13000文字以上だと・・・!?
ターコイズside
ガーネットとアリアは先に行った。ここから先は、僕一人の戦いになる。
「ターコイズ、お前、僕達2人と闘おうっていうのか?」
「落ちこぼれが、言うようなったじゃない・・・!」
相対するは、僕の幼馴染であるタツヒコとユキの2人。でも、戦う前に聞いておきたい事があった。それによって戦う理由が変わってくる。
「2人は、どうして此処に・・・?」
「どうして?決まってるだろ、ルーファス部長直々のご命令があったからさ!」
「部長のお屋敷に賊が侵入する可能性があるから、警備を仰せつかったのよ。まさか、あなた達だとは思わなかったけどね」
「つまり、それだけ僕達は部長から信頼されていると言う証!落ちこぼれであるターコイズなんかは目じゃなかったんだよ!!」
それだけ聞いて、大体の話が読めた。つまりルーファスが逃げるための足止めが、この2人の役割だと言う訳だ。でもそれが、犯罪者の逃亡の方棒を担わされているという事に、この2人は気付いていない。そしてそれを僕が説明しても、この2人は信じないという事も長年の付き合いで分かってしまう。
だからこそ、僕とポケモン達で、無理矢理にでも目を覚まさせなければならない。そうしなければ、2人は犯罪者の烙印を押されることになる。それが幼馴染としての、最後に出来る事だと僕は確信した。
氷の壁で閉ざされた、見えない通路の先に目を配る。この先に居る仲間の背を任されて、僕は此処に居る。僕がここで負ければ、タツヒコとユキは仲間を追いかけるに違いない。
だから、これは絶対に負ける訳にはいかない・・・!
「スズラン〝しろいきり〟!続けて〝しんぴのまもり〟!!」
スズランから放たれた白い霧と、淡い光のベールが僕達を包む。状態異常とステータス低下を防ぎ、こちらの守りをより強固なものとする。
「・・・っ!?」
でもここに来て、僕の足が震えだした・・・。何でかは、僕が一番よく知っている。2人は強い。そのプレッシャーに僕は押されているんだ。
「くっ!」
足を叩いて震えを止める。しっかりしろ、僕!何のために此処に残った!
ゲンジさんの修業でも言っていたじゃないか。怖いままでもいい。その恐怖を直感に変えて、バトルを有利に進めるのが、冷静なトレーナーの仕事だって。
「スターミー〝こうそくスピン〟!!」
「レアコイル〝10まんボルト〟!!」
レアコイルからは強力な電撃、スターミーは高速で回転しながら突撃してくる。狙いはスズランだ。この厄介な霧と光のベールを取り払おうとしているんだろう。
「ジャック〝リフレクター〟!〝ひかりのかべ〟!」
特殊と物理、それぞれの技を防ぐ壁を展開する。でもこの技にはある弱点がある。
「ターコイズ!お前は何時もその技に頼りすぎるから弱いんだよ!《ヘラクロス》!」
「いいわ!何度でも思い知らせてあげる!《ダゲキ》!」
レアコイルとスターミーを出したまま、新たなポケモンを繰り出す。固い甲殻に大きな角が特徴のポケモン、ヘラクロスと、青い体に道着を身に纏った人型のポケモン、ダゲキだ。
「〝かわらわり〟だ!」
「こっちも〝かわらわり〟よ!」
2体の格闘ポケモンの手刀が、光の壁と不可視の壁を打ち砕く。
〝ひかりのかべ〟や〝リフレクター〟などといった障壁を破壊する事に特化した技、〝かわらわり〟。僕は今までこの技の前に、この2人に負け続けて来た。
「今だ!〝10まんボルト〟!!」
「〝でんじほう〟よ!」
強烈な電撃と、大砲の様に撃ち出された電磁が僕達に迫る。あれを食らったら間違いなく戦闘不能になってしまうけど、もう簡単に食らう僕達じゃない!僕は新たなポケモンを繰り出す!
「ルージュ!!」
現れたのは赤い体毛に火山を背負ったポケモン《バクーダ》に進化したルージュだ。
ルージュはジャックとスズランの盾になる様にして立ちはだかり、電撃を受け止める。それでもルージュにダメージは無い。
「地面タイプのバクーダには電気は効かない!だったら〝ハイドロポンプ〟!」
「〝ひかりのかべ〟!!」
スターミーから放たれた水砲を、光の壁を展開して受け止める!
