VSサザンドラ
「手持ちを6体揃える?」
ゲンジの修業を受ける初日、初めに言ってきた事はそれだった。
「そうだ。敵はアルティア家、お前達の手持ちは4~5体、それではあまりに心許ない。最低でも6体全て揃えて、連携を確立させる」
「確かに、仲間を多い方がいいよね」
「・・・ですが、何処で捕獲するのですか?周囲に生息しているポケモンでは、育てるのに時間が掛ると思いますけど」
「今回は修業も兼ねて、ある場所で捕獲してもらう。とにかくカイリューに乗れ」
そう言って、ボールからカイリューを繰り出すゲンジ。面白ぇ、どうせゲンジの事だからとんでもない場所で修業させようってんだろうな。
「ちょいと待ちな」
カイリューに乗ろうとした所で、後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、そこには育て屋の老夫婦だ。手には丸い何かを持っている。
「ゲンジから話は聞いた。だったらこれを持って行きな」
「何ですか?これ」
老夫婦が持っていた丸いものを、ターコイズが受け取る。
「ポケモンの卵じゃ」
「卵ぉ!?」
「きっと、お前さん等の力になってくれる。持って行きなさい」
「でも、良いんですか?この卵の親が居るんですよね?」
「構わん構わん。預かっていたポケモンを一緒にしてたら、偶然見つけた物での。そのポケモンのトレーナーに話したら、是非貰ってくれと言われたものじゃ。なら、今から戦いに赴く若者に渡すにもいいじゃろ。その代わり、しっかり育てるのじゃぞ?」
「はい!」
その卵の親はターコイズに決まったようだ。まぁ俺が持ってたら卵を割るかもしれないしな。
「準備は出来たか?なら、出発するぞ」
☆ ☆ ☆
「ガーネット、僕もう帰りたいんだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
正面にそびえ立つ、雲を突き破る巨大な山々。辺りの枯れ木からは《ヤミカラス》の鳴き声が響き渡るとてつもなく不気味な山。立て看板にはこう書いてあった
『親から貰った命を粗末にしてはいけません。
この場所はジムリーダー以上の役職の者の許可が無ければ立ち入り禁止です。
シロガネ山管理委員会』
生命保険対象外区域にして、世界行きたく無い場所ランキングワースト5。
極めて強力な野生ポケモンが蔓延るシロガネ山の前に俺達は来ていた。
「まさかとは思うけど、ここで修業する訳じゃ」
「ここで修業をする」
「「ぎゃーーーーーーーー!!!」」
正気かこのジジィ!!ルーファスと戦う前にここで死ぬわ!!
「修行に当てられる時間は短い。手っ取り早く強くなるには、自分よりも強いものと闘う事だ。無論ポケモンの捕獲も此処で行う」
理屈は分かる、分かるけども!今までのスパルタを遙かに超えるものがあるぞ!
「まずはポケモンを一体出せ。初めに私とのバトルだ。交代は認めよう」
そう言ってゲンジはポケモンを繰り出す。現れたのは頭が3つあるドラゴンポケモン《サザンドラ》だ。俺達もボールを取り出す。
「頼むぞ、ナツ!」
「・・・ピカチュウ」
「頑張って、ジャック!」
対峙する3体と1体。見ただけで分かる実力差と、体の大きさも相まってその光景は巨像と蟻の対決にも見えた。
「3対1で構わん。私が使うのはこのサザンドラだけだ」
言ってくれる・・・!ならこっちから行かせてもらう!!
「ナツ、〝りゅうのいぶき〟!!」
「ピカチュウ、〝エレキボール〟」
強烈な息吹と球状の電撃がサザンドラに迫るが、
「サザンドラ〝トライアタック〟!」
サザンドラの三つの口から放たれた電撃、炎、冷気がナツとピカチュウの攻撃を相殺する!その影響で小さな爆発が起こり、辺りは煙に包まれた。
「もう一度〝トライアタック〟だ!」
煙の中から再び3つの攻撃が放たれる。狙いは冷気をナツに、炎はジャノビーに、電撃はピカチュウに目掛けて発射された!明確な指示も無しにこれだけ狙って攻撃できるとは・・・!
「ジャック〝ひかりのかべ〟!!」
サザンドラの攻撃が命中する直前、それぞれのポケモンの目の前に光の壁が展開される。攻撃が着弾するのと同時に、光の壁は砕け散った!
「〝りゅうのはどう〟!!」
サザンドラの口から圧倒的なエネルギーが放出される!あれを食らったらお終いだ!
「〝りゅうのいぶき〟で弾きかえせ!!」
ナツの口から強烈な息吹が放たれ、〝りゅうのはどう〟とぶつかり合う!威力は僅かに向こうの方が上の様だが、今回は打ち勝つのではなく、弾くのが目的だ。結果、息吹は掻き消されたがエネルギーを明後日の方向へ逸らす事が出来た。
「続けざまにもう一丁〝りゅうのいぶき〟!!」
「ジャック〝はっぱカッター〟!!」
強烈な息吹と、幾つもの葉の刃がサザンドラに迫る!
