第3話です良ければ見てください
《1月27日・7時30分》
カントー地方・マサラタウン《オーキド研究所》
NOside
「何と言う事じゃ・・・」
今日の深夜に、2組中1組のポケモン図鑑が奪われた事を知った老人は思わず嘆息した。
彼の名は『オーキド・ユキナリ』。全国的に知れ渡ったポケモン研究の第一人者である。
「も、申し訳ありません博士!!私が居たにも関わらず、こんな事に!!」
侵入者の少女を取り逃した男は、オーキド博士に向かって土下座をしながら謝罪をする。
「いや、君が謝る事でもない。それよりも、今は盗まれた図鑑を探すのが先じゃ」
そう言って男の失態を許すと、オーキド博士は顎に手を当て考え込む。
犯人は何故、ポケモン図鑑を盗み出したのか?
盗み出した少女は一体何者なのか?
一瞬、オーキド博士の脳裏に、高笑いを上げる少女が浮かんだ。
「はぁ・・・。とりあえず、警察に被害届を出そう。第一発見者の君は捜査に協力するように」
思わず痛くなる頭を押さえながらオーキド博士はそう締め括り、残された3機の図鑑を見やる。
残された3機の図鑑を、どんな子供に譲るべきか。
(ジョウト地方のポケモンのデータ集めに切り出そうとした矢先にこれか)
図鑑が1組残されていた事を不幸中の幸いと思いつつも、もう1組奪われた事による危険性を考えると、オーキド博士は不安を隠せないでいた。
☆ ☆ ☆
《1月27日・12時13分》
カントー地方・3番道路
ガーネットside
その姿を見た瞬間、俺は命の危機に直面している事を忘れ、思わず見惚れていた。
日の光に照らされた雪の様に白い整った顔。
風を受けて揺れる長い髪は、宝石の様に輝く藍色だ。
丸みを帯びた細い体。年頃は俺と同じぐらいだろうか?
俺だって男。こんな状況でもなければナンパの一つでもしていたかもしれない。
「ナツ〝かみつく〟!メリー〝でんきショック〟!」
そう、こんな状況でもなければの話だが。
ボウガン娘が勝負を仕掛けてこなければの話である。
普通、こんな美少女が現れれば期待したっていいだろう!?
出会いとかフラグとかその他色々!!ホント、こんな時ばっかりツイてない!
俺の指示を受け、2体のポケモンが動いた。
ナツはあの鳥ポケモンに噛み付く為に飛び掛かり、それと同時にメリーは電撃は放った。
「ムックルは後方回避。ピチューは〝でんきショック〟で迎撃」
少女は素早い指示を受け、あの鳥ポケモン《ムックル》は最初と同じように後ろに下がり、ピチューの方はメリーの〝でんきショック〟を同じく〝でんきショック〟をぶつけて相殺しやがった!
ピチューとムックルは、それぞれ電気、飛行タイプだ。地面タイプのナツがピチューに、電気タイプのメリーがムックルと組み合うならタイプ相性はこちらに有利に働く。相手もそれが解っているだろう、ムックルをナツに、ピチューをメリーに対して集中的に攻撃させている!
「ピチュー、〝アイアンテール〟、ムックルは〝つばさでうつ〟」
ピチューは鉄の様に硬化した尻尾をメリーに叩きつけ、ムックルはナツの攻撃が届かない上空から突撃しては再び上空へ逃げるという、ヒット&ウェイの戦法を繰り返している。
正直、かなりキツイ!!ピチューもムックルもかなりの素早さだ!
それに対し、ナツは攻撃力が高い代わりにそのデカイ頭が仇となっていてかなり鈍足だ。
メリーは何とか奴らの素早さに食らい付いてはいるが、それも時間の問題かもしれん!
この状況を打開するためにも、何とか一撃浴びせなければ!!
「っ!?」
そう思って指示を出そうとした瞬間、少女が視界に入る。
俺の頭を狙ったボウガンを再び構えている。その狙いは、俺!?
「くそったれがぁぁぁぁぁぁ!!!」
ボウガンから矢が発射されるのと同時に、俺は全力で横に跳び、岩陰に隠れた。
飛んできた矢は俺がいた場所に突き刺さった。なんて奴だ!まさか、ポケモンバトルの真っ最中に堂々とトレーナーに攻撃してくるなんて!
それと同時に俺は直感した。奴の目的はバトルなんかじゃない、俺の命だという事に!
「どういう事じゃ!?儂はお前の様な奴に狙われる云われなぞ無いぞ!!」
「・・・・・ピチュー〝たいあたり〟、ムックル〝でんこうせっか〟」
俺の問いかけを無視して、少女は指示を出す。
しまった!奴の矢を避けてる内に、こちらが指示を出すより早く奴が指示を出してしまった!
