新章突入 事件は唐突に
ここはシンオウ地方・ノモセシティのとあるビルの前。
唐突だが、俺達は今かなり焦れていた。
アリアは目当て物が来るであろう道をジッと見つめ続け、ターコイズは時計と道を交互に見て、俺は同じ場所をずっとグルグル回っていた。そんな事をもう一時間以上繰り返している。
「3人とも、気持ちは分かるんだけどさ、いい加減落ちついたら?」
呆れた視線でそう言ってくるのはスズナだ。この日の為に、わざわざキッサキシティから祝いに来てくれたのだ。その傍らにいるデリバードも、やれやれといった感じで溜息を付いている。
「・・・言われてみればそうなのですが」
「何か、中で待ってても落ち着かなくて」
「この日の為に、今までやって来たからな」
落ちつけと言われても落ち着けないこの胸の高鳴り。この心を何と例えよう。
「あ、3人とも、トラックが来たよ!」
「えっ!!?」
「・・・!」
「やっとか!!」
スズナが指を指した道の先、そこには確かに軽トラックがこちらに向かって走ってきていた。注文した時間も考えて、あのトラックで間違いないだろう。
そしてそのトラックは俺達の目の前に泊まると、中から作業着を着た男が出て来た。
「えーと、ターコイズさんはいらっしゃいますかね?」
「ぼ、僕です!!」
「あ、それじゃあ受け取りのサイン貰えますかね?」
「は、はいぃ!!」
「それじゃあ自分はこれを取り付けるんで」
そう言ってトラックの荷台からある物を担ぎ上げ、ビルの中に入っていく作業員。あれこそが俺達の待ち望んだ物である。階段を上がった2階の突き当りの部屋。そのドアの隣の空いた壁のスペースに例の物が取り付けられる。チュイーンと、電動ドライバーで回されるボルトが壁を穿つ音を聞くこと数分。
「終わりましたよ、それじゃ自分はこれで失礼します」
「あ、お疲れ様です!」
仕事を終え帰っていく作業員を見送り、俺達は壁に取り付けられた物を見つめる。
それは、俺達の門出を告げる看板だ。
『留守中のポケモンの世話からポケモンバトルまで何でもお任せ!
人手が足りない貴方様達の味方、いつでもご気軽にご依頼ください。
格安ポケモントレーナー派遣会社《ギルド》 』
「「「会社設立おめでとぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
「・・・おー」
あの戦いから、2年以上の月日が経過した。
資金繰りから会社のモットーの提案、業務内容に依頼金の設定、チラシ作りに売名行為、事務所確保にポケモン協会からの経営認定獲得と、様々な苦難を乗り越えて、ターコイズの会社設立は遂に実を結び、派遣会社《ギルド》がオープンした。
「ワッハッハッハ!!遂に会社設立を成し遂げたか!!」
「あ、マキシさん!!」
「もしかして、わざわざ祝いに来てくれたのか!?」
「おうよ!今日にはこの看板が届くって聞いたからな!その祝いにケーキでも差し入れに来たってわけさ!ここまでよくやったな、お前等!!」
今回の会社設立に最も力を貸してくれた人物が何を隠そうこの男。
このノモセシティのジムリーダー、《ウォーターストリームマスクマン》の異名をとる筋骨隆々のプロレスラー、マキシだ。
実はターコイズがこのノモセシティを事務所に選んだ理由も、このマキシにある。
ジム戦でのファイトマネーを待ちの衛生や設備向上に役立てているマキシは、この町の住民全員から尊敬の眼差しを向けられている。その際のボランティアに俺達が参加する事で、マキシや町の住民に名前を売り込んだのである。少しあくどい様にも聞こえるがマキシはそれを快諾。今では俺達の名前もこのノモセシティに知れ渡ったのである。
更には協会理事にも紹介してもらったので2年という時間で会社が設立できたのである。
「これでようやく夢の第一歩を踏み出せたね、ターコイズ!」
「うん!スズナさんも、試験頑張ってね!!」
「当然!何時も通り、気合い全開で挑むんだから!!」