「サザンドラ〝おいかぜ〟!!」
自分に対して追い風を発生させる事で、素早さを急上昇させる技、〝おいかぜ〟。それはつまり、正面で対峙ている俺達には向かい風になるという事。
その強烈な風により、息吹と葉の刃の軌道は大きく逸れてしまう。くっ!まさかこんな使い方があるなんて!
「こんな風じゃ、遠距離攻撃が狙えない・・・!」
「クソッタレがぁ・・・!」
俺達が追い風に四苦八苦している時、アリアはピカチュウの隣にしゃがんで、ジッとサザンドラを見つめていた。その人差し指は忙しなく何かを追っていた。あいつ、何を・・・?
「む?サザンドラ!」
アリアの異変に気付いたのか、ゲンジは標的をアリアに変える。
「不味い!このままだと・・・!」
「させるかぁ!!ナツ!!」
俺の指示を受け、ナツはサザンドラに向かって行く。間に合え・・・!
「〝かえんほうしゃ〟!」
「〝とんぼがえり〟!!」
サザンドラの口から強烈な炎が発射されるのと同時に、ナツがサザンドラの胴体にタックルをかまし、すぐさま俺の所に戻ってくる!それによりサザンドラの体は傾き、炎の軌道はピカチュウとアリアから逸れた。何とか間に合ったみたいだ。
「ピカチュウ〝10まんボルト〟」
すぐさまピカチュウが強烈な電撃を放つ!〝おいかぜ〟により速度が上がったサザンドラは素早く右に避けたが、
「む」
電撃はサザンドラを追う様に右に曲がり、サザンドラに直撃する!まるでサザンドラの〝おいかぜ〟を操ったかのように。
「この風の中でよく・・・!」
「俺達も負けていられねぇ!行くぞ!」
俺とターコイズが指示を出すべく、口を開いた。
「ガーネット、アリア!上だ!!」
その瞬間、天から無数の光弾が俺達の手持ち3体に降り注いだ。
「ぐおぉぉ!!?」
「・・・っ!」
「くっ!ジャック〝ひかりのかべ〟!!」
ジャノビーが俺達を守るべく、巨大な光の壁をまるで天井の様に真上に形成するも、降り注ぐ光弾の圧倒的な質量に光の壁は完膚なきまで破壊される!!
そのまま光弾を浴びたナツとピカチュウ、ジャノビーは戦闘不能になってしまった。
「さぁ、次のポケモンを出せ。今日の修業はまだ終わっていない」
俺達の地獄は、ここから始まった。
☆ ☆ ☆
「おい、生きてるか・・・?お前等」
「・・・無事とは、言えません。ターコイズは、気絶したようです」
「・・・・・・・(チーン)」
結局あの後は、サザンドラ一体に俺達のポケモンは全滅させられ、俺達3人も満身創痍で地面に倒れ伏していた。それに引き換え、ジジィは傷どころか汗一つ掻いて無い。人間かこのジジィ?
「全体的な総合能力の差と、状況判断の甘さが招いた結果だな(ゲシッ)」
「ハゴッ!!?」
ゲンジはターコイズの頭を軽く蹴って起こす。俺達はそのままの体勢でゲンジの話を聞いていた。姿勢を正せとか、はっきり言って無理。
「初戦でお前達のポケモンを戦闘不能にしたのは、戦闘中に生じた煙に紛れて上空に向かって放った〝きあいだま〟だ。落下までの時間差を利用したのだ」
「それに気付かなかった俺達は、何も出来ないままやられたって訳か」
「だが、お前達にはそれぞれ優れているものがあるという事が分かった」
「え?」
珍しいな、ジジィが人を褒めるなんて。
「まずはガーネット。お前達は防御や補助は成っていないが、その代わり攻撃の威力には目を瞠るものがある。お前はあの時煙で気付かなかったかもしれないが、サザンドラの〝トライアタック〟はピカチュウの〝エレキボール〟は簡単に貫いたが、ビブラーバの〝りゅうのいぶき〟で貫かれてしまっている」
「え?マジで!?」
「更には〝りゅうのはどう〟の威力を殆どを削り、〝とんぼがえり〟でサザンドラを怯ませることまでやってのけた。そのLv,のポケモンの攻撃なら微動だにしないはずなのにな。それは他のポケモン達も同様だ。つまりお前のチームは、装甲の無い戦車の様なチームだという事だ」
「それただの大砲だからな?」
褒めてんのか貶してんのかハッキリしてほしい。
「次にアリア。お前達の基礎能力は並だ。だがその類稀なる射撃の才を用いて、技を外さない事がお前の能力だ。〝おいかぜ〟によって速度の上がったサザンドラに真っ先に攻撃を当てた事。加えて強い向かい風の軌道を読み、サザンドラの動きを読み、攻撃を曲げられながらも当てた事は驚嘆に値する」
「・・・命中率の高さですか」