俺は負けじと岩陰から顔を出し、指示を出そうとした瞬間思わず目を疑った。
「どうした、メリー!!」
メリーは立ち上がったまま、体が硬直していた。これは、麻痺している!?
俺がメリーに気を取られている内に、少女は再び俺にボウガンを向けてくる。
俺は急いで岩陰に引っ込む!くそっ!一体何なんだ!?
ナツの体力もあと僅か。メリーは何故か麻痺している。実質、1対2だ!
俺はボウガンで狙われて、満足に指示が出せない状態だ!!
このままじゃジリ貧だ!!どうすればいいんだ!?
そんな時だった。俺が持っていた謎の機器が、ウィーンと起動音を上げた。
謎の機器。ポケモンの情報を見る事が出来る機械。
そうだ!この中に、危機的状況を突破するヒントがあるかもしれない!
そう思って、ポケモンの生態に関するページを開く。
するとそこには新たな項目が追加されていた。ピチューとムックルに関する情報だ!
ムックル、ノーマル/飛行タイプ。特性は命中率を下げられない〝するどいめ〟
ピチュー、電気タイプ。特性は触れた相手を麻痺させる〝せいでんき〟
俺はピチューがやけに接近戦ばかりしているのを思い出した。
そうか!メリーが麻痺したのは、この特性のせいか!
だがそれが解ったところで状況は変わらない。他に何か無いのか!?
俺はナックラーとメリープの項目を開いた。
するとある情報が、俺の目に飛び込んできた。
(イケるかも知れぬ!儂と、2体の力があれば!!)
俺は初めてのポケモンバトルを思い出す。
今回のそれも作戦ですらない。俺の力と2体の体力が持つかどうかが勝負の鍵だ。
「ナツ!メリー!状況を打開するぞ!」
俺は手持ちの2体に向かって叫びながら岩陰からと飛び出した。
少女の方を見ると、すでにボウガンを構えて俺を狙っている。
それでも俺は走り続ける。向かう先はメリーの元!
バシュッ、という音が聞こえると、俺はそれと同時に上体を倒すようにして加速した。
ゲンジにスパルタで鍛えられること6年。俺の身体能力は同世代の子供を大きく上回るだろう。
普通なら間に合わず俺に当たっていただろうが、矢は俺の後方を横切るように飛んで行った。
そしてメリーの所まで辿り着いた俺は、メリーの体を掴み
「ぬおぉりゃあああああ!!」
近くに居たピチューを払い除ける様にしながらメリーを抱え上げた!
(第一段階成功!次は・・・!)
俺はメリーを抱えたまま、少女の方へと走り出した!!
何発も打たれたからわかる。あのボウガンの欠点、1発ごとに矢を装填しなければならない事!
俺がさっきの矢を避けてから数秒。そんなに早く装填できないみたいだな!
「ムックル〝でんこうせっか〟」
少女は特に焦った様子もなく、ムックルに指示を出す。
ナツに背を向け、主の危機を察したムックルがその技の名の通り電光石火の速さで突撃する!
狙いは当然俺。ムックルの体は、俺が少女に掴み掛る前に俺に直撃するだろう。
だが、そんな事は俺にとっては予想通りだった。
「行けぇ!メリィィィィィ!!」
俺は、ムックルに向かって抱えていたメリーをブン投げた!
〝でんこうせっか〟で突撃してきたムックルはその勢いを止める事が出来ず、そのまま逆方向から飛んできたメリーと激突した。
「ムックル〝こうそくい「メリー〝ほうでん〟じゃ!!!」」
恐らくは俺の策に気付き、〝こうそくいどう〟で回避しようとしたところだろう。
だがその指示を、俺は更に大きな声でメリーに指示を出す事で被せる。
ムックルは何も出来ないまま、メリーから広範囲にわたって放出された電撃をまともに浴びる事となり、そのまま2体とも、地面へと落下していった。
良し、後はナツがピチューを倒すのみ!!
「ナツ!ピチューに〝かみくだく〟!!」
俺の声を聞き、ナツは懸命に走りながらピチューに突撃していった。
「ピチュー〝かげぶんしん〟」
奴は〝かげぶんしん〟でナツの攻撃を回避しようとする。
確かにピチューの持ち前の速さならナツの攻撃が届く前に逃げだす事が出来る。
だがピチューは動かない。いや、動けないんだ!
