皆様からのご指摘ご感想をお待ちしております。
現在時刻は夕方。
ターコイズがスクールを退学になってから数日後、俺達はクロガネシティを出発して209番道路まで来ていた。ここまでくれば目的地のロストタワーは目と鼻の先だ。
「・・・今更ですが、ロストタワーと言うのは、どういう所なのですか?」
「ロストタワーはシンオウ地方の墓地として有名な場所だな。ホウエンの送り火山と同じで、ゴーストポケモンの住処になっているらしいぞ」
俺はシンオウ地方のパンフレットを見ながらそう答えた。しかし、前回の送り火山といい今回のロストタワーといい、何で毎回墓地なのかね?
「墓地・・・・。ゴーストポケモン・・・。幽霊・・・」
「・・・顔が青いですが、どうかしましたか?」
「アリア察してやれ、こいつは間違いなく幽霊とか苦手なんだよ」
「ちちちちち違うからねっ!!?ぼぼ僕は別に!!」
「うん。強がるなら足の震えを止めてからにしような?」
「・・・到着しました」
そうこう会話している内に、遂にロストタワーの目の前まで来ていた。正面の大きな木製の扉が、ロストタワーを閉ざしている。前回の反省を活かして、あらかじめポケモンをボールから出しておいた。俺はその大きな扉に見合うドアノブを掴んだ。
「それじゃ開けるぞ?お前等ポケモンの準備は良いか?メリー」
「・・・行きますよ、ムクバード」
「いいかい、キャサリン。ガーネットが扉を開けるのと同時に〝ハイドロ「やめんか」
珍しく物騒な事を呟くターコイズを制し、俺は扉を引っ張った。ギギギギギギと、軋むような音と共に扉が開いてく。中は薄暗く、蝋燭の明かりと、僅かに差し込む夕焼けの光がロストタワーの不気味さをより引き立てていた。
「暗いな。よし!〝フラッシュ〟だ、メリー」
メリーから眩い閃光が放たれる。ロストタワーの内部は電灯が点いた様に明るくなった。
「さて、何か思い出したか?アリア」
「・・・いいえ。ただ」
「ただ?」
「この光景、どこかで見た覚えがあります」
「えぇ!?本当に!?」
「・・・はい。確か・・・」
そう呟いてアリアは墓石を、正確には墓石の正面の床を見渡した。
「・・・これ」
「何か見つけたか?」
「あ!これって!!」
アリアが見つけたもの。それは送り火山の時と同じ、墓石の前に出来た何かを引きずった跡が出来ていた。これって、もしかして・・・・。
「よし、ターコイズ、お前は右側持て」
「OK!!」
「よし行くぞ!せーのっ!!」
ゴリゴリゴリと、音を立てながら動く墓石。その下に現れたのは、送り火山の時と同じ深い階段だ。な、なんて芸の無い・・・!助かったけども。
「また階段だね。どうする?降りる?」
「・・・行きます」
「よっしゃーー!!いっちょ行くか!!」
☆ ☆ ☆
階段を下りること2分。前回とは違い、早くも防火扉まで辿り着く事が出来た。扉には樹をモデルにしたマークが描かれていた。
「前と比べて随分と早く着いたね」
「階段降るのに2分は早いとは言わんがな」
「・・・また、このマークですか」
「アリアもこのマークについては知らないの?」
「・・・はい」
謎のマークについて疑問を残しつつも、俺は防火扉のでかいドアノブを回した。前回同様、鍵は掛かって無いらしい。扉はギィィィ―――と音を立てて開いた。
「ここも研究所みたいだな」
送り火山との違いは、もぬけの殻というよりも、まだここを使っているという感じの、生活感があるということだろうか。証拠に埃は目立たないし、ファイルやビーカー、フラスコも綺麗に並べてる。ただし物音の一つもせず、人が居ないように思える。
それからしばらくの間、ポケモン達に辺りを見張ってもらいながら中を物色してみたが、どれも訳の分からない内容のファイルだったり、何に使うかも検討の付かない機械だったりで、アリアの手掛かりになる様なものは見つからなかった。
「アリアー、そっちは何か見つけたかー?」
「・・・いいえ」
むぅ。ここまで何も見つからないとすると、振り出しに持っちまったのか?