「最後にターコイズ。お前達は敵を倒す決定打に欠けているものの、その高い危険察知能力と防御能力が特徴のチームだ。この試合でも、ガーネットやアリアのポケモンが倒れないように、〝リフレクター〟や〝ひかりのかべ〟を複数同時に展開、状態異常を防ぐ〝しんぴのまもり〟やステータス低下を防ぐ〝しろいきり〟の使いどころも良かった。全滅の時間を稼ぎ続けたのはターコイズの功績だ」
「どうも、ありがとうございます・・・。」
「それらを踏まえたうえで、今後の修業な内容を伝える」
目の鋭さを一層増して、そう呟くゲンジ。俺達は緊張から姿勢を正し、耳を傾ける。
「今から総合能力を上げても、奴らを倒す実力を付ける前にタイムリミットが訪れるだろう。奴等はそれほどまでに強い。故に、お前達の長所を徹底的に伸ばす方針でいく」
「そんでもって、ポケモンを6体揃えると」
「そうだ。先程も話した通り、時間は限られているので捕獲と修業は両立して行う」
「あの~、ちょっと質問なんですけど」
「言ってみろ」
「捕獲の時はゲンジさんは同伴してくれるんですか?」
「1人で捕獲するのも修業の内だ。時間も無いので今から捕獲に迎え」
「「なんだってーーーーー!!?」」
「・・・えー」
「私はここでベースキャンプを建てておく。初日なのでな、初めはゆっくりしておけ」
俺達の地獄はまだまだ続く様だ。
☆ ☆ ☆
「おかしいな。川の向こうに母さんが見える」
「・・・意識が、遠のいて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(チーン)」
その後、圧倒的に強い野生ポケモンに追い掛け回され、自分の分を超えた強い野生のポケモンを何とか捕獲して俺達はベースキャンプに戻って来た。
「よくぞ戻って来た。捕獲したポケモンを報告しろ(ゲシッ)」
「うぐっ!?」
意識を失ったターコイズの頭を再び蹴飛ばし、目を覚まさせるゲンジ。俺達は何とかボールを目の前に出し、ゲンジに見せつける。
「ガーネットは《ダーテング》、アリアは《ヘルガー》、ターコイズは《ラプラス》か」
「へへ、手持ち総動員して、4対1でボコボコにして、やったぜ」
「・・・危うく、山火事になる所、でした」
「・・・・・・・・・・・」←喋る気力もない。
「では、明日より修業を行うが、ガーネットだけはポケモンの捕獲をしてからだ」
「何で!?」
「いや、当然じゃないかな?」
そう言ったのは、体力が戻って来たターコイズだ。
「アリアはすでに5体いるから今回の捕獲で6体揃うでしょ?」
「じゃあお前は?」
「僕は今回捕獲したのと、この卵が孵ればそれで6体揃うし」
「何時孵るか分からねぇじゃん」
「いやいや、この卵なんだけど、貰った時から時々動いてるんだよね」
「・・・・ゑ?」
「多分産卵してから結構経ってるんだろうね。もうすぐ産まれるよ」
「そんな馬鹿な―――!!?」
「・・・ガーネット」
余りの出来事に呆然とする俺に話しかけたのはアリアだった。何か慰めの言葉でも掛けてくれるんだろうか?そう期待してると、とんでもない言葉を掛けてきやがった。
「・・・人は何時か死ぬものです。健闘を祈ります」
「イヤァーーーーーーーーーーー!!!」
俺の地獄は、明日も続く。
☆ ☆ ☆
キャラクターデータ
名前:ガーネット
年齢:11歳
性別:男
所持金:19749円
手持ちポケモン
ナツ/ビブラーバ ♂ Lv,38
メリー/モココ ♂ Lv,35
イヴ/グレイシア ♀ Lv,35
マー坊/マンキー ♂ Lv,33
ダン/ダーテング ♂ Lv,52
名前:アリア
外見年齢:10歳(実年齢:1歳)
性別:女
所持金:18321円
手持ちポケモン
ピカチュウ ♀ Lv,37
ムクバード ♂ Lv,34
サンド ♀ Lv,35
プロト―ガ ♂ Lv,32
チリーン ♀ Lv,31
ヘルガー ♀ Lv,54
名前:ターコイズ
年齢:11歳
性別:男
所持金:24530円
手持ちポケモン
ジャック/ジャノビー ♂ Lv,35
キャサリン/ぺリッパー ♀ Lv,34
ルージュ/ドンメル ♀ Lv,32
ライル/ドラピオン ♂ Lv,32
スズラン/ラプラス ♀ Lv,55
ポケモンの卵
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