メリーの特性はピチューと同じ〝せいでんき〟。
メリーがピチューの体に触れる事で麻痺したように、ピチューもメリーに触れる事で麻痺のエネルギーが蓄積し、先程俺がメリーを持ち上げるのと同時にメリーの体をピチューにぶつける事で、相手のピチューは遂に麻痺してしまった!殆ど運任せだけど!
そうしている間にも、ナツはピチューの元まで辿り着き、その大きな顎でピチューを咥え込み、そのまま噛み潰した。ピチューは抵抗する様に暴れたが、最後にはナツの顎の中で力尽きた。
「さぁ・・・・これでお前の手持ちは居なくなった様じゃのう」
「・・・・・・」
少女はボールを取り出す気配もなく、俺を見据えている。
ボウガンは下げたまま、上げようとしない。
それに対してこちらは、メリーはムックルと相討ち。
ナツは残り体力は少ないが、まだ戦える状態を保っている。
「・・・手持ちポケモン全て戦闘不能。現状、対象をボウガンを用いた射殺は困難」
見た目の印象を裏切らない、鈴を転がすような声だった。
言ってる事は片言の上に、殺伐としているけど。本当に殺す気だったのか、こいつ。
「任務達成を不可能と判断。情報漏洩を防止するため」
そう言って少女は持っていたボウガンを持ち上げる。
任務?情報の漏洩?何の事だ?
それと同時に、猛烈に嫌な予感が駆け巡る。こいつ、まさかまだ何かする気なのか!?
とりあえず、先手必勝!何かする前に抑え込む!
そうして俺が少女の方へ駆け寄ると
「機能を破壊します」
そう呟いて、ボウガンを自分の頭に押し付けた。
って、こいつ、まさか!?
脅しかと思ったが、引き金にはもう指を掛けてやがる!こいつ、本気だ!
「こんの、バカタレがぁぁぁぁぁ!!!」
俺は自分の足の腱を引き千切る勢いで飛び掛かる!狙うはボウガンだ!
一瞬、世界がスローモーションになったような気がした。
そのまま少女に飛び掛かった俺は、まずはボウガンを掴む!
俺の飛び掛かった勢い+俺の腕力でボウガンの標準は大きくずれる。
その瞬間、バシュッと音がするのと同時に、矢はあらぬ方向へと飛ばされた。
あ、危なかったぁ!まさに間一髪!!
そう安堵の息をつくのも束の間。俺は少女を押し倒すようにして倒れ込んだ。
《ゴッ!》
倒れた衝撃で閉じていた目を開くと、そこには少女の整った顔がアップで映っていた。
こうして近くで見てみると、やっぱり可愛いよな・・・。睫毛とかめっちゃ長いし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!?
いかんいかん!そんな場合じゃねぇ!
俺は少女に色々と問い詰めるべく、肩を掴んで体を持ち上げた。
「おい!お主は一体」
その瞬間、少女の首がカクンと、後ろに傾いた。
気絶している?そう言えば、さっき何か鈍い音が聞こえたような・・・。
少女の後ろ、正確にはさっきまで少女の頭があった場所に目をやる。
そこには、拳大程の大きさの石が落ちていた。
「救急車ーーーーー!!!」
そんな俺の叫び声が、昼の青空に木霊した。
☆ ☆ ☆
《17時10分》
カントー地方・お月見山前のポケモンセンター
あの後、お月見山の前にポケモンセンターがある事を思い出した俺は、少女を背負ってポケモンセンターまで走って来た。背負った体は想像以上に軽かったが、人間1人背負って走るのってかなり疲れる・・・!
今さっき、俺と少女の手持ちポケモンの治療と少女の診察が終わったところだ。
少女は特に怪我もしておらず、後遺症の心配も無いそうで、すぐに目を覚ますらしい。
よ・・・良かった・・・!死んで無かった・・・!
今までの人生で一番生きた心地がしなかった一時だった。
「まさか、旅に出てすぐにこんな事になるとはのぅ」
少女の寝顔を眺めながら、1人そう愚痴る。
それにしても、本当に可愛いな。肌とかすげー白いし。髪の毛も綺麗だし。
「って、そんな事考えてる場合でも無いか・・・」
この少女は、何者なんだ?目的は?
この機械の正体は?
なぜ俺を狙ってきたのか・・・。
「だー!訳が解らん!!」
止めだ止め!考えても埒が明かん!この少女に直接聞けばいいだろう!
