レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY 作:招き蕩う黄金劇場
金曜日の朝、僕はスネイプが教えるという魔法薬学の授業へ向かっていた。
それにしても、動く階段がウザい。上がろうとしたら動くの本当にやめて欲しい。イラッとしすぎて八つ当たりにアーガス・フィルチを魔法で吹っ飛ばしてしまったまである。
一度立ち止まって深呼吸し、苛立ちで荒んだ心を落ち着けるているとドラコが小走りで此方に向かってきた。
「レティシア!こんな時間に君が出歩いているなんて珍しいね。まさかと思うけど、授業に出るのかい?」
「私だって授業には出席する。私を何だと思っているんだ、ドラコ」
ドラコは「え、マジで授業出るの……?」みたいな表情をする。てか、こいつ顔に感情出過ぎだろ……。リアクション芸人かよ……。
「だってレティシア引きこもりじゃないか。授業に出るとは思わないだろう……?」
「…………」
僕が、ジト目で見ていると、ドラコは降参したのか両手を挙げた。というか僕引きこもりって印象だったのか。いくら将来に備えて出来る限りの準備をしているとは言っても、やはりそういう印象を同級生に持たれてしまうのは些かキツいものがある。
昔のトラウマを思い出してしまう。「■■■君、引きこもりなんだって~キモくなーい?」とか教室で大きな声で言いやがってくれたあの女は絶対に許さない。
「ごめん、ごめん。そういえば魔法薬学といえば下等なグリフィンドールの連中と合同だったね。レティシアはどう思う?」
「どう思うとは?具体的な質問をしろ」
「うーん、具体的と言われると……そうだな、グリフィンドールのことやマグル生まれはどう思っているんだい?」
純血主義のことか……。やはりドラコはスリザリンとして、純血の魔法使いの家系としてグリフィンドールやマグル生まれの魔法使いのことの他者からの評価を聴いておきたいのだろう。
聴いて何になるんだと思うが、ドラコにとってはグリフィンドールはマグル生まれは、長年下等なものだと家族から教え込まれてきたものだ。
その純血主義の考えは自分の全てなのだろう。しかし、ドラコは心の奥底でその考えに疑問を持ってしまっている。故にそのことを改めて家族など以外の他者から確認することで、自分が正しいということを、間違っていないということを思い込む。
そうしないと自己を保てないから。
「私はグリフィンドールのことに何も思うところはない。まぁ、敢えて言うならば傲慢がいき過ぎているというところくらいか。
マグル生まれのことはよくわからない」
「そうなんだ……」
「ほら、ドラコ。授業が始まってしまうぞ」
「あ、あぁ。そうだね」
◆◇◆◇◆◇
魔法薬学の教室である地下牢には、すでに生徒が揃っていた。
とりあえず遅れました、と声を掛け空いている席に座った。ふと、机を挟んだグリフィンドールの生徒の方を見ると、ハリーたちが此方を見ていることに気が付く。隣に座るドラコにバレないように手を振ると、ハリーとロンは顔を赤くして前を向いてしまった。何だったのだろうか……?
それにしても、この地下牢はスネイプのイメージに合っているな。こっそり家のスネイプの部屋も地下牢みたいな飾り付けにしてみようか。
スネイプは全員が居ることがわかると、出席を取っていく。そして、ある生徒の名前で止まった。
「あぁ、さよう……ハリー・ポッター。我らが新しい――スターだね」
スネイプがキモい猫なで声で喋りだす。隣のマルフォイを筆頭にスリザリン生がハリーに対して冷やかし笑いをする。スネイプの猫なで声に僕もクスッと吹き出してしまったのは仕方がないことだ。
それにしたってスネイプの猫なで声、似合わなすぎにも程があるだろ……!
スネイプは出席を取り終わると生徒を見渡した。そして、僕の居る方で視線を固定する。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。
このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。沸々と沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管を這い巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である――ただし、我輩がこれ迄に教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
長げーよ!!どんだけ長い演説するんだよ、スネイプ!そのご立派な演説は授業以外の時にしろや!
