ポケットモンスターSP 新たなる図鑑所有者   作:俺俺

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VSスターミー&レアコイル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマムシシティとハナダシティの間にある深い森の中。ゲンジと協会の調査によると、そこにアルティア家の総本山があるらしい。

シロガネ山を出発して2時間。徒歩とは比べ物にならない速度で、件の森に到達した俺達は上空からそれらしきものを探索していた。

 

「アリア、ターコイズ、見つかったか?」

「今のところは何も。でも貴族の家なら目立つと思うよ」

「そりゃショボイ家に住んでる貴族ってのも滑稽だろ」

「確かにね」

「寧ろちょっと見てみたい位だけどな!」

「僕その時になったら、我慢できずに噴き出すと思うよ」

 

決戦前だというのに、そんなくだらない談笑で盛り上がる俺達。変に緊張する事は無いし、緊張は焦りに繋がりかねない。ターコイズもそれが分かっていて話を盛り上げているんだろう。

 

「・・・見つけました」

「お!何処だ?」

「・・・こちらです」

 

その時、アリアがそれらしき物を見つけたみたいだ。先行するアリアのムクホークに付いて行き、数秒飛び続けるとそれは見えた。

 

「デカっ!?」

 

そこに見えたのは洋風の大きな館。いや、城と言っても良いかもしてない。窓の数を見る限り恐らく4階建てで、敷地の庭は国立公園ほどの大きさだ。

 

「いよいよだね」

「あぁ。この旅の最後の戦いだ」

「もう逃げたっていうオチは無いよね」

「・・・それは大丈夫です」

「あん?」

「・・・今、窓の影に人が見えました」

「良く見えたね・・・」

「つまり、まだ情報漏れの可能性があるから、ルーファスも残ってるってことか」

「とにかく降りよう。キャサリン!」

「・・・正門は閉まっているようです」

「なら庭に降りるぞ、ナツ!」

 

それぞれのポケモンに指示を出し、地面に着地する。俺達はポケモンの背中から飛び降り、モンスターボールの中に戻した。

 

「改めてみると大きいよね」

「近くで見ると余計にな」

「・・・この中に、ルーファスが」

 

高くそびえる屋敷を見上げて、俺達は歩みを進める。

 

「とにかく中に入るぞ」

「あの正門から・・・・っ!?皆避けて!!」

「なっ!?」

「・・・!?」

 

屋敷の影から突然、電撃と水撃が俺達に襲いかかる!何とか後方に跳んで回避するが、この問答無用にトレーナーを狙う攻撃。いきなり敵襲か!?

 

「まさか本当に来るとはな。ターコイズ」

「本当に。呆れを通り越して感心するわ」

 

現れたのは星の様な形をしたポケモン《スターミー》と、体に磁石を取り付けたポケモン《レアコイル》。そしてそれらを従える黄土色の髪の男と赤い髪の女。

 

「タツヒコ!ユキ!」

「コトブキで会ったいけすかねぇ奴!!」

 

ターコイズの幼馴染で、派遣部の候補生のタツヒコとユキだ!

 

「それはそうと、そこの茶髪の男!前は良くもやってくれたな!!」

「そこの藍色の女もよ!私達を誰だと思ってやっているのよ!?」

「アリア、俺達なんかしたっけ?」

「・・・???」

「惚けてんじゃねぇよ!!僕の顔を殴っただろ!!?」

「私は木の実をぶつけられたわ!!」

 

あー、何かそんな事もあったような気が・・・。

 

「あの時の借り、きっちり返してやる!!スターミー!!」

「行くのよ、レアコイル!!」

「ちっ!!」

 

どうやらこいつらは足止め役と言う事か!ターコイズの話によると、こいつらはエリートトレーナーだ。こんな所で時間を掛ける訳には・・・!