「またそれ?いい加減無駄だって理解しなさいよ!〝かわらわり〟!!」
ダゲキの主刀が光の壁を粉砕する!これでルージュを守るものは無くなった。
「良いぞユキ!スターミーもう一度”ハイドロポンプ〟!!」
「させない!ジャック〝つるのムチ〟!」
ジャックから伸びた蔓の鞭で一番近くに居たダゲキを縛り、再びルージュに放たれた水砲の前に持っていく。水砲はそのままダゲキに直撃した!
「ダゲキ!?」
「まだ終わって無いよ!ジャック!」
以心伝心。僕の呼びかけに反応したジャックは、そのままダゲキをヘラクロスに向かって投げつける!そのままダゲキ諸共倒れ込むヘラクロス。
「ヘラクロス!」
「ジャック〝ひかりのかべ〟!そしてルージュは〝ふんえん〟だ!!」
光の壁が僕達を守る様に展開すると、ルージュは辺りに爆炎を撒き散らして攻撃する!爆炎は光の壁に守られた僕達には届かず、タツヒコ達を飲み込んでいった。
「これなら・・・!」
〝ハイドロポンプ〟を受けたダゲキや、効果抜群のヘラクロスとレアコイルには決定的な大ダメージが与えられたはずだけど・・・。
「なっ!?」
次の瞬間、爆炎を突き破る様にしてヘラクロスが迫って来た!まさか、〝こらえる〟で耐えきったの!?そのまま一直線にこちらに向かって来る。その狙いは、ジャック!?
「ジャック、〝リフレクター〟!」
「無駄だ!ヘラクロス〝かわらわり〟から〝メガホーン〟だ!!」
展開された不可視の壁を粉砕し、そのままジャックに手刀を叩きこむ!そして流れるような動作で下から上へと、その大きな角で突き上げた!
強烈な虫タイプの技を受けて、堪らず倒れ伏すジャック。
「スズラン〝れいとうビーム〟!!」
スズランは冷気を一直線に放射して、ヘラクロスを凍て付かせる。これでヘラクロスも戦闘不能だけど、ジャックも戦闘不能に陥ってしまった。
「これで、頼みの綱であるジャローダは戦闘不能ね」
やがて爆炎で生じた煙が晴れて、敵の姿が露わになる。ダゲキは戦闘不能に陥り、スターミーはダメージが少ない。
「レアコイルは〝まもる〟を使ったようだね・・・!」
レアコイルは守りの態勢を取る事で、〝ふんえん〟のダメージを無効化している。これでこっちの手持ちポケモンは5体。相手が6体連れてきているのだとしたら、それぞれ残りポケモンは5体だ。
「お疲れ様、ジャック」
僕達はそれぞれ戦闘不能になったポケモンをボールに戻す。
「ターコイズにしては粘るじゃない!《マリルリ》!」
「スターミー〝こうそくスピン〟だ!!」
ユキは青色の兎の様なポケモン、マリルリを繰り出し、スターミーは体を高速回転させながら突撃してきた。僕もモンスターボールを取り出す!
「ライル!〝クロスポイズン〟だ!」
繰り出されたドラピオンのライルは、毒を纏った交差切りでスターミーを迎え撃った。
☆ ☆ ☆
アリアside
ガーネットを先に進ませたアリアは、今まさに敵の幹部と相対していた。敵の名はサンゾウ。かつてガーネット・アリア・ターコイズの3人がかりで運よく退けた敵である。
「それじゃぁ、早速始めようかねぇ!!《ザングース》ゥウ!!」
「《サンドパン》」
サンゾウが繰り出した白い体毛に鋭い爪が特徴のポケモン、ザングースに対し、アリアが繰り出したのは、背中から無数の針を生やし、ザングースにも負けない鋭い爪のポケモン、サンドパンだ。
「サンドパン〝つるぎのまい〟」
戦いの舞を踊る事で攻撃力を増大させる技〝つるぎのまい〟。離れたレベル差によるサンドパンの攻撃力と、ザングースの防御力の差を埋めるためだ。
「ハッハァー!ザングースゥ、〝インファイト〟ォ!!」
「〝まるくなる〟」
