レティシア・ドラクレアとホグワーツ~LETICIA DRACULEA & THE HOGWARTS SCHOOL OF WITCHCRAFT & WIZARDRY 作:招き蕩う黄金劇場
カツカツとブーツのたてる足音が、自分以外誰の気配もない廊下に鳴り響く。それは舞踏会でのステップのようで、今から行う
「フフフ……フフ」
ニヤニヤと笑みを隠そうともせず、消灯時間の過ぎた深夜の廊下を堂々と歩いていく。
辿り着いたのは四階、校長が入学式の時に入ることを禁止した場所……。
そういえば、どうして立ち入り禁止とかされていたら、とりあえず入ってみたくなるのだろうか?僕に限ったことではなく前世の頃の彼女もそういう場所に嬉々として入っていったし……、背徳的な感じが人間は好きなんだろうか。どうでもいいけれど。
閑話休題
もう察しているかもしれないが僕は今宵、賢者の石を貸してもらいに行く。盗みではない、あくまで貸してもらうのだ。……僕が死ぬまで。
貸してもらった賢者の石で金属を金に変えて、それらを店で売り捌く。これで資金に困ることは無くなり、やりたい放題だ。
「アロホモラ(扉よ開け)」
鍵の掛かった廊下の突き当たりの扉を呪文で開き、扉を潜って中へと入る。
薄暗く何処か獣臭い部屋の中には、原作通りの一頭の巨大な三頭犬が眠っている。そして、その真下には仕掛け扉。それにしても一頭なのに頭が三つあるとは……ここはやはり三頭と言うべきか?……もうどうでもいいや。
さて、攻略を始めるか。まず、僕は影から三頭犬を眠らせるための鍵盤ハーモニカを取り出す。既に眠っているからと言って油断は出来ない。犬の嗅覚を侮ってはいけない。僕が前世で飼っていた犬はどんなに熟睡をしていたとしても、餌を与えようと袋から出した途端に目を開けていたものだ。
さて、どうして持ってきた楽器がハープや笛などではなく鍵盤ハーモニカなのか諸君は気になることだろう。その疑問の答えは簡単だ。ただ単に鍵盤ハーモニカ以外の楽器が使えないというだけ。ん?僕は誰と脳内会話をしているのだろう?まぁいいや。
三頭犬に3m程近づくと、気付いたのか三頭犬がむくりと体を起こし僕の方に六つの瞳を向ける。三頭犬の吐く臭くて生暖かい息が此方にかかる。
「グオアアアァァァア!!」
「何だかモン○ンをしてる気分になるな。まぁ、もし私の力をモ○ハンのステータスで数値化してしまうと些かチート性能になってしまうのだが……」
三頭犬が前足を振り上げ、僕をそのまま潰さんと迫る。そして、三頭犬の前足が僕に当たろうという瞬間、僕は影の中に潜り込んで回避。
少しだけ三頭犬に離れた場所に転移し、手に持った鍵盤ハーモニカでカエルのマーチを弾く。そんなカエルのマーチを聴いた三頭犬は暫くすると規則正しくスピースピーと寝息をたて始める。
三頭犬が完全に寝たことを確認すると、すぐに三頭犬の下にある仕掛け扉を開き中へと入る。そして数秒の浮遊感を感じた。ジェットコースターもそうだけどこういう落下の時って凄く背筋が寒くなるよな。この感覚は本当に嫌だ。ジェットコースターにだけはどれだけ歳を重ねようとも遊園地で絶対に乗らない。
ドスンと派手な音を立てながら落ちた先には植物が敷かれていた。勿論のこと、この植物はただの植物ではない。『悪魔の罠 』という危険な植物だ。
足元を無数の蔓が巻き付き締め付けてくる。蔓はさらに獲物を逃がさないとばかりに体の方も締め付けてきた。予想以上に締め付ける力が強いため少し驚いたが、一旦深呼吸をして落ち着いた後、呪文で炎を出して蔓を焼き払う。
「フッ、他愛ない」
僕は奥へと続く石畳の路を見つけると、下へ下へと降りていく。やがて路の先に光が洩れだす一つの部屋が見えてくると同時に蚊が飛ぶようなブーンという音が聞こえてくる。
そして通路の出口に出ると、高いアーチ形の天井をした部屋に出た。部屋の中には数多の鍵が羽虫のように飛んでいる。実に目障りだ。
『龍の遺影』を展開し、大きく広げて飛んでいるゴキブ……鍵を包み込む。そして圧縮した。
