ポケットモンスターSP 新たなる図鑑所有者   作:俺俺

7 / 28
ポケスペがアニメ化しなくても、ゲーム化してほしいと思う今日この頃。
お待たせしました。それではどうぞ!



それぞれの旅路 前編

「ガーネット、誕生日おめでとう」

「うん!ありがとう、お母さん!」

「今日はガーネットが好きなうどんを作ったわ」

「やったーー!!」

 

「・・・・・ごめんね、ガーネット」

「お母さん?」

「本当ならケーキやプレゼントを用意できれば良かったのに」

「ううん!ぼく、お母さんが居れば良いよ!」

「ありがとう、ガーネット」

 

「お母さん?どこ行くの?ぼくも行く!!」

「大丈夫よ、ガーネット。お母さん、ちゃんと帰ってくるから」

 

「待ってよお母さん!ぼくを置いてかないで!お母さ――ん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

《8時32分》

ホウエン地方・トウカシティ《ポケモンセンター》

 

ガーネットside

 

「母さんっ!!!?」

 

思わずベットから跳ね起きる。

そこには母の姿は無く、昨日の晩に見たポケモンセンターの仮眠室の光景だった。

 

「・・・・夢かよ」

 

久々に嫌な夢を見た。

おかげで服が寝汗でじっとりと湿っていて気持ち悪い。

 

「こりゃ、先にシャワーでも浴びるか」

 

先ほどの夢を振り払うように頭を振る。

時間は、8時30分過ぎ。周りのベットはもぬけの殻だ。もう起きているかな?

 

あの船の上で変態男と闘って逃げた後、驚くべき事に俺達はホウエン地方まで付いて辿り着いた。カントーとホウエンはかなり離れた場所にあり、ポケモン、それも中型のポケモンが人一人を背負って連れていけるような場所じゃない。海の上で休憩できる場所も無く、途方に暮れていたら陸地が見えたのでそこに行ってみると全国でも自然豊かなホウエン地方に到着していたという訳だ。

どこの陸地とも離れた場所だったらと思うといまでもゾッとする。

 

にしても、さっき思いっきり「母さん」って叫びながら跳び起きたよな・・・?

そう考えると何か無性に恥ずかしくなってきた。こんなの誰かに聞かれたら・・・。

 

「ま、誰もいないからいいんだけどな」

「・・・いますよ」

 

アリアがクローゼットから顔を出した。寝起きなのか、髪が乱れている。

どうやら開いたクローゼットの扉が邪魔してアリアが見えなかったようだ。

 

「アリア、何してんの?」

「・・・荷物を取り出しています」

 

俺達の荷物はボールを除いて全てクローゼットに仕舞ってあるからそれは分かる。

だが問題はそこじゃない。

 

「さっきの、聞いた?」

「・・・さっき?」

 

何の事か解らないという感じに首を傾げるアリア。

 

「いや、ほら・・・さっき俺が起きた時の・・・」

「・・・母さんと、言っていました」

「オッギャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

起きて早々、あまりの恥ずかしさに絶叫した。

だって、だっていくらなんでも・・・・この寝言は!

 

「・・・他にも、うどん、置いて行かないでと言ってました」

「そんなことまで言ってたの!?俺のバカーーーー!!」

 

寝言を聞かれるのがここまで恥ずかしいだなんて思わなかったよ畜生!

何とか、何とか話題をすり替えないと!!

 

「・・・ガーネット」

「なんだよ!?まだ何か言ってたのか、俺!!?」

「・・・ガーネットの父と母は、どのような人なんですか?」

 

話をすり替えたのはアリアの方だった。

 

「何でまた、そんな事を?」

 

まだ恥ずかしさが残っていて、ぶっきら棒に返事する。

 

「・・・・・・」

 

返事がない。

率直にものを言うアリアには珍しく、言葉が出てこないといった様子だ。

 

「・・・・父親の方は、良く分からねぇ。会った事が無いしな。母さんは、優しい人だった。俺が五歳の頃に死んじまったけどな」

「・・・亡くなられたんですか?」

「ブラックシティっていう、かなり治安の悪い町で毎日こき使われながら、俺を養うために仕事の内容とは割が合わない安い給料をやりくりしてた。その無理が祟ったんだろうな」

 

今でも不思議に思う事がある。

なんで母さんがそんな町を出て行かなかったのか。

あんな町じゃなくて、他の町でならちゃんと仕事に就いて無理のない生活だって出来たのに。その問いに応えてくれる母はもういないんだけどな。

 