ザングースの拳の猛襲に対し、サンドパンは体を丸める事で棘付きのボールのような姿となる。そんな状態のサンドパンを殴りまくったザングースの拳は当然の如く傷付けられていくが、殴った衝撃は、防御力を上げた状態であっても防ぎきれずにサンドパンに大きなダメージを与える。
「〝ジャイロボール〟」
そのまま体を高速で回転させ、超至近距離からザングースにぶつかるサンドパン。打撃の衝撃だけではなく、棘による裂傷を与えつつザングースを弾き飛ばす。
「サンドパン〝ころがる〟」
体を丸めた状態で、ザングースに向かって転がって行くサンドパン。
今アリアとサンゾウが戦っているのは、クローン体保管用に作られた部屋一面の巨大なホルマリンプールだ。足場はプールの上に張り巡らされた手すりが備え付けられた狭い鉄の通路のみ。
故に泳げないサンドパンやザングースは通路の上でしか戦えないのだ。
サンドパンは棘をスパイク代わりにして加速度的に速度と威力を上げて突撃するが、ザングースは通路を曲がる事で回避した。
だがサンドパンは信じられない事に、ギギィと嫌な音を立てながら直角に通路を曲がり、ザングースに衝突する。攻撃を極限まで高めた攻撃に、ザングースは堪らずダウンした。
「おやぁ~?・・・・あぁ、そうかぁ!爪を使って軌道を無理矢理変えたかぁ!!」
一瞬不思議そうな顔をしたサンゾウだが、すぐに通路に刻み込まれた爪痕に気付く。
(・・・いきなり気付きましたか)
サンドパンの意表を突いた攻撃を一発で看破された事に、内心冷や汗を掻くアリアだが、何時もの無表情がそれを隠す。
「いいねぇ!!面白くなってきたよぉぉ!!ストライクゥ!!」
ザングースをボールに戻し、サンゾウが新たに繰り出したのは、かつて船の戦いでアリア達を苦しめたストライクだ。
「〝こうそくいどう〟からのぉ、〝きりさく〟ぅう!!」
目視できない程に速度を上げ、その鋭い鎌でサンドパンを切り裂くストライク。ザングースとの戦いで激しく消耗していたサンドパンは、そのまま戦闘不能になった。
「戻ってください、サンドパン。ヘルガー」
サンドパンをボールに戻し、新たにポケモンを繰り出すアリア。現れたのは黒い体毛の犬の様な体躯に、白い角が特徴のポケモン、ヘルガーだ。
「セオリー通りぃ、炎タイプで来たかぁい!!」
「・・・・・・・・・」
饒舌なサンゾウとは対照的に、あくまで寡黙を貫くアリア。ストライクは変わらず目視すら難しい速度移動していたが
「ヘルガー、〝かえんほうしゃ〟」
アリアが指を指したその先に、激しい炎を吐き出す。炎はストライクに直撃し、体に纏わりついてストライクの身を焦がす。
「ほぉ~!!まさかいきなり当ててくるとはぁ、棲様じい命中精度だねぇ!!」
「止めです。ヘルガー〝れんごく〟」
「させないよぉ!!〝シザークロス〟ゥ!!」
一瞬で間合いを詰め、ヘルガーの体を交差するように切りつけるのと、地獄の業火がストライクを焼き尽くすのは、ほぼ同時だった。2体はそのまま地面に倒れ伏す。
「いいよぉぉぉ!!それが修業の成果かぁい!!?」
「チリーン」
「もっとその力をぉ、見せてくれぇ!!《エルレイド》ォォォオ!!」
それぞれのポケモンをボールに戻し、新たにポケモンを繰り出す。
サンゾウが繰り出したのは、緑色の体に肘から伸びた長い刃が特徴のポケモン、エルレイドだ。世にも珍しいエスパーと格闘タイプを併せ持つ。
「行きなぁ、エルレイドォォ!!」
エルレイドが肘をチリーンに突き出すと、肘の刃は真っ直ぐにチリーンに向かって伸びて行く。それには流石のアリアも驚いたのか、一瞬チリーンに指示を出すのが遅れてしまい、刃はチリーンに直撃する。何とか耐えたチリーンだが、右へ左へとフラフラ浮いているその姿は満身創痍だ。
(・・・伸縮自在の刃。チリーンをたったの一撃で・・・)