 

「ジャック〝にらみつける〟!!」

 

ターコイズはポケモンを繰り出し、技を指示する。現れたのは通常とは違う体色のポケモン。青い葉に体を包んだ蛇の様なポケモン。ジャノビーの進化形《ジャローダ》だ。

 

「な、何よ、これ!?」

「体が、動かない!?」

 

タツヒコとユキは、突然の体の硬直に戸惑っている。ジャローダはその眼差しだけで相手の体を委縮させ、動けなくしてしまうポケモンだ。

俺達はその隙に玄関まで走り、扉を開けた。

 

「させるかぁ!!〝れいとうビーム〟!!」

「〝でんけきは〟!!」

 

一筋の冷気と、高速の電撃が俺達に迫る!やっぱり戦わなきゃ駄目か!

 

「〝ひかりのかべ〟!」

 

正面に光の壁が展開し、冷気と電撃を受け止める。

 

「行け、マー「ジャック〝リフレクター〟!!」

 

俺がマー坊を繰り出そうとした瞬間だった。ジャローダは玄関の内に居る俺とアリアの2人と、玄関の外に居るターコイズを遮る様に透明の壁を展開した。

 

「おい!何のつもりだ、ターコイズ!!」

「ガーネット、アリア、よく聞いて」

 

慌てる俺の声とは裏腹に、ターコイズの声は穏やかだった。

 

「ルーファスは今にも飛んで逃げる。ただでさえこの広い屋敷の中を探し回らなきゃいけないのに、この2人を相手にしていたら間に合わなくなる。そうなれば、この作戦は失敗する」

「・・・ターコイズ」

「ここでルーファスを逃がせば、僕達はまた命を狙われる恐怖に晒され続ける事になる。だから今、ここでルーファスを倒すんだ!」

 

こうやって話している間にも、タツヒコとユキは攻撃を仕掛けている。俺達と話をしている暇は、今のターコイズには無い。

 

「スズラン〝ふぶき〟」

 

ターコイズは新たに繰り出したラプラスは、〝リフレクター〟の壁に向かって極寒の吹雪を吐き出した。〝ひかりのかべ〟と違い、特殊攻撃を防ぐ力が無い透明の壁はどんどん氷で覆われて行く。まるで俺達とターコイズを隔てる様に、通路に氷の壁を作り出した。

 

「ターコイズ、お前勝てるんだろうな?」

 

そんな俺の呼びかけは、この分厚い氷の壁に遮られターコイズには聞こえないだろう。だがターコイズは、氷の壁越しだが、確かに腕を上げ、親指を天に突き上げた。

 

「・・・ガーネット、行きましょう」

「あぁ、分かっている・・・!」

 

俺達は振り返らず、通路を真っ直ぐに駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!!本当に広いな、ここは!!」

「・・・突入から既に20分経過しています」

 

俺達は今、ルーファスを探して屋敷の中を走り回っていた。すでに1階から4階まで走ったが、まるで見当たらない。ターコイズの咄嗟の判断は正しかったな。あの2人を相手にする時間は、確かに無い。

 

「また一階に戻ってきちまったな。もう一回探すぞ!!」

「・・・しかし、人が一人もいないですね」

「ゲンジと話だと、関係者全員を逃がしてからルーファスも逃げるらしいからな。おかげで騒ぎにならなくて済んだぜ」

 

しかし、それは同時にルーファスは間もなく逃げることを意味していた。

 

「・・・ガーネット、あの扉は」

 

アリアが指を指した方向、それは俺達がまだ入っていない扉だ。

 

「ナイスだアリア!!」

 

俺はその扉を勢い良く開ける。それと同時に、ライトに照らされた淡い光と、プールとかにある塩素のような臭いが漂ってきた。

 

「何だここ?」

「・・・水?」

 

巨大な水槽の上に狭い鉄板の通路が張りめぐされ、要所要所に転落防止用の手すりが備え付けられている大きな部屋だった。

 

「ここはぁ~ホルマリンプールさぁ~。出来上がったクローンを入れておく所なんだけどねぇ、今はもう、ぜ~んぶ片付けちまったからぁ、見せられねぇぞ~」

 

部屋の奥から聞こえる、この聴き覚えのある口調。今度はお前か!!

 

「サンゾウ!!」

「オレっちの名前を覚えたのかぁい?いや~感心感心」

 

やっちまった。まさかこいつと闘う事になるとは!