「ターコイズは何か見つけたか?」
「・・・・・・・」
「ターコイズ?」
「え?何?」
「何か見つけたかって」
「あ、いや、アリアに関する記述は何も無かったけど、その代わり、ここで何を研究しているのか分かったかも知れない」
「・・・何を研究していたんですか?」
「クローンだよ」
「クローン?何だそりゃ?」
「簡単に言うと、そうだね、遺伝子情報って言うのは聞いたことある?」
「おう。確か、生き物が個別に持っている身体的特徴の設計図だろ?」
「微妙に違うけど、まぁその認識でいいよ。人間もポケモンも本来同じ遺伝子情報を持たない様に出来てるんだけど、クローンって言うのはその常識を覆して、同じ遺伝子情報を持つ生き物を作り出す、言わば人工生命体を作る研究の事だよ」
「そんなもん作ってどうすんだよ?」
「さぁ、僕には何とも。でも、この研究は倫理的な理由からポケモン協会に禁止されているはずなのに、やっぱりここは犯罪組織の研究所なのかな?」
現状では、何の手がかりもないという事か。とりあえずもう少し調べよう。
・・・でも、何だろうか、この胸騒ぎは。この先に行ってはいけないと、理屈じゃなく本能が警報を鳴らしていた。
☆ ☆ ☆
「後調べてないのは此処だけだな」
あらかた調べつくして、残ったのは小さな個室1部屋だけとなった。今のところ何の収穫もなかったが、時間も時間だし、ここに何も無ければ引き上げよう。
「えらい殺風景な所だね」
「・・・本棚も見当たりませんし、電子機器の類はエアコンのみの様です」
中に入ると、本当に何も置いて無かった。ただ、奥に置かれた机の上には、ポツンと、写真立てが置いてあった。それ以外何も無い部屋だ。
「・・・・・・・・」
何気なくそれを手に取る。そして、驚愕した。そんな馬鹿なと。あり得るはずがないと。
「そ、そんな!これは・・・!」
写真立てに移っていたのは、男と女のツーショット。だが映っている男女こそが問題だった。女の方は長い藍色の髪に雪の様な白い肌、漆黒の瞳を携えた整った顔立ち。唯一違う点といえば、普段からは想像も出来ない満円の笑みと、今よりも高い背丈。
「・・・私?」
アリアそっくり、いや本人とも思える女が映っていた。
「いや、この女の人もそうだけど、何でルーファス部長が!!?」
そう、隣に移る男は癖のある茶髪にスーツ姿、穏やかな笑みを浮かべるルーファスだ。ここからは、俺でもなんとなく想像がついた。あいつは、ルーファスは・・・!
「そりゃ~ルーファス支部長はぁ、オレっちの上司だからねぇ~」
この雰囲気に似合わない、間延びした喋り方。この聞き覚えのある声は!
「久しぶりだねぇ~、御三方ぁ~」
「テメェはあの時の変態リーゼント!!」
「今回はぁ、男物だろ~?」
確かに今は、黒のスーツ姿だけれども。
「そぉ言えば~自己紹介がまだだったね~。オレっちの名前はぁ、サンゾウって言うんだ~。覚えときなぁ~、御三方ぁ~」
「そんな事より、ルーファス部長があなたの上司って、どういう事!?」
ターコイズが叫ぶのと共に、メリー、ムクバード、ぺリッパーが俺達に背を向けて戦闘態勢を取る。前回は後れを取ったが、今度こそは!!
「いやぁ~、今回戦うのはぁ、オレっちじゃねぇよ~?」
「は?」
「何でもぉ、今回の事は~、自分でケリ付けてぇみたいでねぇ~」
そう言い終わると、部屋の外からコツ、コツと誰かが歩いてくる音が聞こえた。そして足音の主は扉を開け、中に入って来た。
「ルーファス部長・・・!」
中に入って来たのは、やっぱりルーファスだった。そして、腰からモンスターボールを取り出し、構える。こいつ、ヤル気か!?