完全に不意を突かれた形となった初めの攻防。アリアはチリーンを見やると、チリーンは気丈な眼差しをアリアに向けた。それが戦闘続行の合図と受け取ると、アリアは指示を飛ばす。
「止めだぁぁぁあ!!〝つじきり〟ぃぃぃ!!」
「チリーン〝さわぐ〟」
チリーンを切り捨てるべく、エルレイドが接近してきた所で、チリーンは強烈な音の振動波を浴びせる。それにより、エルレイドは後方に大きく吹き飛ばされた。
「続けて〝エナジーボール〟」
自然の力を圧縮して、球状にしたエネルギー弾をエルレイドに向けた発射する。
だがエルレイドも、負けじと空中で体勢を立て直し、着地する。そしてエネルギー弾が直撃する前に上空へ飛んで避わしたが、エネルギー弾はエルレイドを追い掛ける様にして飛び上がり、そのまま直撃した。
「まさか〝エナジーボール〟の軌道を操るとはねぇぇ!!〝サイコカッター〟!!」
エルレイドはまともに攻撃を食らいながらも、念波の刃をチリーンに向かって飛ばす。チリーンは飛来した刃に切り裂かれ、そのまま戦闘不能となった。
「交代です。ムクホーク」
チリーンと交代で現れたのは、格闘タイプの弱点を突く飛行タイプだ。
「〝とんぼがえり〟」
ムクホークは落下してくるエルレイドに向かって突撃し、その蹴った反動でUターンする。ただでさえ効果抜群の虫タイプに技を受け、完全に姿勢を崩すエルレイド。
「〝ブレイブバード〟」
低空飛行から上昇し、ダメージ覚悟で勢い良くエルレイドにぶつかるムクホーク。これにはさすがに耐えきれず、戦闘不能に陥るエルレイド。
「ハァッハッハーー!!最高だねぇ!!行けぇ、《シザリガー》!!」
現れたのは、赤い甲殻に頭の星マークが特徴のシザリガーだ。
「〝はかいこうせぇん〟!!」
圧倒的な破壊の力を秘めた光線が、シザリガーから放たれる。それはムクホークだけではなく、直線状に居るアリアにも命中するだろう。
「ムクホーク」
アリアの呼びかけで、主人の元へと飛ぶムクホーク。アリアは光線が命中する直前、ムクホークの背中に飛び乗り、ギリギリのところで回避に成功する。
「行きますよ、ムクホーク」
ムクホークはアリアを背に乗せたまま、中空を駆け抜けた。
☆ ☆ ☆
ターコイズside
「〝かみなりのキバ〟!!」
「〝こうそくスピン〟!!」
ライルの電撃の牙と、スターミーの高速回転がぶつかり合い、両者は力尽きたかのように地面に倒れ伏す。これで僕は後4体だ。
「しつこいわね!いい加減倒れなさいよ!!マリルリ〝ハイドロポンプ〟!」
「キャサリン〝たくわえる〟!!」
マリルリが放つ水砲に対し、キャサリンは口に物を蓄える事で防御と特坊を上げ、受け止める。元々効果は薄い技なので、ダメージは無いといっても過言ではない。
「ルージュ〝かえんほうしゃ〟!!」
ルージュは口から放射された炎はユキのレアコイルに直撃し、戦闘不能にした。これで向こうも4体ずつだ。数の上では互角だ。
「何で倒せないのよ!?落ちこぼれのターコイズを!!」
「ターコイズの癖に生意気なんだよ!!行けぇ、《エレブー》!!」
僕に対するいら立ちを撒き散らしながら立ち向かう幼馴染の2人。
どうしてこうなったんだろう?3人一緒に、笑い合えた日があったのに。今は僕に対して憎悪すら向けて攻撃してくる。
「エレブー〝かみなりパンチ〟!!」
黄色と黒の模様が特徴のポケモン、エレブーは拳に雷を纏って突撃してくる。狙いはスズランだ。僕達の状態異常とステータス低下を防ぎ、この均衡を保つスズランを倒して、一気にたたみ掛けるつもりなんだろう。弱点タイプのエレブーを、急いで出してきたのがその証拠だ。
「キャサリン!スズランを守って!!〝たくわえる〟!!」
僕の呼び掛けに応じ、キャサリンは自分の体を盾にしてスズランとエレブーの間に立ちはだかり、電撃の拳をその身で受け止める。