「まぁ俺が覚えてるのはその位だな。その後色々あって、俺はゲンジの爺さんに引き取られて6年間ニビシティで暮らしてたってわけだ。」

「・・・ゲンジ?」

「あぁ、俺を引き取った爺さんの事だよ。やたらとおっかない爺さんだけどな」

 

それと同じくらい優しいとは、口が裂けても言えないけど。

今思えば、生まれこそ恵まれなかったけど、家族には恵まれていたんだろうな、俺は。

そんな事を考えていると、アリアが口を開いた。

 

「・・・私の家族は、どんな人たちなんでしょうか?」

 

初めてアリアと出会った時の事を思い出した。

光を宿さぬその眼差し。決して崩れぬ無表情。

一切の揺らぎなく、他人の命も自分の命も絶とうとするその冷たい心。

人間の人格形成は、周りの人間の性格に影響するらしい。

だったら、アリアのあの時の性格は一体どうやって形成されたってんだ?

 

結局俺は、答えらしい答えを返す事も出来ないまま、シャワー室へと向かった。

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

《9時12分》

 

 

「あ、ガーネットおはよう」

 

ポケモンセンターのフロアに行くと、すでにアリアとターコイズが居た。

うん。アリアはちゃんと髪をセットしたみたいだ。

 

「それじゃまずは、状況確認と今後の行動を決めるとするか」

 

正直色々ありすぎた。整理しないと混乱しそうだ。

 

「はい、質問!」

「いきなりだな。何だ?」

「何で爺言葉から普通の口調に戻ってるの?」

「・・・私も気になります」

「いきなりそれかよ!?」

 

まあ、いいけど。

 

「別に意味なんてねぇよ。ただの威嚇みたいなもんだ」

「・・・威嚇?」

「旅の道中、子供だと思って舐められないようにしようと思ってな」

「いや、特になんとも思わなかったけどね」

「何、だと・・・!?」

 

ビビりのターコイズにそこまで言わせるなんて。

 

「寧ろ変に気を使った口調な分、乱暴な台詞なのに丁寧に聞こえたね」

「マジかよ・・・。まぁ、もう使う事が無いからいいんだけどな」

 

実際、威嚇の為に使ってみたものの、ポケモンには威嚇だってことが理解できなかったみたいだし、あの変態男みたいな奴には一切効果が無かった。

それなら自分の本来の口調で威厳って奴を出すしかねぇだろ。

 

その後、俺とアリアの旅の事をターコイズの話した。

完璧俺達の事情に巻き込まれちまったから、ポケモン図鑑の事や俺とアリアが初めて会った時の事を隠す必要もないしな。

 

「で、ここからはアリア、お前の事だ」

 

あの変態男が行っていた言葉。

送り火山の1階にアリアの秘密がある。

 

「で、でも、敵の言ってた事だよ?本当か嘘かも分からないし、罠だって可能性も」

「んな事は解ってるっての。でも他に手掛かりがねぇんだよ」

 

アリアの旅の目的、「家探し」はここを通らずにしては進まない。

 

「決めんのはアリア、お前だ」

「・・・私は」

 

少しの間俯いて、顔を上げる。

 

「・・・行きます」

「えぇ!?行くの!?」

「・・・罠である可能性は極めて高い事は承知しています。それでも」

 

アリアは一拍置いて言った。

 

「私は自分が何者なのか、私の家族がどんな人なのかを知りたいです」

 

以前のアリアなら、危険性を考慮して近づこうとはしなかっただろう。

それでもアリアがこの決断を下したのは、あの船での戦いで目覚めたアリアの自我がそうさせたのか、はたまた別の何かがそうさせたのか。

 

「・・・ここで2人を危険に晒す事はできません。ここからは私1人で」

「何言ってんだよ。もう十分巻き込まれてるから同じだっての」

 

アリアの言葉を遮る。ここまで来て1人で行かせられる訳無いだろうに。

 

「ここまで巻き込まれたんだ。俺も事の真相を知る権利くらいあるだろ」

「・・・ですが」

「大体な、お前送り火山が何処にあるのか知ってんのか?」

 

言葉を詰まらせるアリア。やっぱり知らなかったか。

まぁ、このホウエン地方にあるから

 

「だったらなおさら俺が付いて行かなきゃダメだろ」

「・・・分かりました。改めて、よりしくお願いします、ガーネット」

「そうこなくっちゃな。よろしく、アリア」

 

とりあえず、アリアの今後は決まった。次は

 

「次はターコイズ、お前だ」

「えぇ!?僕!?」

「お前には色々聞きたい事があるんだよ」

 

こいつは俺達の事情を知ったのに、俺達はこいつが何者なのかすら分かっていない。

もしも敵だってんなら今の内に・・・。

 