 

「あぁ~、そうそう。支部長はぁ~この向こうだよぉ」

 

そう言って、奥にある通路を指差すサンゾウ。

 

「・・・どういうつもりですか?わざわざルーファスの場所を教えるなんて」

「いや~、お前さん達ぃ、オレっちと闘うんじゃなくてぇ、支部長を倒しに来たんだろぉ~?だからわざわざ教えてやったんじゃねぇの~」

「・・・?」

 

やっぱり目的はバレていたか。でもサンゾウの言っている事の意味が分からない。

 

「だから、何でそんなこと教えるんだよ!!?」

「支部長が居る場所へ続く唯一の通路がこれでねぇ、オレっちは此処の門番を任された訳よ。でも、オレっちはそれ以上にぃ、お前さん達と闘いたくてね~」

 

次の瞬間、胃が縮み上がる様な感覚に襲われた。シロガネ山の修業で覚えた、あの感覚。圧倒的な強者が放つ殺意を、サンゾウは発していた。

 

「あの船の戦いからぁ、ずぅっと続きがしたいとぉ、思っていた訳よ。オレっちは見抜いてたよぉ、お前さん達のぉトレーナーとしての素質をぉ。お前さん達とならぁ、今までに感じた事の無い刹那のスリルが味わえるってねぇ」

「なるほどな。ルーファスがその先に居るって教えといて、俺達の本気以上の火事場の馬鹿力を引き出そうとしてたって訳か・・・!」

 

今分かった。こいつは生粋のバトルジャンキーだ。何事よりも命のやりとりを求める、戦いの炎に飲み込まれた者が行きつく場所に、サンゾウはいる。

 

「あの金髪の兄ちゃんがぁ、足止め役と闘っているのはぁ、残念無念だけどねぇ、まぁ、2人でも十分楽しめるかぁ。そんじゃ早く始めようかねぇ。時間が無いよぉ?」

「・・・いいえ、ルーファスが逃げるまでには間に合います」

「アリア・・・?」

 

アリアはその漆黒の瞳で俺を見上げて、そして真っ直ぐにサンゾウを見る。

 

「・・・サンゾウ。私と一対一のバトルです。ガーネットはその間にルーファスの所へ行ってください。そうすれば、間に合います」

「アリア!?」

「おいおいぃ、あれから多少強くなったとしてもぉ、あの差がそう簡単に埋まると思ってんのかい~?あんまり甘く見られちゃ~困るねぇ」

「・・・その為に修業しました」

「修業~?・・・・・・ハッ。アハハハハハハハハハハ!!いいねぇ!!やろうかぁ!!お望みどおりぃ、その兄ちゃんは通してやるよぉ!!」

 

サンゾウの雰囲気が明らかに変わる。戦闘本能を剥き出しにし、なおかつ冷静さを失っていない。ゲンジから聞いた、厄介な相手の一例だ。

 

「おい、アリア!」

「・・・さっき言った通りです。ターコイズも言っていましたよ、ここでルーファスを逃がす訳にはいきません。必ず倒さねばならないと」

「でもな!」

「・・・ガーネット」

 

アリアは、相変わらず感情の起伏を感じさせない、だけど穏やかな声で俺の名を呼ぶ。

 

「・・・約束を増やしても良いですか?」

 

約束。もちろん覚えている。それは、この戦いが終わればアリアのやりたい事を一緒に探すという、あの夜に誓った約束だ。

 

「・・・私はここでサンゾウを倒します。ガーネットは、ルーファスを倒してください」

 

それだけ言って、アリアは俺に小指を差し出した。

 

「・・・前にスズナに教えて貰いました。指切りと言うものをしながら約束すると、その約束を破った時に、〝ニードルアーム〟の針を千本飲み込まなければならないそうです」

 

こんな状況なのに、アリアは酷く子供じみた事を言う。だけど・・・。

 

「・・・私はそんな物飲み込みたくありませんから、絶対に負けません」

「俺だったそんな物飲み込みたくないっての」

 