「しかし、あの送り火山の時点でおかしいとは思わなかったのかね?」
「どういう事だ?」
「なぜわざわざロストタワーに何かがあるという記述が乗ったファイルが残っていたとは考えなかったのかね?普通あの手のファイルは処分するのが妥当なのだよ?」
「っ!!?」
しまった!これは罠だったのか!情報という餌で俺達がここに来るように仕向けたんだ!今思えば明らかに不自然だったけど、その時の俺達は先走った気持だったから気付かなかったんだ!
その時、ターコイズが一歩前に出る。
「ぼ、僕達を、どうするつもりですか!?」
「簡単な事だ。ここで君達を抹殺する」
あっけらかんと、ルーファスはそう言ってのけた。それと同時に、ターコイズが後ろ手で俺達にサインを送って来た。このサインは、確か。
「な、何でですか!?」
「君達はもう気付いているだろうが、我々は犯罪組織だ。秘密を知ったものを、理由もなく生かしておく訳がないだろう?」
「派遣部の部長、つまりポケモン協会の上位職員のあなたが、なぜ!?」
「それに答える必要があるのかね?」
もう話す事はないとばかりに、開閉スイッチに指を当てるルーファス。
「それなら、もう聞きません!!」
それは、逃走の合図だった。
「メリー〝10まんボルト〟ォ!!」
「キャサリン〝ハイドロポンプ〟!!」
強力な電撃と水砲が、ルーファスとサンゾウを襲う!だがこれは倒す事が目的じゃない!!逃げだす為に目晦まし&牽制だ!
「ムクバード〝ブレイブバード〟」
それと同時にムクバードのダメージ覚悟の突撃で、部屋の壁に大穴を開ける。
「逃げるぞっ!!」
立ち込める煙に紛れ、俺達は部屋の外へと飛び出した。
☆ ☆ ☆
防火扉を開け、急いで階段を駆け上がる。下から追って来る気配はまだ感じられないが、急いだ方がいい。サンゾウのストライクが追いかけてきたら絶体絶命だ!
「しかし、作戦のサイン決めといて良かったな!あれが無かったらヤバかったぜ!」
「・・・しかし、なぜ撤退を?サンゾウの強さは承知しておりますが」
「どちらかというと、サンゾウよりもルーファス部長の方がヤバい!!」
「強いのか!?」
「強いなんてもんじゃないよ!手持ちポケモン一体でトレーナー10人を完封する位だ!!それも交代なしでね!!」
「そんなにかよ!?」
手持ち一体交代無しでトレーナー10人抜き。言ってみた印象は簡単そうだが、いざやってみるとして、こんな事が出来るのは世界でも数えるほどだろう。
「とにかく、今はポケモン協会まで逃げよう!あそこなら手出しできない!」
何とか階段を登り終え、ロストタワーの外に出る。すぐさまメリーとナツを交代し、俺達は空を飛んで逃げだした。目指すはポケモン協会だ!
「・・・何か聞こえます」
「え?」
飛び立って1分もしない内に、アリアが異変に気付いた。そう言われて俺も耳を澄ましてみる。俺達が飛ぶのに生じる風切り音に紛れて、別の風切り音。後ろからか?
そして俺が後ろを振り向いた瞬間、
ゴオォォォォォウゥッ!!
聞こえて来たのは棲様じい風の音。強大な何かが一個の弾丸と衝撃波となって俺達に襲いかかった。直撃は免れた様だが、衝撃波は避けられず、俺達は吹き飛ばされる様に地面に墜落した。
☆ ☆ ☆
「ぐ、がぁぁ、ぁあ・・・!」
何だ、今のは・・・!?直撃はしていなかったのに、この威力・・・!まるで全身を滅多打ちにされたかのような痛みが俺を襲う。
「お前ら・・・無事か・・・!?」
痛みを堪え、何とか声を出す。偶然にも俺達3人とポケモン3体は近くに墜落したようだが、どいつも俺と同じくピクリとも動こうとしねぇ・・・!
「・・・けほっ!・・・はぁ、はぁ・・・」
「う・・痛ぅっ!!・・・はっ!」
何とか生きてはいるみたいだが、ダメージは大きいみたいだ。ポケモン達も瀕死状態だし、他のポケモンを出そうにも、腕どころか指先一つ動かせねぇ・・・!