「馬鹿ね!!ぺリッパーは水と飛行タイプなのよ!!?」
「電気タイプは弱点中の弱点だ!唯じゃ済まないぞ!!」
僕の指示を失策と見て、捲し立てる2人。
確かに、さっきの一撃でキャサリンは戦闘不能寸前まで追い込まれてしまった。
「でもまだ終わりじゃない!キャサリン〝のみこむ〟!!」
キャサリンの体の傷が見る見る内に癒えていく。今まで〝たくわえる〟で蓄えていたものを〝のみこむ〟事で、体力を大幅に回復させる技だ。
「何やってるのよ!!」
「僕のせいかよ!!?」
「もういいわ!マリルリ〝みずのはどう〟!!」
マリルリから振動を帯びた水が発射され、ルージュに直撃する!追加効果の混乱は〝しんぴのまもり〟で防げたけど、効果抜群の大ダメージを受けてしまった。だけど
「まだ倒れないの!?効果は抜群のはずよ!!?」
「まさか、〝ハードロック〟!!?」
〝ハードロック〟。それがルージュの特性だ。効果抜群の技の威力を半減にする。
「くっそぉぉぉ!!エレブー〝きあいパンチ〟!!」
「負けないでルージュ!!〝だいちのちから〟!!」
エレブーの気合いの一撃と、ルージュが放出した大地の力がぶつかり合い、爆発と共に煙が生じる!煙が晴れると、そこには戦闘不能になったエレブーとルージュが横たわっていた。
「お疲れ様ルージュ!ゆっくり休んで!!」
「くっ!この役立たずが!!戻れエレブー!!」
「何やってるのよ!この間抜け!!」
「スズラン!〝ぜったいれいど〟!!」
ユキがタツヒコを罵倒している隙に、スズランは絶対零度の風をマリルリに吹きかける!マリルリは全身凍り付いて、戦闘不能となった。
「間抜けはお前の方じゃないか!簡単にやられやがって!!」
「な!ち、違うわよ!だって〝せったいれいど〟は自分より高いレベルのポケモンには効果が無い技なのよ!?こんなのインチキだわ!!」
「このスズランは、シロガネ山で捕まえたポケモンだからね。レベルはかなり高いよ」
「シロガネ山!?何言ってるのよ!!」
「お前がそんな所のポケモンを捕まえられるはず無いじゃないか!!どうせ貰ったか盗んだかに決まっている!!《ガントル》!!」
「そうね!落ちこぼれのターコイズが、シロガネ山のポケモンを捕まえられるはずが無いわ!!どうせ誰かから盗んできたのよ!《ロズレイド》!!」
僕達の修業の日々を完全否定しながら繰り出してきたのは、鉱石の様な体のポケモン、ガントルと、両手に薔薇の花を備えたポケモン、ロズレイドだ。
「ガントル〝ラスターカノン〟!!」
「ロズレイド〝ソーラービーム〟!!」
一点に集中された光と、太陽光を凝縮したエネルギーが一気に放出され、それらはスズランに命中してしまう!バトルの初めから戦ってきたから、それまでの無理が祟ったにか、スズランは耐え切れずに戦闘不能に陥ってしまった。
「よし!あの厄介なラプラスを倒したぞ!!」
「後はぺリッパーともう一体だけよ!!」
「喜んでる暇は無いよ!」
「何!?」
「キャサリンは最大まで〝たくわえた〟!!」
スズランに集中し過ぎていて気が付かなかったのか、キャサリンは既に〝たくわえる〟を使い続け、限界まで蓄えていた。そしてここから繰り出される最大の攻撃・・・!!
「〝はきだす〟だぁ!!」
圧倒的な質量が、キャサリンの口から吐き出される。それは地面を抉り、大気を抉りながらガントルとロズレイドを押し潰し、戦闘不能にした。
「チクショオオオオ!!ゴルバットォ!!」
「私達が負けるはず無いのよぉぉ!!《チャーレム》!!」
交代で出してきたのは、かつて戦った事のあるポケモン、ゴルバットと、細い上半身と強靭な下半身が特徴のポケモン、チャーレムだ。
そして何故か、その戦意はキャサリンには向けられていない様に見えた。その戦意の矛先、それはもしかして僕!?