更にこの2年で、スズナはジムリーダー承認試験を受ける事となった。以前から不在であったキッサキジムの後任として、氷タイプのジムリーダーを目指しているのである。
「・・・頑張ってください」
「俺達も応援に行くからよ!!」
「これで合格したら、俺にも後輩が新しく出来るって訳か!」
5人も集まって狭くなった廊下の突き当たりで、俺達は盛大に笑い合う。
「それじゃあここは新しい会社のボスに、一言言ってもらおうかね」
「え!?それってもしかして、僕!?」
「お前以外に誰が居るんだよ?」
「・・・一応、ターコイズが私達の上司、つまり社長という訳ですし」
「一応って・・・まぁいいや」
ゴホンと、咳払いをして息を吸い込むターコイズ。
「ここに居る皆が力を貸してくれて、明日から会社が運営していく訳だけど、初めの数年は苦しいかもしれない。でもいつか必ずこの会社を大きくするから、僕に着いて来て!!」
「あいよ!!」
「・・・(こくっ)」
こうして、俺達は新たな一歩を踏み出した。だが、このターコイズの言葉が意外な形で叶えられる事となる事を、俺達はまだ知らなかった。
☆ ☆ ☆
「今日は本当にありがとうございました!こちら、依頼金ですのでお納めください」
「いやいや、これからもギルドをよろしく頼むわ」
依頼金を受け取り、老人ホームの職員に見送られて、帰路に着く。今日は老人ホームの行事の助っ人に呼ばれていた。何でも職員が複数人病欠で仕事が回らなくなっていたらしい。
ギルドが運営を開始して3週間が経過した。ターコイズの言う通り、依頼の数は極端に少なく、俺達はバトルのファイトマネーと僅かな依頼金で生計を立てていた。
まぁ運営したばっかりだからこんな物だろうけど、主な収入源がギルドの依頼じゃない事は会社として真剣に見つめ合わなければならないだろう。
「・・・あ、ガーネット」
「おうアリア、今帰りか?」
帰り道の途中、バトルの出稼ぎに行っていたアリアと鉢合わせた。
「・・・そちらの仕事はどうでしたか?」
「何とか成功ってとこだな。物を一個も壊さなくて良かったぜ」
「・・・それについては激しく同意します。この2年間、手加減の練習をした甲斐がありましたね、初めは2つに1つは壊していましたが」
「うるせーよ」
ギルドが設立し、マキシと知り合って、スズナがジムリーダーを目指したりと色んな変化があった2年だったけど、やっぱり一番変化があったのはこのアリアだと思う。
表情や感情の起伏が乏しいのは相変わらずだが、心なしか柔らかな雰囲気を出しているし、何より喋る量が増えてきていた。
まぁ、誰に似たのかは分からないが微妙に口が悪くなっているようだが。
「・・・?どうしたのですか?そんな変な顔をして」
「いや、何でもねーよ」
「・・・今日は顔も態度も変なガーネットですね」
「その言い方だと誤解を招きそうだから今後は気を付ける様に」
「・・・善処します」
そんな何気ない会話をしながら、俺達は肩を並べて歩く。
もうじきギルドがあるビルに到着する。辺りを見渡すが、他には誰もいない。だから俺は何でもない様な感じを装ってアリアに話しかけた。
「なぁアリア、俺達って明日休みだったろ?」
「・・・そうですけど、それが何か?」
「ソノオタウンによ、評判の洋菓子店が出来たらしいんだけど一緒に行かね?」
「・・・洋菓子店?ガーネットがですか?」
「まぁ、俺の本題は花畑の写真撮影なんだけどな、せっかくだから一緒にと思ってよ」
「・・・洋菓子・・・。シュークリームが話題でしたね」
このアリアの反応を見る限り、掴みはOKと言ったところか。本当はストレートに誘いたかったが、如何せん恥ずかしさが先に来て、建前の言葉を口にしてしまう。
「・・・それでは、私も一緒に行きます」
「よし!そんじゃ明日は」
そう言い掛けた、次の瞬間――――――
ズガシャアアアアアアアッ!!
ターコイズがビルの階段から転がり落ちて来た!?