「おぉ~おぉ~、支部長に《ピジョット》の〝ゴッドバード〟を食らって生きてるよぉ」
「狙いが甘かったな。まだまだ調整が必要だ」
そう言って、呑気な会話が聞こえてくる。地面に横たわったまま見上げてみると、サンゾウとルーファスが近づいて来た。傍らには大型の鳥ポケモンだ。
「おい、テメェら・・・!ちょっと聞かせろ・・・!」
「今死ぬ君に、何を聞かせろと」
「いいじゃねぇっすか、冥土の土産にさぁ~」
意外な事に、サンゾウが俺の意見を取り入れた。冥土の土産は余計だが、今はそんな事を気にしている場合ではない。どうしても聞いておかなきゃならない事がある。
「何で、俺達を・・・狙うんだ・・・!?」
「言ったはずだ。我々の秘密を知ったのなら生かしてはおけないと」
「でもテメェ・・・協会の、偉い奴なんだろ・・・!俺達が協会にチクったとしても・・・・悪戯だって、済まされちまうぞ・・・!」
「しかしそれも絶対ではない。僅かな危険の可能性がある限り、極力排除せねばならん」
まだだ。まだ、時間が要る。
「テメェは・・・何が目的なんだ・・・!」
「・・・・・・最愛の人、エリーを蘇らせる事だ」
ルーファスは絞り出すようにそう呟いた。
「あの小部屋の写真立てを見たのだろう?あれに私と一緒に写っていた女性こそがエリーだ。そこに倒れているアクアマリンと同じ容姿をしたな」
話の内容から、写真の女がもう死んじまったという事が理解できる。だが今はどうでもいい、問題なのはルーファスがアクアマリンと呼んだ少女、アリアの事だ。
「送り火山で、黒い化け物と戦ったかね?」
送り火山の黒い化け物。覚えている。やっぱりこいつらがあれに関与していたのか!
「私はエリーを蘇らせるためにありとあらゆる方法を試してみた。そして最終的に辿り着いたのが、クローン技術だ。あれはクローンの研究の一環として生まれた副産物だ。ただし、凶暴な上に人間ともポケモンともつかない異形となった完全なる失敗作だがね」
「おい・・・!まさか・・・・!!」
「そう、アクアマリンはエリーの遺伝子情報から生まれたクローンだ」
ルーファスは、余りにもアッサリとそう呟いた。
「クローン技術の観点から見れば、アクアマリンは完全な成功例だったよ。問題となっていた短命もクリアし、脳や生殖器、その他の臓器や骨格、筋肉も殆ど健康な人間と何ら変わりがないほどだ」
そこで少し区切って、再び喋り出した。
「だが私にとっては失敗作だったよ」
・・・なんだと?
「いかに人間に近い体を持っていたとしても、生まれたクローンにはエリーの人格も無ければ私との思い出も無いのだからね。そんな当たり前の事を今更気付いたんだ」
こいつ、今何て言った?
「しかしここで殺処分してしまえば、ただコストが掛っただけとなる。故に有効活用の手を考えた。それがポケモン図鑑の奪取だ。全国的ポケモン研究の権威、オーキド博士が作った未公開の品だとすれば、闇ルートで高値で販売できるからね。失敗すれば、《自動消去機能》、つまるところ、エスパーポケモンによる催眠誘導で、失敗時には自殺するようにしていた。君達も見たのではないかね?あの化け物が白い塵となって消えていく所を。アクアマリンもあのように消えるように出来ている。それが作られた命の末路だ。これなら証拠も残さず、死体処理の手間も無い」
《自動消去機能》?何だよ、それ・・・!