「もういい!!ターコイズを殺してしまえば、それで勝ちだぁ!!」
「チャーレム〝はかいこうせん〟!!」
「こっちも〝はかいこうせん〟だぁ!!」
怒りで完全に我を失い、僕に向かって光線を発射するように指示する幼馴染達。指示通りに、2つの光線が僕に向かって発射されるが、僕は恐怖に震える足を押さえ、最後のモンスターボールの開閉スイッチを押す。現れたのは、育て屋夫婦から貰った卵から孵った一体。
「ナナリー〝ミラーコート〟ォ!!」
青い体に朗らかな表情が特徴のポケモン、《ソーナノ》のナナリーが飛び出し、鏡の障壁を展開する!放たれた2つの光線は障壁にぶつかり、元の倍の威力となって撥ね返す!渾身の攻撃が撥ね返された2体は余りの動揺に避ける事すら出来ずに、戦闘不能に陥った。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!《キノガッサ》ァァァ!!」
「必ず勝ちなさい!!《レパルダス》!!」
タツヒコとユキの最後のポケモン、茸をモチーフとした格闘ポケモン、キノガッサと、紫の体毛が特徴的なポケモン、レパルダスが繰り出されるのと、この戦いが終わるのはほぼ同時だった。
「これで最後だよ!〝ふんか〟!!」
僕の叫びと共に、地面から溶岩が噴出してキノガッサとレパルダスを焼き尽くす!2体は突然の攻撃に耐えきれず、戦闘不能に陥った。
「ど、どういう事だぁ!!?」
「ま、まさか、これはバクーダの!?」
溶岩が噴出した穴から出て来たのは、戦闘不能になったと思っていたであろうルージュだ。こんな簡単た策に気付かないなんて、やっぱり油断していたんだろう。
「君達が倒したと思っていたルージュは、最初の〝ふんえん〟に紛れて〝みがわり〟で作った偽物だ。本物のルージュは、〝あなをほる〟で下からずっとチャンスを窺っていたんだよ」
これが僕の最後の最後の切り札だ。ルージュを繰り出した時から用意していた保険が、今になって活かされたのだ。
「何で!?何で勝てなかったの!!?」
「あり得ない・・・!あいつが俺に勝っているのは、僅かな身長だけだったのに!」
僕に負けた事、それも2対1で負けた事がそんなに信じられないのか、地団太を踏みながら憤るタツヒコとユキ。その姿は、スクールのエリートの面影を何一つ残していなかった。
「そうだ、こいつらが悪いんだ!この雑魚ポケモン共がぁ!!」
「こんな使えないポケモン、もう要らないわ!!」
必死でトレーナーの期待に応えようとし、戦闘不能になるまで戦ってくれたポケモン達が入ったボールを怒り任せに地面に叩きつけようとする僕の幼馴染。
そんな姿は、見るに堪えなかった。
「ルージュ〝あくび〟!!」
ルージュは大きな欠伸を2人に浴びさせる。タツヒコとユキは強烈な睡魔に襲われて、崩れ落ちる様に眠ってしまった。
「―――ッハァ!!・・・はぁ・・・はぁ」
緊張から一気に解放されて、思わず腰が抜けて座り込んでしまう。こんなカッコ悪い所、ガーネットやアリアはともかく、スズナさんには見せられないな~。
「はぁ・・・はぁ・・・。フゥ・・・。タツヒコ、ユキ・・・」
息を整えて、もう一度眠っている2人の幼馴染を見る。
昔はこんなのじゃ無かった。タツヒコは正義感が強くて、誰よりも人とポケモンには優しかったし、ユキはお淑やかな性格で、争い事は嫌いだったんだ。
それが変わってしまったのは、いつからだろうか?
有り余る才能に溺れ、その才能の上に胡座をかき、才能の無い僕や他の生徒を見下し、蔑むようになった。そして〝敗北〟を知らないまま出世の道筋を見せられ、それに目が眩んでますます周りが見えなくなってしまったのか。
確かなのは、もう、一緒に笑い合えたあの日には戻れないという事だ。人は変われるなんてよく言われるけれど、きっと僕達の関係は元には戻らない。何故かそう確信してしまった。
「ガーネット・・・。アリア・・・」
そして何より、僕はこの2人の前で立ち止まる訳にはいかなかった。
僕は腰が抜けて力が入らない足に活を入れて、立ち上がる。そして氷で閉ざされた通路を見る。この先で、ガーネットとアリアは今も戦っているかもしれない。
「ルージュ〝かえんほうしゃ〟!」
激しい炎で氷の壁を溶かし、道を開ける。もう幼馴染を振り返らない。僕はキャサリンとルージュ、ナナリーを引き連れて通路を走った。
☆ ☆ ☆
アリアside
ターコイズが幼馴染との戦闘を制した後、ここでは激闘が繰り広げられていた。
「シザリガー〝かいりき〟ぃぃ!!」