「・・・ターコイズは、なぜあの船の乗組員と言い争っていたのですか?」

「だって、あの向こうが契約を違反したから・・・」

「契約?」

 

そういや、あの時も契約がどうの言ってたな。

 

「お前、何かの企業に就いてんの?」

「うん。僕一応、ポケモン協会の派遣部の候補生だよ」

「・・・派遣部?」

 

首を傾げるアリア。派遣部は俺も聞いた事があるけど詳しくは知らねぇな。

 

「派遣部っていうのは、ポケモン協会が一般の企業に対して協会お抱えのトレーナーを助っ人に出す部署の事だよ。僕はその候補生でね」

「協会専属のトレーナーの候補生って事は、学生なのか?お前」

「ま、まぁね」

 

ん?何か歯切れが悪いな。

 

「今回はその業務研修で、《アルティア家》の依頼を受けたんだけど」

「・・・アルティア家?」

「世界中の企業に影響力を持つ、カントー地方の名家のことだ」

 

300年以上の歴史がある古い貴族で、その格式はシンオウ地方の《ベルリッツ家》にも並ぶらしい。仕事は主に貿易だが、その内容はトップシークレットらしい。

 

「依頼の内容は?」

「あの、ガーネット?こういうのは依頼人の守秘義務があってね?」

「・・・依頼人の名を口にするのは守秘義務には入らないのですか?」

「しまったぁーーーーーー!!!」

「で?アルティア家からどんな依頼が来たんだ?」

 

俺がそう言うと、ターコイズは大きく溜息をついてから口を開いた。

 

「最近、ジョウト地方でロケット団が再集結し始めたって話は聞いたことある?」

「あぁ、それなら知ってる。ニュースにもなってたしな」

「もし本当にロケット団が再集結していたら一大事でしょ?だからね、カントーの一般のトレーナーからポケモンを貸してほしいって言う応募を出したんだよ」

「なんで?」

「・・・恐らく、戦力増強の為」

 

あ、なるほど。

カントー地方で起こったロケット団による事件ではポケモン協会も、町の治安を守る殆どのジムリーダーが対処しきれなかったらしい。

ジョウトでも同じ様にならないように、少しでも動けるトレーナーを増やそうってわけか。

 

「加えて1年前の四天王事件もあったから・・・」

「まぁ、善良な一般人はもう二度と同じ事が起きないようにポケモンを貸し出すだろうな」

 

にしても、四天王事件か・・・。

俺はその時、ゲンジと一緒にホウエン地方に行ってたから何があったかは良く分からないんだよな。ただ、久々に帰ってみたら家が半壊していたのには驚いた・・・。

おかげで俺は家が直るまでの間、野宿をした。

 

「でも・・・」

「・・・?」

「僕、聞いちゃったんだ」

「何を?」

「トレーナーから借りたポケモンを、ロケット団に売り渡すって」

「はぁ!?」

 

つまり何か!?アルティア家がロケット団相手に商売してたってか!?

 

「僕も耳を疑ったよ。でも聞き間違いじゃなかったんだ」

「それでターコイズは抗議に向かって」

「・・・私達と一緒に閉じ込められた」

 

極めつけにあの船の上で戦った変態か。

やましい事が無けりゃ、わざわざ俺達を殺しに掛って来ないだろうしな。

 

「まぁ、とりあえずはこんなところだな」

「・・・では、送り火山に向かいますか?」

「その前にターコイズ、お前これからどうする?」

「どうって、このまま学校に戻るつもりだけど」

 

当然のようにそう答えるターコイズ。

 

「学校って、どこにあるんだ?」

「僕が通っているのは、コトブキシティにある学校だよ」

「コトブキシティ?シンオウ地方じゃねぇか」

「うん。だからミナモシティの連絡船に乗ろうと思うんだ」

 

だったら途中まで俺達と同じ方向だってことか。

 

「・・・ターコイズ、途中まで私達と一緒に行きませんか」

 

俺が言おうとした事を、アリアが先に言った。

 

「え!?一緒に来てくれるの!?」

 

アリアはコクリと頷いた。

 

「・・・まだ私達の命が狙われている可能性がありますので」

 

確かに。知られて困るような事を知ってしまったからには、あの変態が俺達を追いかけてくる可能性も否定できない。そう、あの変態が・・・

 

「俺、何か気分悪くなってきた」

「・・・・・僕も」

 

またあの変態と戦わなくちゃいけないのかと思うと、一気に気分が滅入った。

 

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 

 




次回も頑張って投稿します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。