「まぁ、どういう訳かそれは発動しなかったがね。だからこうして、私がわざわざ抹殺に来たという訳だ。まったく、本当に使えない『道具』だよ、あれは」
その言葉を聞いた途端、俺の頭の中で何かが切れた。
「ナツ!!」
俺はポケットに仕込んでいた〝げんきのかけら〟を取り出し、親指と人差し指で弾く。狙いは俺の横で横たわっていたナツだ。〝げんきのかけら〟は狙い通りにナツの口の中に吸い込まれ、見る見る内に活力を取り戻していく。
「これはぁ、してやられたねぇ~。さっきまでの会話は体を動かす為の体力を回復させる為かい~?なかなか強かに育ったじゃねぇの~」
確かにそれもある。だけど、それだけじゃない。これだけは言わなければならない。
「・・・・・なんかじゃ、ねぇ・・・!」
「ん?」
初めてアリアと話した夜。帰る場所が解らないと言ったアリアの瞳は揺らいでいた。
「あいつは・・・道具なんかじゃねぇ・・・!」
一緒に家を探すと提案し、差し出した手を握ってくれた。
「道具じゃ無ければ何だというのだね?」
俺は腕を使って上半身を上げる。体は痛みで悲鳴を上げていたが、構うものか。
「あいつは、努力家で・・・!」
俺は知っている。あいつは暇さえあれば色んな雑誌や辞書を呼んで世間の勉強をしていた。俺が常識ないって言ったら、ちょっと怒って言い返してたっけ。
「不器用で、空気が読めなくて・・・!」
スズナという、初めての女友達が出来た。
「でも、あいつはもう、人やポケモンの苦しみを理解してやれる・・・!」
送り火山でチリーンの気持ちを察してやって、懐かれた事。
何も言えずに罵倒されるターコイズを思って怒りを露わにした事。
「今はもう、お前等の道具の『アクアマリン』じゃねぇ・・・!」
船の上の戦いで、諦めかけた俺に、自分なりの激励を飛ばした事。
「あいつは俺の、俺達の仲間の・・・・・『アリア』だ!!」
手を膝について、一気に立ち上がる!!
ここで立ち上がらなくて、何が仲間か。ここで怒らなくて、何が仲間か!
「ぐぅぅぅ・・・!ガーネット・・・!アリア・・・!!」
ターコイズも体の痛みに耐えながら無理矢理起きようとする。しかし力が入らないのか、立てば崩れるの繰り返しだ。それでもいいと、俺は思う。ターコイズも同じ気持ちでいてくれたのなら。
「行けるか・・・?ナツ・・・!!」
俺は隣で浮かぶナツに目線を向ける。ナツはボロボロの体で力強く頷いてくれた。
「話は終わりかね?ならばそろそろ消えて貰おう。〝はかいこうせん〟!」
ピジョットに口から放たれたのは、圧倒的な破壊の力を秘めた光。それは地面と空気を抉りながら一直線に俺に向かってきた。
「貫けぇぇっ!!〝りゅうのいぶき〟!!」
俺は技の性能も忘れ、無我夢中に叫んだ!しかし放たれたソレは、何時もとは比べ物にならない程に強烈な風。ドラゴンタイプこそが最強と言われる息吹だった。
息吹と光線はぶつかり合い、バァァァンと、大きな音を立てて弾けた。
「ほぉ~、これはぁ~」
「バカな・・・!たかだか〝りゅうのいぶき〟で、〝はかいこうせん〟を弾いたと言うのか・・・!ありえん・・・!いくら品種改良したポケモンだからといって・・・!」
信じられない様な物を見たという顔で、呆然とするルーファス。
「やはり、君は確実に始末しなければならないようだね。サクラの息子なら尚更だ」
・・・ちょっと待て。今、信じられない単語が聞こえたぞ・・・!?
「何でテメェが母さんの名前を知ってやがる・・・!」
サクラ。それが俺の母さんの名前だ。何でこいつが知ってやがる・・・!!