僕は授業でする話としては余りにも長いスネイプのお喋りに心の中で罵倒した。いや、まだしたりないな……。
「して、ドラクレア……。授業にほとんど出ていないというのは本当か?」
「事実だよ、スネイプ教授」
唐突にスネイプが此方を見据えながら問いを投げてきたので、簡単に返答した。
「では、レティシア。竜の眼球の粉末にマンドラゴラの球根の粉末、そしてクラーケンの体液を加えると何になるかね?」
教室中の視線が僕を憐れむようなものになる。それもそうだろう。何せ僕は引きこもりの烙印を押されているのだから。尚且つスネイプのした質問は本来七年生で習うもの。憐れむのも無理はない……。
だが……この程度の質問答えれずして、何が魔王か!
「フッ、この程度どんな間抜けでも答えられる。答えは――
するとスネイプが少しだけ嬉しそうにニヤリとする。
「そう正解だ、ドラクレア。この問題は七年生の問題であった故、答えられないと思っていたが……スリザリンに10点」
七年生の問題だと聞いた瞬間、生徒たちが僕を驚いたような目で見る。大方、引きこもりの奴が一年生で習わないような問題をさらっと解いたことに驚いているのだろう。ハハハ、もっと我を讃えよ。敬え、もっと奉れ!
「ポッター!こんな
アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
「わかりません」
スネイプはハリーに答えられないような問題を出しているみたいだ。まぁ、答えられない問題と言っても五年生レベルなのだが。
「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい。
ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいといわれたら、どこを探すかね?」
「わかりません」
「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?
ポッター、モンクスフードとウルフスベーンの違いはなんだね?」
「わかりません――ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」
ハリーはついにスネイプに言い返してしまった。我慢すれば良かったものを……。
案の定スネイプは不快そうな顔をして、挙手しながら席を立っていたハーマイオニーを座らせると、ハリーの方へ向き直った。
「フン、その程度の事もわかっていないとは……我輩はガッカリだ。
ドラクレア、この残念な英雄君の代わりに答えてあげなさい」
僕にとばっちりがきた。どうしてこうも面倒事が廻ってくるのか。
はぁと溜め息を吐くと僕は立ち上がった。
「アスフォデルとニガヨモギを調合すると、効能の強い睡眠薬となる。非常に強力なため、『生ける屍の水薬』と言われている。
ベゾアール石は山羊の胃から取り出せる。この石の効果は大抵の薬に対する解毒剤になることだ。
モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物であり、別名アコンナイト。所謂トリカブトのことだ。以上」
「偽りの英雄様と違ってドラクレアは完璧な返答だ。スリザリンに5点。そして、ポッターの失礼な態度で、グリフィンドールは1点減点。
諸君、さっさと今のを全部ノートに書き取りたまえ」
そして、また色々あってからおできの治療薬を生徒二人一組で調合した。
僕はドラコとペアになり、材料の干イラクサを計ったり、蛇の牙を砕いた。ドラコは意外と上手で角ナメクジを完璧に茹でたりしていた。
そして、僕とドラコのペアは生徒たちの中で一番早く、しかも完璧に完成した。
スネイプはそのことにまた、スリザリンを加点した。
その直後、地下牢に強烈な緑色の煙がシューシューと広がった。
元凶と思われる場所を見ると、ネビルが一人の男子生徒の大鍋を溶かして、よくわからない塊にしていた。こぼれた薬はネビルにかかり、体中におできが吹き出し、呻いていた。
「バカ者!」
スネイプが杖を振り、こぼれた薬を処理した。
「大方、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?」
ネビルは一人のグリフィンドール生に連れられ医務室へと泣きながら行った。
「君、ポッター、針を入れてはいけないとなぜ言わなかった?彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう1点減点」
また、余りにも理不尽にグリフィンドールが減点された。スネイプは少しやりすぎだと思う。尤も止める気はないが……。
ハリーは今にもスネイプを殴りそうなほど睨み付けている。スネイプはそれを一瞥すると、今日の授業はここまでと地下牢から出ていった。
僕もさっさと、地下牢から部屋に姿くらましをした。