シザリガーはその怪力を用いて、背中に乗ったアリアごとムクホークをプールの中へと引きずりこんだ。水中で呼吸がままならない中、アリアは状況を確認する。
(・・・今の〝かいりき〟でムクホークは戦闘不能。なら次の一手は)
それは既に決まっている。シザリガーは水生のポケモンだ。ならば、こちらも水中で戦えなければ勝ち目はない。アリアはムクホークをボールに戻し、新たにポケモンを繰り出す。
現れたのは、巨大な甲羅を持つ古代ポケモン、《アバゴーラ》だ。アリアはアバゴーラの背に掴まり、シザリガーを指で指しながら、目でアバゴーラに語りかける。
その眼差しで、指示を悟ったアバゴーラは両手両足、頭と尻尾を引っ込めて激しいジェット噴射を甲羅の隙間から噴出し、棲様じい速度でシザリガーに突撃する。〝アクアジェット〟だ。
水中にも拘らず、高速で突撃したアバゴーラの体はシザリガーに衝突し、そのまま水面まで持ち上げて中空へと放り出した。
「ぷはぁ!・・・・・ケホッ!・・・アバゴーラ、っ〝はかいこうせん〟」
咽ながらも何とか指示を出すアリア。放物線を描いて吹き飛ばされるシザリガーを追う様に、破滅の光線はシザリガーが描いた放物線を辿って直撃する。
シザリガーはその衝撃で壁に叩きつけられ、戦闘不能になった。
「はぁ~本当にぃ、楽しませてくれるねぇ~」
サンゾウの口調が元に戻る。ここまでの戦いで、少しだけ熱が退いたのかも知れない。それでもサンゾウが放つ殺気が衰えてはいないのを、アリアは肌で感じ取った。
「正直ここまでできるとは思わなかったねぇ。そしておめでとぉ、これがオレっちの最後の一体ぃ。こいつを倒せばぁ、嬢ちゃんの勝ちだよぉ~」
そしてサンゾウが取り出したのはハイパーボールだ。それ相応のポケモンが入っているという事が予想できる。アリアはサンゾウの動きを凝視し、いつでも指示を出せるようにする。
「さぁ、行きなぁぁ!!《ハッサム》ゥゥゥ!!」
再びボルテージを上げ、声高らかにポケモンを繰り出すサンゾウ。現れたのは深紅の甲殻に身を包み、両手は鋭利な鋏となっているポケモン、ハッサムだ。
「〝こうそくいどう〟からのぉ、〝かげぶんしん〟!!」
多重の残像を生み出しながら、高速で移動を開始するハッサム。しかし、アリアはこの7日間シロガネ山で同じような戦法をとるポケモンと闘い続けて来た。
「アバゴーラ〝ハイドロポンプ〟」
アバゴーラの口から放たれた水砲は、何度も何度も直角に曲がりながら分身を消していき、確かにハッサムの本体を追い掛けていく。
「ほぉ~!!本体がどいつなのか分かるのかぁい!!?」
アリアが敵に攻撃を当てる際に頼るのは目だけではない。相手の行動パターンや行動の予測、さらには大気から肌へと伝わる微細な振動や、実体が放つ風切り音まで加わる。
故に、アリアの射撃の前に〝かげぶんしん〟は通用しない。
「逃げても無駄ってことかぁい!?だったらぁ、これでどうだぁぁぁ!!」
ハッサムは限界まで上げた速度を以って、アバゴーラに迫る。水砲もハッサムを追い掛けるが、直線で最大スピードを出したハッサムに直撃する前に、ハッサムはアバゴーラの目の前に到達する。
「〝メタルクロー〟!!」
鋼鉄の両手がアバゴーラに直撃する、その直前。
「っ!?」
アバゴーラはアリアからの指示も無く、アリアを通路の上へと放り投げる。
アリアは何とか通路の上に着地したが、アバゴーラは鋼鉄の直撃を受け、更には自らの水砲をハッサム諸共受け、その衝撃で巨大な水柱が天井を突く。その結果、アバゴーラは戦闘不能となり、共に水砲を食らったハッサムは健在だ。
「交代です。行ってください《ライチュウ》」
アバゴーラと交代で現れたのは、通常よりも赤みがかった色のポケモン。稲妻の尾を持つ電気ポケモン、ライチュウだ。
「最後の決着だぁぁ!!オレっちに、刹那のスリルをくれぇぇぇ!!」
これでアリアの手持ちも残り一体。サンゾウとの最後のバトルが幕を開ける。
「ライチュウ〝10まんボルト〟」
「〝メタルクロー〟で迎え撃てぇぇぇぇ!!」
空中に居るハッサムに向かって放たれた強烈な電撃を、鋼鉄の両手の鋏で弾くハッサム。最早回避は不可能と見たのか、ダメージ覚悟で攻撃を相殺している。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
これほどまでの長期戦に加え、先程の水中戦。アリアの体力は限界に近い。早急に決着をつけなくては、いずれ体力は底を尽き、敗北は必至だ。
(・・・そうは、させません)
かつてスズナから教わった気合いで、アリアは体に力を込める。理屈はどうなっているのかは分からない。今しばらくこの力を残してくれるよう、悪魔に請う。