「・・・っ!」
「む。目が覚めたか」
そうしていると、少女は目を覚ました。
目を開いて、首を動かしてベットの横に腰かけている俺を捉える。
「・・・状況の報告を要求します。あなたは誰ですか?」
はじめて、彼女から台詞らしい台詞が聞けた。
なんか、器械みたいな印象を受けてたからな。質問されると一気に人間味が増して見える。
相変わらずの無表情だけど。
「儂の名はガーネット。で、ここはポケモンセンター。あの戦いの後、ここに来た」
「・・・ポケモンセンター。先程の戦闘・・・」
そう反芻してしばらく黙りこむ。
・・・・・沈黙が痛い・・・!とりあえず、いろいろと聞いてみるか。
「お主、名前は?」
「・・・識別名、『アクアマリン』」
識別名?何の事かわからないが、それが名前だという事が解った。
「何で、儂を狙ってきた?」
「・・・任務情報の漏洩を防ぐため」
そう言えば、あの時も言っていたな。任務とか情報漏洩とか。
「任務って何じゃ?」
とりあえず、駄目元で聞いてみた。まぁ、教えてくれるわけ無いか。情報漏れを防ぐ為に自ら命を断とうとしたくらいなんだからな。
「・・・ポケモン図鑑の入手」
「え!?教えてくれるの!!?」
「・・・・・・・・・・・」
「あ、いや、何か、すまぬ」
睨まれてしまった。なんか、急に反応が良くなった。色んな意味で。
しかし、ポケモン図鑑か・・・。あの機械の事か?
俺は例の機械を鞄から取り出す。
「ポケモン図鑑とは、これの事かのう」
「・・・肯定」
「では、これは一体何なんじゃ?」
「・・・不明」
不明?どんな物かも解らずに手に入れたという事か?
その為に人も殺すほどの事なのか?なんか、話がでか過ぎて解らなくなってきた。
「任務と言っておったの。誰に頼まれたんじゃ?」
「・・・不明」
「それも解らんのか!?」
少女――――アクアマリンは首を縦に振って頷いた。
参ったな。解るんだったら仕向けた奴をぶっ飛ばすつもりだったのに。
だからって女に手を上げる訳にもいかねぇし。結局解らない事だらけか。
その時、閉ざされていた扉の方からノックが聞こえた
「入れ」
「失礼します。患者の女の子は、お目覚めになりましたか?」
ジョーイが部屋に入って来た。
「あぁ、今起きた所じゃ」
「えぇと、先生から、今日は大事を取ってセンターで泊ってほしいとのことです」
アクアマリンが頷くと、ジョーイはさっさと出て行った。
「良いのか?任務と言う事は、それなりに急ぎの用事では無いのか?」
良く解らんけど。ゲンジは何時も任務は迅速かつ確実に行うとか何とか言ってたし。
「・・・任務内容は、覚えていません」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「・・・え、ちょ、まさか、記憶、喪失?」
「・・・恐らく」
やっぱりーーー!!絶対あの時(後頭部強打)だ!!やっちまったーーー!!
いや、でもある程度の事は覚えてるし、家の事とかも覚えてたりするだろ!そうであってくれ!
「帰る家とかは覚えておるのか?」
「・・・覚えていません」
一瞬、アクアマリンの瞳が揺らいだ。・・・罪悪感で、押し潰されそうだ。
いや、そもそもこいつが襲いかかって来なければ済んでいた話だけれども。
でも、こいつにだって事情があるだろうし、帰りを待つ家族がいるだろう。
その時、母の顔が目に浮かんだ。俺はそれを振り払うように頭を大きく振る。
「・・・現状、任務達成は・・・不可能・・・です」
「?おい、どうした?おい!」
急に言葉が途切れ途切れになり始めた。
するとすぐに、寝息を立て始めた。なんだ、寝てるだけか。
「これからどうするべきか・・・」
正直な話。これ以上こいつに関わると、とんでもない面倒事に巻き込まれるのは確実。
はっきり言って、こいつと俺は赤の他人。明日の朝、さっさと出発してもいい。
それか、記憶喪失の事を医者に正直に話して、面倒を見て貰ってもいい。でも
(本当にそれでいいのか・・・?)
さっきの揺らいだ瞳が頭に張り付いて離れない。
無表情に淡々と小難しい台詞を並べて、自分の気持ちなんかちっとも語ろうとしない。
こいつの本心は、どうしたいんだ?そんな事で、自分の『道』を探して歩いて行けるのか?
