の間違いではないのか……?』
『どうしてローブを着ていないの……?』
やはり、普通にローブを着ていた方が良かったのだろうか……?しかし、仕様がない。
僕は少し急いで椅子に座り、組分け帽子を被る。そして――
――閉心術を使った。
すると突然耳の中で低い声が聞こえた。
「フーム、私に対して閉心術を使ったのは君が最初だよ、ミス・ドラクレア。よし、君にはこの寮が丁度良い。
スリザリン ! 」
スリザリンのテーブルから大きな歓声がおこった。
僕はスリザリンのテーブルへ向かう。するとテーブルに座っていたマルフォイが此方に向かって手招きした。側には空いた椅子がある。
「レティシア、スリザリンになれたんだね。
やっぱり、君はウィーズリーたちと違って才能がある」
「そうだな。とりあえずドラコ、これからよろしく」
「あぁ、こちらこそよろしく」
そして、ホグワーツの校長であるアルバス・ダンブルドアが立ち上がり、一年生に挨拶した後、テーブルの大皿がいつのまにか料理で満たされていた。
料理はやはり、不味いと評判のイギリス料理。皆は美味しそうに食べているが、僕の味覚にはあわなかったため、後日厨房にいるしもべ妖精に頼んでイギリス料理以外をつくって貰おうと考えた。
食事が終わった後、ダンブルドアが注意事項と僕のことを脚色をつけて話した。それによると四階の右側の廊下に入ると痛い死に方をするそうだ。まぁ、何があるのか既に知っているのだが。
それと僕のことは血が吸えない珍しい種類の吸血鬼だと話していた。それもう吸血鬼じゃないとツッこんだら負けである。
そして寝る前に校歌を歌い、僕たちはスリザリン寮へ向かう。
校歌は皆がバラバラで歌とは正直言えなかった。
監督生についていき、地下牢の扉の前で合言葉を唱えると、扉が独りでに開く。
どういう原理になっているのか興味が湧いたがスルーする。
そして壁が大理石で囲まれ壮厳な雰囲気を醸し出すスリザリンの談話室に行くと、男子寮と女子寮にそれぞれ続くドアがあった。
僕は、女子寮に続くドアから自分の部屋へ向かった。
一番奥の部屋を目指して歩く。そこが僕の部屋だから。
部屋の前につくと、蛇の意匠が施されたドアがあった。
部屋に入ると十畳くらいの部屋だった。
僕の部屋には緑色に染められた絹のカーテンがかかった天涯つきベッドが五人分あることから、本来五人部屋であることがわかる。
しかし、僕の種族上此処の部屋は特例として僕、一人の部屋となった。
『スコージファイ(清めよ)』
僕はベッドに飛び込むと、自分の体と着ていた服装に清めの呪文を唱えた。
そして熊柄のパジャマを着ると眠りに落ちた。