これで鍵の羽は多分全て折れただろう。圧縮の時は加減をしたため、本体は折れていない。後は飛べなくなった鍵たちの中からこの部屋の先へと進む扉の鍵を探しだすだけ。実に効率的だ。
僕は落ちた鍵たちの中から古い大きな鍵を掴むと、部屋にある分厚い木の扉の鍵穴にその鍵を差し込んで捻る。カチャッという軽快な音と共に扉の鍵が開いた。そして勢いのまま扉を開けて次の部屋へと入った。
部屋へ踏み込むと、突然真っ暗な部屋中に光が溢れた。そして目の前に大きなチェス盤が現れた。僕の立つ場所は黒い駒の側。向こう側には白の駒。この部屋ではチェスで相手に勝たないといけないようだ。
僕は黒のキングの方に向かい、その上に飛び乗る。すると盤の上の駒が命を吹き込まれたかのように動き出した。
「生憎と私はチェスは苦手でね。このチェスは私のやり方で攻略させてもらうよ
エクスペクトパトローナム!」
僕は負の思い出で禍々しく赤い騎士の守護霊を召喚する。
「さぁ、私の騎士よ。この場の白の軍勢を
赤い騎士が疾風のごとく駆け出し得物の大剣で白の駒を破壊していく。正しくそれは蹂躙であった。
誰が正々堂々と勝負をすると言ったぁ?てめーの敗因はただ一つ。てめーは正々堂々し過ぎた。なんてことを白の駒の方を見ながら脳内で罵倒する。
先へ進むためへの扉には見たところ鍵穴はない。チェスを正々堂々と勝利すれば鍵が開くといった仕掛けはない。なぜなら、それは僕が既に何の苦もなく扉を開けれてしまっているからだ。
「ククク、馬鹿め。こんな茶番に付き合ってやれるほど私は忙しくないのだ。いや、今のなし。よく考えたらあんまり忙しくないわ」
独り言を呟きながら、扉を開くと一匹のトロール。キモいし臭いしウザいのでさっさと退場してもらうことにする。
「ウガアア――」
「アバダケダブラ(この死の呪文に殺せぬものなどあんまりない!)」
咆哮をあげようとしたトロールは緑の閃光に当たって呆気なく死ぬ。そういえばあの三頭犬にこれをしとけば良かったかなぁ。
トロールの亡骸の傍に近寄ると、掌を向ける。
「
某石油王さんと某世紀末さんのセリフを棒読みしながら、トロールの亡骸を悪霊の火で消し炭にする。たまんねーな。
そして次の部屋へと向かった。
「あぁー、謎解き系か。面倒くさい」
その部屋には形の違う七つの瓶の一列に並べられて置いてあるテーブルがあった。
既に通ってきた扉は紫色の炎に包まれて、退路は断たれている。それと同時に部屋の前方のドアの入り口さえも黒い炎に包まれている。
テーブルの瓶の横に置かれていた巻き紙を読んでみる。そこには論理の問いが記されていた。それによると瓶の中身には毒薬か炎を潜るための薬のようなものが入っているらしい。だが僕にはそれを解かなくても進む方法がある。それはとてもとても原始的な方法。
――ゴリ押し。
「ロードローラーだっ!」
ロードローラーのミニカーに肥大呪文を掛けて巨大化し、それを思いきり壁に向かってぶん投げた。ズゴォンという音と共に壁は儚く崩れ去った。べ、別にD○O様ごっこがしたかったわけじゃないんだからねっ!
でかくしたロードローラーに縮小呪文を掛けて回収してから賢者の石のある部屋へと歩みを進めた。
部屋は綺麗な黄金で装飾されていた。部屋の中央には場違いな小さな机。
どうやら、まだみぞの鏡は導入していなかったようで、小さな机の上に賢者の石はポツンと放置されていた。警備無さすぎだろ。
僕は賢者の石に双子の呪文を掛けて、精巧な偽物を作り出し、賢者の石と交換した。別に賢者の石を勝手に借りたことがバレても問題はない。なぜなら僕が賢者の石を借りたことが誰にも、それこそダンブルドアにだって分かるわけがないからだ。疑うとしたらお辞儀の人を疑うだろうしね。
「計画通り……」
僕はニヤニヤと口を緩めながら自分の部屋へと姿くらましをした。上手く事が運びすぎて一人笑いが止まらない。
部屋の中ではしゃぎまくっていたことは言うまでもないことだろう。