俺は導かれる様に、自分の小指でアリアの小指を絡める。これで約束は成立した。これで勝たなければ、針千本飲まなければならなくなった。

 

「お前、これで負けたらマジで針千本飲ますからな」

「・・・問題ありません。必ず勝利します。ガーネットも負けたら」

「負けねぇよ。・・・まぁ、ルーファスは任せろ」

 

そう言って、俺はアリアに背を向けて走り出す。

ほんの一カ月と少しの間。それでも、俺達の間には確かな信頼を感じた。ターコイズやポケモン達、そしてアリアの未来を背負い、狭い鉄板の通路を駆け抜ける。

だからこれ以上の言葉は要らない。

 

『絶対に負けない』

 

その言葉だけで十分だ。それ以上の言葉はこの戦いが終わってから好きなだけ言えばいい。

俺とアリアのやりとりを見守っていたサンゾウを横切り、俺は通路の奥へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一本道の通路をひたすら走り続ける。

旅に出た日の俺は、こんな事になる事を予想していただろうか?

いや、そんな事は全く知らずに、今頃カントー地方の名所巡りをしていたに違いない。呑気に気楽に気の赴くままに、楽しい旅をしていた筈だ。

 

「まったく、アリアめ」

 

もし、アリアと出会わなければ。

母の無念と祈りを、知る事が出来ただろうか?

腰のベルトに付けられたモンスターボールを見る。そこには、アリアと出会ったからこそ出会えた俺の仲間達が居る。

ターコイズとだって、アリアがあの時に首を突っ込んだのが出会いの始まりだった。

スズナとも、初めにアリアが友達になったからこそ、俺とターコイズも友達になれた。そうじゃ無かったら、顔見知り程度で終わっていたに違いない。

 

「あぁ、そうか」

 

俺は、アリアと出会えてよかったと思っているんだ。

アリアと出会っていなかった旅なんて、もう想像してもぼやけたイメージしか浮かばない位遠くなっていて、アリアとターコイズとの旅は、そんな旅とは比べ物にならない位楽しかったから。

だから、この出会いに感謝している。本当に夢のような日々だったから。

 

「なら、この先の未来を、絶対に終わらせやしねぇぞ」

 

そして遂に辿り着いた。ドアノブも無く、何処から開けたらいいのかも分からない巨大な防火扉に閉ざされたこの先に、ルーファスが居る。ここを通れば、もう後には引き返せない。父と息子の血を血で洗うような戦いが幕を開ける。

それでも俺はモンスターボールから手持ちを繰り出す。現れたのは、黄色い体に所どころ黒の縞模様の体を持つ、《デンリュウ》に進化したメリーだ。

 

「行くぞメリー!〝はかいこうせん〟!!」

 

メリーの口から放たれた極大の光線は防火扉に突き刺さる。光線は周囲の壁と大気に大きな震度と衝撃を与え続け、そのまま防火扉は弾ける様に吹き飛んだ。

 

「驚いたな。君は扉の開け方も知らないのかね?」

 

吹き飛ばされた扉に、さして驚いた様子もなく皮肉を飛ばす実の父。

あぁ、よく見てみるとやっぱり似ている。微妙に目つきの悪い所とか、顔の造形とか、コンプレックスの癖の強い茶髪とか。

 

「あんなどうやって開けたらいいかも分からん扉なんざ、あれで十分だっての」

「まぁ、あの扉を開けるにはカードキーと6桁の暗証番号を入力しなければならないからね。正攻法で君に開けられるはずもないのだが」

 

そんなくだらない会話を繰り広げる、俺とルーファス。

 

「しかし驚いたね。まさか君達の方から殺されに来たとは思わなかったよ。逃走した後はどうやって始末しようかと頭を悩ませていたところだ」

「ぬかせ。お前は今から地面に這いつくばって、床を舐める事になるんだよ!」

 

剣呑な会話を繰り広げる俺達の心に、冬の荒野が去来する。

決して解りあう事の無い、傷だらけの親子がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こういうシーンを書くのって難しい・・・。
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