「タ、ターコイズ!?一体どうした!?」
「ふ、二人とも丁度良かった!!凄い変態なんだよ!!」
「・・・痴漢でも出たのですか?」
「じゃなかった、大変なんだよ!!」
「落ちつけ、一体どうした!?」
「す、凄い大口依頼が舞い込んできたんだ!オーキド博士から!!」
「はぁ?オーキド博士?」
「何でも、凄く重大な依頼を僕達に頼みたいらしいから、カントーまで来てくれって!」
「・・・その依頼とは?」
「それは現地で話すらしいから、2人とも今すぐ出発するよ!!」
「ちっ!仕方ねぇ、洋菓子はこの仕事を片付けてからだ!!」
「・・・了解しました」
「行くぜ、ナツ!!」
俺達はカントー地方を目指し、空を駆け抜ける。
この仕事が、ギルドの今後を大きく左右する事を俺達はまだ知らなかった。
☆ ☆ ☆
「ジャリボーイ達がどこかに行くみたいだぞ」
「あたし達も追うわよ」
「そして色違いの3体を今度こそゲットするニャー」
☆ ☆ ☆
ノモセシティを出発して3日後、俺達はカントーのマサラタウンまで来ていた。
「おぉ君達、よく来てくれた!」
血相変えて俺達を出迎えたのはオーキド博士だ。目の下には隈がハッキリと出ていて、ここ数日はまともに休んでいなかった事が伺える。
「早速ですが博士、僕達ギルドのメンバー全員を収集したのは、一体どんなご用件でしょう?今回は一応仕事としてきたので、依頼金もそれに応じて高くなりますが」
「依頼金については後でどうにでもする!!それよりこれを見てほしい!!」
そう言って博士は俺達を別室へと誘導する。
「何だこれ?」
「・・・石像?」
そこで見た物は5人のトレーナーを模った石像だった。しかし、このセンターの奴は何で半裸の姿でポニーテールの女をお姫様だっこしているんだろうか?
て言うか、こいつらどっかで見たような・・・。
「もしかして、この石像の内の3人って第9回ポケモンリーグのトップ3じゃないですか!?最年少記録を叩きだしたレッド、グリーン、ブルーって言えば有名ですよ!?」
「あぁ!!どっかで見たかと思えば!!」
5年前のロケット団騒動でも有名な3人だ。しかし、何でそいつらの石像がここに?
「先日起きたナナシマ騒動は知っておるかね?」
「・・・テレビで見ました。ロケット団が復活したとか」
「あれで世間は大ニュースになってたもんな」
「その騒動の解決の功績者も、確かこの3人でしたよね」
後の2人は知らない奴だ。こうやって石像として出来上がってるって事は、この2人も解決に一役買っていたのだろうか?
「で、この石像がどうかしたのか?」
「・・・これはただの石像では無い」
「・・・???」
「この石像こそが、今回の騒動の解決の立役者であるトレーナー達本人じゃ」
「はぁ!?」
「あの、仰ってる意味が分からないんですけど・・・?」
「わしも最初に見た時は愕然とした。こうなった原因は分かっておる、ロケット団が放った正体不明の攻撃と、レッド達の攻撃が複合した結果じゃ」
「おいおいおい、ちょっと待てよ!!ポケモンの攻撃で人間が石化するなんて聞いた事ねぇよ!もしかして、俺達にこの石化を解いて欲しいってのか!?」
「まさしくその通りじゃ」
「あの、お言葉ですけど僕達はこの現象の原理がまるで理解できないんですけど、何か解決方法はご存じなんでしょうか?」
「わしにも分からん。長年ポケモンを研究してきたがこんな現象は初めてみた」
項垂れる様に首を左右に振るオーキド博士。
世界的なポケモン研究者でも分からないものを、俺達が解決できるとは到底思えない。一体何を思って俺達に依頼を出したのだろうか?
「だが、ここに来て一筋の希望の光が見えた」
「・・・希望の光ですか?」
「現状、この石化を解く唯一の方法を、遂に見つけたのじゃ」
「それは何ですか?」
「幻のポケモン、《ジラーチ》」
「ジラーチ?」
それは聞いた事もないポケモンだった。アリアもターコイズも顔に疑問を浮かべる。幻というくらいなら、よっぽど珍しいポケモン何だろうけど、そいつがこの石化とどう繋がるのだろうか?