(・・・せめて、この戦いが終わるまでは)
アリアはハッサムを見る。あの動きの裏を掻き、ハッサムを戦闘不能にする方法は、以外にもすぐに思いついた。ライチュウの体力の消耗が激しいのが難点だが、今はそれに掛けるしかない。
「ライチュウ、最大の力を振り絞ってください。〝でんじほう〟」
今、アリアのライチュウが使える最大の大技、〝でんじほう〟。大砲の如く発射された電磁は真っ直ぐにハッサムを目掛けて放たれる。
「最大の攻撃かぁぁぁ!!良いねぇ!こっちも行くぞぉ、〝ギガインパクト〟ォ!!」
ハッサムは極限の力を振り絞って電撃の砲丸を迎え撃つ。あの力ならば、〝でんじほう〟は確実に弾かれてしまうだろう。だからこそ、勝てる。
「・・・今です」
ハッサムの極限の一撃が電撃の砲丸を弾く直前、集束された電撃は拡散し、ハッサムを巻き込んで放電する。最大の力で迎え撃ったハッサムは、その反動で避ける事も防ぐ事も出来ずに電撃を浴びた。
これこそがアリアの策だ。〝でんじほう〟は直撃すれば相手を必ず麻痺状態にする事が出来る。その電撃を浴びたハッサムは、体が痺れて空中から落ちてきていた。
「止めです。ライチュウ〝アイアンテール〟」
ライチュウは床を蹴り、落下してくるハッサムを目掛けて飛翔する。そして尻尾を硬化させ、ハッサムを横殴りにし、プールへと叩き落として戦闘不能にした。
「・・・ハッ!・・・・はぁ、はぁ」
そこで遂にアリアの体力は限界を迎え、床に膝を付く。極限の力を出し切ったライチュウも、受け身を取ることすらできずに床に落下した。
(・・・これで、約束を果たせましたよ)
そう思った、次の瞬間だった。
ダァァンッ!!
部屋に響き渡る銃声。しかし、それはアリアに当たったものではなく、ましてやライチュウに当たったものでもない。
驚きに顔を上げるアリア。その視線の先には、拳銃を片手に自らの胸を撃ち抜いたサンゾウの姿があった。その光景に、アリアは一つ思い当たる事があった。
「・・・それは、《自動消去機能》。まさかあなたは・・・」
それは、かつてアリアにも仕掛けられていたエスパーポケモンによる催眠誘導。敗北と共に自害して、その肉体の情報を一片も残さず消す悪魔の所業だ。
「そぉさ。オレっちも、嬢ちゃんと同じクローンなのさ」
サンゾウの体は見る見る内に白く染まっていく。送り火山での戦いの時と同じだ。
「まぁ、オレっちはぁ、嬢ちゃんと違ってぇ、寿命も短く、精神も不安定なぁ、失敗作なんだけどよぉ。はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・・・・・・・・」
死に際にも拘らず、饒舌なサンゾウの語りを、アリアは静かに聞いていた。
「元々、支部長の死んだ親友のクローンらしいんだけどォ、失敗作の癖して、何で生かされてるのか、分からなくてねぇ、こおしてぇ、戦いに快楽をぉ、求めてたって訳よ」
サンゾウの体は、首から上を残して全て白化してしまっている。次が最後の言葉だと思い、アリアは直感的に耳を澄ませた。
「まぁ、生きてる実感が欲しかったのさぁ。生まれてきてぇ、5年くらいかねぇ、そんなもん一度も得られなかったけどォ、最後の最後で、嬢ちゃんと戦えてよかったぜぇ」
そう言って、サンゾウは心底楽しそうに笑う。それと同時に白が体を覆い尽くすと、バキャッと、乾いた音を立ててサンゾウの体は白い塵となって崩れ落ちた。
残されたのは身に着けていたスーツなどの衣服と、さっきまで戦っていたポケモンが入っているモンスターボールだ。アリアはそこまで歩み寄り、ボールだけを拾い上げる。
「・・・このポケモン達は、私がポケモンセンターまで送り届けておきます」
それだけ言って、アリアは奥の通路へと足を進める。
同じクローンとして、もっと言いたい事はあったはずだったが、話題のボキャブラリーの貧困さが相まって、そんな言葉しか出てこなかった。
それでもアリアの心の奥には、確かな言葉があった。
――――大切な人と出会えたならば、あなたはもっと幸せでしたか?
そんな言葉は結局出てこず、胸の奥へと沈んでいく。
親友から貰った気合いを足に、後ろで戦う仲間への信頼を背に、そして、前で戦う約束の人との未来を掴むべく、アリアは通路の奥へと歩んで行った。
ここまで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!
次回は、決着の戦いが始まりますよ。
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