俺は、そんな事を考えながら病室を出て、仮眠室へ向かった。
☆ ☆ ☆
《1月28日・0時13分》
カントー地方・ハナダシティ
NOside
(予定よりも1時間をオーバー。任務失敗と判断するべきか)
その男は夜空の下で一人の少女を待ち続けていた。
いや、少女と言うよりも、その少女が盗み出したであろう物を待っていた。
(オーキド博士本人に止められたか、はたまた図鑑所有者の誰かか)
自身の癖のある茶髪を手で掻き上げて、男は思考を巡らせる。
やがて男はモンスターボールを取り出し、開閉スイッチを押す。
現れたのは巨大な鳥型ポケモンだ。男はポケモンの背に飛び乗る。
(任務は失敗したようだが、我々の情報が漏れる事はあるまい。自動消去機能があればな)
ポケモンはその大きな翼を羽ばたかせ、上空へと飛び上がる。
(再集結したというロケット団との商談もある。ポケモン図鑑はまたの機会に奪えばいい)
男はそのままハナダシティを飛び去って行った。
☆ ☆ ☆
《1月28日・8時46分》
カントー地方・お月見山前のポケモンセンター
ガーネットside
朝起きたら、髪の毛が大爆発していた。まぁ何時もの事だ。
俺の髪の毛は癖の強い茶髪で、朝起きたらまず洗面台で髪を梳くのが習慣だ。
何時もと違うと言えば、ここが6年間住み慣れた民家ではなくポケモンセンターだということだ。
身だしなみを整えてフロアに来てみると、そこにはすでにアクアマリンがいた。
「おはよう。昨日はよく寝むれたか?」
「・・・肯定」
そう呟くと、沈黙が下りる。空気が重い!早く話を切り出そう!
「アクアマリン。お主は、これからどうする気じゃ?」
沈黙を破る様に、俺は昨日一晩中考えていた事を話し始める。
アクアマリンは、僅かに顔を俯ける。
「・・・未定」
未定。つまり決まっていないということか。
まぁ、そうだろうな。帰る家も解らないんじゃ、どうすりゃいいか解る訳もないか。
そして俺は、考えの結論を話しだす。
「だったら、儂と来るか?」
アクアマリンは顔を上げて、相変わらずの無表情で俺を見る。
「いやな、儂は写真家を目指しておっての。この旅では全国を回る予定なんじゃよ。そしたら何時かお前を知っている奴や、お前の家まで辿り着く事が出来るかもしれん。どうじゃ?」
今回の記憶喪失は、多少なりとも俺にも責任があるしな。(多分)そんな事は恥ずかしくて言えないけど。もちろんアクアマリンの家まで行ける保証なぞないが、何もしないよりかはマシだ。
「・・・そちらにメリットがありません」
「メリットならあるぞ。これから危険な場所にも行くつもりじゃからのう。人手が多いに越した事はあるまい。これは提案じゃ」
何か気恥かしくて思わず、ぶっきら棒な台詞を言ってしまった。
「・・・・・・・」
「命令や指示では無いぞ。『お前がどうしたいか』じゃ。」
そう言って俺はアクアマリンに手を差し出した。
暫くの間、俺の顔をじっと見つめると、やがてゆっくりと手を上げ、俺の手を握った。
「・・・私も付いて行っても宜しいですか?」
「初めからそう言っておる」
俺はそっぽを向いて、握られたその手を握り返した。
強く握りすぎると折れてしまいそうな位細かったから、力が入らなかったけど。
しかし、承諾してくれてよかった・・・。
これでもかなり勇気出して誘ったからな。女を、それもとびきりの美少女を旅に誘うとか。アクアマリンは気付いてないかも知れないけど、俺は今、めっちゃ顔が赤い。こんなところ見られなくて良かった。
「・・・頭部に異常な量の血液が集中しています。風邪ですか?」
見られてたよチクショウ。
「そ、そうと決まれば!早く行くぞ『アリア』!!」
俺は恥ずかしさを振り切るように大きな声を出して大股で歩き始める。
「・・・アリア?」
「ん?あぁ、愛称って奴じゃ。『アクアマリン』じゃと長いからの」
実際呼びにくいからな。『アクアマリン』から『ア』を2つと、『リ』を取って繋げてみた。
「嫌ならやめるが?」
俺がそう言うと、首を横に振る。どうやら嫌では無いらしい。良かった。
相変わらずの無表情に対して俺は笑みを浮かべながら言う。
「これからよろしく頼むぞ。アリア」
「・・・よろしくお願いします。ガーネット」
そんなこんなで、俺の1人旅は2人旅になった。
☆ ☆ ☆
キャラクターデータ
名前:ガーネット 名前:アクアマリン
性別:男 性別:女
年齢:11歳 年齢:10歳
所持金:6000円 所持金:2300円
手持ちポケモン 手持ちポケモン
ナツ/ナックラー ♂ Lv,21 ピチュー ♀ Lv,20
メリー/メリープ ♂ lv,19 ムックル ♂ Lv、20
少女の名前がようやく明らかになりました
次回も頑張って書きます!