「ジラーチとは、1000年に一度、7日間だけ目を覚ますといわれておっての、何でも人の願いを叶える力があるといわれている」
「・・・願いを、叶えるポケモン?」
「何か、夢物語みたいな話だな」
「たとえそれが本当だとしても、1000年に一度しか目覚めないんじゃ、そんな都合よくタイミングが合わさるとは思えないんですけど」
「いや、我々は世界中のジラーチにまつわる文献を入手し、それらを仮説・解析して、そして次に目覚める場所と期間を突き止めた」
「・・・それは何時、何処でですか?」
「次の7月1日からの七日間、現在建設中のホウエン地方のバトルフロンティアじゃ」
「7月1日って言ったら・・・・後2ヶ月くらいじゃねぇか!」
「えぇ!?そんなに早く!!?」
「そう、じゃから君達にはジラーチ保護に向かってもらいたい」
偶然にしては出来過ぎている感があるが、もしこれが本当ならあの石化を解くごとが出来るだろう。だが、一つだけ気になる点があった。
「なぁ、オーキド博士。何でわざわざ俺達を雇ったんだ?」
別に自信が無いから言った台詞ではない。だが、俺達の他にも頼れるトレーナーが他にもいるはずだ。この石像の5人は除いたとしても、そいつらに頼めば良いだけの話。
わざわざ金を払ってでも俺達を使いに出す理由、俺の頭でも思い付くと言ったら
「他にも、ジラーチを狙う者が居るという事ですか?」
まさにそれだ。もし、願いが叶うポケモンの存在が知れれば、それを利用しようとする者が出てくるのは当然だ。
「先日、何者かがこの研究所に侵入し、ジラーチに関するデータを盗み見たのじゃ」
「・・・その者がジラーチと接触する前に、ジラーチに願いを叶えて貰わないといけない。つまりはそう言う事ですか?」
「へっ!ようやくデカイ仕事が回って来たってことか!!」
「相手の力は未知数、準備はしっかりとしないとね!」
「おぉ、引き受けてくれるのか!?」
「もちろんです!我々ギルド総勢は可能な限り依頼の受諾と完遂をモットーとしておりますので、完遂の目途が経つというのなら、喜んで受諾させていただきます!」
「ありがとう、本当にありがとう!!」
そう言って俺達に頭を下げるオーキド博士。掠れた声と、僅かに床に落ちる雫で、石にされた5人の事が大切だと伺える。
「それではジラーチ出現期間までにはフロンティアに到着でよろしいでしょうか?」
「いや、今回はどんな事態になるか想定も出来ん。君達の実力を過小評価する訳ではないが、わしの方から、君達の修業場所を用意させてもらった」
「修業場所だ?」
「残り2ヶ月で力を付けて、依頼達成の確立を僅かでも上げてほしい」
「・・・その修業場所というのは?」
「カントー地方、ナナシマの内の一つ、2の島じゃ。そこにはすでに、わしが派遣した図鑑所有者2人が修業に励んでおるはずじゃ」
「図鑑所有者?」
「わしの研究であるポケモン図鑑完成の為に、ポケモン図鑑を持って旅立つ者の事じゃ」
「・・・ポケモン図鑑を」
ポケモン図鑑。それは俺達3人の旅の始まりでもあった。俺達と同じように図鑑を持って旅をした者と会うと思うと、何か感慨深いものがある。
「わしから連絡を入れておくから、君達は今すぐ2の島に向かってくれ!」
☆ ☆ ☆
「ここって、あの有名なオーキド博士の研究所だよな?」
「見て!ジャリボーイ達が出てくるわ!!」
「早速尾行再開ニャ!!」
☆ ☆ ☆
カントー・ナナシマ、2の島と言えば誰も住んでいない様な孤島だ。特に土壌が肥沃という訳でもなく、他の島からも離れていたため人が住もうとはしなかったと聞いていたのだが―――
「でっけぇ家だな」
「どっちかって言うと長屋みたいだね」
ナツの背に乗り、上空から島を見下ろす。長く巨大な石階段に、10キロは下らない長い屋敷がそこにあった。アルティア家の屋敷と同じくらいだろうか?
「・・・とにかく降りてみましょう」
上空から地上へと降り立ち、ここまで運んでくれたポケモンをボールに戻す。
和風造りの玄関に、『跳ノ道』と書かれた表札が掲げられている。ここが修業場所と見て間違いなさそうだが、この表札が気になって仕方がない。
「御免下さーい!!僕達、オーキド博士の紹介で来た者ですけどー!!」
「おぉ良く来たねぇ」
ターコイズの呼び掛けに応じ、引き戸が開かれる。中から現れたのは修験者と言った装いに身を包んだ一人の老婆。だがその見た目に反して、棲様じい活力に満ちている。
「実力の無い者を受け入れないこの島にスラっと入るとは、なるほど、あんた達なら受け継げるかもしれない!!わしの究極技を!!」
「えーと、僕達オーキド博士の紹介で来たギルドの者ですけど」
「あんたが、俺達に修業を付けてくれるって言う婆さんか?」
「ウヌォオオ!!誰が婆さんじゃああああ!!(ドゴッ!!)」
「痛ってぇぇ!!?」
いきなり錫杖で脳天殴られた!!?全く反応できなかったぞ!?