「ふむ。やはり君はサクラの息子だったか。君の抹殺は、今回の件が始まる前、君が生まれるよりも前、サクラが我々を裏切った時から決まっていたのだよ」
一瞬、頭の中が真っ白になった。裏切った?それってつまり・・・。
「ガーネットのお母さんは、あなた達の仲間だった・・・?」
何とか声を出せるまで回復したターコイズが、そう質問した。
「彼女は実に優秀な研究員だったよ。狂気的な知的探究心を満たす為なら、生命をも単位と数字に置き換えて、一切の慈悲無く実験台にする」
ルーファスが語る母さんは、俺の知っている母さんとは正反対のものだった。
「そしてガーネット君。君もまたクローン研究の被験者なのだよ」
「どう言う、事だ・・・!?」
「私はクローン研究の一環として、人工授精のサンプルを入手しようした。卵子提供者の名前は、サクラ。君の母親だ。そして、精子提供者はこの私だ」
「なっ!!?」
「つまり、私は君の父親でもあるのだよ」
そんな馬鹿な!?目の前に居るルーファスが、俺の父だと言うのか!?
「まぁそんな事は私にとっては些事でしかない。問題なのは、何を思ったのかサクラは君を産んでしばらくすると、研究所を脱走。無論情報の漏洩を防ぐため、刺客を送り込んだが手掛かりが無いまま11年が経過し、ようやく君を見つけたという事さ」
そんな言葉を聞いていると、幾らか分かって来た事がある。何で母さんがそんな事をしたかは分からない。でも確かなのは、母さんはあの男に追い詰められていたんだ。こいつが放った刺客から逃げる為に、逃げて逃げてブラックシティまで追い詰められて、衰弱したんだ。
何で母さんがあの町から出なかったのか、それは・・・!
「お前等の仕業だったのかぁぁぁぁぁ!!!」
俺は怒りにまかせて突撃する!あの澄ました顔をぶん殴ってやらない時が済まない!
「待って・・・!ガーネット!!」
「ふん。今度こそ止めを刺してあげよう。〝はかいこうせん〟!!」
光線が、俺を貫かんと迫る。
「それがどうしたぁぁぁぁぁぁ!!」
「カイリュー〝はかいこうせん〟!!」
ピジョットが放った光線は、上空から放たれた光線にぶつかり、相殺された。俺は空を見上げる。そこに居たのは、力強く、巨大な体躯のドラゴンポケモン《カイリュー》だ
そしてその背中に乗るのはベレー帽と黒のコートを着用した、鋭い眼光の老人。
知っている。この6年間、どれだけ一緒に過ごしてきたか・・・。
「ガーネット、私は教えたはずだ。いかなる状況においても冷静さを欠いてはならないと」
そしてこんな状況でも聞き慣れたお説教。間違いない、奴だ!
ホウエン四天王の一角にして、最強のドラゴン使い。
「ゲンジ・・・!」
俺の育ての親、ゲンジだった。
「まさか、あなたほどの男が現れるとは思いませんでしたよ」
「こりゃ~、時間を掛け過ぎたかねぇ」
ゲンジの姿を見て、サンゾウとルーファスは戦慄する。それはゲンジの実力がそれほどのものであるという証だった。カイリューはゲンジを乗せたまま降下してきた。
「何時から我々にお気付きに?」
「キナ臭いと思っていたのはもう7年も前からだ。そしてつい先日、ズイタウン付近で頻繁な目撃情報が寄せられたのでな」
7年前?目撃情報?何の事だ?
「さぁて、オレっち達と戦うのかぁい?」
「止めておけ、サンゾウ。私もお前もタダじゃ済まない。まぁ、それは向こうも同じだが」
好戦的な雰囲気を醸し出すサンゾウを制し、ルーファスはゲンジに向き直る。
「如何でしょうゲンジ殿、ここは両者ともに退くというのは」
「この絶好の機会、逃がすとでも思うたか?」
「ええ、思いませんな。その3人が居なければですが」
そう言って俺、アリア、ターコイズを見渡す。そうか・・・!戦闘になれば、俺達がその場に居るだけで不利になるのか・・・!動けない分、人質にも出来るしな。
「・・・・・・いいだろう」
「ご理解いただき、感謝いたします」
そう言って一礼してから、サンゾウとルーファスはピジョットに乗って飛んで行った。
そしてゲンジは、フゥと、小さく溜息をついて俺の方を向く。
「どういう事か、説明してもらうぞ。ガーネット」
「そりゃこっちの台詞だジジィ」
まさかの超展開・・・!
ストーリー読んでたら展開が予想できてた人いるんじゃないですかね?