「せめてピチピチのお姉さんくらい言わんか!!」
「鏡見て言えや・・・!あー、頭痛てー・・・!」
「・・・ガーネット、考えて口を開いてください」
「えーと、それであなたが僕達に修業を付けてくださる・・・?」
「うむ、この島で究極技伝承を守っておる、キワメじゃ!」
さっきの一撃といい、この雰囲気や活力といい、この婆さんが俺達の修業を付けてくれる事には違いはなさそうだ。
「お前達の事はゲンジから聞いておる!」
「え、ゲンジさんとお知り合い何ですか?」
「若い頃からの。昔は一緒にやんちゃしたもんじゃ!」
「・・・それで、その究極技というのは?」
「まぁそう焦るな。まずは一緒に修業する物を紹介しようかねぇ、出ておいで!!」
「はーい!ほらゴールド、行くわよ!!」
「わーてるよ!一々うるせぇな!!」
キワメの婆さんが建物に向かって呼びかける。中から現れたのは俺達と同い年くらいの男女2人。特徴的な爆発した前髪の男と、黒い髪に整った顔立ち、重力の法則を無視した後ろ髪の少女だ。
「あなた方がトレーナー派遣会社ギルドの方ですね?はじめまして、私の名前はクリスタル。クリスと呼んでください!」
「あ、ご丁寧にどうも。僕は本社の代表のターコイズです」
「同じく構成員のガーネットだ」
「・・・アリアです」
「それで、そっちの彼は?」
「俺様はゴールド。お前等の事は聞いてるぜー?」
「あん?」
「まずはそこのヘタレ野郎のターコイズと」
「へ、ヘタレっ!?」
「・・・まぁ、合ってますね」
スズナに対して何時までも煮え切らない態度とってるしな。
「能面美少女ギャルのアリアと」
「・・・誉められてるのか、貶されているのか分からない言い回しですね」
「最後に、昆布頭のガーネット」
「よし、ちょっと裏に来い」
こいつは今、触れてはいけない逆鱗に触れてしまった。
「・・・髪型の悪口は不味いですね」
「ガーネット、ここは抑えて・・・!」
「大体何だ?そのセンスの欠片もねぇ前髪は?」
「へっ!このセンスが分からねぇたぁ、可哀想なこった!!」
「分かりたくもねぇっての、そんな変則トサカ頭なんざよ」
「そっちこそ、岩海苔みてぇな汚ぇヘアースタイルだぜ?」
「ずいぶん貧困なボキャブラリーだな?見た目通り、残念な頭みたいだな」
「テメーに言われたか無いっての、この海藻野郎」
「「はっはははははははははは」」
「・・・ガーネット?」
「ちょっと、ゴールド?」
俺達はひとしきり笑い合い、そして――――――
「テメェちょっと裏に来いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
「上等じゃボケぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
互いの胸ぐらを掴み合う!一度ならず二度までも・・・!こいつは俺の怒りに触れた!
今こそスズナ直伝、〝きあいパンチ〟を解き放つ時が来たようだ・・・!
「コラッ!!止めなさいゴールド!!」
「ガーネットも!依頼人の協力者と喧嘩しないでよ!!」
「・・・少し冷静になってください」
「えぇい、止めてくれるな2人とも!!本気の一撃を決めなきゃ気が済まん!」
「やれるもんならやってみやがれ!!」
「ほう、なかなか元気が良いな」
そんな時、静かな声が辺りに響き渡る。怒りで沸騰した頭で理解した、聞き覚えのある声。この威圧感たっぷりの声って、まさか・・・。
「久しいな、お前達。そしてキワメよ」
「どぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
「ゲ、ゲゲゲゲンジぃぃぃい!!?」
ホウエン四天王の一角、最強のドラゴン使いのゲンジはそこに居た。
「な、何でゲンジがここに居るんだよ!!?」
「わしが呼んだんじゃよ」
「え?」
「究極技を習得した時、それをより強力にする為にね」
「まぁそう言う訳だ。お前達5人は、覚悟しておけよ?」
俺達の地獄が、再び始まった。
皆様からのご意見ご感想お待ちしております。